不動産テックとは?カテゴリーとサービス例、解決できる課題と活用方法を解説
2021年12月20日 07:00
この記事に書いてあること
※本記事の内容は記事制作時点での情報に基づく記載となります。【2025年8月26日更新】
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不動産業界では、契約時の重要事項説明が必須とされていることや、書類のやり取りが数多く発生することなどから、アナログな業務が残っている面が少なくありません。こうした問題を解決するテクノロジーとして注目されているのが「不動産テック」です。
この記事では、不動産業界が抱えている問題や、不動産テックによって解決できる課題についてわかりやすく解説しています。不動産テックの主要な11のサービスとあわせて見ていきましょう。
不動産テックとは
はじめに、不動産テックとはどのようなものか、その定義や市場規模について確認しておきましょう。不動産テックの主な分野を知り、全体像を把握しておくことが大切です。
不動産×テクノロジーの造語
不動産テックとは、「不動産」と「テクノロジー」を掛け合わせて作られた造語です。ITツールやインターネットのほか、VRやARといったさまざまなテクノロジーによって、不動産売買や賃貸契約、投資などに関する新しい仕組みを生み出したり、ユーザーとサービス提供側の取引のあり方に変化をもたらしたりすることを目指す取り組みを指します。
不動産テックの源流は、アメリカのベンチャー企業にあります。2010年頃にアメリカで注目を集め始め、近年では一大産業へと成長しつつある分野として知られるようになりました。
不動産テックの市場規模
不動産テックの市場規模は2022年時点で9,402億円であり、前年度比21.1%と急速な成長を遂げている分野です。さらに2030年度には2022年度比で約2.5倍に相当する2兆3,780億円に拡大すると予測されています。今後も成長を続ける領域として、多方面のステークホルダーから注目されている分野です。
【不動産テック市場規模の推移と予測】

※出典:日本経済新聞「矢野経済研究所、不動産テック市場に関する調査結果を発表」2024年5月17日
不動産テックの主な分野
不動産テックの主な分野として、下記のものが挙げられます。
- ・不動産データベース
- ・業務支援(集客)
- ・業務支援(顧客対応)
- ・業務支援(契約・決済)
- ・業務支援(設計・施工)
- ・業務支援(管理・アフター)
- ・ローン・保証
- ・スペースシェアリング
- ・マッチング
- ・価値可視化・査定
- ・IoT
- ・VR・AR
- ・生成AI
【不動産テック カオスマップ】

※出典:一般社団法人不動産テック協会「不動産カオスマップ最新版(第10版)」2024年8月28日
このように、不動産テックと一口に言っても分野や領域は多岐にわたります。特定のイメージにとらわれず、不動産テックによって解決できる課題やそれぞれのサービスのメリットなどを理解しておく必要があるでしょう。
不動産業界が抱えている課題

そもそも、不動産業界では従来どのような課題を抱えてきたのでしょうか。主な課題として、次の4点が挙げられます。
- ・課題1:アナログ中心の業務フロー
- ・課題2:情報の偏りと透明性の低さ
- ・課題3:データの整理不足
- ・課題4:付加価値の創出
それぞれの課題について詳しく見ていきましょう。
課題1:アナログ中心の業務フロー
1つ目の課題は、アナログ中心の業務フローが随所に残っていることです。法的な制約と多方面にわたるステークホルダーが、業界全体のデジタル化を遅らせる一因となっている面があるのは否めません。
顕著な例として、不動産契約を締結する際に宅地建物取引士が宅建士証を提示し、口頭と書面で重要事項を説明するよう義務付けられていることが挙げられます。これは宅地建物取引業法にて定められた義務であり、重要事項の説明を省略することは認められていません。
2017年、国土交通省は非対面による重要事項の説明を可能にする「IT重説」の運用を開始し、2019年には電子署名サービスの普及に向けた社会実験を始めています。しかしながら、依然として業界全体でのデジタル化は後れを取っているのが実情です。
課題2:情報の偏りと透明性の低さ
情報の偏りと透明性の低さも、不動産業界が抱えている重要な課題の1つです。たとえば、不動産仲介業者に情報が集中しやすくなったり、不動産オーナーや消費者にとって必要な情報が十分に開示されず不利な条件で購入/売却せざるを得なくなったりするようなケースが挙げられます。こうした、いわゆる「情報の非対称性」は、長年にわたり不動産業界全体で問題視されてきました。
