世界で求められるインクルージョンとは?ダイバーシティとの違いも解説
2023年08月22日 07:00
この記事に書いてあること
ダイバーシティとあわせて使われることが多い、「インクルージョン」という言葉。このふたつの言葉の違いや、インクルージョンがなぜ必要なのかを正しく知らない人もいるのではないでしょうか。そこでこのコラムでは、用語の意味や、企業にインクルージョンへの対応が求められる理由を解説。さらに、インクルージョン推進のメリットや、インクルージョン実現に向けた具体的な取り組みもお伝えします。
インクルージョンとは?
インクルージョンとは、「包括」「包含」「一体性」という意味の言葉です。企業活動においては、社内で働くすべての人が尊重され、個性を生かして活躍していることを指します。性別や年代、国籍や障がいの有無に関わらず、多様な人材が仕事に参画する機会を平等に与えられ、一体となって働いている状態が、インクルージョンです。
旧来の男性社員の活躍を前提とした労働環境を見直し、さまざまな人材が適材適所で能力を発揮できる環境を作るのが、インクルージョンの目的です。
インクルージョンとダイバーシティの違い
企業のビジョンとして「ダイバーシティ&インクルージョン」が掲げられるなど、インクルージョンは、ダイバーシティと一緒に使われることが多い言葉です。このふたつは、どう違うのでしょうか。
ダイバーシティは、多様性を意味します。ビジネスにおいては、組織の中に、年齢や性別、国籍などにおいて、多様な人材が存在している状態を指します。
インクルージョンとは、多様なバックグラウンドを持つ人材が、それぞれの個性に応じた役割で活躍している状態のことです。多様性を認めることがダイバーシティであり、多様な人材が能力を発揮している状態がインクルージョンであるため、意味が異なります。
つまり、「ダイバーシティ&インクルージョン」とは、多様性を受け入れることに加えて、すべての人材が、自分らしく活躍できる組織を目指すという考え方です。
企業にインクルージョンが必要な理由
では、なぜ今、企業活動においてインクルージョンが重視されているのでしょうか。その理由と、インクルージョンやダイバーシティが注目されるようになった背景をお伝えします。
人材不足への対応
インクルージョンが重視される背景のひとつに、少子高齢化による人材不足があります。生産人口が減っていく中、多様な人材が企業活動を支えていくための環境作りが求められています。
また、インクルージョンを推進する企業は、誰にとっても働きやすい企業として社会に認知されます。新卒・中途採用の応募者の増加も期待できるため、インクルージョンは、人材面の課題を持つ企業にとって重視すべきテーマなのです。
SDGs達成の観点から求められている
世界的に進むSDGsの流れからも、インクルージョンは注目されています。SDGsとは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標のこと。「地球上の誰一人取り残さない」という理念に基づいて、17のゴールと169のターゲットが設定されています。
SGDsの目標の中には「すべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する」「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う」などが掲げられています。これらの達成のためには、各企業内でのインクルージョンが不可欠なのです。
さまざまな価値観に対応したビジネスを創出できる
多様化する消費者のニーズに対応するためにも、インクルージョンは重要です。さまざまな価値観を持つ人や外国籍の社員が働く企業では、さまざまな人にとって利用しやすいサービスや、グローバルなビジネスに関するアイディアが生まれやすくなります。会社を成長させるビジネス創出の推進力として、インクルージョンが求められています。
インクルージョンを進めるメリット
世界的な課題への対応や、企業の成長のために欠かせないインクルージョン。では、企業にとってインクルージョンの実現は、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
優秀な人材を獲得できる
インクルージョンを進めることは、人材面でのメリットがあります。人材の確保が難しい中で、さまざまな人が活躍できる環境を整えることによって、多様なバックグラウンドを持つ人が会社の戦力になります。
また、すべての人が個性を発揮できるような多様な働き方を推進すれば、魅力ある企業として求職者に認められます。優秀な人材の新規獲得にもつながるでしょう。
新規ビジネスを創出できる
多様な人材の活用によってビジネスの幅が広がることも、インクルージョン推進のメリットです。さまざまな価値観や経験を持つ人材がビジネスに参画することで、多角的な視点がもたらされ、イノベーションが起こりやすくなります。個性的な人材ならではのアイディアが新規ビジネスにつながり、業界内での競争力を強化できます。
働きやすい環境が整う
インクルージョン実現のため多様な人が活躍できる職場を目指すことで、人員の配置や設備、制度などの面において、労働環境が改善されます。すべての人にとって働きやすい会社になれば、社員の組織に対するエンゲージメントや、従業員満足度が向上。離職率の低下も期待できます。
業務の生産性が向上する
インクルージョンが浸透している組織は、すべての人の活躍を促すため、その個性が尊重されます。社員の特性に合った配置によって各自の能力が引き出されるため、業務の生産性が向上します。
また、自分らしく働いて活躍できる状況は、社員のモチベーションを向上させます。ひとりひとりの仕事への意欲が、チームや組織全体の生産性も高めます。
インクルージョンを実現する働き方とは?
