パワハラのグレーゾーンの事例を紹介!定義や対策も合わせて解説
2024年06月24日 07:00
この記事に書いてあること
暴力や暴言といった明確なパワハラは認識できても、パワハラに該当するのか微妙なグレーゾーンの行為については判断に悩み、頭を悩ませている企業は少なくありません。この記事では、パワハラの定義から、判断基準、発生した際の対策などを解説しています。パワハラやそのグレーゾーンについて知りたい人は、参考にしてください。
パワハラを定義する3つの要件とは
パワハラ(パワーハラスメント)のグレーゾーンについて理解するためには、まずパワハラの定義を理解しなければなりません。パワハラの定義には「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」という3つの要件があります。それぞれについて解説します。
1.優越的な関係を背景とした言動であること
優越的な関係を背景とした言動とは、上司と部下のように、抵抗や拒否が難しい関係性を背景にして、業務を遂行する過程で従業員がさまざまな言動を受けるものです。代表的な例は上司が部下に行うものですが、業務に欠かせない知識や経験を持つ同僚や部下からの言動も該当する場合があります。
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
業務上必要かつ相当な範囲を超えたものとは、一般的な考え方に照らして、業務上明らかに必要がなかったり、程度が過剰であったりする言動を指します。この要件に該当するかどうかは、言動を受けた目的や業務の内容など、さまざまな要素を総合的に考慮して判断します。
3.労働者の就業環境が害されるものであること
労働者の就業環境が害されるものとは、言動によって労働者が身体的または精神的な苦痛を受け、その結果、能力の発揮に大きな悪影響を及ぼし、就業に重大な支障が生じることを指します。この判断は、言動を受けた労働者の主観ではなく、平均的な労働者の感じ方に基づいて行われることが適当とされています。
パワハラのグレーゾーンとは?
パワハラに該当するかどうか判断が難しい行為を「グレーゾーン」と呼びます。グレーゾーンには明確な基準は存在しませんが、たとえば、周囲に人がいる場で部下を叱ることはグレーゾーンに当てはまる行為と言えます。
グレーゾーンに該当する内容は裁判になるとパワハラに認定される可能性があるものの、実際には当事者間の話し合いで収められて表立っての問題とならないケースも少なくありません。
グレーゾーンかパワハラかの判断基準
グレーゾーンか明確なパワハラかは、どのように判断するのでしょうか。2つの基準を解説します。
言動の目的や経緯
問題とされる言動の目的や経緯が、パワハラに該当するか否かの1つの判断基準になります。上司から部下、先輩から後輩に対しての言動が業務上必要性のない内容であったり、部下や組織の成長を目的とした指導や教育でなかったりすると、パワハラに該当する可能性が高くなるでしょう。
たとえば、部下の成長を期待しての叱咤激励か、退職させるための嫌がらせかで、パワハラに該当するかが決まります。
行為者との関係性
上司と部下、先輩と後輩などといった単純な関係性だけでなく、日常的な関係性も1つの判断基準となります。
たとえば、日頃からコミュニケーションに問題があり信頼関係が築けていなかったり、部下や後輩が真面目に業務に取り組んでいるにも関わらず第三者から見ても高圧的な態度を取っていたりすると感じられる場合は、パワハラに該当すると判断される可能性が高いでしょう。
パワハラを判断する方法
パワハラかどうかを判断する際には、誰がどのように判断するかが大切です。企業内でグレーゾーンの言動が発生した際は、「平均的な見解」に基づく「客観的な判断」が欠かせません。厚生労働省が提示するハラスメントの定義に加え、自社内で「パワハラに関するガイドライン」を定めておくと判断に悩むケースが減ることでしょう。
話し合いで解決せずに裁判で最終的な判断が下されることもあり、自社内や組織内でパワハラが発生しないよう前もって予防措置や対処法を用意しておくことが求められます。
パワハラのグレーゾーンに関する6つの事例
厚生労働省が紹介する、6つの「パワハラの類型」を解説します。グレーゾーンを見極める際に役立つでしょう。
身体的な攻撃
暴行や傷害などは身体的な攻撃となります。
たとえば、元気がない部下を励まそうと上司が軽く頭を叩いた場合、上司は激励のつもりでも部下が暴力と感じれば身体的な攻撃に該当するおそれがあります。
理由や程度にかかわらず、叩く、殴る、蹴る、物を投げる行為はパワハラに該当するものと認識しておきましょう。
精神的な攻撃
脅迫や暴言などは精神的な攻撃となります。
たとえば、元気のない部下を他の従業員もいる場所で励まそうとしたり、問い詰めたりする行為は、精神的な攻撃に該当する可能性があります。長時間にわたり、繰り返し叱ることも該当する可能性があるでしょう。