近年はWebサイトやアプリなどで広く情報が提供されるようになりつつあるものの、依然として十分な情報が開示されているとは言いがたいケースも少なからず見られます。いかに情報の偏りや不透明性を解消するかは、不動産業界が今後も取り組んでいくべき課題といえるでしょう。
課題3:データの整理不足
不動産に関するデータが十分に整理されていないことも、早急に解決を目指すべき課題といえます。不動産の取引履歴や維持・管理状況、リフォーム歴、成約価格などのデータが集約されていないために、さまざまな問題が生じているのが実情です。
総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」によれば、2018年の時点で日本国内の空き家は約849万戸、空き家率は13.6%と過去最高値を記録しました。空き家の増加は深刻な社会問題となっています。このような事態の一因となっているのが、まさしくデータの整理不足です。
課題4:付加価値の創出
サービスの付加価値をどのように創出していくべきか、という課題も表面化しつつあります。建築物や設備といったハード面だけでなく、サービスなどのソフト面で付加価値を創出しなければ、他社との差別化が図りにくくなってしまうからです。
たとえば賃貸物件を契約する際、仲介業者A社と仲介業者B社のどちらを利用するかによって、契約の内容や条件に大きく差がつくわけではありません。顧客の立場としては、どの仲介業者を選ぶかは任意に判断するしかない状態となっています。顧客から選ばれるには、自社独自の強みや特徴を打ち出す必要があるでしょう。多くの不動産関連会社が、いかにして付加価値を創出し、効果的に差別化を図るべきか苦慮しているのが実情です。
不動産テックの活用によって解決できる4つの課題

ここまでに紹介してきた課題のうち、不動産テックを活用することで解決できるものは決して少なくありません。不動産テックを取り入れることによって解決できる課題として、下記の4点が挙げられます。
1. 売上・利益の伸長
一般的に不動産テックは業務効率化や生産性向上に資するテクノロジーと捉えられていますが、実は売上や利益の伸長に寄与する面が少なからずあります。たとえば、オンライン経由での反響数が増加したり、成約率が向上したりすれば、売上伸長につながる可能性は十分にあるからです。
また、書類の郵送や、従来は従業員の稼働を必要としていた業務をデジタル化することによって、コスト削減に資する可能性もあります。これにより、利益をより多く確保する事業モデルを確立できるでしょう。デジタル化することで距離的・時間的な制約が極限まで少なくなるため、機会損失を回避する効果も期待できます。
2. 情報の透明性の確保
不動産の購入/売却に必要な情報を誰でも閲覧できるようになることによって、情報の不透明性が解決するという側面もあります。売り手/買い手の双方にとって、契約や売却に必要な情報が、よりオープンな状態になることは大きなメリットの1つです。
また、情報の透明性が高まることは、事業者側にとっても大きなメリットをもたらします。特定の従業員にノウハウや知見が集中するのを防ぎ、業務フローを平準化しやすくなるからです。また、取引に関連するデータを数値化することにより、自社が抱えている課題の抽出や解決策の模索を進めやすくなるというメリットもあります。
3. 業務効率化
不動産テックの導入により、工数削減や時間短縮・人的ミスの抑制といった業務効率化が実現できます。伝票作成やポータルサイトへの物件情報の登録、契約にまつわる事務処理など、各種ツールを導入することで効率化できる業務は少なくありません。
生産性を向上させていくことは、国が推進している働き方改革に対応する上でも重要なポイントの1つです。たとえば残業時間の削減など、目に見えて成果が出やすいことから、業務効率化は不動産テックの恩恵を実感しやすい要素といえるでしょう。
4. 顧客満足度の向上
不動産テックの活用は業務効率化や生産性を高めることにとどまらず、顧客満足度の向上にも寄与します。たとえばオンライン接客やVR内見など、従来は見られなかった新たな顧客体験を提供できるからです。
こうした付加価値の創出は、長年にわたり不動産業界で課題となりがちだった他社との差別化を実現する上で重要な契機となるでしょう。顧客満足度の向上はリピーター創出や紹介による新規顧客の創出にもつながる重要な施策の軸となり得ます。