では、インクルージョンは、企業内のどのような取り組みによって実現できるのでしょうか? 働き方に関する主な施策は、次のとおりです。
多様な働き方で私生活と仕事の両立を支援
育児や介護、病気の治療などの事情を抱える人が、私生活と仕事を両立するための支援も、インクルージョンを進める取り組みです。育児休業や介護休業のほか、時短勤務やフレックス勤務、テレワークなど、ライフステージや事情に合った働き方を選べる制度によって、フルタイムでは勤務が難しい人の活躍を促せます。
男性の育休取得推進も、インクルージョン施策のひとつ。男性社員に対しても私生活との両立支援を図ることで、企業全体で多様な働き方への理解が進みます。
外国人や障がい者の採用を強化
外国人の活用は、インクルージョンを進めると共に、事業のグローバル環境での成功も後押しします。外国人材を雇用することに加えて、そのスキルや個性を生かして活躍してもらうためには、生活面や言語面で外国人材をフォローする体制や、外国人材の就業を前提とした人事制度を整えることが大切です。
インクルージョンの実現には、障がい者の登用も欠かせません。バリアフリー施設の設置や、障がい者が能力を発揮できる職種の新設、障がい者向けのスキルアップ研修の実施といった、能力を生かす取り組みが重要です。
幅広い年齢層の人材を活用
シニア層を含む幅広い年齢層の人材の活用も、インクルージョン施策のひとつ。具体的には、定年後の再雇用制度の整備や、定年の延長といった社員が長く働き続けられる仕組み作りや、シニア層の積極採用などの施策があります。再雇用に向けた研修を定年前から行うなど、歳を重ねても第一線で活躍してもらうための取り組みも有効です。
ICT活用で柔軟な働き方を実現
ICTの活用によって柔軟な働き方を実現することも、インクルージョンを推進します。会社以外の場所や自宅で仕事ができるテレワークを導入することで、子育てや障がいなどの理由で出社しての業務が難しい人材も、能力を発揮することができます。
また、グループウェアやウェブ会議システム、情報管理ツールなどを導入することで、社員間のコミュニケーションが活性化。同じ場所に集まることなく、社員間で連携しながら仕事を効率的に進めることができます。
LGBTQへの理解と制度
性的マイノリティにとって働きやすい職場を作ることも、インクルージョン実現に向けた課題です。LGBTQへの差別を禁止する規定や、LGBTQに関する相談窓口の設置、同性パートナーを配偶者と同等に扱う福利厚生制度といった取り組みによって、LGBTQの社員が自分らしく活躍できる環境を作ることができます。
インクルージョンの推進を成功させるポイント
では、インクルージョン推進を成功させるためには、どのようなポイントをおさえれば良いのでしょうか。
インクルージョンの浸透に向けて、まずは、インクルージョンの必要性や考え方を学ぶ研修を行うなど 、社員の多様性への理解を深めましょう。インクルージョンは、女性活躍や子育てとの両立支援だけでなく、国籍や、思想や信仰なども含めて、さまざまな背景を持つすべての人を対象とした考え方であることを知り、多様な人材の参画が受け入れられる風土を作りましょう。
現場社員の意見を聞きながら、インクルージョンに関する制度作りを進めることが重要です。「すべての社員が能力を発揮する」という目的を達成するために、経営層からだけではなく、社員ひとりひとりが多角的な視点から意見を出して、取り組みに反映していくことが大切です。
また、インクルージョン施策を発展させていくために、活動状況の確認や、社員アンケートなどによるフィードバックを定期的に行いましょう。社員の意見に基づき、制度の変更や新しい取り組みの採用を柔軟に進めていくことが大切です。
すべての人が輝ける会社になろう!
企業が社会的に責任を果たしながら、人材面の課題にも対処していくためには、多様な人材の活躍が不可欠です。すべての人にとっての働きやすさにつながるインクルージョンを、今こそ進めましょう!
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記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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