指導をする際は他に人がいない別室に呼び、ただ叱咤激励するだけでなく、原因や再発防止策を議論し、具体的な助言を与えるようにしましょう。
人間関係からの切り離し
隔離や仲間外し、無視などは人間関係からの切り離しとなります。
たとえば、一人だけ席を別室に移したり、強制的に自宅待機を命じたりする行為がこれに該当します。
また、飲み会を好まない様子の特定の部下だけを飲み会に誘わない行為も、該当する可能性があります。飲み会を好まないとしても、自分だけが誘われていないことに疎外感を感じることがあるためです。飲み会を好むかどうかにかかわらず、全員に声をかける配慮が求められます。
このような配慮を通じて、職場全体のチームワークと信頼関係を強化することが重要です。
過大な要求
業務上明らかに不要な事柄や遂行不可能な事柄の強要、仕事の妨害などは過大な要求となります。
たとえば、新人社員に対して、十分な指導やサポートもなく専門的な知識や技術が必要な業務を任せることがこれに該当します。
また、職場で自宅の庭の雑草が伸びていることを話し、部下が自ら休日に草むしりに来てくれた場合でも該当する可能性があります。日常会話から休日の手伝いにつながった場合でも、業務上不要な行為をさせていないかを考えましょう。
上司と部下の関係では、断りにくい状況が生まれることが多いため、上司は部下に過度な負担をかけていないか常に注意する必要があります。
過小な要求
実力からかけ離れた簡易な業務を命じたり、仕事を与えなかったりする行為は過小な要求となります。
たとえば、一度のミスをした社員に対し、何の指導もなくその業務から外す行為がこれに該当します。
また、営業担当の社員に対して電話の取次ぎや郵便物の仕分けなど、本来の職務とは関係ない業務だけを担当させる場合がこれに該当します。
このような行為は、社員の意欲やキャリア形成に悪影響を及ぼし、パワハラとなる可能性があります。
個の侵害
プライベートに過度に立ち入る行為は、個の侵害となります。
たとえば、交際相手についてしつこく質問したり、家族に対する悪口を言ったりする行為がこれに該当します。職場外でも継続的に監視したり、私物の写真を撮影をする行為も該当する可能性があります。
個人のプライバシーを尊重し、過度な干渉を避けるよう心掛けましょう。
グレーゾーンが発生した際の対策
自社内でグレーゾーンと思われる事例が発生した際にすべき、2つの対策を解説します。
見て見ぬふりをしない
明確なパワハラではなくグレーゾーンだと感じても、見て見ぬふりをしてはいけません。グレーゾーンの出来事が発生した時点で、注意が必要です。関係者双方から話を聞き、客観的な姿勢で事実確認を行いましょう。
グレーゾーンの事例を集めて社内で周知することで、パワハラへの理解が深まり抑止力となります。ただし、事例を共有する際には、被害を受けた側への配慮が重要です。
再発防止の取り組みを実施する
再発防止の取組みとして、適切な相談窓口の設置と利用の推奨を行いましょう。
内部および外部の相談窓口を設置し、社員が気軽に相談できる環境を整えます。社員に対して定期的に相談窓口の利用を促し、どのような問題でも相談しやすい雰囲気を作ることが大切です。
パワハラにならない事例
パワハラに該当しないとされる事例に、どのような事柄があるか解説します。
「パワハラの累計」ごとの該当しない例
身体的な攻撃に該当しない例
誤ってぶつかったり、ミスにより物を当ててしまったりすること。
精神的な攻撃に該当しない例
社会的ルールやマナーを欠いており、何度も注意しても改善されない場合や、重大な問題行動をした社員に強く注意すること。
人間関係からの切り離しに該当しない例
新人の育成や処分を受けた労働者のために、個室で研修を行うこと。
過大な要求に該当しない例
労働者の育成のために、現在より少しレベルの高い業務を任せること。
過小な要求に該当しない例
労働者の能力に合わせて、業務内容や業務量を軽減すること。
個の侵害に該当しない例
労働者への配慮を目的に、家族の状況などをヒアリングすること。
まとめ
パワハラに該当するか微妙なものを「グレーゾーン」と呼んで解説しました。グレーゾーンだからといって、見て見ぬふりをしてはいけません。事前に予防措置や対処法を自社内で整備しておきましょう。従業員同士の円滑なコミュニケーションを促進し、働きやすい環境を整えることが重要です。
働き方改革ラボでは、社内のコミュニケーションの状況のチェックと、コミュニケーション活性化に必要な取り組みの理解ができる資料「チェックリストで見直そう!あなたの職場のコミュニケーション充実度」を提供しています。自社のコミュニケーションを見直したい方は、ぜひご活用ください。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
「働き方改革って、こうだったんだ!」「こんな働き方、いいかも!」
そんなきっかけ『!』になるコンテンツを提供してまいります。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。
記事タイトルとURLをコピーしました!