全業種対象

エンパワーメントとは? 意味や効果、推進する際の注意点を企業の事例とともに解説

From: 働き方改革ラボ

2025年01月27日 07:00

この記事に書いてあること

【2026年1月27日 更新】

近年、従業員の主体性を引き出すことにより、成長を促す試みが多くの企業でなされています。そのうちの1つが「エンパワーメント」と呼ばれる考え方です。

この記事では、エンパワーメントの基本的な意味や注目されている背景、期待される効果についてわかりやすく解説しています。エンパワーメントで失敗しやすいパターンや推進する際の注意点もまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

エンパワーメントとは

エンパワーメント(empowerment)は、「権限をもたせる」「権限付与」「権限委譲」といった意味の英語に由来する言葉です。一般的には、企業などのビジネス分野で「従業員に権限や裁量を与え、自律的な行動や成長を促す」という意味で使われることが多くなっています。

なお、看護・介護や障がい者福祉の分野でも「エンパワーメント」という言葉が使われることがあります。それぞれの使われ方についても確認しておきましょう。

企業におけるエンパワーメントの意味

企業におけるエンパワーメントには、「権限委譲」「自主性促進」「能力開花」などの意味が込められています。従業員により大きな権限を与えることで自律性を培い、能力を引き上げることにつながるという考え方です。

相談しながら話し合う男性二人のイラスト

たとえば、従来は上長が担っていた役割の一部を部下に任せ、判断や一定の裁量権も部下に与えるのはエンパワーメントの典型的な例です。単に部下に仕事を委ねるのではなく、上長が適切にサポートすることで部下の能力や自律性の伸長につなげることが目的といえます。

看護・介護におけるエンパワーメントの意味

看護・介護分野においては、患者やサービス利用者に自ら決断してもらうことをエンパワーメントと呼んでいます。医療・福祉サービスを受動的に利用することが、必ずしも本人のためになるとは限らないという考え方です。

一例として、患者や利用者が受け身で治療や介護を受けているだけでは、医師や介護福祉士が期待するような自発的な協力を得ることは難しいのが現状です。相互のコミュニケーションを充実させ、より効果的な治療やサービス提供を実現するには、患者・利用者側の協力が欠かせません。患者やサービス利用者に自ら決断してもらい、自発的な参加・協力を促すことがエンパワーメントの主な目的です。

障がい者福祉におけるエンパワーメントの意味

障がい者福祉においては、障がい者の自己決定を尊重し、人間らしい生き方を保証するという意味でエンパワーメントという言葉が用いられます。保護すべき対象として障がい者に接することが、かえって自立の妨げになる場合もあるからです。障がい者を特別視するのではなく、本人の意思や「どうしていきたいのか」といった考えを重んじることによって、社会の一員として認められていると自認してもらうことも、エンパワーメントの大きな目的の1つです。

ビジネスシーンでエンパワーメントが注目されている背景

オフィスで会社メンバーと話し合いしている画像

\1分のフォーム入力で無料配布中!/

チェックリストで見直そう!
あなたの職場のコミュニケーション充実度

フォームよりお申し込みください

ここからは、ビジネスシーンにおけるエンパワーメントについてより詳しく見ていきます。そもそも企業においてエンパワーメントが注目されているのはなぜでしょうか。その理由として、次の3点が挙げられます。

予測困難な時代になりつつある

1つめの理由は、現代のビジネス環境が予測困難になりつつあることです。産業のグローバル化や技術革新により、事業環境の変化が加速しつつあります。トップダウンで決めた中長期計画に沿って事業を推進する従来の手法では、こうした変化に対応できない状況に陥りかねません。

現場で迅速に判断を下し、目の前で起きている変化に対応するには、一人ひとりの従業員が自発的に考え、行動していく必要があります。権限の一部を現場に委譲し、判断を委ねていくことは、現代のビジネス環境に適応するための方策の1つといえるでしょう。

中核人材となるリーダーを育てる必要がある

2つめの理由は、将来的に組織を担っていく中核人材を育成する必要に迫られていることです。リーダーシップを発揮できる人材を育成するには、早くから裁量をもたせて活躍してもらうのがもっとも近道といえます。実務を通してマネジメント経験を積むことが、より実践的なリーダー育成につながるという考え方です。

