コーピングとは?働き方を変えるストレスマネジメントを解説
2023年09月15日 07:00
この記事に書いてあること
私生活や仕事が原因のストレスに悩む人が多い今、注目されているのが「コーピング」です。企業においてもコーピングは、社員のメンタルヘルス改善に有効な取り組みとして重視されています。そこでこのコラムでは、コーピングという言葉の意味やメリット、さらに、企業内でできるコーピングの具体策について解説します。
コーピングとは?
コーピングとは、「対処する」「対応する」という意味の英語「cope」に由来する言葉で、ストレスに対処する方法のこと。「ストレスコーピング」とも表現されます。
そもそもストレスとは、物体に圧力をかけることで生じるゆがみを意味します。オーストリアの生理学者のハンス・セリエがストレスを初めて心身の問題として取り上げ、人にかかる負担であるストレッサーの影響で、体に「ストレス反応」が起こると明らかにしました。
ストレッサーとは、寒さ、暑さや騒音などの「物理的ストレッサー」や、有害物質などの「化学的ストレッサー」、そして怒り、緊張、不安などの「心理的ストレッサー」の3つ。これらのストレッサーに対処するための方法が、コーピングです。
ビジネスの世界でも、コーピングは重視されています。仕事をする上では、過剰な業務量や労働時間、対人関係、ハラスメントといった、さまざまなストレスの要因があります。こうしたストレッサーの影響を受け続けた結果、働く人が心身のバランスを崩し、仕事に支障をきたしたり、休職や退職を余儀なくされたりといったケースも増えています。企業にとっても、従業員が仕事上のストレスをコントロールし、高いパフォーマンスで働き続けるための方法として、コーピングが注目されているのです。
コーピングのふたつの方法
では、コーピングは具体的にどのように行えばよいのでしょうか。コーピングには、主に次のふたつの方法があります。
問題焦点型コーピング
問題焦点型コーピングとは、ストレスを引き起こす問題を解決することでストレスに対処する方法です。ストレスの要因を取り除くという考え方で行うのが、問題焦点型コーピングです。
たとえば、同僚との人間関係にストレスを感じている場合は、部署を異動してその人と距離を置くという方法があります。他にも過剰な仕事量がストレスにつながっていれば、人員を増やしてその人の仕事量を減らす、仕事の締め切りが間に合わないという不安がストレッサーになっている場合は、締め切りがギリギリにならないように業務効率を改善することで不安を解消する、などが問題焦点型コーピングに当たります。
情動焦点型コーピング
ストレスを引き起こす要因ではなく、自分自身のとらえ方や感情に着目してストレスに対処する方法が、情動焦点型コーピングです。物事の受け取り方や感じ方を変えることで、ストレスを軽減します。
たとえば、「今日は仕事がこれしか進まなかった」と自分を責めるのではなく、「大変な中、これだけ進められた」と前向きに考えたり、自分の気持ちを親しい人に聞いてもらったり、気晴らしに好きなことをしてみたりするのも情動焦点型コーピングです。
企業でコーピングを取り入れるメリット
では、企業での人財育成やマネジメントの考え方にコーピングを取り入れることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
社員の心身の健康を増進できる
企業が人財マネジメントにコーピングを取り入れ、働く上でのストレスに対処することで、従業員の心身の健康を増進できます。長く、安心して働ける職場を作ることで、社員の会社へのエンゲージメントや従業員満足度が上がり、人財が定着するというメリットがあります。
また、従業員のメンタルヘルスをケアする取り組みを進めることで、働きやすい企業として求職者からのイメージも向上。優秀な応募者が集まりやすいという、採用面での効果も期待できます。
休職や離職を防げる
コーピングの考え方を採用することで、社員のメンタルの不調による欠席や遅刻、また休職や離職を防ぐことができます。
業務の負荷や人間関係、ハラスメントなどのストレッサーは、従業員のうつ病などの不調を引き起こします。体調不良によって、従業員が長い間出社ができないことや、退職をせざるを得ないケースもありえます。コーピングの取り組みでストレスの要因に早めに対処することで、これらの事態を防げます。
モチベーションと生産性の向上
社員のメンタルヘルスをケアすることで、人財の仕事への意欲やパフォーマンスを高めることができるのも、コーピングを取り入れるメリットです。
ストレス反応が起きている状態では、社員の急な遅刻や欠席、仕事上のミスも起こりやすくなります。対して、ストレスを軽減する取り組みが進んでいる環境では、社員が自分の能力を発揮し、意欲的に働くことができます。一人ひとりの生産性の向上が、チームや会社全体の業績改善にもつながるでしょう。
働き方を変えるコーピングの具体策は?
