
2022年の法改正でペーパーレス化に追い風!ペーパーレス化のメリットと導入手順とは?
2022年09月08日 07:00
この記事に書いてあること
これまで紙で運用してきたいわゆる”書類”を電子的なデータに切り替えることにより、紙を使用しない「ペーパーレス」。ペーパーレス化が定着している企業もある一方、取り組みのハードルの高さから紙媒体を捨てることができず、なくてもいい書類に埋もれるオフィスも少なくありません。
しかしペーパーレスは、”働き方改革”に取り組む企業にとって、生産性の向上や、テレワークなどの柔軟な働き方とは切っても切り離せない密接な関係にあり、再び注目を集めているテーマでもあります。
そこで今回は改めて「ペーパーレス」についての基本的なメリットや課題を確認し、2022年に改正される電子帳簿保存法の内容などを踏まえ、今後の展望までを見ていきましょう。
※2021年9月に公開した記事を資料化しました

ペーパーレスとはなにか?メリットデメリットを解説
まずペーパーレスとはなにか?メリット・デメリットの観点から確認しながら、実際の導入事例を見ていきましょう。
ペーパーレスのメリット
まずはペーパーレスを導入した際のメリットについて見ていきましょう。
コストの削減
ペーパーレス導入の際の大きなメリットとして、コストの削減が挙げられます。会議や総務・労務に関する紙媒体の資料を用意するためには、都度印刷コストが発生します。しかしペーパーレスを導入した際には印刷コストが丸々かからなくなるため、大きなコスト削減が期待できます。
またデジタル化によるペーパーレス化の際には書類保管スペースのコスト削減も望めますし、紙と印刷消耗品を節約できる環境負担の軽減も期待できます。
業務効率の向上
次にペーパーレス化のメリットとして挙げられるのは、業務効率の向上です。デジタル化によってペーパーレス化された情報はPCやスマートフォンでいつでもどこでも必要になった際に確認することができます。この結果として情報の携帯性や検索性が向上し、業務の効率化が実現できます。
またデジタル化されたデータは共有をすることができるため、資料を印刷したり、冊子化されたものを配布するなどの付帯業務を圧縮することができるため、業務に関する効率の飛躍的向上が期待できます。
情報セキュリティ力の向上
出力した書類の取り忘れ・紛失などによる情報漏えいが防げるなど、ペーパーレス化によって情報セキュリティ力が向上することも期待されます。ペーパーレス化された情報はオンラインストレージで保管できます。このオンラインストレージへのアクセスや編集には権限設定ができるため、不特定多数の人に情報が晒されてしまう心配がありません。
また万が一火災などの災害等、紙の資料では消失してしまうケースでも、オンラインストレージに保管してあるデータはいつでもアップロード時の状態で確認することができます。ぺーパーレス化はセキュリティ面に加えバックアップ面でも安全性が高いといえます。
社内外のコミュニケーションの向上
最後に社内外のコミュニケーションも向上するメリットをご紹介します。例えば担当営業が名刺交換をした場合、紙媒体の保管では社内全体での情報共有に時間がかかります。中には交換した名刺は営業個人の資産として属人化してしまうことも多く、組織としての社外コミュニケーションが活性化しないというケースも多くあります。
しかしオンラインストレージを利用した場合、受け取った名刺をクラウド保存することで社内全体で名刺情報を把握できるため、必要なときに必要な社内外の人間とコミュニケーションを取れるようになります。
また手紙の代替ツールとなるチャットツールやメッセンジャーツールも、場所を問わずにタイムリーにコミュニケーションが取れるうえ、保存や情報の共有もできるため業務効率が向上します。
ペーパーレスのデメリット
一方で、ペーパーレス化にはデメリットもあります。
書類保管に関する法律
電子文書法という法律で、電子保存が認められる対象文書と認められない対象外文書が規定されており、対象外文書の場合は紙媒体での保存を行わなければなりません。正式な提出書類は紙で、という文化もまだまだ根強くあります。こうした中での使い分け判断が難しくなった点はデメリットといえます。
