Z世代の特徴とは?接し方や社員教育、採用活動のポイントを解説
2025年04月24日 07:00
この記事に書いてあること
「Z世代」と呼ばれる新しい世代の若者が、社会で働き始めています。新入社員や取引先、顧客にZ世代が含まれる企業に勤めている方のなかには、彼ら・彼女らがどのような価値観をもち、何を感じているのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、Z世代の特徴や価値観をはじめ、接し方や社員教育、採用活動の留意点、Z世代への理解を深めるポイントを紹介します。Z世代を対象とした施策の成功事例とあわせて見ていきましょう。
Z世代とは
はじめに、Z世代の定義や、Z世代が育った時代背景について基本事項を整理します。X世代やミレニアル世代、α世代との違いを押さえておくのがポイントです。
1990年代後半から2010年生まれの年代を指すことが多い
Z世代がどの世代を指すのかについては、明確な定義が存在するわけではありません。一般的には、1990年代後半から2010年生まれを「Z世代」と呼ぶことが多いといわれています。2024年時点で10代から20代前半がZ世代に相当することから、すでに社会人になっている層も一定数いるのが実情です。
Z世代という呼称は、X世代・Y世代と呼ばれる方々のあとに生まれた世代であることに由来しています。一般的にX世代は1965年頃から1980年頃に生まれた世代、Y世代は1981年頃から1990年代前半あたりまでに生まれた世代のことです。
Z世代が育った時代背景
Z世代はしばしば「デジタルネイティブ」と称されます。Z世代にあたる方々が生まれた頃にはすでにインターネットが普及し、デジタルデバイスがごく身近な存在になっていたからです。物心ついた頃にはすでにIT機器がさかんに使われており、アナログからデジタルへの移行期を経験していない点がZ世代の大きな特徴といえます。

「〇〇世代」という呼称は、メディアを中心にこれまでも数多く使用されてきました。Z世代はX世代の子どもに相当する世代であり、さらにα世代はミレニアル世代(Y世代)の子どもにあたる世代です。各世代の一般的な傾向として、下図のような特徴が見られるとされています。

X世代の特徴
X世代は、他者の価値観に影響されず自らの軸をもって生きる「個人主義」の傾向が見られるといわれています。高度経済成長期、バブル期に生まれ、経済的な変革期を目の当たりにしてきたこともあり、物質的な豊かさを求める傾向が多く見られる点が特徴的です。
ミレニアル世代の特徴
ミレニアル世代は、インターネットの発展とともに年齢を重ねてきた「デジタル・パイオニア」世代といえます。アメリカ同時多発テロやリーマンショックといった世界を揺るがす出来事に遭遇した経験から、社会問題への意識が高い傾向が見られる点が特徴的です。
α世代の特徴
α世代は、オンラインゲームやインターネットショッピングといった、オンラインでの消費行動やコミュニケーションに慣れ親しんできた世代です。国籍や年齢、ジェンダーにとらわれない、多様性を重視する考え方をもっているといわれています。
Z世代の特徴と働き方の価値観

X世代、ミレニアル世代、α世代との違いを抑えた上で、Z世代の特徴と働き方の価値観を見ていきましょう。
1.ソーシャルネイティブでSNSを活用する
Z世代のあいだでは、ミレニアル世代以前に比べてSNSが深く生活に浸透しています。内閣府が発表した『令和4年度 青少年のインターネット利用環境実態調査結果(速報)』によると、青少年のインターネットの利用状況は年々増えています。Z世代だけでなく、α世代以降も、似た傾向をもって育つことが考えられます。

