生成AI活用を社内に定着させる5ステップ
公開日:2026年04月20日
この記事に書いてあること
業務効率化やアイディアの創出のため、生成AIを活用する企業が増えています。数年以内に、人による事務的な仕事の多くがAIに置き換わるという見解もある中で、企業は、社員が、人にしかできない仕事で価値を生み出せる組織になることが求められています。そこでこのコラムでは、生成AIを全社員が当たり前に活用できる組織になる方法を解説。導入から浸透までのステップや企業事例を通じて、生成AI活用のポイントをお伝えします。
生成AIに仕事を奪われる未来を変えるには?
生成AIとは、人からの指示をもとに、文章や画像などのコンテンツを作り出すAI技術のこと。文書のドラフト作りや情報収集、提案のサポートやアイディア出しなど、ビジネスのさまざまなシーンで活用が進んでいます。
そんな生成AIは、人の働き方にも影響を及ぼしつつあります。ITリサーチやアドバイザリーを手がけるガートナージャパンは2026年2月、「テクノロジー人材に関する最新の展望」で、「2029年までに、機械的・定型的な業務のみに従事する人材の90%は、人間のように振る舞うAIによって業務を代替される」という見通しを発表。企業は今後、人の役割とAIに任せる業務を再定義し、AIとの共生を前提とした人材戦略を進める必要があると伝えています。
働く人には、AIを使いこなしながら人ならではの価値を生み出していくことが求められており、企業は、全社員が生成AIを使いこなせる組織になるための制度設計や、人材育成に取り組む必要があるのです。
しかし、経営層が必要性を理解していても、現場での運用ルールの整備にまで手が届いていないという企業も多いのではないでしょうか。また、ガイドラインは作っていても、実際の業務にどう役立つのか社員が理解しておらず、活用が進まないというケースも。人材不足や資金的な要因から、「生成AI推進の担当者を確保できない」「大企業のように自社独自のシステムを用意できない」「現場まで目が行き届かず不安」などの課題を抱える組織もあるでしょう。そのような、環境整備が進みづらい企業にとっては特に、段階を踏んだ導入や丁寧なルール作りが、生成AI活用を成功させる鍵となります。
生成AI活用を進めるためのステップ
では、生成AIの導入やガイドライン作りはどのように進めれば良いのでしょうか。導入から現場への展開までに必要なステップは次のとおりです。
安全に使うためのルール・環境整備
現場での安全な生成AI活用のために、生成AIの使い方やプロンプトの入力方法などのマニュアルと、運用ルールを定めたガイドラインを整備しましょう。プロンプトに入力できる情報の種類、生成AIが作ったコンテンツの利用範囲、禁止事項などを記載します。
具体的な活用方法をモデル化
「生成AIを自分の仕事のどこに使えるのか」という疑問を解消するために、部署や担当業務ごとに、生成AIを活用できる具体的な作業をモデル化します。「提案書のひな形作成」「議事録の作成」「アイディア出し」など、実際に便利になるシーンをイメージできる活用モデル集を作りましょう。
生成AI活用研修を実践型で開催
生成AI導入研修を、実践型で行います。座学でガイドラインの内容を伝えるだけでなく、体験を通じて理解を深めることが大事です。まずは、自分の実際の業務上の課題や時間がかかっている仕事をピックアップし、生成AIを活用できる作業を洗い出します。生成AIにプロンプトを出して成果を得るまでの一連の流れを実践することで、使い方や利便性への理解を促し、活用につなげましょう。
事例やプロンプトを社内で横展開
社内に生成AI活用を浸透させるには、効率化につながった好事例を横展開することも重要です。成功事例を社内で共有できる仕組み作りや、事例を蓄積できるプロンプト集の作成などの取り組みが、社内のアイディアを活性化させます。「便利だった」という社員の声や、現場から生まれた新しい活用法が、自社に生成AIを定着させる土台になるでしょう。
生成AI活用を進めるためのポイント
生成AIの導入には、生成AI活用の注意点やセキュリティへの対処も欠かせません。リスクを抑えながら効果的に活用を進めるためには、次のようなポイントを意識して導入や運用を進めましょう。
業務や目的に合ったツールを導入
生成AIには、ビジネスで活用できるものや、法人向けサービスも含むさまざまなツールがあります。複数の用途に使えるものや、長文処理や営業支援などの専門性、Officeソフトとの親和性など、特徴もさまざまです。生成AIを有効に活用するために、自社の業務課題や効率化したい作業にフィットした生成AIツールを導入しましょう。
「やってはいけないことリスト」を周知する
情報漏えいなどのセキュリティの事故や、間違ってAIが生成した情報を活用してしまうリスクを防ぐため、使用する社員に「やってはいけないこと」を共有することが大切です。「個人情報や機密情報をプロンプトに入力しない」「著作名や作家名を使って生成の指示を出さない」「情報の事実確認なしで活用してはいけない」などのNG行動リストを作成して周知しましょう。
小さな成功体験で「使える」実感を
