2025年4月に何が変わる?働き方関連の法改正と必要な対応を解説
2025年01月08日 19:48
この記事に書いてあること
2025年4月1日から、育児・介護休業法や子育て関連の給付など、子育てや介護をしながら働く人や、高齢者の働き方に関する法改正が施行されます。具体的に法律はどう変わり、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。今回は、多様な人材の活躍を推進するこれらの法改正について、その変更ポイントと、企業に必要な対応を解説します。
育児・介護休業法
男女ともに仕事と育児・介護を両立できる環境を整備するため、育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)が改正され、2025年4月から段階的に施行されます。2025年4月から変更・追加される内容は、以下の通りです。
子の看護休暇の見直し
子どもの看護休暇について、その対象となる子どもの年齢や事由内容が変わり、名称も「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に変更されます。
子どもの看護休暇の対象となる範囲が、「小学校就学前まで」から「小学3年生修了まで」に拡大。また、看護休暇取得の事由として、「①病気・怪我」「②予防接種・健康診断」に、「③感染症に伴う学級閉鎖等」と「④入園(入学)式、卒園式」が追加されます。
また、これまで「対象から除外できる労働者」の条件が「①週の所定労働日数が2日以下」「②継続雇用期間6か月未満」だったところ、②が撤廃され、「①週の所定労働日数が2日以下」のみになります。
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 子の看護休暇 | 子の看護等休暇 |
| 小学校就学の始期に達するまで | 小学校3年生修了までに延長 |
| 病気・けが 予防接種・健康診断 |
病気・けが 予防接種・健康診断 感染症に伴う学級閉鎖等 入園(入学)式、卒園式 |
| (1)引き続き雇用された期間が6か月未満 (2)週の所定労働日数が2日以下 |
(1)を撤廃し、(2)のみに ※「週の所定労働日数が2日以下」のみに |
残業免除の対象拡大
一定の年齢に達するまでの子どもを養育する労働者は、所定労働時間を超える労働(残業)が免除されます。この制度の対象が拡大され、請求ができる労働者の範囲が、「3歳未満の子を養育する労働者」から「就学前までの子を養育する労働者」に変更されます。
短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置の追加
3歳未満の子どもを養育する労働者の育児短時間勤務の代替措置として、新たな選択肢が追加されます。3歳未満の子どもを養育する労働者は短時間勤務制度を利用できますが、短時間勤務が困難な場合には、企業は、フレックスタイム制度や始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ(時差出勤の制度)などの代替措置を講じる必要があります。その代替措置に、在宅勤務等(テレワーク)が追加されます。
育児休業取得状況の公表義務適用拡大
現在、従業員1000人超の企業に対して、育児休業取得状況を公表することが義務付けられています。2025年4月から、この対象となる企業が、従業員1000人超の企業から、300人超の企業に拡大されます。対象企業は、公表日の年度の直前の事業年度における、男性の「育児休業等の取得割合」または「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のいずれかを、インターネットなどの一般の人が閲覧できる場所で公表する必要があります。
介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
介護休暇を取得できる労働者の条件が緩和されます。現行制度では、対象から除外できる労働者の条件は「①週の所定労働日数が2日以下」「②継続雇用期間6か月未満」と定められていますが、このうちの②が撤廃されます。
介護離職防止のための環境整備
介護休業や、介護両立支援制度などの申出が円滑に行われるようにするため、企業に次のいずれかの措置が義務化されます。
- ①介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
- ②介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
- ③自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
- ④自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
なお、①~④すべてを講ずることが望ましいとされています。
介護離職防止のための周知・意向確認などの義務化
介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、企業は、介護休業制度等に関する以下の事項を周知することが義務付けられます。
- ①介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
- ②介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
- ③介護休業給付金に関すること
また、介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向を、個別に確認する必要があります。取得・利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。
また、労働者が介護に直面する前の早い段階(40歳等)で、介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供することが義務化されます。
- ①介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
- ②介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
- ③介護休業給付金に関すること
育児、介護のためのテレワーク導入が努力義務に
3歳未満の子を養育する労働者と、要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、企業の努力義務として追加されます。
企業に必要な対応は?
