勤務形態とは?主な種類ごとのメリット・注意点、雇用形態との違いを解説
2024年09月19日 07:00
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2026年2月20日更新
本記事に記載している法制度に関する内容は、執筆時点の情報に基づいています。制度の詳細や最新の取り扱いについては、最新の法令や公的機関の情報をご確認ください。
かつては「9時・5時の仕事」といった言い方があったように、勤務時間や勤務場所は固定されているのが一般的でした。近年は働き方が多様化し、柔軟な勤務形態を導入する企業も増えつつあります。
本記事では、基本的な勤務形態の種類や柔軟な働き方に対応した勤務形態を用意するメリット・注意点についてわかりやすく解説しています。多様な勤務形態を導入している企業の事例とともに見ていきましょう。
勤務形態とは
はじめに、勤務形態の基本的な意味や「雇用形態」との違いについて解説します。
従業員の「働き方」を表す
勤務形態とは、労働時間や勤務日数といった「働き方」を表す考え方です。かつては定時が設けられている固定時間制が一般的でしたが、近年は勤務形態が多様化しつつあります。
この背景には、働き方改革の推進やワーク・ライフ・バランスを重視する価値観があります。従業員の多様なニーズに応えるために、柔軟な働き方を実現する勤務形態を取り入れる企業が増えつつあるのが実情です。
雇用形態との違い
雇用形態とは、会社と労働者間での「雇用契約」に関する用語です。従業員の「働き方」を表す勤務形態とは定義が異なります。

雇用形態は正規労働者と非正規労働者の2つに分けられます。正規労働者とは正社員のことです。これに対して、契約社員やパート・アルバイト、派遣社員といった雇用形態は非正規労働者に該当します。
一方、勤務形態とはそれぞれの雇用形態の従業員に適用される労働時間や勤務日数などの条件のことです。一例として、正社員が定時で働くこともあれば、会社によってはフレックスタイム制や時差出勤、テレワークといった働き方が認められている場合があります。
基本的な勤務形態の種類

比較的古くからある勤務形態として、次の4点が挙げられます。
固定時間制
固定労働制とは、勤務時間が決められている働き方のことです。具体的には1日8時間、週40時間の法定時間内で「午前9時出社・午後5時退勤」といったルールを設けることを指します。雇用者は1週間に1日以上、もしくは4週に4日以上の休日を与えなければなりません。
これらの条件を超えて従業員に働いてもらう場合には、残業手当や休日出勤手当といった割増賃金を支給する必要があります。時期によって繁忙期と閑散期が分かれるような場合も、給与の計算方法は一律です。
変形労働制
変形労働制とは、時期によって労働時間を変更できる働き方のことです。具体的には、1週間・1カ月・1年間単位でそれぞれ労働時間の平均値を算出し、法定の1日8時間・週40時間の範囲内に収まっていれば、ある日やある週にこれを超過していても残業手当は生じない仕組みになっています。
この勤務形態は、繁忙期と閑散期で必要な労働時間に差が生じやすい事業者に適しています。労働者にとってメリハリのある働き方を実現しやすい一方で、勤怠管理が複雑になりやすい点に注意が必要です。
シフト制
シフト制とは、労働時間が固定されていない勤務形態のことです。たとえば、早朝シフトや深夜シフトといった勤務時間を設定することによって、交代で勤務する必要がある場合などに適しています。ただし、従業員ごとに勤務時間がまちまちになりやすく勤怠管理の負担が生じる点や、従業員の生活リズムが不規則になりやすい点に注意が必要です。
裁量労働制(みなし労働時間制)
裁量労働制(みなし労働時間制)とは、労働契約を締結する際に定められた一定時間を労働時間とみなす勤務形態のことです。事業所の外で働く営業職の労働者などを対象とした「事業場外みなし労働時間制」と、特定の専門職の労働者に適用される「専門業務型裁量労働制」、企業経営など中核を担う部門での「企画業務型裁量労働制」の3種類があり、職種などの条件にもとづいて適用される勤務形態が異なります。
厚生労働省が行った「裁量労働制等に関するアンケート調査」によると、導入によって「効率よく仕事を進めるように従業員の意欲が変わった」「従業員のモチベーションが向上した」と感じている人が多いことがわかりました。

一方で、裁量労働制は適切な運用や、対象業務の見極めが欠かせない制度でもあります。
たとえば営業職の場合、成果が出やすい日とそうでない日の差が生じることが想定されます。裁量労働制はこうした職種にとってメリットがある勤務形態ですが、適用できる職種が限られている点、導入前に所定の手続きが必要となる点に注意が必要です。
柔軟な働き方に対応した勤務形態の種類

