忖度の意味とは? 正しい使い方や気をつけるべきことをわかりやすく解説

From: 働き方改革ラボ

2024年04月04日 07:00

この記事に書いてあること

2017年の流行語大賞の年間大賞を受賞した「忖度(そんたく)」は、もうすっかり馴染みのある単語になっていることでしょう。しかし、本来とは異なった意味が広がっていることもあり、ビジネスシーンで用いる際には注意が必要です。

この記事では、忖度の正しい使い方や、用いる際に気をつけるべきことを解説します。

「忖度」の意味とは

はじめに、「忖度」の意味を解説していきます。先述したように、「忖度」は本来と異なる使われ方をしていることが多いため、この章では、まず本来の意味からご紹介します。

「忖度」の本来の意味

「忖度」の本来の意味は、「相手の気持ちを推測すること」です。たとえば、「上司に忖度する」は「上司の気持ちを推測すること」を意味する、ポジティブな言葉です。

「忖度」には日本人の性質があらわれている

忖度のほかに相手の気持ちを推測することを意味する言葉としては、「阿吽(あうん)の呼吸」などが挙げられます。

「忖度」「阿吽の呼吸」といった言葉には、日本人の性質があらわれています。

かつては、社員に対して画一化した教育を実施する日本企業が多く、相手に「忖度」し、「阿吽の呼吸」によって業務を進めていく様子が見受けられました。社員同士が、阿吽の呼吸によって成り立つ関係であれば、上司は部下に対して細かい指示を出す必要がなく、業務を効率的に進めることが可能となります。

相手の気持ちや状況を配慮する日本人の性質が業務効率化にもつながっており、仕事においても大切な言葉だと考えられます。

近年の「忖度」の使われ方とは

では、近年、「忖度」はどのような使われ方をしているのでしょうか。この章では、近年の「忖度」の使われ方を解説します。

近年の「忖度」の使われ方

近年の「忖度」は、どちらかというとネガティブな意味として用いられることが多いです。たとえば、「上司に忖度する」は「上司の顔色を伺う」「上司にごまをする」といったように捉えられてしまいます。

政治や報道などでも使われる

「忖度」は、2017年の流行語大賞も受賞しています。その理由として、森友学園・加計学園問題が挙げられます。

文書改ざんが話題となった森友・加計学園問題では、役人が首相官邸の意向に配慮したのではないかとの報道が多くされました。その際、「忖度」という言葉が、本来持つ「配慮する」「慮る」を一歩超えた、「顔色を伺う」「ごますり」などのネガティブな意味合いで使われたことが要因の一つと考えられます。

ビジネスの場における「忖度」の例文

ビジネスの場における「忖度」の例文を解説していきます。

1. 「忖度」の本来の意味での例文

まず、「忖度」の本来の意味での例文です。どちらもポジティブな意味を含んでいます。「忖度」は名詞のため、用いる際には「する」「しない」/「ある」「ない」をつけましょう。

「相手先の意向に忖度しながら進めていきましょう」

まず、「相手先の意向に忖度しながら進めていきましょう」です。

これは「相手先の意向を汲み取り進めていく」という意味を持ちます。たとえば相手先に連絡するタイミングや、提案の仕方などを配慮し、お互いが気持ちよくプロジェクトを進められるように努めたいという気持ちが込められています。

「毎日忙しく働く上司に忖度する」

次に「毎日忙しく働く上司に忖度する」です。これは「毎日忙しく働いている上司を慮る」という意味を持ちます。これは、上司の気持ちや状況を汲み取る、思いやりを込めた使い方です。

2. 「忖度」の現在の意味での例文

続いて、実際に使われることの多い「忖度」の例文をご紹介します。こちらはネガティブな意味が含まれています。

「あの人は社長に忖度ばかりしている」

まず、「あの人は社長に忖度ばかりしている」です。これは、「あの人は社長の顔色ばかりをうかがっている」「あの人は社長にばかりごまをすっている」といった意味を持ちます。

「上司の意見に忖度する」

次に「上司の意見に忖度する」です。これは、「自分の本意でなくとも、上司にごまをすり、上司の意見に合わせる」という意味で使われます。

「忖度」の類語と対義語

本来良い意味を持つ「忖度」は、近年だとネガティブな意味として捉える人も少なくありません。そこでこの章では、「忖度」を言い換えたいときに知っておきたい類語を解説します。あわせて対義語もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