生成AIを使いこなせる人材になるためには、実際に生成AIに触って、繰り返し手を動かすことが欠かせません。自分に合った効率的な使い方や、生成AIと人の力を掛け合わせるべきポイントを判断する力を身につけるため、実践を重ねることが大切です。うまく活用できるか自信がない人は、まずは「使える」という成功体験を得るために、身近な小さな作業から生成AIの活用を試して効果を実感してみましょう。
活用推進のサポート体制を整える
生成AI活用を本格的に進めたい企業は、社員の生成AI活用のサポートや、利用環境整備を行う担当者を設けることも検討しましょう。使い方で困ったり、トラブルが起きたりした際の問い合わせ先があることで、社員が安心して生成AIを活用できます。推進担当者を決めることで、社員の要望や生成AIの機能改善を受けて、ガイドラインや利用環境をより良い形に見直していくことも可能になります。
生成AI活用を進める企業事例
次に、生成AIがどのように業務で役立つのかイメージがしにくい方のために、企業での活用事例をご紹介します。導入の具体化に、ぜひお役立てください。
AIメンターが社員の業務効率化を支援
商業施設を運営する東京都の株式会社アトレは、社員の能力開発と生産性向上のため、全社員が生成AIを活用できる体制を整備。生成AI「Gemini」を積極的に活用していく戦略「AIメンター」を展開しています。アイディア出しや業務支援、情報収集などをAIに任せることで、社員が価値ある仕事やチャレンジに集中できるよう、活用を推進しています。
「うまく使いこなせるか不安」という社員の声を受けて、活用状況やスキルを可視化する「ステータスボード」によるサポートや、AI活用アイディアソンを実施。導入から約2ヶ月半で全社員の利用率が82%を超えるなど、生成AIが仕事のパートナーとして定着しています。
アトレ、全社員に寄り添う「AIメンター」戦略を始動│株式会社アトレ
独自のAIチャットを効率化やサービス開発に活用
教育や生活関連のサービスを提供する株式会社ベネッセホールディングスは2023年、独自の社内AIチャット「Benesse Chat(旧・Benesse GPT)」を導入しました。社員が安心して生成AIを活用できる環境を作るために、入力した情報が二次利用されない仕様や利用履歴のモニタリング機能を整えて、安全性を向上。書類の抜け漏れチェックやアンケートの分析、メールの文案作成など、社内のあらゆる業務での活用が進んでいます。また事業としても、子どもの興味からアイディアやテーマを見つけることができる小学生親子向け生成AIサービス「自由研究お助けAI」をリリースするなど、社会全体のAI活用力を上げる取り組みを進めています。
社内AIチャット「Benesse GPT」をグループ社員1.5万人に向けに提供開始 | 株式会社ベネッセコーポレーションのプレスリリース
生成AIとRPAの組み合わせで業務効率化を実現
大分県別府市では、関心の高い職員による勉強会の開催や、他自治体での活用事例による機運の高まりを受けて、2023年から生成AIを業務に本格的に活用しています。使用上の注意点を3点に絞る工夫や、庁内の広報「デジタルファーストニュース」での情報周知、「いつでもお気軽相談会」や「プロンプト勉強会」などの開催によって利用を促進。文章案の作成支援やアイディア出しなど、業務での活用が進んでいます。また、生成AIとRPAを組み合わせて、市民からの意見メールを自動的に要約・分類する実証を行い、実際の業務にも活用。今後、この組み合わせの施策の活用範囲をさらに広げる見込みです。
自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<別冊付録>先行団体における生成AI導入事例集 | 総務省
広報活動やサービスデザインに生成AIを活用
兵庫県神戸市では、業務改善の一環として市長の主導のもとで生成AIを導入。広報誌編集業務において、生成AIをペルソナ分析やカスタマージャーニーマップ作成に活用し、ユーザー目線の企画立案に役立てています。また、全職員向けの本格導入にあたって、生成AIを使ったことのない職員に業務での利用をイメージしてもらうため、プロンプト事例集を作成。条例改正やルール整備によって個人情報に関する市民の不安を解消しながら、組織全体での本格活用を進めています。
自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<別冊付録>先行団体における生成AI導入事例集 | 総務省
生成AIによる市役所の業務効率化 - プロンプト事例集 - | 神戸市
働く人の力を引き出す生成AI活用を進めよう!
生成AIの活用は、業務の効率化だけでなく、社員それぞれの能力を引き出し、人ならではの創造的な仕事に従事できるという、やりがいの創出にもつながります。人がもっと活き活きと働ける企業になるために、今回ご紹介したポイントや企業事例を参考に、ガイドライン作りや生成AIの利用環境整備を進めてみてはいかがでしょうか。AIを味方につければ、人材育成と組織の成長を実現できるはずです。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
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