紙での作業の方が便利な場合もある
ディスプレイ資料は紙に比べると視認性に劣る部分があり、見づらさや作業への集中のしにくさなどが発生することがあります。また、起動や呼び出しに時間がかかると、気軽にメモを取りづらく、紙の方が便利と感じることもあるでしょう。
システム障害による影響を受ける
電子化されたデータの場合、システム障害によって大きな影響を被る点もデメリットです。PCなどが起動しない、システムの連携がうまくいかない、容量が多く読み込みに時間がかかる、などシステムに起因するデメリットもあります。
ペーパーレス導入にコストがかかる場合がある
ペーパーレスを進めるにあたり、いくつかの機器やシステムの導入が新たに必要となる場合があります。また、デジタル化を図ることによる説明や新たなフォーマットの導入、すり合わせを行わなくてはならず、慣れない作業や準備のための作業コストが増えてしまうことを煩わしく感じている方もあるのではないでしょうか。
まだまだはんこ文化が根強い
決まった書式の紙で提出というルールで、はんこをもらわなければ何事も前に進まないといったシーンも少なくありません。
ペーパーレスなデジタル化を望んでいても、組織の指示や企業体質・業界の慣習・社会的な信頼性といった観点から、紙が求められることが多く、技術的には可能でもデータ化できないというケースも依然として多くあります。
これらどうにもできない状況のはざまにあり、結果として紙やメモが現場にはあふれている現状はそうそう簡単には変えられないと感じられているかもしれません。
ペーパーレス化の成功事例
こうした現場の実際とテクノロジーのズレから、さまざまな困難もありますが、ペーパーレス化を推進して成果をあげている企業・団体もあります。2つの例を見ていきましょう。
野村総合研究所の例
野村総合研究所では、紙にとらわれない働き方をするというノンペーパーの取り組みを実施することで業務の生産性向上を目指しました。それまでは紙の資料が山積するオフィスで社員の多くが紙の使用量にも無頓着な状況。しかし当時社長の藤沼??彰久氏による「ノンペーパー会議」、「共有資料の電子化と個人資料の廃棄」、「本部キャビネットの70%削減」などを掲げる指示で、本格的な取り組みがスタート。
特徴的なのは、ただ紙を使わない、なくすというのではなく、現場のために紙にとらわれない働き方、生産性の高いノンペーパーのワークスタイルを構築するために実行するのだという意識の定着に努めた点です。これにより高いモチベーションを維持して活動を推進、整理整頓と会議の効率化、質の向上、スムーズな情報共有にオフィス環境の美化、柔軟な働き方の実現が可能となったほか、コストの削減も図れ、キャビネットの集約で空いたスペースをミーティングルームと改変するなど、大きな効果が得られたと報告されています。
長野県長野市の例
長野県長野市では、会議資料に膨大な紙が使われ、多大な準備の手間とコストがかかっていたことから、ICTによるペーパーレス会議を導入、省力化と省コスト化を目指しました。以前から電子化に積極的だった同市ですが、さらに紙媒体の資料配付を禁止した会議としたり、文書を作成時点から画面で見ることを意識して作り、ポイントを絞って伝わりやすくしたりと工夫を施しました。
また、運用ルールを明確にすることで、印刷費用にして300万円を削減することができたそうです。会議準備にかかる時間も約6分の1にまで短縮でき、作業効率もアップ、会議用パソコンで表示した資料は持ち帰り不可にしたことから、情報漏洩のリスクも低減できています。
規制緩和によってペーパーレス化の導入が容易に!

ペーパーレス化に関するメリット・デメリットと実際の導入事例を見ていきましたが、2022年の「電子帳簿保存法」の要件改正によって文書の電子化が大幅に緩和されることになりました。
ここからは企業がペーパーレス化を導入するにあたって、切っても切り離せない文書の電子化に関する法律をご紹介します。
ペーパーレスに関わる法律とは?