2.キャリアに保守的な傾向がある
キャリアに保守的な傾向があるのも、Z世代の特徴といえるでしょう。2023年2月発表の『Z世代の仕事に関する意識調査』(株式会社SHIBUYA109エンタテイメント)では、Z世代の27%は「出世したくない」と考えており、その理由としては「責任が重くなるから」「プライベートを重視したいから」という回答が多くなっています。
3.多様性や社会問題に関心がある
また、Z世代は多様性や社会問題に関心があるともいわれています。SNSの普及によって世界と日本を対比する機会が多かったり、それまでの世代よりも多様な考えに触れることが増えたりした結果ではないのでしょうか。
Z世代との接し方・社員教育のポイント
ここまでに見てきたZ世代の特徴や傾向を踏まえて、職場におけるZ世代との接し方や社員教育のポイントについて見ていきましょう。
1. オープンなコミュケーション
1つ目のポイントは、社内でオープンにコミュニケーションを取りやすい環境を整えることです。
SNSを活用した情報収集や体験の共有を日常的に行っているZ世代は、自身についてオープンに語ることに慣れています。そのため、職場においても同僚や上長ともオープンに話せる環境を望んでいる可能性が高いでしょう。
また、幼少期からデジタルデバイスに親しんできた世代でもあることから、わからないことをすぐに調べられるかどうかは重要なポイントの1つです。職場においても疑問点を気軽に聞ける環境を整えるなど、「一方的に教わる」のではなく「自ら解決する」スタンスを尊重していく必要があります。
2. プライバシーを尊重
2つ目のポイントは、プライバシーを尊重することです。
オープンなコミュニケーションを好むとはいえ、プライベートに関する話題とオフィシャルな話題は明確に線引きをしているケースが多く見られます。とくにSNSにおいては不用意な投稿が炎上などのトラブルの原因になることも身をもって経験しており、プライバシーの保護に注意を払っているからです。
自身の体験や考え方を共有したいと感じる一方で、私生活について知られることに対して慎重なタイプな人が多いと考えられます。プライベートについて無遠慮に尋ねるようなことは、これまで以上に慎む必要があるでしょう。
3. 平等性・合理性を重視
人間関係において平等性や合理性を重視する傾向があることも重要なポイントです。コミュニケーションのあり方も含めて対等であることや、業務内容や評価基準が平等で納得性が感じられるかどうかを重視する人が少なくありません。
職場において指導したり、注意を促したりする際にも、きちんと根拠を示して伝えることが重要です。しばしば「若手の社員を叱ると辞めてしまうのではないか」と危惧する声が聞かれますが、注意されたこと自体が原因ではなく、納得できないことが離職などの原因となっているケースが多いと考えられます。
4. 押し付けや決め付けに注意
最後のポイントとして、押し付けや決め付けをしない環境づくりが挙げられます。
Z世代はインターネット上に溢れる膨大な情報に触れ、フラットな視点で判断する能力に長けているため、理不尽な押し付けや決め付けを敏感に察知する傾向があります。公平性を欠く社内評価や、形式にとらわれた合理性のないルールを嫌うケースも多いのが特徴です。仕事を任せる際にも明確な根拠を示し、納得しているかどうかを確認した上で任せる必要があるでしょう。
なお、ここまでにお伝えしたZ世代の特徴や傾向は、あくまでも一般的によくいわれていることに過ぎません。画一的な世代論にもとづく決め付けや、「Z世代」と一括りにするような言動にも十分に注意し、一人ひとりに合わせた対応を心がけることが重要です。
企業がZ世代の採用活動に取り入れたい3つのこと

企業側は、Z世代の理想の働き方を整えた上で、採用活動においてそのことをアピールする必要があります。Z世代の採用活動に取り入れたい3つのポイントを見ていきましょう。
1. SNSやオンライン面接の活用
1つ目が、SNSやオンライン面接の活用です。
SNSが身近にあるZ世代は、就職活動の情報サイトと並行して情報収集をSNSで行う傾向があると考えられます。また、近年では、TikTokやInstagramといったSNSで会社の様子を届けたり、質問コーナーを設けたりと、学生と企業との距離が身近に感じられるようなアピールをする企業も増えています。SNSによる採用活動は、採用後のギャップを減らすことにもつながるでしょう。
さらに、オンライン説明会やオンライン面接を取り入れることでIT環境が整っていることを学生に提示できるメリットもあります。距離の遠い学生であっても気軽に参加しやすくなるため、優秀な人材と出会える可能性も上がるでしょう。
2.意見をすり合わせる姿勢をもつ
2つ目が、面接時や教育時の際などに応募者と意見をすり合わせる姿勢をもつことです。
各個人や企業で価値観や考え方に違いがあって当然です。そういったときに「若者だから」「Z世代だから」と決め付けてしまうのではなく、相手がどう考えているのか耳を傾け、意見をすり合わせる姿勢で臨む必要があります。採用面接においても、採用時の条件を丁寧に確認したり、応募者の率直な思いや考えを聞いた上で入社を決断してもらったりすることが大切です。
コミュニティを重視する傾向にあるZ世代に職場に対する居心地の良さを感じてもらうためにも、意見を真っ向から否定するのではなく、わかりあえるところを見つけようとするコミュニケーションを取っていきましょう。
3.積極的な情報開示を心がける
最後に、積極的な情報開示を心がけることが挙げられます。社員インタビューを通じて現状働いている社員の本音を引き出し、その様子を動画コンテンツとして制作・公開するといった手法が効果的です。社員が本音で話していると感じられること自体が、その企業に対する好感度を高める重要な要素となります。
Z世代は社会問題に敏感で、情報の透明性を求める傾向があるため、たとえ不利益になりそうな情報であっても包み隠さず開示する誠実さが企業にも求められています。仮に情報を隠したとしても、SNSや口コミサイトなどを通じて情報が拡散されることも考えられます。信頼を落とさないためにも、積極的な情報開示を心がけましょう。
Z世代への理解を深めるポイント
Z世代への理解を深める上で、どのような点を意識すればよいのでしょうか。とくに注意が必要な3つのポイントを紹介します。
1. ストーリー性
Z世代への理解を深める上で重要なキーワードの1つが「ストーリー性」です。Z世代の大きな特徴として、自分自身の感性やライフスタイルに合った商品・サービスや働き方を選ぶ点が挙げられます。従来のように「皆が持っているから」「知名度が高いから」といった動機が「これが欲しい」「ここで働きたい」という欲求に直結するとは限らない点に注意が必要です。
たとえば、製品・サービスそのものを自社の強みとして打ち出したとしても、若手社員や求職者には響かない恐れがあります。ブランドが誕生した背景や開発秘話、根底にある世界観などを打ち出したコンテンツを制作し、発信していくほうが効果的でしょう。万人受けを目指すのではなく、自社の理念や世界観に共感してくれた人に興味をもってもらえるよう、独自のストーリーを構築するのがポイントです。
2. 参加型プログラム
あえて「ひと手間」をかけてもらうような、参加型プログラムを提供するのも有効な手法です。従来、手間を減らす=負担が軽減する、と捉えていたケースが多いのではないでしょうか。手軽で便利なテクノロジーに囲まれて育ったZ世代だからこそ、「ひと手間かかる」ことが新鮮な体験に感じられるケースは少なくありません。
参加型コンセプトの有名な事例として、富士フイルムのinstax™“チェキ™”「チェキ」が挙げられます。ポラロイドカメラ自体は昔からある製品ですが、デジタルカメラに慣れ親しんできたZ世代にとって、撮影した像が現れるまで出来栄えがわからないのは新鮮な体験です。デジタルカメラよりも手間がかかるからこそ、複数人で同じ時間を共有する価値を感じられる商品として大ヒットしました。企業においても、たとえばワークショップのように「自分たちで手を動かして作業する」「複数人で体験を共有する」といった機会を意識的に設けていくことが重要です。
3. 体験のシェア
自分たちが体験したことを、他の人との間でシェアしたくなるような仕掛けを設けておくことも大切なポイントです。誰もが一律に同じような経験をするのではなく、個々人に特有な体験をしていると認識してもらうことで、独自の体験を人に伝えたい・知ってもらいたいという動機を生み出せます。
一例として、若手社員のインタビュー動画を自社メディアや求人メディアに掲載するのは有効な方法です。会社としてのメッセージではなく、インタビューに応じている社員自身の個人的な体験として伝えるほうが、「個」が感じ取ったメッセージとして心に響く可能性があります。
Z世代を対象とした施策の成功事例