子の看護等休暇の対象や事由の追加、残業免除の対象拡大、介護休暇を取得できる労働者の要件緩和など、休暇や労働時間に関わる法改正に伴って、就業規則の見直しが必要です。また、短時間勤務制度の代替措置にリモートワークが追加されたほか、育児・介護に従事する労働者がリモートワークを選択できる制度の導入が努力義務化されます。そのため、リモートワークを前提としたルール作りなどの労働環境の整備も求められます。
また、厚生労働省は、仕事と家庭の両立支援に取り組む企業に「両立支援等助成金」を支給しています。法律への対応や、職場環境整備のため活用しましょう。
子ども・子育て支援関連の法改正
育児・介護休業法の改正以外にも、子育て世帯への経済的支援や、仕事と育児の両立を支援する目的で、以下の制度が新設されます。
出生後休業支援給付の創設
子どもの出生直後の一定期間内に男女で育休を取得した雇用保険被保険者に支払われる「出生後休業支援給付」が創設されます。
雇用保険被保険者が、子どもの出生直後の一定期間以内(男性は出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者と配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得した場合に、被保険者の休業期間について、28日間を限度に、休業開始前賃金の13%相当額が支給されます。
育児時短就業給付の創設
子育てのための時短勤務による賃金低下分を補うことで、男女ともに時短勤務を選択することを後押しする「育児時短就業給付」の制度が創設されます。一定の要件を満たす雇用保険被保険者(男女ともに対象)が、2歳未満の子を養育するために時短勤務をした場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%が支給されます。
妊婦等包括相談支援事業と支援給付の創設
児童福祉法に基づき、妊婦や配偶者などが伴走型相談支援を受けられる「妊婦等包括相談支援事業」が創設されます。妊娠期の不安を解消するため、妊婦とその配偶者に対して、面談等による情報提供や相談を実施。また、妊婦のための10万円相当の経済的支援も制度化されます。
企業に必要な対応は?
出生後休業支援給付と育児時短就業給付の創設によって、対象者は、育児休業中や時短勤務中の賃金低下分を補う給付が受けられます。企業側は、対象となる社員が、新しい制度もふまえて育児休業や時短勤務制度の取得について検討できるよう、給付金の内容や支給額について、社員に周知しましょう。
高年齢者雇用安定法
2025年4月からは、高年齢者雇用安定法についても以下の点が変更されます。
65歳までの雇用確保の義務化が強化
高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保措置が義務化されています。①65歳までの定年引き上げ、②定年制の廃止、③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入のいずれかの措置を講じる必要があります。
ただ、2013年3月31日までに労使協定により制度適用対象者の基準を定めていた場合は、2025年3月31日まで経過措置が設けられていました。2025年4月にこの経過措置が終了し、65歳までの雇用確保が完全義務化。企業は、希望者全員を65歳まで継続的に雇用する必要があります。
企業に必要な対応は?
65歳までの雇用確保義務化にあたり、企業は、労働者との雇用契約や、就業規則の見直しを進める必要があります。継続雇用後の賃金に関しては、最低賃金等の雇用に関するルールの範囲内で、労働時間、賃金、待遇などに関して、労使の間で話し合って決めることができます。
高齢者の雇用を進めるにあたっては、65歳以上への定年引き上げや、高年齢者の雇用管理制度の整備などの取り組みを行う事業主をサポートする助成金の活用も検討しましょう。
法改正のポイントをおさえて準備を進めよう!
子育て・介護などの私生活と仕事の両立を推進するための法改正や、新しい給付制度の創設が進んでいます。こうした法律に対応することは、企業にとっても、働きやすい環境の整備や、多様な人材の活躍推進につながるというメリットがあります。2025年4月の法改正ポイントをおさえて、就業規則の見直しや情報の周知など、早めに準備を進めましょう。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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