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BCPとは?策定する目的や手順のポイントを解説

From: 働き方改革ラボ

2024年11月22日 07:00

この記事に書いてあること

日本は地震や豪雨をはじめとする災害が少なからず発生してきた国です。いつどのような災害が発生するのか予測できない中、「BCP(事業継続計画)」の重要性が高まっています。

今回は、BCPを策定しておくべき理由や構成要素、BCPを策定する手順をわかりやすく解説します。実効性のあるBCPを策定するためのポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

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BCPとは簡単にいうと何のこと?

BCPはBusiness Continuity Plan(事業継続計画)の頭文字を取った言葉です。災害が発生した際、事業を早期に復旧させて継続するための対策のことを指します。内閣府が定めた「事業継続ガイドライン」における、BCPの定義は下記です。

大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)と呼ぶ。

出典元:内閣府「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-」

上記のとおり、災害などの緊急事態をいかに回避するかを考えるのではなく、災害が起きてしまった場合にどう対処するのかを考えることがBCPの基本です。

BCPは企業が災害の被害から復旧し、社会に商品やサービスを提供し続けることを目的としていますが、その前提にあるのは社員の身の安全です。事業の継続を担う社員の無事が、早期復旧につながります。災害発生直後に社員の身を守る個々人の防災対策こそが、BCP策定の基礎にある点を押さえておくことが大切です。

なぜBCPを策定する必要がある?

そもそも企業はなぜBCPを策定する必要があるのでしょうか。主な理由として挙げられるのは下記の4点です。

理由1:災害時に混乱なく復旧を進めるため

あらかじめBCPを策定しておくことにより、万が一災害が起きた際にも混乱を最小限に抑え、素早く復旧を目指しやすくなります。たとえば災害時のマニュアルを作成しておくことで、緊急事態の際にも冷静かつ迅速に対応できるからです。災害が起きないことを前提に考えるのではなく、災害は起きるものとして捉え、必要な準備を整えておくことにより、混乱なく復旧を進められる点が大きなメリットといえます。

理由2:災害時に社会に対する責任を果たすため

災害が起きた際にも、世の中が求めるサービスや商品を変わらず提供し続けることにより、企業としての社会的な責任を果たせるというメリットもあります。災害時には商品・サービスを安定供給し続けることに加え、データの漏洩や流出といった事態を避けることも重要な課題の1つです。こうした対応を緊急事態下においても適切に行うことにより、企業の社会的な価値がいっそう向上するという長期的なメリットもあります。

理由3:取引先や顧客から信頼を得るため

取引先や顧客の視点に立った場合、リスク管理を徹底している企業は信頼に足る組織といえるでしょう。緊急事態におけるさまざまなリスクを想定し、あらかじめ備えている企業であれば、安心して取引ができるはずです。優良な企業として取引先や顧客から信頼を得られることは、BCPを策定するメリットの1つといえます。

理由4:事業の優先順位や防災計画を再確認するため

BCP策定の過程を通じて、自社にとって必要な業務や経営資源をあらためて確認できることもメリットの1つです。災害発生時に優先すべき対策や停止させるべきではない業務は、平常時においても組織にとって重要な要素である可能性が高いからです。BCP策定に向けたリサーチが、平常時の業務効率化や経営判断に役立つケースも多いでしょう。

BCPを構成する5つの要素

BCPを構成する基本要素は下記の5つです。

  • 1.人的リソース
  • 2.施設・設備
  • 3.資金
  • 4.組織体制
  • 5.情報

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 人的リソース

人的リソースとは、災害時に社員の生命を守ること・災害時にも業務を止めることなく限られた人員で継続することを指します。災害の影響を受けた施設や設備を素早く修復しても、肝心な社員が業務に復帰できないようでは本末転倒です。具体的には、下記の対策を講じておく必要があるでしょう。

