「雇用される能力」エンプロイアビリティを解説

From: 働き方改革ラボ

2024年01月23日 07:00

この記事に書いてあること

雇用の観点から人財の能力を測る概念である「エンプロイアビリティ」。人事業界以外の企業がエンプロイアビリティを理解するメリットについては、知らない方が多いのではないでしょうか。そこでこのコラムでは、今、エンプロイアビリティが重視されている理由や、その具体的なスキルについて解説。さらに、企業が従業員のエンプロイアビリティを高める方法もお伝えします。

エンプロイアビリティとは

エンプロイアビリティとは、「雇用する(Employ)」と「能力(Ability)」を組み合わせた言葉で、働く人が雇用される能力のことです。同じ会社に雇用され続ける能力や、異動や転職ができる能力も、エンプロイアビリティに含まれます。

厚生労働省が発表した研究報告書によると、エンプロイアビリティという概念は、1980年代のアメリカでの労使間の対立を経て、1990年代から注目され始めました。経営者が社員に対して、自社での永続的な雇用を保障しない代わりに、他社でも通用する技術や能力を身に付ける訓練機会を提供したことから、現在では多くのアメリカ企業が、エンプロイアビリティ形成を従業員教育の目標としています。

エンプロイアビリティに似た言葉に「エンプロイメンタビリティ」という概念があります。これは、企業の雇用能力を意味します。求職者が入社したいと思える魅力ある会社であるか、従業員が継続して働き続けたいと思える環境であるかなどを示す言葉のため、エンプロイアビリティとは意味が異なります。

エンプロイアビリティが重視される理由

エンプロイアビリティは日本においても、人財の能力を測る指標として、企業内での人事戦略や人財業界で注目され始めました。

近年、産業構造の変化などによって終身雇用の前提が崩れ、働き方の多様化も進行。働く人が「雇用されやすさ」を強く意識するようになりました。また企業内でも、ビジネスのグローバル化やIT化が進み、専門的な仕事だけでなく、多様な場所で役立つ問題解決能力や創造的能力の重要度が向上。社員がエンプロイアビリティを身に付けることは、社員の視野の拡大、生産性向上などのメリットがもたらされることから、企業内でも注目が高まっています。

また、エンプロイアビリティは、雇用し続けたい人財を目指すという考え方のため、人事評価制度にも応用が可能です。配置転換を検討する際の判断基準としても、企業内で重視されています。

エンプロイアビリティの3つの要素

では、「雇用される力」とは具体的に、どのようなスキルを指すのでしょうか。エンプロイアビリティを決める主な3つの要素は、以下のとおりです。

知能・技能

ひとつめのスキルは、業務を進める上で必要となる知識や技能です。具体的には、パソコンのスキルやデータ処理などの事務能力や、マーケティングの専門知識やプログラミングスキル、経理の知識・経験などを指します。また、業務に関連した資格も、知識・技能に含まれます。

思考特性・行動特性

業務に直接関わるスキルだけでなく、個人が持っている特性もエンプロイアビリティのひとつです。協調性や積極性、コミュニケーション能力、計画実行力など、仕事に関連する個人の態度が、組織で働く上で重視されます。

性格や価値観などのパーソナリティ

3つめの要素は、動機や人柄、性格、信念、価値観など、行動として目には見えない個人のパーソナリティです。これは客観的に評価することが難しく、また訓練によって容易に変えられるものではないため、評価や育成の要素としては除外して考えられるケースもあります。

社員のエンプロイアビリティを高めるステップ

従業員にとっても組織にとっても重要なエンプロイアビリティ。では、企業内で働く人のエンプロイアビリティを高めるためには、どのようなステップを踏めば良いのでしょうか。

キャリアプランと理想の職業像を定める

エンプロイアビリティ向上のために、まずは個人が、自分の目指す職業像や将来のキャリアプランを明確にすることが大切です。これまでの仕事の振り返りや上司や人事担当との面談を通して、これから会社内でどのように活躍していきたいのかを定めましょう。社内での目標や将来なりたい姿をイメージすることで、企業内で価値ある人財になるというモチベーションが向上します。

自分の現状と求められるスキルを確認

職業像を定めたら、エンプロイアビリティに関する自分の現状を確認します。組織で働く人財としての今の力や自分の強みを知ることが、スキルアップへの具体的な行動につながります。

厚生労働省は、求職者が企業で雇用されて活躍するための能力を洗い出すことを目的とした「エンプロイアビリティチェックシート」を公開しています。エンプロイアビリティチェックシートでは、責任感や向上心などの職業人としての意識や、考える力やチームで働く力などの社会人基礎力のチェックが可能です。こうしたツールも活用して、自分に必要なスキルを把握しましょう。

エンプロイアビリティチェックシート│厚生労働省

社内外の学習でスキルを習得

身に付けるべきスキルを確認したら、エンプロイアビリティを向上させるため、研修やセミナーを通じて学習を進めます。企業側は、従業員それぞれにとって必要なスキルを選べるように、論理的思考力やコミュニケーション、プレゼンテーション力など、幅広いテーマの講義を受けられるよう、教育環境を整備しましょう。

通常業務の中でも、エンプロイアビリティは向上させられます。エンプロイアビリティチェックシートなどをもとにした現状認識をベースに、「計画性」「柔軟性」「課題発見力」など、自分に足りない要素を意識しながら業務を行い、スキルアップを図りましょう。

仕事の幅を広げるための人事制度

エンプロイアビリティは、人事的な取り組みによっても高めることができます。個人のキャリアプランや将来像に沿った人財配置や、希望の職種に就ける社内公募制度などで、従業員の能力の幅を広げることが可能です。

人事評価にエンプロイアビリティを盛り込むことも、社員の能力を高める方法のひとつ。研修や日々の業務上でのスキルアップが正当に評価されることで、エンプロイアビリティに対するモチベーションの向上が期待できます。

エンプロイアビリティ向上で働き方を変えよう!

人事や採用における新しい考え方であるエンプロイアビリティ。「雇用される力」という視点で育成を行えば、社内に多様なスキルを持つ優秀な人財が育ちます。組織を活性化させるためにも、エンプロイアビリティ向上の取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。

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記事執筆

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