若手の知識で組織力を上げる「リバースメンタリング」とは
2024年02月20日 07:00
この記事に書いてあること
近年、注目されている新しい人材育成の手法のひとつである、リバースメンタリング。メンター、メンタリングという言葉は知っていても、リバースメンタリングには耳馴染みがないという方もいるのではないでしょうか。そこでこのコラムでは、リバースメンタリングの意味や、リバースメンタリングのメリットとデメリット、さらに失敗しない導入のステップまでを、幅広く解説します。
リバースメンタリングとは
リバースメンタリングとは、若手社員が指導する側のメンターとなり、先輩社員やベテラン社員に助言を行う取り組みのことです。通常のメンタリングでは、知識や経験が豊富な先輩がメンターとなって若手社員を指導しますが、リバースメンタリングはそんな両者の立場が逆転した育成方法で、「逆メンター制度」とも呼ばれます。
リバースメンタリングの特徴は、ベテランよりも若手社員のほうが親しんでいる分野や、豊富に持っている知識を指導テーマにすることが多いという点です。たとえば、スマートフォンなどのデジタルデバイスの使い方や、SNSの知識など、最新技術や、比較的新しいジャンルの情報を学ぶことができます。
リバースメンタリングの目的
メンタリングの目的は、先輩社員や上司が、業務の経験の浅い若手社員をサポートすることです。アドバイスや教育を行うことで若手の成長を促し、戦力化を目指します。
それに対してリバースメンタリングの主な目的は、世代間の交流や社内のスキルの底上げです。若手の知識や新しい視点を社内で共有することで、組織内でイノベーションを起こすのが狙いです。
リバースメンタリングはこんな会社におすすめ
では、リバースメンタリングはどのような会社で、特に効果を発揮するのでしょうか。
リバースメンタリングは、従来の育成に関する発想を逆転した取り組みであり、新しいコミュニケーションのあり方です。若手だからこそ知っている知識やトレンド情報を社内に共有することができると同時に、若手社員たちの新しい一面や考え方を知ることもできます。
そのため、リバースメンタリングは、部署間のスキルの共有ができずに組織が硬直化している会社や、市場の変化に応じたビジネスを展開したい会社で導入すると効果的です。デジタル技術や最新トレンドに関する知識が社内で広がることで、アイディアが活性化し、ビジネスの幅も広がります。
年功序列のカラーが強い会社や、多様な人財を活用しきれていない会社、ベテラン層が多い会社などにも効果があります。社員間の交流が盛んになることで世代の壁がなくなり、チーム内や、部署を超えた連携も強化されます。
リバースメンタリング導入のメリット
では、リバースメンタリング導入は、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
新しい価値観や最先端の知識を共有できる
リバースメンタリングの最大のメリットは、若手社員のノウハウを、事業や会社の成長のため活用できることです。先輩が若手に伝えるビジネススキルや、通常の研修の範囲では学ぶことができない、若手ならではのリテラシーを社内に共有できるため、組織全体の知識の底上げができます。
若手社員の価値観や考え方に触れることが、先輩社員にとっての刺激にもなります。視野が広がり、仕事上での新しい気付きや、改善提案にもつながるでしょう。
若手社員の育成とモチベーションアップ
教える経験を通して若手社員が成長するのも、リバースメンタリングのメリットです。自分が持っている知識を発信することで、積極性や主体性が身に付きます。また、情報をわかりやすく整理して伝えるプレゼン能力も強化できて、その分野への理解も深まります。
リバースメンタリングを通して、自分の能力や知識が会社にとって価値があると認められるため、若手社員のモチベーションや、会社へのエンゲージメントもアップ。離職率の低下にも効果があります。
コミュニケーションの活性化
上司・先輩と、部下・若手という双方のメンタリングによって、社内のコミュニケーションが活性化します。それまで知らなかった相手の考え方や、大切にしているものを理解できるため、チームでの仕事が円滑化します。相談や報告、サポートの依頼もしやすくなり、業務効率化にもつながります。
社員間の信頼関係を築ける
下の世代からベテラン層に知識を伝える機会を作ることで、お互いに対して、自分にはない強みを持っているというリスペクトの気持ちが生まれます。仕事に必要な情報をお互いに提供し合えるという、信頼関係も築けます。
