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カスタマーハラスメント予防策と事例別の対応法を解説

From: 働き方改革ラボ

2025年08月08日 07:00

この記事に書いてあること

企業や、働く人々を悩ませる問題のひとつが、カスタマーハラスメントです。事業活動や、従業員の心身にも影響を与えるカスタマーハラスメントに、企業はどう対処すればよいのでしょうか。そこで今回は、リスクを減らすための予防策と、発生時の対応方法をカスタマーハラスメントのパターン別に解説。現場で働く管理者や、顧客に日々接する従業員にとって役立つ情報をお伝えします。

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カスタマーハラスメントとは?

カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)とは、顧客からの迷惑行為のこと。具体的には、顧客や、これからサービスを利用する見込みのある人からのクレームや言動のうち、その要求を実現することが、社会通念上難しく、さらに、従業員の働く環境を害するものを指します。

クレームの中でも、商品やサービスの改善を求める正当なクレームは、カスハラではありません。企業側に過失が認められない場合のクレームや、サービスの内容とは関係ない部分でのクレーム、過剰な要求や身体的・精神的な攻撃などの悪質な行為が、カスハラにあたります。

カスタマーハラスメントの発生状況

カスハラは、年々、増加する傾向にあります。厚生労働省が2023年に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間に「顧客等からの著しい迷惑行為」の相談があったと回答した企業は27.9%にのぼり、2020年の19.5%から大きく増加しています。

さらに、ハラスメントの相談があった企業のうち、86.8%が「カスタマーハラスメントがあった」と回答。カスハラが、企業を悩ませる深刻な問題となっていることがうかがえます。



一方で、労働者個人の意識に関するアンケートでも、同様の傾向が見られます。2023年の同調査では、10.8%の労働者が過去3年間にカスハラを経験したと回答。特に、接客頻度の高い業種で経験している人が高く、以下の業種で次のような割合に上っています。

  • 生活関連サービス業・娯楽業:16.6
  • 卸売業・小売業:16.0
  • 宿泊業・飲食サービス業:16.0

また、他のハラスメントの発生状況との比較においても、カスハラの増加傾向が際立っています。パワハラやセクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについては、件数の増加よりも、減少を実感する企業が多い一方で、カスハラについては、以下のとおり「増加している」と答えた企業が多いという結果が出ています。

  • 「件数が増加している」 と答えた企業:22.6
  • 「件数が減少している」 と答えた企業:12.6

これらのデータからも、増加を続けるカスハラの対応に企業が苦慮しているという実態が見て取れます。

参考:職場のハラスメントに関する実態調査について|厚生労働省

カスタマーハラスメントが企業に与える影響

件数の増加を実感している企業も多いカスハラは、企業や働く人たちに、具体的にどのような影響を与えるのでしょうか。

従業員のパフォーマンスや健康状態の低下

理不尽な言いがかりや暴力などのカスハラ行為は、日々、現場で顧客と接している従業員に、精神的、身体的なダメージを与えます。暴力によるケガや、心への影響による体調不良につながり、療養や休職を余儀なくされます。従業員の仕事への恐怖心やモチベーションの低下も、深刻な問題です。カスハラによって従業員が離職する、または、健康に安心して働ける環境が損なわれるというリスクがあります。

経済的・時間的損失

企業側に経済的、時間的な損失を与えるという点も、カスハラの大きな問題です。無理な要望による値下げや代替品のための金銭面の損失や、カスハラ対応による通常業務の停止などの経済的損失が発生します。また、現場でのクレーム対応や執拗な電話への対応、弁護士への相談に手間が割かれ、従業員の業務時間が削られます。カスハラを理由に離職した従業員を補填するための採用・教育コストも、軽視できないリスクです。

ブランドイメージ低下や顧客への影響

店舗でのカスハラ行為や企業への嫌がらせが、ブランドイメージの低下につながるというリスクもあります。企業側に過失がない場合も、トラブルや混乱の発生は、企業の印象に影響を与えます。

