テレワーク実施率は低下中。アフターコロナの働き方改革を進める方法は?
2025年07月22日 07:00
この記事に書いてあること
コロナ禍にテレワークが一般化したものの、テレワークの実施率は少しずつ低下しています。働く人の新しい選択肢として普及したテレワークの頻度がなぜ今、減っているのでしょうか。このコラムでは、そんなテレワーク実施率に関する現状や、出社回帰が進む理由を解説。さらに、従業員の満足度が高い柔軟な働き方を導入している企業の事例をご紹介します。
テレワーク実施率は下がっている?
コロナ禍で対面を避ける必要性が高まったことから、テレワークを導入する企業が増加。働き方の選択肢が増え、コロナの影響が落ち着いた後も、フルリモート型の勤務体制を採用する企業もあります。
しかし、アフターコロナの時代に入り、テレワークからオフィス勤務へと戻す企業も増えています。テレワークに関する調査結果からも、出社回帰の動きが見て取れます。
総務省が主導した「テレワークの普及状況及び普及・定着に向けた取り組み方針」の調査結果によると、2021年には51.9%に上った企業のテレワーク導入率は、2023年には49.9%に低下。地方部では2023年に38.2%にまで減少しています。また、パーソル総合研究所の調査によれば、2023年7月時点でテレワークをしている人の割合は、正社員で22.2%。2020年4月以降、もっとも低くなっています。業種別に見ても、ほとんどの業種で、テレワークをしている人の数は減少傾向にあります。
参考:テレワークの普及状況及び普及・定着に向けた取組方針|総務省
参考:第八回・テレワークに関する調査/就業時マスク調査|パーソル総合研究所
出社回帰が進んでいる理由
ではなぜ、オフィス出社に回帰する人や企業が増えているのでしょうか。働く人へのアンケート結果からうかがえる主な理由は、以下のとおりです。
テレワークはコミュニケーションがとりづらい
パーソル総合研究所の調査によると、テレワーク時に不安を抱く人の多くが、「非対面のやりとりは、相手の気持ちがわかりにくく不安だ」と感じていることがわかっています。株式会社ネクストレベルが2023年に行った調査でも、「フル出社」という働き方に満足する理由として、出社しているほうがコミュニケーションがとれて効率が上がるという意見がありました。同僚と対面しないで働くテレワークは、コミュニケーションがとりづらいことから、コロナのリスク軽減にともなって、出社を選ぶ人や組織が増えていることがわかります。
参考:「アフターコロナの働き方調査!フル出社が4倍に増加し、満足度は低下傾向に!」|株式会社ネクストレベル
生活習慣や公私のバランスが崩れる
テレワークは、生活習慣や、仕事と私生活のバランスが乱れやすいことも、出社回帰が進む理由のひとつです。ネクストレベル社が働く人に対して行ったアンケートでは、テレワークのデメリットについて、「メリハリがなく生活習慣が乱れてしまう」、「仕事の効率が非常に悪くなる」、「怠けてしまう」などの意見が挙げられました。公私のメリハリがなく仕事に集中しにくいという業務効率の観点からも、オフィス出社が選択されています。
テレワークで行える仕事がない
出社回帰の選択には、コミュニケーションや業務効率面の理由がある一方で、業種や職種的にテレワークに向かない仕事であることや、テレワークが不可能な仕事だったという要因もあります。コロナ禍にテレワークに移行したものの、業務内容により適した出社勤務に戻したという企業や働く人もいます。
フル出社勤務にも課題が
ネクストレベル社の調査では、2020年4月~2023年4月のコロナ禍で、フル出社勤務をしていた人は全体の9.5%でしたが、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した2023年5月以降、フル出社で働く人は38.5%となり、約4倍に増えています。
コロナ禍に比べてフル出社の実施率は増えているものの、同調査では、フル出社で働く人は、フルリモートで働く人よりも、働き方に対する満足度が低いことがわかっています。アンケートではフル出社に対して、「出社のための身支度の時間が無駄」や、「会社に行かなくてはならなくなったので時間効率が悪くなってしまった」等の不満に声もあがっています。
出社とテレワークを組み合わせた「ハイブリッド型」とは?
