サバティカル休暇とは? 社員の意欲や能力アップにつながる制度を解説
2023年10月27日 14:13
この記事に書いてあること
社員のワークライフバランスの実現やリフレッシュなどを目的に、従来の有給休暇とは異なるユニークな休暇制度を設ける企業が増えています。そのひとつが、ヨーロッパで広がったサバティカル休暇です。このコラムでは、そんなサバティカル休暇の概要や、制度のメリット・デメリット、そして導入時のポイントを解説。企業の成功事例も通して、サバティカル休暇の全体像をお伝えします。
サバティカル休暇とは?
サバティカル休暇とは、働く人の行動変容のため、一定の長期期間、勤務した人に与えられる長期休暇のこと。19世紀にアメリカの大学で導入された教員の研究のための長期休暇が起源で、1990年代に、ヨーロッパで、社員の離職対策として広がったと言われています。
サバティカル休暇の期間や取得条件は企業によって異なりますが、休みが1ヵ月以上にわたるのが一般的です。1年や2年といった、長期間に及ぶケースもあります。
サバティカル休暇の目的
サバティカル休暇はもともと仕事から離れて研究に専念するため設定されていましたが、現在では、取得理由に決まりがないのが一般的です。休暇の使い方は、大学進学や海外留学、資格取得、介護や育児、ボランティア活動など、多岐にわたります。
社員のワークライフバランスの実現やスキルアップ、また、働く上でのポジティブな行動変容のきっかけを作るのが、サバティカル休暇の主な目的です。
サバティカル休暇の取得を促進するメリット
仕事外の活動を望む社員の希望を叶える、サバティカル休暇。長期に及ぶ休暇の付与は、企業側にどのようなメリットを生むのでしょうか。
人財の流出を防げる
サバティカル休暇の大きなメリットは、人財の流出を防げることです。社員が仕事を長期間、離れて、勉強や私生活での活動に専念したい時、会社に長期休暇の制度がない場合は、退職や休職が必要です。サバティカル休暇を利用すれば、社員が仕事外でやりたいことを実現しながら企業で働き続けることができます。ワークライフバランスや学び直しを支援することで、従業員満足度もアップ。会社へのエンゲージメント向上が、離職防止にもつながります。
休暇中の学びを仕事にフィードバック
社員のリカレント教育を促せるのも、サバティカル休暇のメリットです。リカレント教育とは、社会に出た後も、成長のために仕事と学びを繰り返すこと。社会人になり、まとまった時間がとれず学び直しを諦めていた人も、サバティカル休暇を使うことでスキルアップができます。
休暇中に大学や海外留学で学んだり、社会人インターンなどを経験したりすることで、社員が成長します。職場復帰後、身に付けたスキルや能力を仕事で発揮して、成果を上げることが期待できます。
休暇中の経験で社員の視野が広がる
サバティカル休暇は一般的に、就学や他の場所での職務などの学び直し以外の目的でも取得できます。休暇中に、育児や介護、ボランティア活動といった多様な経験を積むことも可能です。育児や社会活動などの仕事外の経験や、人との出会いを通して、新しい発想力や知識が身に付きます。広げた視野を持って、ビジネスに役立つアイデアや知見を会社に持ち込めるのも、サバティカル休暇のメリットです。
企業イメージの向上と人財獲得
サバティカル休暇を導入することで、働く人の希望に寄り添い、多様な働き方、休み方を認める企業というイメージが定着します。社員を大切にする企業として、求職者にとっての魅力もアップ。採用活動でも有利になり、新しい人財の獲得につながります。
サバティカル休暇のデメリットや注意点は?