現在、企業が業務で使用する文書の電子化について定めている法律は「e-文書法」と「電子帳簿保存法」の2つです。どちらも文書の電子化を認める法律ですが、対象となる文書が異なります。
詳しく見ていきましょう。
e-文書法
「e-文書法」は2005年4月に施行された民間事業者が税法や商法などの各法で保管を義務付けられている文書について、電子データによる保存を認めた法律です。
e-文書法で扱える書類
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財務・税金関係書類:会計帳簿・領収書・請求書・納品書・見積書・注文書・契約書など
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会社関連書類:定款・株主総会や取締役会議事録など
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企業決算に関する重要書類:貸借対照表・損益計算書など
e-文書法で扱えない書類
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緊急時にすぐ解読可能である必要性が高いもの(船舶に備える手引書など)
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きわめて現物性が高いもの(許可証・免許証など)
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条約による制限があるもの
電子帳簿保存法
一方、1998年7月に施行された電子帳簿保存法は、税務や経理に関する文書を対象にしています。紙の証憑書類は7年間の保管が必要でしたが、電子帳簿保存法に対応すれば1年ごとにデータを破棄可能な点が大きな特徴です。こちらでは2022年1月に予定されている法改正のポイントをご紹介します。
承認制度の廃止
電子帳簿の導入には希望する時期の3ヶ月前までに税務署に申請書を提出する必要がありました。しかし2022年からは国が求める基準を満たし、電子帳簿保存法に対応した機能を備えているスキャナや会計システムなどが準備できれば速やかに電子保存の対応が可能になりました。
タイムスタンプ要件の緩和
従来は電子書類を受領した際に3日以内に受領者本人のサインとタイムスタンプの付与が必須でしたが、法改正によってサインが不要となり、タイムスタンプの期限が2ヶ月以内と大幅に延長されました。
検索要件の緩和
電子データの保存の際には、必要なタイミングで内容を閲覧したり、データ管理ができるように検索機能を確保する必要があります。従来まではこの設定要件が複雑で、非常にハードルが高く導入の際の足かせとなっていました。しかし法改正によって検索要件が「年月日・金額・取引先」のみとなり、大幅に簡略化しました。
規制緩和によってペーパーレス化の何が変わる?
2017年1月の「電子帳簿保存法」の法改正によって、領収書やレシートをスマートフォンで撮影して電子保存することが認められ、原則7年の原本保存も撤廃されました。これにより、受領者本人がスマートフォンで領収書を撮影し、自社サーバーやクラウドにデータを転送して保存。その後、税理士などの検査を受ければ原本を破棄できるようになりました。
さらに2022年の改定では導入時の税務署の承認や業務フローが大幅に簡略化されるにあたって、文書の電子保存がますます容易になります。
働き方改革の推進とコロナウィルスの流行によるリモートワークの高まりも相まって、日本の企業全体でペーパーレス化への取り組みがより一般的なものになると考えられます。
ペーパーレス化の導入手順とは?