不動産テックの11のサービス

不動産テックの代表的なジャンルとそれぞれの分野におけるサービス例を紹介します。
不動産情報メディア
物件情報を集約して掲載するポータルサイトや、不動産に関する情報を提供するメディアは、不動産テックの身近な例の1つです。個別の物件情報をユーザーに提供し、不動産仲介業者へとつなぐ役割を果たします。不動産購入や賃貸に関する知識や街ネタなど、ユーザーにとって有益な状況を提供するWebサイトも不動産メディアの一種です。
物件以外の不動産に関するデータを業務に活用できるサービスも登場。不動産登記情報の取得や、災害データのチェック、日本全国の人口統計や居住者・立地特性といった情報を取得・分析できるシステムもあります。
【主なメリット】
- ・事業者にとって新規顧客の創出につながる
- ・物件情報の適切な開示が顧客にとっての利益につながる
【サービス例】
- ・ハウスコム:オンライン接客やオンライン内見により、物件探しがオンラインで完結
- ・AI物件レコメンド:相場価格査定や賃料・利回り査定などの情報を元に相場を可視化
マッチングサービス
物件所有者と利用者、不動産業務と不動産業界で働きたい人などをマッチングするサービスです。不動産プロフェッショナルなどの人材に特化したものや、工事の受注、民泊ビジネス、相続不動産や居抜き物件といった不動産の種類別に特化したものなど、多様なサービスがあります。リフォームやリノベーションの企画設計施工や、リフォーム業者に関する情報提供、ユーザーとのマッチングを行うサービスなども登場しています。
【主なメリット】
- ・目的に応じて最適なサービスを選んで活用できる
- ・事業者・ユーザー双方のニーズを満たせる
【サービス例】
- ・COSOJI:物件の共用部清掃を依頼したい管理会社と、就業したい人材のマッチング
- ・空き家deリゾート:リゾート地付近の空き家の売り手と買い手をマッチング
VR・AR
ヴァーチャルリアリティ(VR)・拡張現実(AR)の機器を不動産情報提供に活用するシステム。VR・ARで利用するデータ合成を行うサービスもあります。VRによる物件の疑似内見や、ARを使った家具の配置や使用材質のシミュレーションといった活用が進んでいます。
【主なメリット】
- ・現地での内見や運搬作業を伴うことなく、物件や生活空間を手軽に見てもらえる
- ・新たな顧客体験の提供につながる
【サービス例】
- ・オンライン内見:実際に訪問することなく、オンラインで物件の内見が可能
- ・HOME360:CGによるVRコンテンツを制作・編集・管理・共有できる
価格可視化・査定
データやAIなどの解析技術を用いて、不動産価格や賃料を査定、また将来の見通しを可視化するサービスやツールです。複数社にまとめて不動産の価格の査定を依頼できるWebサイトや、売却のための一斉見積もり依頼ができるサービスもあります。
【主なメリット】
- ・データにもとづく客観的な査定が可能に
- ・一括査定や一括見積もりにより、購入・売却時の比較検討がしやすくなる
【サービス例】
- ・プライスマップ:マンションの参考価格を地図上で確認できる
- ・HowMa:不動産のプロとAIによる、物件の売却査定が可能
スペースシェアリング
不動産や空きスペースのシェアやマッチングを行うサービスです。会議室やイベントスペース、駐車場や美容室などの空き状況の検索や予約ができます。短期から中長期の間、空いている不動産を有効活用するとともに、スペースを一定期間だけ利用したいユーザーに機会を提供します。
【主なメリット】
- ・空きスペースや物件を貸したい人・借りたい人を効率よくマッチングできる
- ・目的に応じて空きスペースや物件を提供・利用できる
【サービス例】
- ・店タク:使用していない店舗を貸したい人・借りたい人のマッチングが可能
- ・goodroom:サブスクリプションモデルで1カ月〜デザイナーズマンションに住める
ローン・保証
不動産取得に関するローンや保証サービスの提供、仲介・比較ができるサービスです。借り換えメリット査定やローンのシミュレーション機能などによって、ユーザーの住宅ローン選びをサポートします。
【主なメリット】
- ・顧客が自分に合った住宅ローンを探しやすくなる
- ・家賃保証サービスの提供により、賃貸契約時の集客間口を広げられる
【サービス例】
- ・モゲチェック:主要銀行・ネット銀行を網羅したランキングで住宅ローンを比較できる