次に、企業内で有効なコーピングやストレスマネジメントの取り組みの具体策をご紹介します。
コーピングリストの作成と実践を推進
コーピングを進める上では、まず、メンタルヘルスやコーピングの考え方に関する研修を実施し、社員がストレスへの向き合い方を学ぶ機会を作ることが必要です。メンタルの不調を感じた時の産業医やカウンセラーへの相談方法や、管理職が部下のメンタルをケアする上でのチェックポイントも伝えましょう。
コーピングに関する研修では、コーピングリストの作り方や実践方法を学ぶことも重要です。コーピングリストとは、ストレスを軽減するための行動や方法をリストアップしたもの。「コーヒーを飲む」「オフィスの外に出る」「深呼吸する」「有給を1日取る」など、自分に合ったものをなるべく多く挙げ、リスト化します。リストは、アプリなどのツールで作ることも可能です。ストレスを感じた時にすぐに確認して実践できるよう、準備しておきましょう。
ストレスチェック制度の導入
ストレスマネジメントを成功させるためには、ストレスチェック制度の導入も有効です。ストレスチェック制度とは、ストレスチェックシートで社員のストレスの度合いを把握する仕組みのこと。社員自身のストレスに関する自覚をうながすとともに、企業の労働環境の改善によってメンタル不調を防ぐ目的で作られました。法律で、50人以上の労働者が働く企業での実施が義務化されています。
ストレスチェックを行うことで、企業は社員の不調の兆しに早く気づくことができます。ストレスが多い社員に対してカウンセリングやコーピングを実施して、休職等につながる不調を防ぐことが可能です。
メンター制度で若手社員をフォロー
メンター制度の導入で、若手社員を精神的にフォローする仕組みを作ることも重要です。
メンター制度とは、若手社員と、年齢の近い先輩社員のメンターがペアとなり、若手社員がメンターに仕事や私生活の困りごとを相談できる制度。上司には言いづらいことも気軽に相談できるのがメンター制度の特長です。新入社員や、転職してきた若手社員が抱える悩みやストレスを軽減することができます。
1on1でストレスに対処
社員のメンタル不調を防ぐフォロー制度のひとつが、上司と部下が定期的に面談をする機会を設ける1on1です。1対1の密なコミュニケーションを通じて、上司に仕事や生活上の悩みを相談できます。上司への信頼感や職場に対する安心感を育むことで、ストレスに対処できます。
上司の立場としては、定期的な対話を通じて、部下の心の不調や変化にいち早く気づくことができます。
快適に働ける職場環境の整備
職場環境を改善し、メンタルの不調を引き起こす外的要因である「物理的ストレッサー」を防ぐことも有効な取り組みです。
たとえば、社員が常に快適な温度下で働けるようにオフィスの空調を整備することも、ストレスマネジメントのひとつ。掃除の行き届いた清潔なオフィスや、さまざまな用途に対応できる会議室、ウェブ会議、電話ができるブースを設置するなどの取り組みも、働く人の快適性を高めます。設備面の改善によって、ストレスが発生しづらい職場環境を作りましょう。
ストレスマネジメントが働き方を変える!
企業でのコーピングや社員のストレス対策は、働き方改革推進の面でも、採用や人財の観点からも大きなメリットを生みます。まずは、コーピングの概念や大切さを知り、ストレスマネジメントに本格的に取り組んでみてはいかがでしょうか?
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記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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