いざという時の生活を支える休職手当とは?導入のポイントを紹介
2025年12月15日 07:00
この記事に書いてあること
本記事は、掲載時点における法令・制度等の情報をもとに作成しています。以降の法改正や通達等により、内容が現状と異なる場合があります。正確な情報については、最新の法令や公的機関の発表をご確認ください。
働く人が病気やケガなどの理由で仕事ができなくなった際の支援策として、健康保険や労災保険の休職手当制度があります。ただ、メンタルヘルスの不調による休職も増える中、療養中の人や休職のリスクを懸念する人が公的な支援だけで十分なのか不安を抱えるケースもあり、企業としてもそうしたニーズへの対応が求められています。そこでこのコラムでは、さまざまな休職手当の仕組みと、会社独自の休職手当を導入する際のポイントを解説。休職者支援に積極的に取り組む企業の事例も紹介し、従業員が安心して働ける環境作りのヒントをお伝えします。
休職手当とは?
休職手当とは、企業の従業員が、病気やケガを理由に働けなくなり収入がストップした際に受け取ることができる手当全般を指します。中でも、健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)から支給される「傷病手当金」を休職手当と呼ぶケースが一般的です。
なお、休職手当と似た言葉に「休業手当」があります。これは、会社側の都合で従業員を休ませた場合に、企業が支払うべき手当であり、労働基準法に基づく制度です。
一方で、業務中や通勤中の災害による休職に対しては、労働者災害補償保険(労災保険)から「休業(補償)給付」が支給されます。両者は支給元も制度の目的も異なるため、区別して理解することが重要です。
病気等による休業中に支払われる手当として、主に次のような5つの制度があります。
健康保険から支給される傷病手当金
「傷病手当金」は、健康保険組合や協会けんぽの加入者が、病気やケガの療養のために仕事ができなくなった際に受け取ることができる保険給付です。なお、うつ病などの精神疾患も、傷病手当金の支給対象です。手当の金額は、支給開始以前の標準報酬月額の平均の2/3。傷病手当金は、支給開始日から通算して1年6ヶ月の間、受給することが可能です。
労働者災害補償保険から支給される休業(補償)給付
従業員が休職する理由が、業務中に起きた災害や通勤災害の場合、労働者災害補償保険(労災保険)から「休業(補償)給付」が支給されます。支給金額は、休業補償給付が賃金の60%、休業特別支給金が賃金の20%で、合計して賃金の8割相当の手当が受け取れます。休業補償給付の期限に上限はなく、労災と認定された傷病が治癒して、仕事が再開できるようになるまで支給されます。
健康保険・雇用保険制度から支給される出産手当金・育児休業給付金
出産や育児のために休業する従業員には、出産手当金と育児休業給付金が支給されます。出産手当金は健康保険制度から保険加入者に対して、出産日以前42日から出産の翌日以降56日目までの休職に対して、1日あたり賃金の2/3の手当が支給されます。育児休業給付金は雇用保険制度に基づく給付で、支給対象者は雇用保険の被保険者です。1歳未満の子を養育するために育児休暇を取得した場合に、1日あたり賃金の67%相当(育児休業開始から181日目以降は50%)の手当が受け取れます。
雇用保険制度から支給される介護休業給付金
家族の介護のために休業する人を支援する雇用保険制度が、介護休業給付金です。対象者は、雇用保険の被保険者です。介護の対象家族は、被保険者の配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)、父母(養父母を含む)、子(養子を含む)、配偶者の父母(養父母を含む)、祖父母、兄弟姉妹、孫。93日を上限に、賃金の67%相当の手当が受け取れます。
企業が独自に支給する休職手当
就業規則や労使協定に基づいて会社が休業中の従業員に支給する、独自の休職手当もあります。法律では「ノーワーク・ノーペイの原則」が定められているため、企業は休職者に給与を支払う義務はありません。ただ、企業が福利厚生の一環として、独自の休職手当や補償金制度を設けるケースもあります。
5つの制度の分類表
| 制度名 | 支給元 | 法的根拠 | 主な対象状況 |
|---|---|---|---|
| 傷病手当金 | 全国健康保険協会・健康保険組合 | 健康保険法 | 業務外の病気・ケガによる休職 |
| 休業(補償)給付 | 労働者災害補償保険 (労災保険) | 労働者災害補償保険法 | 業務中・通勤中の災害による休職 |
| 出産手当金 | 健康保険 | 健康保険法 | 出産による休職 |
| 育児休業給付金 | 雇用保険 | 雇用保険法 | 育児による休職 |
| 介護休業給付金 | 雇用保険 | 雇用保険法 | 家族の介護による休職 |
休職手当・支援制度が求められる背景