基本的な勤務形態に加え、近年は柔軟な働き方を実現するために新たな勤務形態が取り入れられつつあります。比較的新しい6つの勤務形態を見ていきましょう。
フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、あらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者自らが日々の始業・終業時刻を調整できる勤務形態のことです。勤務時間内に必ず働かなければいけない時間帯(コアタイム)を設ける「フレックス制」と、コアタイムがなくすべて自由に出退勤を決める「完全フレックス」の2つのタイプに分かれます。
フレックスタイム制のメリットは、時間に縛られずにパフォーマンスを発揮しやすい点にあります。たとえば、エンジニアやWebデザイナーといったクリエイティブな職種に適用されるケースが少なくありません。一方で、労働者自身の自己管理能力が求められるため、各従業員のモチベーション管理に配慮する必要があるでしょう。
時差出勤制
時差出勤制とは、企業が定めた1日あたりの実労働時間の範囲内で出退勤時刻を選べる勤務形態を指します。複数の候補から各自が勤務時間帯を選択することで、通勤ラッシュを避ける目的で設けられた制度です。
フレックスタイム制との違いは、日々の労働時間を自由に変更できない点にあります。時差出勤制の場合、出退勤時刻は固定されているからです。通勤にかかる心身の負担を軽減する効果が期待できますが、出退勤の時間帯が従業員ごとに異なるため、不在の時間帯には連携が取りにくくなる可能性があります。
育児短時間勤務
育児短時間勤務とは、1日の所定労働時間を6時間に定め、仕事と子育ての両立を目指すための勤務形態です。2009年の育児・介護休業法の改正に伴い、企業に導入が義務づけられました。原則として3歳に満たない子を養育する労働者が対象ですが、就業前の6歳までに延長することが努力義務とされています。
育児短時間勤務の導入によって従業員のワーク・ライフ・バランスを実現しやすくなる一方で、従業員によっては不公平感を抱く可能性がある点に注意が必要です。
テレワーク
テレワークとは、働く場所をオフィスに限定しない勤務形態のことです。コロナ禍を期に導入する企業が増えた働き方の1つですが、柔軟な働き方を実現するための勤務形態としても注目を集めています。
東京都産業労働局の「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」によると、テレワークのメリットとして、感染症対策はもちろんのこと、通勤時間・移動時間の削減、業務への集中力の向上が挙げられました。

一方で、テレワーク中の従業員とはチャットやビデオ会議ツールでコミュニケーションを図る必要があります。対面コミュニケーションほど細かなニュアンスが伝わりにくかったり、気軽に声をかけにくかったりすることもあり得るため、出社とテレワークを併用する「ハイブリッドワーク」を採用している企業も少なくありません。
ABW
ABW(Activity Based Working)とは、業務内容に応じて働く場所や時間帯を自律的に選べる勤務形態のことです。たとえば、集中して作業に取り組みたい場合はオフィス内の集中ブースを活用したり、オフィス外でもこなせる仕事であれば自宅やコワーキングスペースで業務を進めたりできます。就業場所ありきではなく、仕事の内容・目的に応じて働く場所を柔軟に選べる点が、従来のワークスタイルとの大きな違いです。
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ワーケーション
ワーケーションはワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、休暇と仕事を両立させるための働き方です。従業員は国内外のリゾート地や帰省先などで休暇を過ごしつつ、仕事も並行して進められます。たとえば、飛び石連休を利用して帰省先に滞在し、平日のみ帰省先で仕事を進めるといったことも可能です。また、部署やチームでリゾート地へ赴き、仕事をしながらメンバーとの旅行を楽しむといったこともできるでしょう。
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柔軟な勤務形態制度を用意する4つのメリット