  • 社員の被災状況を把握する手段の確保
  • 限られた人員でオペレーションを継続する方法の確立
  • 出社できない状況の社員への対応方法の決定

2. 施設・設備

本社機能を支える施設・設備や、生産拠点などが甚大な被害に遭うと、早期復旧に向けた動きが取れなくなってしまう恐れがあります。大きな被害に遭った場合の対処法や、復旧に向けた計画を検討しておくことは、BCP策定において重要なポイントとなるでしょう。従来どおりの方法で調達や生産ができなくなった場合の代替手段についても、災害発生時を想定して決めておく必要があります。

3. 資金

災害によって発生しうる損害額と、復旧のために必要な資金を把握しておくことも重要なポイントです。損害補償や公的融資制度の活用により、こうしたコストを抑えられる可能性もあります。業務を平常化するまでの期間に資金繰りに窮することのないよう、災害が起きることを織り込んだ資金計画を立てておくことが大切です。

4. 組織体制

災害発生時の組織体制をあらかじめ確認しておくことも不可欠な視点といえます。復旧に向けた優先順位や、現場の指揮監督を誰が担当するのかといった具体的なことまで詰めておきましょう。緊急事態下では、本来担当するはずだった人員が不在になることも想定されます。業務の代行が可能な人員を選任し、二重三重にバックアップ体制を構築しておくことが重要です。

5. 情報

災害発生後に事業を継続していくには、業務に不可欠なデータが失われない仕組みを構築しておかなければなりません。重要なデータが定期的にバックアップされる仕組みにするとともに、広域災害に備えてデータを分散させて管理することが求められます。すべてのデータを本社内で管理するのではなく遠隔地のサーバーにも振り分けたり、クラウドサーバーを活用したりすることにより、災害に強いデータ管理体制を整えましょう。

BCPを策定する手順を13ステップで解説 

BCP策定を進めるには、具体的にどのような手順で取り組めばよいのでしょうか。基本的な進め方を13ステップに分けて紹介します。

ステップ1:社内体制の確立

第一に取り組むべきことは、BCP推進に向けた社内体制の確立です。緊急事態への対策を講じる必要性を認識し、BCP推進体制を整備しておく必要があります。具体的にはBCP推進本部や対策チームを創設し、専任の担当者を配置するのが理想でしょう。

ステップ2:自社が遭遇しうるリスクの把握

次に、自社が遭遇しうるリスクを洗い出し、整理していきます。たとえば、災害の発生や感染症の流行、急な経営環境の変化など、自社が操業停止状態に陥る事態を漏れなく洗い出していきましょう。実際に発生する可能性が高いかどうかではなく、わずかでも発生するリスクがあれば備えておくのがBCPの基本的な考え方です。

ステップ3:災害時の安否確認体制の整備

災害発生時に社員の状況を確認するための体制を整備していきます。安否確認の仕組みや、緊急事態発生後の連絡手段など、平常時とは異なる状況下での体制を想定することが重要です。平常時には問題なく使用できる通信手段であっても、災害時には使用できなくなる可能性もゼロではありません。第二・第三の連絡手段を確保し、より確実に連絡を取り合えるようにしておくことが大切です。

ステップ4:BCPの対象とする事業を確認

緊急事態が発生した際に、優先して継続すべき事業を決定します。すべての事業を平常時と同様に継続できるのが理想ですが、現実的には難しいケースも多いはずです。事業継続を実現する上で重要度の高い業務や、社会的な影響の大きさなどを鑑みて、とくに優先すべき事業を選定しておく必要があります。

ステップ5:社内プロセスの復旧優先順位を決定

業務再開に向けて必要な社内プロセスや機能を確認し、復旧の優先順位を定めます。復旧に向けて必要な人員についてもあわせて検討し、現実的な復旧計画にしていくことがポイントです。現実的なリソースを織り込んで検討することにより、優先順位を判断しやすくなります。

ステップ6:事業継続のための代替手段の検討

事業継続のために必要な代替手段を検討します。一例として、臨時の社員や資金、データセンターなど、平常時と同様の運用ができない状況下であっても利用できる手段を確保しておくことが大切です。代替手段は1つに絞らず、二重三重に準備しておくことで、より強固なバックアップ体制を構築できます。