近年は事業承継や経営層の世代交代が迫っている企業も増えつつあります。より短期間で、より着実に戦力となる人材を育成するためにも、エンパワーメントが求められているのです。

雇用の流動化への対応が求められている

雇用の流動化が加速していることも、エンパワーメントが重要視されている理由の1つです。中途採用が一般的になった現代においては、新たに入社した従業員に企業文化や自社の慣習にできるだけ早く馴染んでもらう必要があります。そのためには、各自の担当業務だけでなく、組織全体を俯瞰的に捉える視点を培っていくことが重要です。

あえて早期に権限委譲を行うことで、業務を通じて得られる情報の量と質を引き上げられます。高いポテンシャルを備えた人材をできるだけ早く戦力化することを目的として、あえてエンパワーメントに踏み切る企業も少なくありません。

エンパワーメントによって期待される効果

エンパワーメントを実践することによって、具体的にどのような効果がもたらされるのでしょうか。期待される3つの効果について解説します。

従業員の主体性が引き出される

権限委譲がもたらす効果の1つに、従業員の主体性が培われることが挙げられます。与えられた指示どおりに動くのではなく、自ら決断を下す場面が増えることにより、必然的に「自分の頭で考える」必要に迫られるからです。

上司の指示に従って業務を進めている場合、言われたとおりに作業をこなすこと自体が目的化していくおそれがあります。一方、部下が自ら方向性を打ち出し、仮説を立てて検証するプロセスを繰り返すことによって、仕事のスタート地点からゴール地点までが線でつながった成功体験を得られます。こうした成功体験の積み重ねが、自ら考えて行動する習慣を身につけることへとつながっていくでしょう。

従業員エンゲージメントの向上

自らが担う仕事への納得感を高め、責任感をもって業務に臨んでもらうことも大きな目的の1つです。エンパワーメントによって、部下は自ら決めた手順や計画に沿って業務を進めることになります。良い結果が出れば自らの成功体験となり、望ましくない結果に終わった場合は次につながる改善策を自ら模索する必要性を感じるでしょう。つまり、結果に対して責任をもち、当事者意識をもって仕事に取り組むことにつながるのです。

また、エンパワーメントの推進は「会社は私たちを信頼して仕事を任せている」と従業員に実感してもらうためのきっかけにもなり得ます。一人ひとりがやりがいと責任感をもって仕事に取り組むことは、組織に対するエンゲージメント(愛着や忠誠)を高める意味においても重要なポイントです。

「自走する組織」を目指しやすくなる

エンパワーメントの推進は、「自走する組織」の実現にも寄与します。現場で適切な判断を下せる事項が増えていくことにより、各部門が責任をもって業務を計画・遂行し、着実に成果を上げられるようになるからです。

トップダウンで指示を出し、部下は指示どおりに動くことのみに終始していると、年月が経過しても部下が自ら判断できない・自信をもって行動できない状況に陥りかねません。都度指示を出さなくても現場レベルで動ける・適切な判断を下せる自走型組織を築いていくためには、エンパワーメントを推進していく必要があるでしょう。

エンパワーメントの成功事例

木のブロックに成功事例の文字が表示されている画像

エンパワーメントを実践し、成功を収めている事例を紹介します。どのような方針で権限を委譲し、どのような効果を得ているのか、それぞれの事例から読み解いていきましょう。

スターバックスコーヒー

スターバックスコーヒーでは、すべての接客スタッフに自主性と創造性を発揮してもらうためにエンパワーメントを実践しています。アルバイトスタッフに自社の基本理念や仕事のやりがいを伝えるプログラムを受講してもらい、接客時には「お客様は何をしてほしいのか」を自ら考えて実行するよう促しているのです。

あえて詳細な接客マニュアルを設けないことにより、自社の理念をスタッフ一人ひとりが深く考え、解釈した上で業務に臨むことになります。こうした取り組みが功を奏し、同社は数ある飲食店の中でも高い顧客満足度を誇るカフェチェーンへと成長を遂げました。