従業員が柔軟な勤務形態を選べるようにすることで、組織はどのようなメリットを得られるのでしょうか。
生産性の向上につながる
各自の業務内容やライフスタイルに合った働き方を選べるようにすることによって、生産性の向上が期待できます。より仕事を進めやすい環境を従業員が判断し、各自が申請できるようになるからです。
たとえば、場所を問わず完結できる仕事は在宅で進め、きめ細かなコミュニケーションが求められる打ち合わせなどは出社で行うといった、ハイブリッドワークを選択できる仕組みにするのも1つの方法です。より合理的な仕事の進め方ができるようになれば業務効率が向上し、結果として生産性も高まるでしょう。
働き方改革を推進できる
柔軟な勤務形態の導入は、働き方改革の推進にも寄与します。労働時間や勤務場所の制約を感じにくくなり、業務に求められる能力やスキルを発揮しやすくなるからです。結果としてより短い労働時間で多くの業務をこなせるようになり、残業時間が削減される効果が期待できます。
従来よりも仕事の効率が高まり、成果が出やすくなったと実感できれば、従業員満足度も向上するでしょう。働き方改革の推進に向けた取り組みにも、いっそう協力的になってもらえるはずです。
多様な人材を採用しやすくなる
多様な人材を採用しやすくなることも、柔軟な勤務形態を導入するメリットの1つです。たとえば、テレワークを導入することで居住地を問わず人材を採用しやすくなります。家族の事情などにより転居せざるを得ない従業員にも、引き続きリモート勤務をしてもらえるでしょう。
また、短時間勤務の導入はライフステージの変化に対応するための制度として有効です。家族の介護など将来的に発生し得る事態に早くから対応しておくことにより、従業員の定着率を高められると同時に、優秀な人材を確保しやすくなります。
労使間トラブルを回避しやすくなる
業務内容や従業員のライフスタイルに合った柔軟な勤務形態を整備し、労働法規に則って運用していくことは、労働トラブルの防止にもつながります。諸事情により勤務時間の変更を希望する従業員が現れた際にも、会社が正式に認めている勤務形態の範囲内で対応できる可能性が高まるからです。
特定の従業員にイレギュラーな勤務を認めることは、他の従業員が不満や不公平感を抱く原因にもなりかねません。労使間トラブルを防止する観点からも、複数の勤務形態を選択できる制度を整えておくことは重要なポイントの1つといえます。
柔軟な勤務形態を取り入れる際の注意点
柔軟な勤務形態を導入する際には、いくつか留意しておきたい点があります。とくに次の3点については、事前に対策を講じておきましょう。
労務管理の仕組みを確立する必要がある
働く場所や時間の自由度が上がるほど、適切な労務管理の重要性も高まります。個々の従業員が異なる時間帯に働いたり、勤務場所が異なっていたりしても、問題なく対処できる仕組みを整えておく必要があるでしょう。
一例として、クラウド勤怠管理システムや座席管理システムを導入するなど、現実的な対処法が求められます。勤務形態が多様化したことによって管理者の負担が増大することのないよう、対策を講じるべき課題を整理した上で、自社の状況に合ったソリューションを検討しておくことが大切です。
導入の意義を丁寧に説明する
柔軟な勤務形態を導入する意義について、従業員に丁寧に説明して理解を得ておくことが重要です。働き方を自律的に選べるようになることで、かえって本末転倒な結果を招かないよう注意しましょう。
たとえば、テレワークの導入によってむしろ仕事に集中できなくなったり、反対に働きすぎてしまったりするようでは、柔軟な働き方の趣旨に逆行する結果となってしまいます。生産性の向上やライフ・ワーク・バランスの実現といった、制度導入の目的を周知しておかなければなりません。
公平性の確保に配慮する
部門や業務内容によって、制度を利用できる・利用できない従業員の間で不公平感が生じないよう配慮が求められます。一例として、テレワークが可能な部門と出社する必要がある部門との間で不公平感が生じるケースは少なくありません。
やむを得ず制度の適用範囲に差が生じてしまうようなら、報酬や昇進の基準を明確にしておく必要があるでしょう。成果ベースの報酬体系にする場合は、業務のプロセスを評価するための指標もあわせて設けるなど、バランスの取れた評価基準にすることが大切です。
企業が柔軟な勤務形態を実現した事例
柔軟な勤務形態を導入し、効果がもたらされている企業の事例を紹介します。
株式会社 日本HP
株式会社日本HPでは、週に最大4日まで自宅で仕事ができる「フレックスワークプレイス制」を導入しています。社員の7割が自分の座席をもたないフリーアドレス制で就業しており、各自が自律的に働き方を選択しているのが特長です。
たとえば、子どもの学校行事に合わせて就業時間を調整したり、子どもが体調不良の日には自宅勤務へと切り替えたりすることも可能です。さらに、個人の判断に委ねられる面が増えたことによって、会社と対等な信頼関係が築けていると実感する従業員も増えています。
性善説の働き方改革。日本HPの「フレックスワークプレイス制」
明電興産株式会社
明電興産株式会社では、新社屋の竣工を機にオフィスのあり方を見直し、職場環境の刷新に取り組みました。ABWの導入により、働く場所も打ち合わせのスタイルも、各々の従業員が自律的に判断して選べる仕組みになっています。場所を移動してリフレッシュしたり、ソファ席でアイデアを練ったりと、ABWの長所をフル活用できる職場環境が整いました。
ABW導入により、社内のペーパーレス化が促進されたことも大きな成果の1つです。さらに、部門を超えた交流が活発化し、結果として業務効率も向上するなど、多くのシナジー効果がもたらされています。
リコージャパン株式会社
リコージャパン株式会社では、正社員の育児休業に関する時短勤務期間を小学3年の学年末まで適用。男性社員の育児休業も推奨しています。また、出産・育児・介護・配偶者の転勤などを理由にやむを得ず退職した場合、希望があれば再雇用の機会を提供する制度など、あらゆる社員がライフスタイルに合わせて働ける制度を整えてきました。従業員が各自の強みや能力を存分に発揮し、いきいきと働ける職場環境を実現しています。
まとめ
従業員の「働き方」に焦点を合わせた勤務形態は、柔軟な働き方を実現する上で要となる制度といえます。柔軟な勤務形態を導入することは、働き方の選択肢を広げるだけでなく、従業員の自律性を高め、自走する組織を目指すための重要なきっかけとなるでしょう。一人ひとりのワーク・ライフ・バランスを実現させ、会社全体の生産性向上を実現するためにも、自社にとって最適な勤務形態を検討してみてはいかがでしょうか。
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