中小企業に必要なSDGsとCSRの関係|メリットや事例をわかりやすく解説
2023年01月24日 07:00
この記事に書いてあること
社会課題に対する消費者の意識が高まるなかで企業が知っておかなければならない用語が、SDGsです。企業が社会責任を果たすCSRに加えて、ステークホルダーの評価や事業拡大の機会にもつながるSDGsは、中小企業にとって重要視されつつあります。
そこでこの記事では、SDGsとCSRの違いやサステナビリティに関連する用語、中小企業がSDGsに注力すべき理由を、取り組み事例も含めてご紹介します。
※2021年2月に公開した記事を更新しました
SDGsとは|企業が取り組むメリットと注意点
まず、SDGsとCSRの違いについて確認する前に、それぞれの定義から見ていきましょう。
SDGsとは
はじめに、SDGsの定義とSDGsが浸透した背景を解説します。
SDGsの定義
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、「エスディージーズ」と読みます。
SDGs は、2015年に国連サミットで採択された、2030年までの達成を目指して取り組む国際目標のことを指します。持続可能な世界を実現するための17つの「ゴール」と、それらを達成するための具体的な取り組みをまとめた169の「ターゲット」が設定されています。
「ゴール」と「ターゲットについては」こちらでもご紹介しています。
いまさら聞けないSDGs。働き方改革との関係とは?│働き方改革ラボ
たとえば、ひとつ目のゴールに挙げられている「貧困をなくそう」におけるターゲットは「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」などが挙げられます。
SDGsが浸透した背景
SDGsが浸透した背景として、ミレニアム開発目標(MDSs)の存在が挙げられます。 MDGsは、2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された「国連ミレニアム宣言」からまとめられた目標です。
MDGsでは、極度の貧困と飢餓への対策、致命的な病気予防、すべての子どもへの初等教育普及など2015年までに達成すべき8つの目標を定めています。しかし、2015年を迎えても達成できていないもの、課題が残るものがありました。それらをまとめ、今度は2030年までに達成すべき目標としてまとめられたのがSDGsなのです。つまり、SDGsはMDGsの後継となる目標だといえます。
企業がSDGsに取り組むメリットと注意点
次に、企業がSDGsに取り組むメリットと注意点をご紹介します。
SDGsに取り組む3つのメリット
まず、SDGsに取り組む3つのメリットから見ていきましょう。
1.ステークホルダーとの関係性が向上する
ひとつ目のメリットとして、企業がSDGsに取り組むことで株主や顧客といったステークホルダーとの関係性が向上することが挙げられます。
国境を越えた取引も盛んになっているなか、世界に共通する目標であるSDGsに取り組むことはステークホルダーにとって好印象となるでしょう。SDGsに取り組むことは企業のブランディングにもつながります。
2. 優秀な人材の確保につながる
ふたつ目のメリットとして、SDGsに取り組むことで優秀な人材の確保につながることが挙げられます。
先述したように、SDGsに取り組むことは世界水準の目標に取り組む企業としてのブランディングにつながり、世間からのイメージも良くなります。その結果、同じように視座の高い、優秀な人材が集まりやすくなるのです。
3. ビジネスにおける資金調達が有利に進む
最後のメリットとして、ビジネスにおける資金調達が有利に進むことが挙げられます。
近年では、ただ財務情報に限られず、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)にも考慮した「ESG投資」をする投資家が増えています。SDGsに取り組むことは、世界の課題として挙げられている環境問題や社会問題にも向き合っているアピールにもつながり、そのビジョンに共感した投資家からの投資や、資金調達が有利に進む可能性が考えられるのです。
SDGsに取り組む際の2つの注意点