健康保険や労災保険、雇用保険等によって、病気やケガによって働けなくなった人の生活や治療費を支える仕組みが整備されています。企業は仕事を休んでいる従業員に給与を支払う必要はありませんが、企業独自の休職者支援制度は、働く人や企業にとって多くのメリットがあります。
今、コロナ禍で高まった健康への意識や、在宅勤務への移行等の労働環境の変化に伴って、メンタルヘルスに不調をきたす人が増えています。従来の病気やケガに加え、うつ病や適応障害などの精神的な疾病による休職や離職が増え、企業は、人材の補充や体制の立て直し等の負担を強いられています。そうした状況の中、従業員に長く活躍してもらうためには、病気の予防や早期発見を目指す仕組みに加えて、休職者が安心して治療に専念し、スムーズに職場に復帰するための体制を整える必要があります。
休職手当の導入には、仕事と生活の両立や労働環境の改善だけでなく、企業側にも、離職防止やエンゲージメント向上といった効果が見込めます。人材不足の課題に対処するためにも、従業員が不調や不安に陥った状況を支援する仕組みが求められているのです。
休職手当制度の整備・運用のポイント
では、独自の休職手当制度を設ける際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
対象の休職理由などのルールを定めて就業規則に盛り込む
休職手当を導入する際は、支給金額のルールに加えて、休職理由などの条件や支給期間を定める必要があります。傷病を対象にする場合は、診断書の提出の有無や申請方法のルールも決定して、休職手当に関する規定を就業規則に追記しましょう。
公平性を考慮した支援制度作り
休職手当の制度作りにおいては、公平性への配慮も重要です。休まずに働いている従業員が、手当を受け取る休職者に対する不平等感を招かないように、勤続年数などの利用条件や、手当の計算方法、賞与の取り扱いや、受け取れる上限期間などについても詳しく定めましょう。
休職中も社会保険料が発生することに注意
休職して収入が減っても、企業側と従業員側双方に健康保険料や年金などの社会保険料の支払いが発生する点にも注意が必要です。会社独自の休職手当を支給する場合も、従業員が健康保険の傷病手当金のみを受け取る場合も、社会保険料を支払う必要がある旨を従業員に伝えましょう。
独自の休職手当を導入した企業事例
実際に、会社独自の休職手当制度は、どのようなルールや仕組みで運用されているのでしょうか。病気療養者などを支援する手当や休暇制度の企業事例をご紹介します。
長期の所得補償制度で休職者を支援
東京都のLINEヤフー株式会社は、従業員の療養中の生活を支える仕組みのひとつとして、正社員を対象にした長期所得補償制度を設けています。病気やケガで一定期間を超えて仕事ができなくなった場合に、標準報酬月額の60%を、満60歳まで支給。健康保険組合の傷病手当金の上限期間である1年6ヶ月を超えても、収入面のサポートを受けることができます。そのほか、健康不安について相談ができる窓口や、人事と職場、グッドコンディションサポート部の連携による復職支援プログラム等の取り組みで、傷病を治療しながらも長く働ける環境作りを進めています。
賃金100%の最大180日の傷病休暇を付与
工業用ファスナーなどを開発・製造する京都府の日東精工株式会社は、メンタルヘルスやがんなどによる休職者の治療や職場復帰をさまざまな仕組みでサポートしています。勤続年数と職能(会社に対する貢献度)に応じて、年間最大180日の有給の傷病休暇を付与する制度もそのひとつ。休職者のうち6~8割が有給傷病休暇期間内に職場復帰をしています。そのほか、リワーク相談員やジョブコーチなどの外部機関との連携や、リハビリ出勤制度によって休職者の復帰をサポート。病気になっても辞めることなく、働き続けられる環境作りが進んでいます。
治療や介護に利用できる積立休暇制度
富山県の銅合金メーカー・中越合金鋳工株式会社は、健康診断やがん検診など、病気の早期発見・治療につながる支援を充実させながら、2008年から、休職時の収入を保障する積立休暇制度を導入しています。2年分の有給休暇に失効した有給休暇をプラスすることで、最大75日まで休暇を積み立てることが可能。積立休暇は、病気やケガの治療や、家族の介護に利用できます。病気によって収入が減ることに対する従業員の不安解消や、仕事復帰のために十分な治療を受けられるという安心感につながっています。
持続可能な働き方改革を実現する支援制度を!
独自の休職手当や休職者復帰支援制度を設けている企業に共通するのは、従業員に長期にわたって、健康に、長く働き続けてもらいたいという思いです。従業員を休業中や療養中も支えてくれる仕組みは、定着率や満足度の向上だけでなく、新卒や中途の求職者にも魅力的な職場作りや、優秀な人材の確保にもつながるでしょう。“持続可能な働き方改革”の第一歩として、休職手当の整備を進めてみてはいかがでしょうか?
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
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