ステップ7:目標復旧時間の設定

とくに対策を優先すべき業務について、復旧までの目標時間を設定します。たとえば、システムの復旧や管理部門の平常化などは、復旧を至急進めるべき優先度の高いポイントとなるでしょう。復旧が遅れるほど状況が混乱しやすくなることを念頭に置き、可能な限り最短の復旧時間を設定することが大切です。

ステップ8:BCP発動基準の明確化

主要事業の継続に影響を与える事態を想定し、BCP発動の基準を定めます。発動基準が不明確な状態になっていると、初動対応の遅れにもつながりかねません。BCP発動の具体的な基準を設け、実際に緊急事態が発生した際には速やかに動けるようにしておく必要があります。

ステップ9:出社体制のルール策定

緊急事態下において、出社して対応するメンバーを決めておきましょう。無理に全員が出社しなくて済むようにするためにも、ルールを明確に定めておくことが大切です。

ステップ10:BCP計画の策定

ここまでに決めたことをまとめ、BCP計画を策定します。部門ごとの対応手順や、BCP投資の予算などをまとめていきましょう。

ステップ11:BCPマニュアルの作成

BCP計画を策定しただけでは、緊急事態が発生した際に現場が具体的にどのような行動を取ればよいのかがわかりません。社員の誰もが理解できるよう、わかりやすいマニュアルを作成することが大切です。

ステップ12:社員への研修実施

BCPの基本的な考え方や災害時の対応への理解を深めるための社員研修を実施します。BCPがなぜ必要なのか、社員にも十分に理解してもらうことが重要です。

ステップ13:BCPの計画的な見直し

BCP計画は一度策定すれば永続的に適用できるとは限りません。新たな危機が発生したり、社内システムが変更されたりするごとに計画を見直し、実態に即したものになるよう見直す必要があります。

実効性のあるBCPを策定するためのポイント

BCPを形式的な計画にとどめず、実効性のあるものにするために、いくつか押さえておきたいポイントがあります。次に挙げる3つのポイントを意識して、緊急事態が発生した際に適切な行動を取れるようにしておくことが大切です。

ポイント1:BCPの周知と情報共有を徹底する   

BCP計画を策定しても社員が計画の詳細を知らなかったり、各自が具体的にどのように行動すべきかが不明な状態だったりするようでは、BCPを策定した意味が薄れてしまいます。BCPの意義や目的とともに、具体的な行動を示したマニュアルの読み合わせを実施するなどして、周知と情報共有を徹底しましょう。

また、必要に応じて訓練を実施することも重要なポイントです。緊急事態を想定した訓練を行うことにより、連絡フローや取るべき行動を実体験できます。訓練を通じて気づいた改善点を挙げてもらうことで、より実効性の高いBCP計画へとブラッシュアップすることも可能です。

ポイント2:経営状況や社会の変化に応じて改善する

BCPは経営状況や社会の変化に応じて柔軟に改善していくことが重要です。たとえば、現場ではビジネスチャットを日常的に利用しているにもかかわらず、BCP計画やマニュアルに「メールで連絡する」と記載されていれば、緊急事態下における連絡手段はメールに限られるかのように解釈されかねません。このように実態に合わないBCPとならないよう、状況が変わるごとに計画もセットで見直していく必要があります。

ポイント3:取引先や関連会社との協力・連携を図る

BCPは社内で完結するとは限りません。取引先や関連会社とも協力・連携することを前提にルールを策定しておくことにより、緊急時の対応を協働で進められます。また、事業の継続性という観点においても社外との協力は重要なポイントです。緊急時の対応について共通認識を形成しておくことにより、いざという時に混乱を最小限に抑えて取引を続けられるでしょう。

BCPの本質を十分に理解して策定・運用していくことが重要

BCP計画は形式的に策定するものではなく、万が一の事態に遭遇した際に事業を継続可能な状態にすることが本来の趣旨です。BCPの本質を十分に理解した上で策定・運用していくことにより、実効性のあるBCP計画にしていきましょう。今回紹介したBCPの必要性や構成要素、策定の手順を参考に、災害に強い組織体制を構築してください。

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記事執筆

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