リッツ・カールトン

世界各地でラグジュアリーホテルを営むリッツ・カールトンでは、「クレド(行動指針)」を軸とした従業員教育を創業時から続けてきました。最良のサービスとは何かを各スタッフが考え、臨機応変に対応することで、宿泊客は型どおりの接客では得られない「サービスを超えた」満足感を覚えるのです。

また、同社では個々のスタッフに一定額までの決裁権を与えています。これにより、各スタッフは上長に報告・相談することなく、自らの判断で迅速にサービスを提供することが可能です。顧客第一を掲げる経営方針の一環として、エンパワーメントが実践されている好例といえるでしょう。

ヤオコー

首都圏でスーパーマーケットを展開するヤオコーでは、売り場づくりの権限を各店舗に委譲しています。各店舗の売り場づくりを統一するのではなく、地域の実態に即した店舗運営が可能になっている点が大きな特徴です。

さらに同社では、社員だけでなくパート従業員にも権限委譲を進めています。主婦目線の調理方法やメニューづくりの知見を現場で活かしてもらうことで、顧客のニーズを捉えた提案や販売促進活動をしやすい環境を整えているのです。売上データ等からは見えてこない生きた現場感覚を存分に引き出し、地域住民から喜ばれる店舗づくりを実現している事例です。

エンパワーメントを推進する際の注意点

\1分のフォーム入力で無料配布中!/

チェックリストで見直そう!
あなたの職場のコミュニケーション充実度

フォームよりお申し込みください

エンパワーメントを推進するにあたって、いくつか注意するべき点があります。権限委譲によって得られる効果を引き出すためにも、次の2点を十分に認識しておきましょう。

意思決定の精度差や判断ミスが生じる可能性がある

上長から部下へ権限を委譲すれば、部下が即座に適切な判断や意思決定を下せるようになるとは限りません。判断力や把握している情報量には、従業員ごとに個人差があるからです。とくにはじめのうちは意思決定に精度差が生じたり、判断ミスが起きたりする可能性は十分にあります。

権限を委譲することがゴールではなく、むしろ委譲してからがスタートだと認識する必要があるでしょう。適宜フォローやアドバイスを行い、部下の判断や意思決定をサポートすることが重要です。

自ら意思決定を下すことが苦手な人もいる

一定の裁量を委ねられることにやりがいを感じる人もいれば、プレッシャーを強く感じるタイプの人もいます。自ら考えて意思決定を下さなければならない状況が、人によってはストレスの原因にもなり得る点に注意が必要です。

エンパワーメントを推進する際には、組織内で一律に進めるのではなく、部下の適性を見極めた上で個々に対応することをおすすめします。社員面談などを通じて部下のキャリア観や仕事に対するスタンスをヒアリングし、権限委譲を希望するかどうか確認しておくとよいでしょう。

エンパワーメントに失敗しやすい3つのパターン

注意マークから落ちそうになっている男性の画像

エンパワーメントには多くのメリットがある反面、デメリットとなり得る面も存在します。エンパワーメントに失敗しやすい典型的なパターンを紹介しますので、失敗を防ぐための対策を事前に講じておきましょう。

パターン1:仕事を単に丸投げしている

権限委譲の名目で、上長が自身の仕事を部下に丸投げしてしまうパターンは決してめずらしくありません。上長自身が多くの仕事を抱えており、リソースに余裕のない状況下ではこうしたことが起こりやすいため注意が必要です。

権限を委譲された部下に対して適切な管理やフォローがなされなければ、部下の責任だけが重くなり、納得感を得られない可能性が高まるでしょう。エンパワーメントを実施する目的に立ち返り、権限委譲後のフォロー体制を確立しておく必要があります。

パターン2:形式上の権限委譲に留まっている

エンパワーメントが形骸化してしまうことも、よくある失敗のパターンです。形式の上では仕事を任せているものの、実際には部下が上長のコントロール下でしか動けなかったり、意思決定そのものは従来どおり上長が行う仕組みのままだったりすると、形式上の権限委譲に留まりがちです。

権限委譲を進める際には、部下に任せる業務の範囲や、最終的な責任の所在を明確にしておくことが重要です。その上で、部下が名実ともに動きやすい環境を整えることが求められます。

