教育訓練休暇給付金が創設!社員のリスキリングを進めよう
2025年03月18日 06:00
この記事に書いてあること
働く人の能力開発・リスキリングを支援し、さらなる活躍を促すために、雇用保険法の改正などの法整備が進んでいます。そのひとつが、2025年10月からスタートする「教育訓練休暇給付金」です。
そこで今回は、この教育訓練休暇給付金について、新設された目的や内容、企業の人材育成における活用メリットを解説。さらに、企業が教育訓練休暇制度を導入する場合に必要な準備や、注意点もお伝えします。
教育訓練休暇給付金とは?
雇用保険法等の一部を改正する法律が、2024年5月に成立。多様な働き方を実現するための環境整備や、働く人の能力開発を目的に、教育訓練給付の給付率の引き上げや、雇用保険の適用拡大などに関して改正が行われました。
その改正内容のひとつが「教育訓練休暇給付金」の創設です。教育訓練休暇給付金とは、雇用保険の被保険者が、在職中に教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、賃金の一定割合の支給を受けられる制度で、2025年10月1日からスタートします。
教育訓練休暇給付金創設の背景
教育訓練休暇給付金の制度は、働く人のスキルアップや学び直しを後押しする目的で作られました。ビジネスのグローバル展開やデジタル化が進む中で、働く人の教育訓練やキャリアアップのためのリスキリングがよりいっそう求められ、国も人材育成の取り組みを助成金などで支援しています。
その一方で、学びたい意欲を持つ社会人に対して、職業訓練中に給与を受け取れない間の生活費を支援する仕組みが、これまでありませんでした。
教育訓練休暇給付金は、そんな課題を受けて、働く人が生活面で不安を抱えることなく教育訓練に専念できる環境を整えるため、創設されました。この給付金は、働く人だけでなく企業にもメリットを与えます。有給休暇の付与による負担の軽減や、従業員の主体的なスキルアップにつながるほか、従業員がその能力を成果として還元することも期待できます。
対象者や支給要件
教育訓練休暇給付金の対象者は、雇用保険被保険者です。給付要件は以下のとおり。給付額は、離職した場合に支給される手当と同額で、給付日数は以下のように、被保険者期間に応じて決定されます。
| 対象者 | 雇用保険被保険者 |
| 支給要件 | ・教育訓練のための休暇(無給)を取得すること。 ・被保険者期間が5年以上あること。 |
| 給付内容 | ・離職した場合に支給される基本手当の額と同じ。 ・給付日数は、被保険者期間に応じて90日、120日、150日のいずれか。 |
給付金創設の一方で教育訓練休暇制度には課題も
教育訓練による休暇中に給付を受けられる教育訓練休暇給付金は、働く人のリスキリングや、企業内の人材育成を後押しします。しかしその一方で、従業員に教育訓練休暇を与えることに関して慎重な企業が多いのも現状です。
教育訓練休暇制度の導入は、義務化されたものではなく、有給・無給の設定も含めて、企業の任意です。厚生労働省が実施した2023年度の「能力開発基本調査」によると、教育訓練休暇制度を導入している企業の割合は8%でした。「導入していないし、導入する予定はない」と答えた企業の数がもっとも多く、全体の81.9%を占めています。
また、教育訓練休暇制度などを導入していない企業に聞いた、導入予定がない理由の回答は「代替要員の確保が困難であるため」がもっとも多く、「制度自体を知らなかったため」「労働者からの制度導入の要望がないため」「制度導入のメリットを感じないため」「有給休暇とした場合、コスト負担が生じるため」という理由もあがっています。職業訓練の受講のために人員が減る懸念や、有給にした場合の負担増などの要因が、企業の教育訓練休暇制度の採用を妨げていることがわかります。
教育訓練休暇制度を設ける際のポイント
では、新設された給付金を利用しながら教育訓練休暇制度を導入するためには、どのような準備や対応が必要なのでしょうか。主なポイントは、以下のとおりです。
休暇による代替要員を確保できる体制作り
教育訓練休暇制度を導入し、従業員のスキルアップや学び直しを進めるためには、まずは、学びたい人が訓練のために業務を休める環境を整えることが重要です。教育訓練休暇の取得によって人員が減った場合に、代替スタッフの確保や、仕事量の調整によって業務を維持できる体制を整えましょう。従業員の学習意欲を受け入れ、学び直しのチャレンジを推し進める風土の醸成も大切です。
休暇を取得しやすい環境を作るためには、省力化の施策やツールの導入など、業務効率化を進める取り組みも重要です。訓練のために従業員が休んでも他の人員に過重な負荷が発生しない仕組みや、従業員が能力を高めて、さらに活躍したいと思える職場作りを進めましょう。
教育訓練休暇に関する規則を整備
教育訓練休暇制度の導入に際して、就業規則に休暇に関する規定を盛り込みましょう。教育訓練の受講を希望する場合の休暇日数の上限や、有給か無給か、また有給の場合は支払い賃金の計算方法についても定めます。
取得したい場合の申出の期限や、申請方法や申請先についても定めて、就業規則に追記しましょう。スムーズな休暇取得のため、学び直しのための休暇が取得できること、また給付金の制度についても社内に周知することが重要です。
有給の教育訓練休暇なら助成金も活用できる
有給休暇の付与も含めて、従業員の教育訓練の受講を促したい企業は、厚生労働省の助成金も活用できます。従業員に教育訓練のための有給休暇を付与する企業は、人材開発支援助成金の「教育訓練休暇付与コース」による、導入経費と教育訓練休暇中の賃金の助成が受けられます。
数日間の有給の教育訓練休暇を導入する際に利用できるコースに加えて、数ヶ月以上(最低でも30日以上)の教育訓練休暇を付与する企業を支援する「長期教育訓練休暇制度」のコースもあります。福利厚生としても教育訓練休暇の取得を進めたい場合は、人材開発支援助成金の活用も検討しましょう。
新制度を利用してスキルアップや学び直しを進めよう
学び直し中の給与面の不安を解消する教育訓練休暇給付金は、働きながら成長したい人のスキルアップを後押しします。意欲ある人材に学習機会を提供することは、従業員の満足度向上だけでなく、企業内の生産性向上や、仕事の創造性アップによる新しい機会の獲得にもつながるでしょう。
労働人口の減少によって外部からの人材獲得が難しくなる中、企業の成長のために人材育成の取り組みは欠かせません。今回、創設された教育訓練休暇給付金の内容についてよく理解し、従業員の能力開発に活用できるよう、制度スタートに向けた準備を進めましょう。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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