ペーパーレス化の導入によって書類を電子データにしたものの、新しいシステムに慣れるまでの扱いにくさが、ペーパーレス化に対してユーザーが忌避感を抱く原因となり、さらなる生産性の悪化を招いてしまう可能性があります。
ここからは、このような課題をクリアし、ペーパーレス化を実現するためのアプローチを考えていきましょう。
現状の課題とペーパーレス化の必要性を認識する
ペーパーレス化の取り組みは、業務そのものを変えることにもつながります。まずは社内で部門・個人ごとの紙の使用量、保管に必要なスペースやコストなどを数値として洗い出し、併せてデータ化のメリットとデメリットについてまとめるところから始めましょう。
ペーパーレス化は、単なるコスト削減に留まらず、業務を効率化して会社の競争力を強化するための手段です。それを改めて理解し、経営層がリードする取り組みとしていくことが成功の第一歩になります。
取り組むための体制づくりも必要
経営層の理解と共に重要な点が、ペーパーレス化に取り組むための体制です。前述のようにペーパーレス化は業務の変更を伴うため、社内でその意義と目的を共有し、理解する事が大切です。リーダーを決め、具体的な数値目標を設定し、スケジュールを決めてから取り組みをスタートさせましょう。
電子データ化する書類や順番を決める
すべての紙の書類をペーパーレス化しようとすると、多大なコストと労力が必要になるため、現実的ではありません。まずは社内を見渡して、業務への影響が少なく取り組みやすいところから始めましょう。慣れてきたところで請求書、納品書、見積書など業務に不可欠な書類のデータ化を進めていきます。
はじめは個人単位やグループ単位で試験的に導入し、その後全体へ展開するなど、ステップを踏んで導入するのもよいでしょう。
会議で使う資料を減らす
ペーパーレス化の対象にしやすいのが、日々行われる会議です。たとえば会議資料の印刷は、参加者分よりも多めに印刷しておくことが多いですが、参加者数を事前に確認をして必要な数だけ印刷するだけでも紙は減らすことができます。また、複数ページを1枚にまとめたり、両面印刷を使ったりするなど工夫が大切です。
さらに完全なペーパーレス会議を実現するとなれば、PCやタブレットなどの紙の代替デバイスやペーパーレス会議システムが必要になります。
ペーパーレス化に役立つツールとシステム

最後にペーパーレス化に必要な機器やシステムについて紹介します。
操作性や携帯性に優れた電子デバイス
ペーパーレス化の導入の際に立ちはだかる大きな課題は「紙から電子への移行に慣れない」というものです。この課題をクリアするには、操作性や携帯性に優れた電子デバイスの提供が必須です。
例えば、外出の多い営業職や保守サービス担当者には高解像度のディスプレイを備えたモバイルPCやタブレット。工場の製造ラインや倉庫での作業向けにはスマートフォンや小型のタブレットというように、業務に合わせて提供するデバイスを切り替える必要があります。
紙1枚と比較すると当然重量もあり、かえって複雑に感じるかもしれませんが、複数の冊子や膨大な資料、マニュアルを携帯する人にとっては、電子化された資料の方がはるかに利便性が高いです。
文書をデータ化し管理する文書管理システム
紙の書類のデータ化を進めていくと、データの量は一気に増加します。こうしたデータがどこへどのように保存されているかが把握できないと、肝心な時に必要な書類が参照できず、業務に支障をきたしてしまいます。
文書管理システムは、文書の自動分類や一括管理を可能にするものです。これにより検索性を高めるとともに、アクセス権限設定とそれに基づいた管理によって、セキュアな環境でデータを保管することができます。実際の現場での扱いやすさが重要なため、導入に際しては現場の声に耳を傾ける必要があるでしょう。
名刺、資料、ファイルなどのデータを保管するオンラインストレージ
社外から社内と同様に書類やデータへアクセスできるようにしたいとき、便利なのがオンラインストレージです。オンラインのサーバーへ名刺、書類、資料などを電子化して置いておけば、いつでも好きなときに確認することができます。
簡単・快適に使えるWEB会議システム
メンバーがどこからでも会議に参加できるようにするのがWeb会議システムです。これにモバイルPCやタブレット、大型モニター、オンラインストレージなどを組み合わせることで、会議の完全なペーパーレス化の実現も可能になります。
会議に必要な資料はあらかじめメンバーにデータで配布しておき、参加者はモバイルPCやタブレットで閲覧します。参加者の画面へ大型モニターの画面を同期させることもできるので、まるで全員が同じ部屋にいるかのようなに会議を進めることができます。
まとめ:成功の秘訣はじっくりと取り組むこと
ペーパーレス化を進める過程では、必ず途中でデータと紙文書の両方を扱う過程が発生します。その際には一時的に業務の負荷が増えてしまうかもしれませんが、最終的には業務が効率化され、生産性も向上するはずです。あわてずじっくりと取り組むことが成功の秘訣と言えるでしょう。
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