パターン3:能力を大きく超えた権限委譲をしている

明らかに部下の能力や経験に見合わない仕事を委ねた結果、期待されていた成果を出せないリスクが高まります。部下の自律性や積極性を引き出すためのエンパワーメントが、かえって部下に肩身の狭い思いをさせたり、萎縮させたりする原因にもなりかねません。

一人ひとりの能力や経験、適性には差があることを前提に、「任せられる時期」を見極めることが大切です。見極めが難しいようなら、はじめはごく限られた裁量のみ委ねるなど、段階を踏んで慎重に権限委譲を進めることをおすすめします。

エンパワーメントの基本的な進め方

ステップアップを表現している画像

エンパワーメントを推進する際の基本的な流れを紹介します。前に挙げたような失敗を回避するためにも、次の4ステップで権限委譲を進めましょう。

1. エンパワーメントを推進する目的を明確にする

はじめに、自社がなぜエンパワーメントを推進するのか、目的を明確にしておくことが重要です。権限委譲を通じて解決したい課題を絞り込み、組織内で共通認識を形成しておく必要があります。

たとえば、部下の自律性を伸ばすことが目的の場合と、将来的な事業承継をゴールに設定する場合とでは、委譲すべき権限の範囲や裁量の大きさが異なるでしょう。エンパワーメントの適用範囲や委譲する権限の内容を、目的から逆算して決定することが大切です。

2. 意図と目的について従業員の理解を得る

次に、エンパワーメントを推進する意図と目的を従業員に伝え、理解を得ます。上長が個々に判断して行うことではなく、会社としての公式な方針であることを明確に伝えましょう。

また、なぜエンパワーメントを推進することになったのか、その経緯を丁寧に説明することも重要なポイントです。必要に応じて勉強会やディスカッションの機会を設けるなどして、エンパワーメントを推進することで得られるメリットを十分に理解してもらうことが大切です。

3. ゴールを明確化した上で権限を委譲する

権限委譲と一口にいっても、従来は上長が担っていた役割を任される部下は各々に不安を感じるものです。従業員の不安を軽減するには、必要な情報を公開するとともに、ゴールを明確に設定することが求められます。

さらに、部下が担う業務範囲や最終的に責任を負う人をきちんと伝えておくことが重要です。目指すべきゴールを明確にし、必要以上のプレッシャーやストレスを部下が感じることのないよう配慮しましょう。

4. 必要な支援やフォローを随時行う

権限を委譲したきり仕事を丸投げしてしまわないよう、期待される成果につなげるためのフォローを継続的に行う必要があります。定期的な社員面談はもちろんのこと、日常的に部下が相談しやすい環境を整えておくことが大切です。

部下の判断や行動に対するフィードバックや振り返りを随時行うことにより、改善を重ねていくことも重要なポイントです。部下がはじめから適切な判断や意思決定を下すことを期待するのではなく、上長が伴走しながら部下を導いていくスタンスで臨みましょう。

まとめ

エンパワーメントは、部下の自律性を培い、能力を引き出す手法として多くの企業で導入が進んでいます。一方で、「他社が取り入れているから」といった理由で安易に導入するのは、多くのリスクを伴う手法ともいえるでしょう。エンパワーメントを推進する目的を明確にした上で、得られるメリットと想定されるリスクを十分に理解して取り入れていくことが大切です。今回紹介したエンパワーメントの進め方を参考に、部下の自律性を伸ばす取り組みを推進してみてはいかがでしょうか。

\1分のフォーム入力で無料配布中!/

チェックリストで見直そう!
あなたの職場のコミュニケーション充実度

フォームよりお申し込みください

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
「働き方改革って、こうだったんだ!」「こんな働き方、いいかも!」
そんなきっかけ『!』になるコンテンツを提供してまいります。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。

記事タイトルとURLをコピーしました!

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

働き方改革ラボに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

働き方改革ラボ

https://www.ricoh.co.jp/magazines/workstyle/

「働き方改革ラボ」は、よりよい働き方を目指す全ての方に、幅広いテーマで情報をお届けします。すぐに使えるお役立ち資料を是非ご活用ください。

新着情報をお届けします

メールマガジンを登録する

リコージャパン株式会社

東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

お問い合わせ先:働き方改革ラボ 編集部 zjc_workstyle-lab@jp.ricoh.com