どんな仕事にも生かせる業務スキル、ポータブルスキルとは?
2024年01月15日 07:00
この記事に書いてあること
人事の分野で、どのような職種・業種でも生かせる「ポータブルスキル」が注目されています。働く人が多様なフィールドで活躍するのが一般的になった今、このポータブルスキルが重視されています。そこでこのコラムでは、用語の意味や、ポータブルスキルが求められる背景、さらに従業員がポータブルスキルを身に付けた際の企業側のメリットや、スキルを磨くための具体的な方法も解説します。
ポータブルスキルとは?
ポータブルスキルとは、「持ち運びができるスキル」のこと。限定された仕事で使える専門的な能力とは異なり、仕事内容や業種、社会状況など、どのような環境でも生かせる汎用性が高いスキルです。一般社団法人 人材サービス産業協議会が開発した概念で、厚生労働省も、ポータブルスキルを活用したミドルシニア層のキャリアアップを勧めています。
ポータブルスキルは具体的に、論理的思考力や問題解決能力、コミュニケーション能力などを指します。また、ポータブルスキルと反対に、特定の企業や業種でのみ使えるスキルのことを「アンポータブルスキル」と呼びます。
今、ポータブルスキルが求められる理由
ではなぜ今、ポータブルスキルが注目されているのでしょうか。
その理由のひとつが、雇用に関する環境の変化です。働く人の転職や、中途採用者の活躍が一般的になり、新卒から定年まで勤めあげるという終身雇用の前提が崩れつつあります。働く人が長く活躍し続けるためには、ひとつの会社や、限られた仕事内容だけで役立つ力だけではなく、どのような場所でも発揮できるスキルが求められています。
同じ会社で働き続ける上でも、変化に強いポータブルスキルが有効です。「VUCA時代」と呼ばれる、先行きが読めず複雑化するビジネス環境において、これまでにないアイディアで競争力を獲得したり、新規事業に参入したりする際にも、未経験の仕事でも生かせるポータブルスキルが必要とされるのです。
ポータブルスキルの要素とは?
では、ポータブルスキルとは具体的に、どのようなスキルを指すのでしょうか。それは、次のふたつのカテゴリーに分類される9つの要素から成り立ちます。
仕事のしかた
次の6つの要素は、業務を進める上で必要とされる工程別のスキルです。
- ●現状の把握……取り組むべき課題の設定や仕事関連の動向把握のため、コンスタントに情報収集を行い、データを評価・分析する。
- ●課題の設定……自ら立てた問題意識に基づき、新しい事業、技術、組織、仕事の進め方などに関して、取り組むべき課題を設定する。
- ●計画の立案……業務や課題を遂行するために、ゴールに向けて仕事の優先順位を決めながら具体的な計画を立てる。
- ●課題の遂行……スケジュールや品質基準を守り、壁やプレッシャーを乗り越えながら業務を遂行する。
- ●状況への対応……予期せぬ状況にも臨機応変に対応し、自らの判断に対して結果責任を負う。
人との関わり方
職種や業種を問わず有効なポータブルスキルには、以下のようなコミュニケーションやマネジメントに関するスキルもあります。
- ●社内対応……経営層・上司・関係部署に対して、難しい内容を的確に伝えて納得感を得たり、社内関係者の調整を行ったりして、支持を獲得する。
- ●社外対応……顧客・社外関係者等に対して、難しい内容を的確に伝えて納得感を得て、利害が対立する顧客・社外関係者との調整を行い、合意を獲得する。
- ●上司対応……上司に対して、業務に関する正しい報告や、課題改善に関する的確な意見伝達を行う。
- ●部下マネジメント……能力や専門性が異なるメンバーの動機付けや育成、指導を行い、持ち味を活かせる業務を割り当てる。
社員がポータブルスキルを身に付けるメリット
では、従業員がポータブルスキルを身に付けることで、会社側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
人財が部署や事業部を超えて活躍する
企業がポータブルスキルに着目すべき理由のひとつが、従業員の活躍の幅が広がることです。ポータブルスキルを身に付けた従業員は、特定の部署や事業領域だけではなく、社内のさまざまなフィールドで活躍できます。ひとりひとりのスキルアップやキャリア形成につながるだけでなく、会社にとっても、優秀な人財がさまざまな部署で高いパフォーマンスを発揮するというメリットがあります。従業員が部署を異動した際も、都度の育成や教育なしで、即戦力として活躍することが期待できます。
最適な人財の配置ができる
従業員のポータブルスキルを測定して人財育成に取り入れることで、従業員の適性をふまえた合理的な人事が行えます。それぞれの強みを活かせる部門で働く適材適所が実現すれば、従業員のモチベーションや、会社へのエンゲージメントもアップ。生産性向上にもつながります。
新規事業にチャレンジできる
ポータブルスキルの一部である、難しい課題を遂行する能力や計画立案能力、変化に柔軟に対応する力があれば、新規事業やチャレンジングなビジネスにも戦略を持って取り組むことができます。こうしたポータブルスキルを持つ従業員が増えれば、企業が挑戦を続け、成長することにつながります。
コミュニケーションが円滑化する
対人に関するポータブルスキルの底上げは、社内のコミュニケーションの活性化につながります。社内外との調整や、上司・部下間でのコミュニケーションに関する社員の能力が上がれば、チーム内の連携がスムーズになり、生産性がアップ。連携不足によるトラブルや人間関係のストレスも減り、労働環境も改善されるでしょう。
ポータブルスキルを身に付ける方法
次に、ポータブルスキルを人財育成に取り入れたい方のために、従業員がポータブルスキルを身に付けるための方法をお伝えします。
ポータブルスキルをセルフチェック
まずは従業員個人による、仕事のしかたや人との関わり方に関する9つの要素に関する現状把握を行いましょう。チェックシートを用意して、自己評価や、上司・部下からの評価に基づいて確認を実施。厚生労働省や、一般社団法人 人材サービス産業協議会が提供するチェックツールを使って、客観的にポータブルスキルを測定する方法もあります。
研修で身に付けたいスキルを磨く
ポータブルスキルのセルフチェックをもとに、従業員それぞれが、より磨きたいスキルや身に付けたいスキルを特定したら、実際にスキルの習得を進めます。ポータブルスキルを学べる社内外の研修やセミナーを準備し、受講できる環境を整えましょう。オンラインセミナーも活用すると、従業員が受講時間を柔軟に選べて、学習が進みます。
目標設定をして業務の中でスキルを向上
実際の業務の中でポータブルスキルを向上する方法も有効です。上司や人事担当と共にポータブルスキル習得に関する目標を設定して、定期的に振り返りを行います。「すべての仕事でスケジュールを立てる」「相手の価値観を受け入れて話す」など、スキル向上のための具体的な行動指針も決めましょう。定期的な人事異動によって、従業員のポータブルスキル習得レベルの確認を行いながら、スキル向上を目指す方法も有効です。
活躍の幅を広げるポータブルスキルを身に付けよう!
働く人の活躍の可能性を広げる、ポータブルスキル。従業員が楽しく仕事をする上でも、ポータブルスキル向上は有効な取り組みです。ひとりひとりが自分らしく働くために、人財育成にポータブルスキルの考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか?
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記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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