SDGsに取り組むことで得られるメリットもあれば、注意点もあります。この章では、これからSDGsに取り組んでいきたいと考えている企業に向けて注意点を2つ解説します。
1. 経営理念とのすり合わせが必要
ひとつ目の注意点として、経営理念とのすり合わせが必要なことが挙げられます。
SDGsに取り組んでいるように見せかけて実態が伴っていない場合は社会の信用喪失にもつながります。そのため、経営理念としっかりとすり合わせることが大切です。
社会課題を認識すること、自社の取り組みが他の社会課題を引き起こしていないかを振り返り続けることなど、できる取り組みはたくさんあります。ただSDGsの情報発信をし続けるだけでなく、実態が伴っているか考えながら取り組みを続けましょう。
2. 評価軸がわかりづらい
次に、SDGsの取り組みに関する評価軸がわかりづらいことが挙げられます。SDGsには細かいターゲットが設定されていますが、基準が世界的なもののため、企業としての評価軸がわかりづらいのです。
そのため、SDGsに取り組む際には自社基準の評価軸を作ることをおすすめします。また、すべての項目を満たそうとするのではなく、ジェンダー平等や福利厚生などできる範囲でSDGsに取り組み、自社基準の評価軸で達成することを試みるのもいいでしょう。
CSRの定義|企業が取り組むメリットと注意点
続いて、CSRの定義や、企業がCSRに取り組むメリットと注意点を見ていきましょう。
CSRとは
まず、CSRの定義と、CSRが浸透した背景です。
CSRの定義
CSRとは企業の社会的責任のことで、企業が消費者や株主などから信頼を得るための社会貢献活動を意味します。わかりやすくまとめると、よりよい社会を作ること、社会からの信頼を得ることで企業の成長や競争力強化を目指す取り組みのことをCSRといいます。
CSRの具体例として、消費者や顧客に対する誠実な対応や法令遵守、ボランティア活動などが挙げられます。CSRと聞くとボランティア活動を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、あくまで企業利益がもっとも優先すべき事項であることに留意しましょう。
CSRが浸透した背景
昨今では、偽装表示をはじめ、企業が利益を追求するがあまり起こってしまう不祥事が相次いでおり、消費者が企業を見る目も厳しくなっています。企業はただ儲けようとするだけでなく、環境問題を含めた社会的責任を考えなければならなくなっているところに、CSRの考え方が浸透したのです。
企業がCSRに取り組む2つのメリットと注意点
続いて、企業がCSRに取り組むメリットと注意点をご紹介します。
CSRに取り組む2つのメリット
それでは、CSRに取り組む2つのメリットから見ていきましょう。
1. 企業のブランディングにつながる
はじめに、企業のブランディングにつながることが挙げられます。
先述したように、CSRは企業の社会的責任のため、企業は利益だけを追求せず、顧客や株主に真摯に対応することが求められます。偽造表示や不祥事を起こさぬように取り組んでいるとアピールすることで企業のブランディングにつながり、社会的な信用も上がります。
2. 従業員の満足度が上がる
次に、従業員の満足度の向上が挙げられます。
不祥事が起こってしまうと、消費者の企業に対する視線が厳しくなります。そうなると従業員にも負荷がかかり、モチベーションが低下する可能性が考えられます。
それは一方で、企業が社会的に貢献していることが明らかになると従業員の満足度が向上するとも言い換えられます。CSRは、従業員のモチベーションや満足度向上、職場の定着率にもつながる、重要な取り組みなのです。
CSRに取り組む際の2つの注意点
次に、CSRに取り組む際に気をつけたい2つの注意点を見ていきましょう。
1. コストがかかる
まず、CSRに取り組むにあたってコストがかかることが挙げられます。企業利益を第一優先しつつ、ボランティア活動など利益に関係しない分野に取り組むため、利益が見込めないなかで出費をしなければならなくなることも考えられるでしょう。
そのため、設立間もない場合や予算に余裕がない場合は、まずは利益を出すこと、消費者や顧客に真摯に向き合うことを優先することをおすすめします。ゆとりが出てきたらCSRに力を入れるなど、会社の規模やフェーズによってできることをしましょう。
2. CSRに取り組む人材不足が課題となる