管理職にとっては、若手社員の考え方やスキルに対する理解が深まることで、マネジメントをしやすくなるというメリットもあります。
リバースメンタリング導入のデメリットや注意点
組織全体や、幅広い世代にとってメリットが大きいリバースメンタリング。では、導入する上では、どのような点に注意すべきなのでしょうか。デメリットも含めてお伝えします。
先輩に指導する若手社員に負担がかかる
若手社員が上司や先輩に教えることは、心理的ストレスにつながることもあるため、注意が必要です。教えることに慣れていない人にとっては、リバースメンタリングの準備や実際の指導に緊張感を抱くこともあります。相手に対して遠慮をして、大切な情報を伝えられないというケースもあるでしょう。
リバースメンタリングで若手社員が強みを発揮するためには、指導に関する時間などのルール設定や、メンター側を複数人の体制にするなど、メンターに負担をかけないための工夫が重要です。
ベテランが若手からの助言に抵抗を感じることも
ベテラン社員にとっては、若手や後輩からのアドバイスや指導に抵抗を感じることもあります。指導を受ける側であるメンティーが相手に耳を傾けない態度や、価値観を否定してしまう姿勢では、リバースメンタリングは成功しません。
大切なのは、指導を受ける側にリバースメンタリングの目的やメリットを共有することです。若手から知識を吸収するという意識作りを行いましょう。
お互いの能力や価値観を認め合うことが重要
若手の知識や新しい視座を広く共有するためには、世代間や、自分と違うバックグラウンドを持つ人を認め合うことが重要です。
上司や先輩にとっては、これまで触れてこなかった価値観や、新しいノウハウに意見を言いたくなることもあるでしょう。社内のコミュニケーションやビジネスを活性化させるというリバースメンタリングの目的を達成するために、前提として相手を尊重し、その言葉や指導を受け入れるという考え方を、社内に浸透させましょう。
リバースメンタリングの導入ステップ
リバースメンタリングの効果を最大化するために、導入は以下のようなステップで進めましょう。
リバースメンタリングの目的を周知
まずは、リバースメンタリングの目的や方法を周知します。指導をする側だけではなく、受ける側の心理的な受け入れ体制を作るためにも、リバースメンタリングの仕組みだけではなく、社員の成長や組織の活性化につながることを、説明会などの機会で丁寧に伝えることが重要です。
実施が決まったら、オリエンテーションを行い、リバースメンタリングの進め方やルールを共有しましょう。教える経験が少ないメンターに向けた研修を行うことも有効です。
テーマの設定
リバースメンタリングで伝えるテーマを決定しましょう。テーマは、ITやデジタルデバイスの使い方など、実際に業務に役立つ知識だけではなく、職業観など社員の考え方を伝えることも、他の社員の学びにつながります。
子育てと仕事の両立方法や、社外でのボランティア活動など、経験談を社内に伝えるというリバースメンタリングも、社員の気付きや、働き方の改善の面で有効です。
メンターとメンティーの組み合わせを決定
リバースメンタリングを行う、メンターとメンティーの組み合わせを決定します。役職別のリバースメンタリングの目的などに応じて、人選を進めましょう。
組み合わせを決定する際には、上司と部下など、日頃マネジメントをする側とされる側の組み合わせは、指導がしにくくなるため、避けるのがポイントです。交流のない部署の社員を選ぶなど、人選を工夫しましょう。
実施と効果測定
テーマや社員の組み合わせを決定したら、リバースメンタリングを実施します。定期的にメンターとメンティーの組み合わせをローテーションする仕組みなどを作り、運用しましょう。また導入後は、定期的な振り返りを行うことも重要です。リバースメンタリングの効果や、双方の満足度もチェックしながら、必要に応じてテーマや運用方法を見直しましょう。
組織を活性化させる新しいメンタリングを取り入れよう!
若手を出発点にした教育という新しい人財育成を取り入れることで、日頃、学ぶ機会が少ない管理職やベテラン社員のスキルアップにもつながります。「上から下へ」という育成の発想を転換することで、今までにない形の対話が生まれ、会社に新しい風が吹くでしょう。組織を活性化させるためにも、リバースメンタリングの導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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