「忖度」の類語と例文

まず「忖度」の類語です。「忖度」を用いたいときに「忖度」の類語を知っておけば、誤解を受けずに気持ちを伝えることができます。

1.「推し量る」

ひとつ目が、「推し量る」です。「推し量る/推し測る」は、「とある出来事や事柄について、他の出来事をもとに判断すること」を意味し、「とある出来事や事柄」には、相手方の気持ちや状況も含まれます。具体的には「相手方の担当者の気持ちを推し量る」といった使い方をします。

2.「推察」

ふたつ目が「推察」です。「推察」は、1の「おしはかること」をあらわす名詞です。具体的な使い方としては「上司が忙しそうにしている理由を推察する」などが挙げられます。似た用語としては「推量」「推測」「推定」が挙げられますが、「推察」は、それらの用語のなかでも相手の気持ちや状況を汲み取る意味合いが強くなります。

3.「慮る」

最後に、「慮る」です。「慮る」は、「よく考える」ことをあらわします。そこに「相手」や「上司」などの名詞を付け加え、「相手の気持ちを慮る」「上司を慮る」といった使い方をすることで、「相手の気持ちや状況についてよく考える」という意味になります。

「忖度」の対義語

では、「忖度」の対義語にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは3つ、ご紹介します。

1.「利己的」

ひとつ目が「利己的」です。「利己的」とは、「相手や周囲のことを考えずに、自分の利益のことだけを考える」ことを意味します。「忖度」が「相手の気持ちや状況を考える」ことを意味しているため、対立している言葉といえます。

2.「身勝手」

ふたつ目が「身勝手」です。「身勝手」とは、「自己の都合や利益だけを追求すること」を意味します。そのほかの名詞だと「わがまま」も「身勝手」と同じ意味です。「利己的」が「利益」を基準にしているのに対し、「身勝手」は定義がやや広く、「都合」や「状況」も含まれます。

3.「独善」

最後に「独善」です。「独善」は、「自己のみが正しいと思い込む態度」を意味し、「ひとりよがり」とも近しい意味を持ちます。自らの考えのみを優先するため、相手の気持ちや状況を考えない態度が「忖度」と対立すると考えられます。

「忖度」を用いる際の注意点

「忖度」を用いる際に注意したいポイントを解説します。とくにビジネスシーンで用いる際には、クライアントからの印象にも直結しますので、下記の点に気をつけながら使用するようにしましょう。

正しい意味でも誤解される可能性がある

それは、正しい意味で使っていたとしても誤解される可能性があることです。ご紹介したように、本来「忖度」は、相手の気持ちや状況を慮ることをあらわらすポジティブな用語ですが、もしかしたら相手はネガティブな意味として認識しているかもしれません。

大切なのは、相手に対して、自分の気持ちが適切に伝わることです。大勢のいる場所や、関係値が浅い人に対して使用する場合は、誤解を招かないよう、言い換えをするほうが無難でしょう。

ビジネスシーンで忖度をすると起こり得る弊害とは? 対策も解説

最後に、ビジネスシーンで忖度をするとどのような弊害が起こり得るのかと、その対策について解説していきます。

忖度をすると起こり得る弊害

人材が多様化している状況で忖度をした場合、会社内ではどのようなことが起きてしまうのでしょうか。

たとえば、部下が、上司が出すと思われる指示を忖度し、気を利かせて業務を進めたとしましょう。部下と上司の思惑が一致すれば問題はありませんが、部下の行為が上司の思惑と全く異なっていた場合、意味のない仕事を行ったことになります。その時間は無駄な時間となり、損失となってしまいます。また、無駄なだけでなく、会社に大きな損害を与えてしまうこともありますので注意が必要です。

忖度によって起こり得る弊害の対策

それでは、社内における忖度の弊害をなくするためには、どのような対策が必要なのでしょうか。

対策として有効なことは「コミュニケーションを密にすること」に尽きます。あなたが考えていることは、言葉にしない限り相手に伝わることはありません。

業務を進める上では、大まかに伝えただけでは、相手が十分に理解できないこともあり得ます。質の高い仕事を行うためには、お互いに考えを伝えあい、細かいところまで打ち合わせしたり、議論したりする必要があります。

コミュニケーションを密にして、自分と相手の双方が業務内容を十分に理解し、同じ方向を向いて仕事をすることが大切だといえるでしょう。

まとめ

今回は、「忖度」の正しい使い方や、用いる際に気をつけるべきことを解説しました。ビジネスでのコミュニケーションなどで「忖度」を用いる際、たとえ本来の意味を用いていたとしても、相手先に誤解をされてしまっては、気持ちが伝わりません。「忖度」を用いる際には、ご紹介した注意点を意識して用いるようにしましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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