ここまでに紹介したZ世代の傾向を踏まえて、Z世代との接し方や社員教育、人材採用の成功事例を紹介します。それぞれの施策がZ世代の心を捉えた要因はどこにあったのでしょうか。
事例1:メンバーの個を重視|株式会社リクルート
株式会社リクルートでは、株式会社チームボックス 代表取締役・中竹竜二さんと共同で取り組んだ『オトマナプロジェクト』(2018年)などをはじめ、Z世代の価値観の理解や教育の実践につとめています。
対談インタビューでは「リーダーは率先して悩みをさらけ出す」「若者こそ新しい学びを得られる相手」などの言葉が並び、Z世代の部下をただの「部下」と括るのではなく、個として捉え、尊重した上で対等なコミュニケーションを取っている様子が伺えます。こうしたフラットなコミュニケーションのあり方は、同社が現在も若い世代から人気のある就職先の1つとなっている理由の1つといえるでしょう。
事例2:Instagramを活用した採用活動|株式会社ニトリ
家具やインテリア用品の小売業を営むニトリでは、Instagramで新卒採用アカウントを運用しています。先輩社員による「働く目的」や「ニトリ社員の休日」など、先輩社員をより身近な存在として感じられるコンテンツを日々アップしている点が大きな特徴です。
直近の内定者へのインタビュー動画など、Webサイトや求人メディアには掲載されていない独自のコンテンツを閲覧できることも重要なポイントです。フォロワーとの継続的な関係構築が可能なSNSの特性を活かし、同社への入社意欲の高い新卒生とのつながりを強化するための媒体として活用されています。
事例3:インフルエンサーを起用して認知拡大|カンロ株式会社
飴やグミなどのお菓子を製造・販売しているカンロでは、Z世代をターゲットとした施策に力を入れています。Z世代に人気のあるインフルエンサーを起用し、同社の商品を実食してもらうことで、自然と興味をもってもらえるコンテンツに仕上がっている点が特徴です。
同社のコンテンツが支持されている要因の1つに、宣伝色が薄い点が挙げられます。たとえば、グミがマシュマロのような食感へと変化していく様子を、インフルエンサーが実食しながら伝えるショート動画はその好例です。商品そのものではなく「体験」を前面に押し出した施策により、売上計画比3倍以上の成果を上げています。
Z世代のバックグラウンドを理解した戦略策定を
Z世代は幼少期からデジタルデバイスが身近にあった年代であり、これまでの世代とは異なる価値観をもつ世代としてしばしば話題に挙がります。一方で、生まれた時代ごとにすべての人が同じ考え方やものの感じ方をするとは限りません。今回紹介したZ世代の特徴や傾向は、あくまでも一般的によくいわれていることをまとめたものと捉えてください。
さまざまな世代、考え方の人が集う会社だからこそ、制度の整え方やコミュニケーションの取り方に戸惑うこともあるでしょう。特定の方針や手法に偏ることなく、試行錯誤しながら取り組みを続けていくことが大切です。
※記事内に記載している会社名および製品名・ロゴマークは各社の商号、商標または登録商標です。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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