次に、CSRに取り組むにあたって人材不足が課題となること挙げられます。
先述したように、CSRに取り組むには予算や人材にゆとりが必要になります。そもそも人材のリソースを割けないにもかかわらず無理をしてCSRに取り組むと、本業が疎かになってしまい、企業利益が落ちることも考えられます。まずはできる範囲からCSRに取り組む、企業の利益を優先すること重要視しましょう。
SDGsとCSRの違い
では、企業の社会貢献活動であるCSRとSDGsは何が違うのでしょうか。
CSRは企業が経済活動をするにあたっての社会的責任なのに対して、SDGsは自社のビジネスの延長線上で社会課題の解決をすることを意味します。SDGsは持続可能な世界を目指すためサステナビリティ(持続可能性)に関係した活動といえますが、CSRはそうでないことに注意しましょう。
企業が大切にしたいサステナビリティ(持続可能性)の考え方
SDGsをはじめ、サステナビリティ(持続可能性)に関する意識は企業にも求められています。そこでこの章では、企業が大切にしたいサステナビリティの概念や指標をご紹介します。
サステナビリティ(持続可能性)に関する3つの概念
まず、サステナビリティを考えたいときに知っておきたい概念である「Environment(環境)」「Economy(経済)」「Equity(公平性)」から見ていきましょう。
Environment(環境)
Environment(環境)は、私たちが暮らしている地球のサステナビリティに関する概念です。地球を後世に残していくために、気候変動や森林破壊などと向き合うことが挙げられます。経済活動によって環境破壊に進んでいる現状と向き合い、環境保護に努めることが求められます。
Economy(経済)
Economy(経済)は、私たちの生活とは切っても切り離せない経済のサステナビリティに関する概念です。企業はただ利益を求めるのではなく、持続可能性のある経済の追求が必要になります。具体的な取り組みとして、企業側は環境問題や社会課題に配慮し、投資家はそういった企業へ積極的な投資をする「サステナブル投資」などが挙げられます。
Equity(公平性)
Equity(公平性)は、貧困問題やジェンダーなど、人類の公平性のサステナビリティに関する概念です。日本においても経済格差は問題となっており、それによって経済成長が停滞することも考えられます。倫理的にも、経済の観点からも見過ごせない問題です。
サステナビリティを測る2つの指標
サステナビリティに関しては国際的な指標が明らかにされています。
GRIスタンダード
GRIスタンダードは、国連環境計画(UNEP)の公認団体であるGRI作成のガイドラインで発表された指標です。GRIスタンダードは「共通」と「項目別」の2つから構成されており、企業がサステナビリティ報告書を作成する際に参考にすることで企業の取り組みが与えた影響を知ることができます。
DJSI
DJSIは、1999年にアメリカとスイスが共同で開発した、投資家向けの指標です。先述したESG投資の際にも活用され、サステナビリティ面を含めて優れた企業が選定されます。DJSIは今後より重要視される指標といえるでしょう。
おさえておきたいサステナビリティに関する用語
SDGsとCSRだけでなく、サステナビリティに関する用語は、ほかにもあります。この章では、おさえておきたいサステナビリティに関する用語と、それらの関係性を解説していきます。
CSVとは
CSV(Creating Shared Value)は、「共有価値の創造」を意味します。これはわかりやすくいうと、本業を通じて社会問題を解決する仕組みをいいます。
CSVは、2006年頃、すでに概念として浸透されつつあったCSRが本来の業務で出ている社会的負荷を払拭するための取り組みであることへの非難から生まれました。企業は、自社が引き起こしている社会問題に真摯に向き合いながら、経済的価値はもちろんのこと、社会的価値を創造することが必要だとしてCSVが提唱されたのです。
ESGとは
ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた言葉です。
ESGは、2016年に国際連合が提唱した「責任投資原則(PRI)」において新たに紹介された観点です。ただ企業の経済面だけでなく環境や社会へ配慮されているかを意識して投資するESG投資も広まっており、今後さらに重要となる用語だといえます。