出社回帰が進む一方、テレワークのほうが働きやすいと感じる人も多い中で、「ハイブリッド型」を導入する企業も増えています。
ハイブリッド型は、業務内容や従業員それぞれの事情をふまえて、「週に2、3日はテレワーク」というように、出社とテレワークを使い分ける働き方です。ネクストレベル社の調査では、2023年5月以降、出社とテレワークを組み合わせたハイブリッド型で働く人は46.2%で、アフターコロナの働き方の中でもっとも多くを占めています。
また同調査では、ハイブリッド型はフル出社に比べて、従業員の満足度が高いこともわかっています。ハイブリッド型は、業務効率と、従業員の満足度を両立させる働き方として、アフターコロナに定着しつつあると言えるでしょう。
柔軟な働き方で成果を上げる好事例
では、フルリモート型、フル出社といったルールに対する不満や働き方に関する問題を、企業はどう解消しているのでしょうか。以下に、自社での取り組みを検討する際に参考にできる、企業の成功事例をご紹介します。
生産性向上に適したテレワークと出社のバランスを検証
アフラック生命保険株式会社は、時間と場所にとらわれない働き方の実現と、生産性向上による成果の最大化を目的として、テレワークと出社のバランスの検証を行いました。企業理念の浸透・伝承や、コラボレーションの実現といったオフィスワークで得られる価値と、集中作業などのテレワークで得られる価値を定義した方針を策定し、全社で共有。一律にテレワーク日や出社日を定めずに、各部署が、業務特性に応じた最適なハイブリッドワークを自律的に運営しています。
また人事部が、従業員へのアンケートから、ハイブリッドワークが、生産性や企業理念の伝承へ与える影響を分析。社長や担当役員を含む委員会で分析結果をモニタリングして、取り組みを改善していく仕組みを構築しています。
出社とテレワークの情報格差を解消
サイボウズ株式会社は、出社とテレワークの情報格差を解消することで、ハイブリッドワークを推進しています。サイボウズはコロナ禍に入る前からテレワークを導入していましたが、コロナ禍で出社率が下がったことで、同僚が何をしているのかわからない、気軽な交流の場が持てない等の、テレワーク中のコミュニケーションの課題が浮き彫りになりました。
そこで、出社とテレワークの間の場所的な差を解消する業務のオンライン化や、自分の状況や気づきをリアルタイムで短く共有する「分報」(チャットに近い形で、あらかじめ宛先を決めずに発信する情報共有の仕組み)などの取り組みを進め、情報に関する格差を解消。コミュニケーションが円滑で効率的なハイブリッドワークを、さらに推進しています。
アフターコロナを見据えた働き方のガイドラインを整備
ソフトウェアやネットワーク製品を開発・販売するシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社は、2000年代から、自社のソリューションを活用してテレワークを導入。コロナ禍で、全社員原則フルリモート勤務という体制に切り替えましたが、コロナ鎮静を見据えて、各社員が役割や状況に応じてもっとも生産性が上がる働き方を選ぶためのガイドラインを整備しました。
また、ハイブリッド型の働き方を展開しながら、組織のチームワークを損なわないよう、マネージャーと従業員、チーム間で、働き方について話し合うことを推進。フルリモート導入から1年経過後の調査で、8割以上の従業員がエンゲージメントや情報共有について肯定的にとらえるなど、働く人の満足度が向上しました。
柔軟な働き方の模索が求められる時代へ
コロナ禍をきっかけにテレワークが浸透したことで、業務内容や効率性に応じて、出社/在宅を選べる環境が整いました。アフターコロナの勤務形態を考える際に重要なのは、制度そのものではなく、『なぜそうするのか』という背景です。
今回、ご紹介した企業の事例も参考にしながら、自社の特性や働く人に合った働き方の検討を進めてみてはいかがでしょうか?
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
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