産後パパ育休制度の概要とメリット
2023年11月16日 07:00
この記事に書いてあること
政府の子育て支援策の一環として2022年10月からスタートした、産後パパ育休(出生時育休)制度。男性の育休取得率の向上や働き方改革の推進力となるか、注目を集めています。そこで今回は、産後パパ育休制度の仕組みや法律の内容、企業にもたらすメリットを解説。また、男性の育休取得率を上げるために企業内で必要な取り組みについてもお伝えします。
産後パパ育休制度とは?
「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度とは、育児・介護休業法の改正に伴い、2022年10月に創設された制度です。夫婦ともに子どもが1歳になるまでの間に取れる既存の育休とは別に、取得ができます。男性の育休取得を促進するため、子どもの出生直後で、休業取得ニーズの高い時期を対象にした制度として新たに設けられました。
また、育児・介護休業法の改正で、1歳までの育児休業を分割して取得できるようになりました。それまで原則的に分割はできませんでしたが、2022年10月からは、男女ともに2回まで分けて取得ができます。働く人の希望や仕事の状況に応じて、夫婦が交代で休業するなど、柔軟に休めるように変更されました。
また、育児・介護休業法改正で2023年4月から施行されたのが「育児休業取得状況の公表の義務化」です。従業員1,000人以上の企業は、育児休業等の取得状況を年1回、公表することが義務付けられました。
産後パパ育休を取得できる時期と期間
産後パパ育休は、子どもの出生後8週間以内に、4週間(28日)まで、最大2回に分けて取得が可能です。女性の8週間の産後休暇の間に、パートナーも休むことができます。会社に申し出る期限は、原則的に、休業の2週間前まで。2回に分割して取得する場合も、初めにまとめて申し出る必要があります。
休業中の給付金は?
雇用保険の被保険者が産後パパ育休を取得した場合、「休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上ある」など一定の要件を満たすと、出生時育児休業給付金を受け取ることができます。給付額は、既存の育休中に支給される育児休業給付金と同様に、「休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)×67%」で計算されます。
なお、既存の育休の間は原則的に就業できませんが、産後パパ育休に関しては、労使協定を締結している場合、労働者が合意した範囲内で、休業中に仕事をすることが可能です。
また、産後パパ育休に関しても、既存の育休と同様に社会保険料の免除制度があります。「その月の末日が育児休業期間中である場合」など一定の要件を満たせば、産後パパ育休期間の月給や賞与にかかる社会保険料が、被保険者本人負担分、事業主負担分ともに免除されます。
産後パパ育休制度が企業に与えるメリット
では、産後パパ育休制度の創設は、企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか? 働き方や労働環境に与える主な効果は、次のとおりです。
仕事と家庭の両立支援が進む
育児や家事負担が増える産後の時期にパートナーが休業することが、出産した女性の身体的、精神的負担の軽減につながります。また、産後パパ育休をきっかけに男性の育児への参画が進めば、男女ともに、育児と仕事の両立に前向きに取り組めるようになるでしょう。
分割や夫婦間での交代など、工夫して休むことで、出産した女性が復職時期を柔軟に選べるようになるのもメリットです。男性の育休取得を促すことで仕事と私生活の両立支援が進み、男女ともに、私生活とバランスをとりながらキャリアを継続することができます。
会社に対する満足度やモチベーションが高まる
産後パパ育休制度を活用する社員が増え、仕事と私生活との両立支援が得られると、社員の会社や仕事への満足度が高まります。男性の育休に対する周りの理解とサポートが得られる環境があれば、社員の会社へのエンゲージメントが向上。高いモチベーションが生まれ、仕事の生産性アップにもつながります。
魅力ある企業として採用面で有利になる
産後パパ育休制度や男性の育休の取得推進は、人財面でのメリットもあります。女性の育休に比べて取得率が低い男性育休を取りやすい企業は、子育て中の求職者や、将来、子どもを持ちたい求職者にとって魅力があります。社員のニーズに応える社風があり、私生活との両立支援が進む会社として社外からのイメージが上がることで、優秀な人財が集まるという効果が期待できます。
育児で得たタイムマネジメント力や視野を仕事に活かせる
産後パパ育休や、1歳までの育休を取得した社員が復職後、育児経験で得た視野の広がりや、タイムマネジメントの力を仕事に生かして活躍するというメリットもあります。子育てや家事の経験から得たアイデアや、生産性向上の考え方を仕事に持ち寄ってくれるでしょう。
育休取得社員が、その後も子育てや家庭生活に積極的に関わるようになれば、時間外労働を減らすため、それまでより効率的に仕事をすることが期待できます。タイムマネジメントに対する高い意識が周りのメンバーにも良い影響を与え、労働時間の削減や、チーム全体の生産性向上につながります。
子育てパパ支援助成金が受け取れる
男性の育休取得を推進する中小企業は、要件を満たすことで「両立支援等助成金」を受け取れます。
男性育休に関連する両立支援等助成金が、子育てパパ支援助成金(出生時両立支援コース)です。男性労働者が育休を取得しやすい雇用環境や業務体制の整備を行い、男性労働者が育休を取得した中小企業に対して、20万円~60万円の助成金が支給されます。
男性の育休取得を進めるために企業に必要なものは?
男性の育休取得率アップを目指して創設された、産後パパ育休。では、男性の育休取得を進めるために、企業にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。
育休制度を周知し浸透させる
男性育休取得を進める上で前提となるのが、制度を社内に浸透させることです。男性が取得できる育休制度に関する情報を正しく知らせることで、育休を申請しやすい土壌を作ることができます。産前から取得を計画し、スムーズに申請ができるよう、産後パパ育休の対象時期や取得方法、育休中の給付などについて、社内研修を行うなどして社員に周知しましょう。
休業中のフォロー体制を整える
男女問わず育休を抵抗なく取得できるように、チームや部署内で、育休取得社員をフォローする体制を整えましょう。子どもが生まれた社員が休業すると他の社員の負担が増える状況では、育休の取得は進みません。業務量が多く、お互いにサポートできる余力がない職場では、ムダな業務を洗い出したり、業務フローを改善したりといった取り組みを行って、希望する社員が安心して育休を取れる環境を作ることが大切です。
ツールを活用し業務効率化を進める
男性育休の取得推進には、自動化やITツールを使った生産性向上も有効です。ツールの導入によって、事務作業のスリム化やコミュニケーションの活性化を進めることで、育休取得を妨げる人財不足の問題に対処できます。
休みづらいという意識を生む業務の属人化をなくす取り組みも必要です。グループウェアや社内情報共有ツールなど、業務やノウハウの偏りを減らし、チームでの仕事を効率化するツールも活用しましょう。
会社を成長させる男性育休を進めよう!
産後パパ育休などの男性の育休取得は、働く人のワークライフバランス向上だけでなく、生産性向上や採用の強化など、企業側のメリットも大きい取り組みです。日本全体ではまだ男性育休が進んでいない今こそ、積極的に取得を推進することで、働き方改革を大きく前進させることができるでしょう。
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記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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