では、サバティカル休暇を導入するデメリットや、注意すべき点はあるのでしょうか? 気を付けたいポイントは、次のとおりです。
休暇取得社員の業務の調整が必要
サバティカル休暇は最短でも1ヵ月以上、長くて1、2年にわたる長期休暇です。そのため、長期間、仕事から離れる社員が担当していた業務をチーム内で配分する必要がある点に、注意が必要です。
業務の調整や人員の補充が不十分だと、休暇取得社員の周りのメンバーの負担が増え、不満を招くケースもあります。サバティカル休暇を取りやすい環境を作るためにも、業務の調整は丁寧に行いましょう。
社員がそのまま離職する可能性も
仕事を離れて他の活動に従事する期間を経て、社員が離職してしまう可能性があるのは、サバティカル休暇のデメリットです。学び直しや社外での活動で視野を広げた結果、別の場所で働くという選択をするケースがあることにも、注意が必要です。
収入の減少を説明する必要がある
サバティカル休暇中に社員の収入が変化する点にも注意しましょう。サバティカル休暇を有給で付与するか、無給とするか、また一定期間は有給にするかなど、手当については各企業が判断します。特に休暇が長期間に及ぶ場合は収入が減少するケースが多いため、トラブル防止のためにも、休暇中の手当に関して社員に丁寧に説明をすることが大切です。
サバティカル休暇を導入するには?ポイントを解説
社員にも企業側にもメリットがありつつ、長期間に及ぶため運用に注意が必要なサバティカル休暇。制度を導入する上での、ポイントをお伝えします。
休暇を取得しやすい環境を整える
サバティカル休暇の導入を決めたら、希望者が取得しやすい土台を作るために、まずはサバティカル休暇の制度や、導入の目的を社内に周知しましょう。サバティカル休暇取得者が長期間休んでも業務を滞りなく行うための仕事の振り分けのルールや、人員補充の体制を作ることも重要です。休む側も、休暇取得社員をフォローする側も、サバティカル休暇をスムーズに受け入れられる環境を整えましょう。
休暇の目的を確認する
サバティカル休暇を、社員側、企業側それぞれにとって有意義なものにするため、取得目的を必ず確認しましょう。目的を設定することで、休暇取得社員が高い意識で活動に取り組むことができます。学び直しや資格取得を理由に休む場合は、仕事へのフィードバックを目的とすることで、休暇終了後の離職を防げます。復職後の活躍につなげるために、休暇中の活動レポートの提出を求めることも有効です。
期間や休暇中の手当について周知する
取得のハードルを下げるため、サバティカル休暇に関する不明瞭な点を解消することも重要です。制度の対象となる社員や、休暇を取得できる期間、手当の有無、また社会保険の取り扱いについても社員に共有しましょう。大学進学や海外留学、資格取得などのスキルアップにつながる活動に対する学費の補助も、サバティカル休暇の取得を推進できます。
復職を受け入れる体制を整える
サバティカル休暇の導入には、長期休暇後の復職への不安を払しょくする取り組みも欠かせません。休暇に入る前に、休暇終了後は同じ部署に戻るなど、復職時の計画を決めておきましょう。休暇中も定期的に所属チームのミーティングに参加する機会を設けて業務を把握できるようにするなど、休暇取得者が仕事に戻りやすい体制を整えておくことも重要です。
サバティカル休暇の企業事例
では実際に、企業でサバティカル休暇はどのように運用されているのでしょうか。導入事例をご紹介します。
1ヵ月の有給サバティカル休暇で満足度向上
求人メディアを運営する株式会社アトラエは、社員の人生を豊かにする制度として、連続して1ヵ月、有給で休暇を取得できる「サバティカル3」を導入。目的の制限はなく、通常の休暇では不可能な長期旅行や海外留学、資格取得、家族と過ごす時間に充てられる制度として利用されています。
仕事の属人化防止や生産性向上、離職防止などの副次的効果も期待されており、休暇取得社員が体験を発信したり、休暇取得のために行った業務改善方法を周知したりするなどで、さらなる浸透を図っています。
休暇をスキルアップや副業に活用
医療用医薬品製造を手がけるMSD株式会社では、利用目的を問わない40日の「ディスカバリー休暇」を導入。学び直しや副業、ボランティア、子どもと過ごす長期休暇などを目的に、2020年までに約40人が取得しています。
休暇社員の担当していた業務の調整や、フォローを積極的に行う雰囲気が、ディスカバリー休暇の取得を後押し。長期休暇取得を機に行った業務見直しによる効率化や、部長の長期休暇時の権限委譲によって部下が成長するといったメリットも生まれています。
最長3ヵ月、有給1ヵ月のキャリアを見つめ直す休暇
LINEヤフー株式会社 は2013年、キャリアを見つめ直す目的で利用できる最長3ヵ月のサバティカル休暇制度を導入しました。対象は勤続10年以上の正社員で、2~3ヵ月の休暇を取得可能。休暇中は1ヵ月分の給与が「休暇支援金」として支給されます。取得後にはレポートを提出する必要があり、取得社員からは「子育てと家庭、仕事、キャリアのバランスを見つめ直すことができた」などの報告があがっています。
新しい休暇制度で社員の活躍の幅を広げよう!
社員の視野の拡大や、人生やキャリアを見つめ直すことにつながるサバティカル休暇。休みが長期間に及ぶため導入への壁を感じるかもしれませんが、人財の定着や社員のスキルアップなど、企業側にもメリットが多い制度です。日本ではまだ導入企業が少ないからこそ、魅力ある職場への第一歩として、導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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