店舗に来店する他の顧客や、通常の問い合わせ電話をしたい顧客が、カスハラ対応による業務遅滞を理由にサービスを十分に受けられなくなる可能性もあります。店舗などのサービス利用環境が悪化し、顧客満足度の低下につながることにも、注意が必要です。

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企業がとるべきカスタマーハラスメント予防策

企業や働く人だけでなく、他の顧客にも影響を与えかねないカスハラを防ぐために、企業が取り組むべき防止策を紹介します。

カスタマーハラスメント対策の基本方針の策定と周知

まずは、カスハラに厳しく対処し、カスハラをなくすという企業の方針を掲げましょう。方針には以下のような内容を盛り込み、経営トップが自ら発信します。企業が、従業員を尊重し、カスハラから守るという姿勢を明確にすることが、職場の安心感につながります。

  • 職場におけるカスハラを許容しない
  • 従業員の人権を尊重し、カスハラから従業員を守る
  • カスハラに該当する内容
  • 常識を超える顧客の言動は必ず周囲に相談する

被害者のための相談窓口を設置

カスハラが発生した際に、被害を受けた従業員が遠慮することなく相談できる体制を確立します。上司や現場監督者などの発生時の相談対応者の決定、または相談窓口の設置を行い、従業員に周知しましょう。

相談対応がスムーズに行われるよう、対応の担当者には、一時対応の方法や相談者へのフォロー、関係部署への共有等について、研修などで定期的に教育を行うことも重要です。なお、窓口は必ずしもカスハラ向けに特別に用意する必要はなく、ハラスメント相談窓口などでの対応も可能です。相談内容について対処できる、労務部門を含む社内での連携体制を確立しましょう。

対応手順・マニュアルの作成

カスハラが疑われる事態が起きた場合の対応マニュアルを整備します。マニュアルには、カスハラの判断基準や、行為のパターン、一次対応の注意点、現場監督者への連絡方法といった基本ルールのほか、行為別の有効な対策について記載します。カスハラの被害に遭った従業員の配慮措置や、警察や法務局、相談センターなど、問題発生時の外部との連携に関するルールも盛り込みましょう。

カスハラに発展させないクレーム初期対応

現場や電話でのクレームをカスハラに発展させないための対処法も準備しましょう。顧客と従業員が1対1という状況はトラブルになりやすいため、初期対応は可能な限り複数名で行うことが重要です。

初期対応で重要なのは、顧客の主張を冷静に傾聴すること。相手を落ち着かせるためにも、話を遮らず、じっくり聞くことが大切です。事態が正確に把握できない段階では、「不快感を抱かせたこと」など限定的な事象について、顧客に謝罪します。次に、顧客の主張する内容や状況を正確に把握して、顧客と連絡が取れるよう、相手の名前や連絡先などの情報を確認。現場監督者や相談対応者に情報を共有し、二次的な対処を行いましょう。

カスハラ対策に関する研修

日々、現場で働く従業員がカスハラに安全に対応できるよう、定期的な教育を行いましょう。研修などの機会を通じて、カスハラに対する方針や、カスハラの判断基準、カスハラ発生時の対応ステップ、ケース別の対処法などについて、アルバイト社員も含む従業員全員に周知します。経営層や相談対応者、店舗の監督者に対しても、従業員を守るという基本方針と、管理者として行うべきカスハラ対策について、定期的に学ぶ機会を提供しましょう。

発生後は再発防止策を検討

カスハラが起きてしまった際の、再発防止の取り組みも重要です。従業員の一次対応がカスハラにつながったケースなど、自社内で取り除けるカスハラの要因に対処することで、再発を減らすことができます。たとえば、情報共有のミスが顧客の逆上を招いた事案があった場合はそれをふまえて引継ぎ方法を見直したり、接客態度の反省点をマニュアルに反映したりといった改善が可能です。トラブル事例やカスハラにつながった原因をガイドラインとしてまとめて周知する再発防止策も有効です。