- ・いえらぶ安心保証:個人契約であれば保証人不要で賃貸契約が可能
IoT
IoTとは、モノのインターネットのこと。ネットワークに接続されたデバイスを、住居やオフィスでの生活、または不動産サービスに活用します。Google Homeや電子鍵などの入居者向けサービスのほか、Webカメラを使った不動産のチェック、入退室管理システム、管理会社向けスマートロックシステムなど、不動産の業務を支援するツールもあります。
【主なメリット】
- ・入居者は住宅やオフィスの設備や機器をスマートフォンから状況確認・操作できる
- ・不動産管理会社は、現地に赴くことなく住宅やオフィスの状況をチェックできる
【サービス例】
- ・HOME WATCH:スマートホームを実現し、物件の付加価値を高められる
- ・BRO-LOCK:インターネット回線を活用したオートロックシステムを導入できる
ブロックチェーン
ブロックチェーンとは取引履歴を暗号技術によって1本の鎖のようにつなげることにより、重要なデータをネットワーク上で共有し合いながら管理する技術のことです。不動産業界にブロックチェーンの技術を取り入れることで、高いセキュリティ性を保ちながら情報の可視化が可能になります。また、間に多くの人を挟むことなく当事者同士で情報のやり取りが可能になるため、情報共有の効率化が高まりコスト削減にも期待できます。
【主なメリット】
- ・中央集権的な仕組みに依存しないオープンな情報の共有が可能になる
- ・仲介業者が介入しない取引が可能になり、安全かつ迅速に取引をしやすくなる
【サービス例】
- ・PROPY:分散型の所有権登録が可能な不動産マーケットプレイス
- ・NOT A HOTEL:不動産資産を共同所有する際の利用権をNFT化できる
クラウドファンディング
Webプラットフォームを使って、複数の投資者から資金を集め、不動産への投融資を行う仕組みです。不動産事業向けの資金を必要とする人と、資金の提供者をマッチングさせるサービスもあります。
【主なメリット】
- ・投資したい個人にとっては少額から不動産投資が可能になる
- ・資金調達をする側は、クラウドファンディングによって機会が拡大する
【サービス例】
- ・OwnersBook:不動産のプロが厳選した案件に1万円から投資できる
- ・ちょこっと不動産:1口1万円からオンラインで気軽に不動産投資が始められる
管理業務支援
不動産管理会社などの業務効率化を支援する仕組みです。顧客情報の管理、運営支援ツールなど、主にPM(不動産経営代行)業務をサポートするシステムを提供します。
管理業務支援には、IT重説の支援ツールも含まれます。IT重説とは、これまで店舗にて対面で行っていた不動産賃貸契約や売買契約における重要事項説明を、ビデオ通話を使用してオンライン上で行うことです。
【主なメリット】
- ・遠方の不動産を契約する際にユーザーに移動の負担がない
- ・ユーザーと業者間の日程調整の融通が利く
【サービス例】
- ・スマート物確:物件確認の電話対応や資料送信、受電状況の分析などをサポート
- ・Digima:見込み客の来店から受注までをサポートする不動産営業支援システム
仲介業務支援
不動産賃貸・売買の仲介業務を支援するツールです。顧客情報管理、営業支援、物件確認自動音声対応ツールなど、仲介業務に特化したサービスを提供します。
【主なメリット】
- ・仲介業務の効率化や人的ミスの回避につながる
- ・入居者にとって手続きの迅速化が実現する
【サービス例】
- ・いい生活 賃貸管理クラウド:入居者募集から契約、入居後の管理までを一元管理
- ・ITANDI BB 更新退去くん:入居中の問い合わせや更新・退去をWeb上で管理
不動産テックの推進は不動産業界の働き方改革にもつながる
今回紹介してきたように、不動産テックは「業務のデジタル化」にとどまらない大規模な産業へと発展しつつあります。不動産テックの活用はユーザーや管理会社の利便性向上に資するだけでなく、物件や設備などのハードウェアでは実現が難しかった他社との差別化を図る上でも有効です。
良質な情報を効率よく顧客に提供できるサービスや業務支援ツールの活用は、不動産業界の売上アップや業務効率化にも寄与します。働き方改革の実現にもつながる不動産テックの導入を、できるところから始めてみてはいかがでしょうか。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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