SDGs・CSR・CSV・ESGの関係性
サステナビリティに関する用語は、意味が混同しやすいため、区別をつけておくことが必要です。そこで、それぞれの特徴を表にまとめましたので、ご参照ください。
企業は社会に対して社会的責任(CSR)を果たし、社会とともに共有価値の創造(CSV)を目指します。具体的には、社会課題を解決できる製品の製造、出た利益を企業内で完結させず、地域などに貢献することが挙げられます。
また投資家は、社会の一員として企業を見て、環境面(E)・社会面(S)・統治面(G)において貢献できていると考える企業に投資をします。これをESG投資といいます。そして、企業は投資家の想いを真摯に受け止め、引き続きESGを意識した対応をとっていくことで、SDGsの実現に近づくのです。
サステナビリティ・レポートとは
サステナビリティレポートとは、企業が持続可能な社会の実現に向けて、どのような取り組みをしているかまとめた報告書のことを指します。これらは株主、消費者、取引先などに情報開示することを前提につくられるものです。
サステナビリティレポートを公開することで、企業が社会的にどのように貢献しているかを可視化できます。SDGsやCSRに取り組んでいることのアピールをしたい企業は作成するといいでしょう。
中小企業によるSDGsを推進するための取り組み事例
では実際に、中小企業ではどのような活動が行われているのでしょうか。具体的なSDGsの取り組み事例をご紹介します。
株式会社茨城製作所
風力発電、鉱山機械、エレベーターなどに使用される回転電機の製造・修理などの事業を行う株式会社茨城製作所は、社長自身がインドでの電気・水不足の不便さを肌身で感じた経験や東日本大震災をきっかけに、社会課題を解決するビジネスの推進を決定しました。
風力発電機用スリップリングや、自然エネルギーを生かした軽水力発電機など、地球環境を配慮した製品作りを展開。また、ネパールの電力不足・無電化地帯での電気の提供など、海外での学習環境を整える仕組みを提供しています。
株式会社SAMURAI TRADING
埼玉県の食品会社である株式会社SAMURAI TRADINGは、デザートの製造段階で排出する卵殻に注目。卵殻を60%使用した環境負担のないバイオマスプラスチックを製造するほか、卵殻10~50%をパルプ・填料の代替とした紙製品「CaMISHELL」を開発しました。
また、SDGs普及を目指す「エコ玉プロジェクト」を立ち上げ、初年度に39社の協力を得るなどの活動を展開。SDGsに積極的に取り組む企業からの製品採用が増えたほか、「渋沢栄一ビジネス大賞」を2年連続で受賞するなど、活動が評価されています。
株式会社山翠舎
長野県で建築事業を行う株式会社山翠舎は、地元で社会問題化していた「空き家の古民家」に注目。空き家のリノベーションのほか、古民家の古木を活用した店舗のデザイン・施工や、古木を使った家具の製造販売で地域課題の解決に貢献しています。
古木を活用した設計施工は、長野県だけでなく首都圏からの受注も増加。古木を使った家具が大手コーヒーチェーンや銀座に完成したホテルでも導入されるなど、「古木」のブランディングに成功しました。職人の若返りが進み、20~30代が8割を占めるという人材面の成果もあがっています。
まとめ
社会課題を解決するビジネスを成功につなげる過程で、社内の課題解決の力が高まります。課題解決力は、SDGsの取り組みだけでなく別の業務にも発揮され、自社に成長をもたらすでしょう。
新規事業や大きなビジネスではなくても、名刺や印刷物の紙をFSC森林認証紙に切り替えたり、梱包材を削減したりと、身近なところからSDGsの考え方を取り入れることも可能です。できるところから1歩ずつ、SDGsに取り組んでみてはいかがでしょうか?
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
「働き方改革って、こうだったんだ!」「こんな働き方、いいかも!」
そんなきっかけ『!』になるコンテンツを提供してまいります。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。
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