カスタマーハラスメント行為の具体例と対応策

マニュアルの整備や、適切な一次対応をしていても、顧客側の要因からカスハラが起きてしまうことはあり得ます。そうした場合には、管理者や従業員は適切な対応をとる必要があります。カスハラのパターン別の対策をお伝えします。

長時間にわたる従業員の拘束

店舗などで、顧客が長時間にわたって店員に対応を求め続けたり、その場に居座ったり、長時間電話を続けたりする「時間拘束型」のカスハラが発生しています。こうしたケースには、対応できない理由を明確に告げた上で、膠着状態に至ってから一定の時間を超えた場合に、退去を願う、電話を切るなどの対応を行いましょう。複数回電話がかかってくる場合は、通話可能な時間を伝えて、それ以上に長い通話はしないというルールで対応するのも有効です。

繰り返す理不尽な要求

電話窓口に何度も同じ問い合わせをする、繰り返し面会を求めてくるなど、理不尽な要求を繰り返す行為に対しては、電話番号等で顧客をリスト化し、窓口を一本化しましょう。電話の場合は、通話内容を記録して、今後、同様の問い合わせは止めてほしいという旨を毅然と伝えるという対応も有効です。それでも要求を繰り返す場合は、状況に応じて、弁護士や警察への相談も検討しましょう。

暴言・暴力や威嚇を行う

顧客が従業員に対して大声を張り上げる、または人格否定や名誉を棄損する発言、侮辱的な発言も、カスハラのひとつです。暴言は録音を行い、大声の停止や退去を求めましょう。

殴る、蹴る、わざとぶつかってくるなどの暴力行為は、複数人で対応し、従業員の安全確保を優先した上で、警備員と連携して、直ちに警察に通報します。身の危険を感じさせるような脅迫的な発言や、「SNSで不都合な拡散をする」などの脅しに対しても、安全を確保しながら、弁護士や警察への相談を含めた毅然とした対応を行いましょう。

インターネットでの誹謗中傷

インターネットやSNSで、名誉棄損につながる投稿や、従業員のプライバシーを侵害する情報を掲載することも、重大なカスハラ行為です。こうした被害が発生した場合は、まずは掲載先のホームページの運営者に削除を求めます。投稿者に損害賠償等を求めたい場合は、弁護士に相談して、発信者情報の開示請求を行いましょう。インターネット上のトラブルの対処法については、法務局や違法・有害情報相談センター、誹謗中傷ホットライン(セーファーインターネット協会)にも相談ができます。

参考:SIA - 一般社団法人セーファーインターネット協会

従業員へのセクシャルハラスメント

従業員につきまとう、身体を触る、食事に誘う、性的にからかう言葉を投げかけるなどのセクハラに対しても厳しく対処しましょう。性的な言動は、録音や録画による証拠の確保を行い、被害者と加害者に事実を確認して、加害者に警告を行います。ストーカー行為や待ち伏せを行う加害者には、施設への出入り禁止を命じて、それでも繰り返す場合は、弁護士への相談や、警察への通報を行いましょう。

万全なカスタマーハラスメント対策で従業員が安心して働ける職場を作ろう

日々、顧客と接している従業員の心理的安全性の確保や、心身の健康のためにも、企業のカスタマーハラスメント対策は欠かせません。顧客からのクレームや電話対応マニュアルはあるものの、従業員を守るという視点でのルール作りは、まだ進んでいないという企業も多いのではないでしょうか。

カスハラの判断基準を周知する、「複数人での対応」「監督者とすぐに連携」といった、従業員の安全を確保する一次対応ルールを作るなど、今すぐ着手できるカスハラ対策もあります。従業員を守り、安心して働ける職場を作るため、自社にできる取り組みから始めてみてはいかがでしょうか?

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記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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