今話題の不動産テックとは?注目される不動産テック11サービスを解説
2023年06月15日 07:00
この記事に書いてあること
対面での重要事項説明が必要なことや書類のやりとりの多さなどから、アナログな方法が残るイメージもある不動産業界。ただ最近では、よりユーザーが便利にサービスを利用するためのツールが増え、導入が進んでいます。
そこで近年急成長を遂げている「不動産テック」の概念と、不動産テックの市場の盛り上がり状況、不動産業界が抱える課題と不動産テック導入で解消されるものを解説します。
※2019年6月に公開した記事を更新し、資料化しました。資料のダウンロードをご希望の方は右のフォームよりお申込みください。
今話題の不動産テックとは?
不動産テックとは?
「不動産テック」とは、不動産とテクノロジーを掛け合わせた造語です。ITツールやインターネット、テクノロジーの力によって、不動産売買や賃貸、投資に関わる新しい仕組みを生み出すことや、ユーザーとサービス提供側の取引のあり方の変化を目指す取り組みのことです。
不動産テックには、すでに一般化している物件情報ポータルサイトといったWEBサービスだけでなく、不動産の業務支援ツール、VRによる物件内見体験やインターネット経由の不動産投資支援などの新しい取り組みが含まれます。さまざまな企業が不動産テックに参入し、今までにない技術を活用したサービスを提供しています。
急成長を遂げる不動産テック市場
新型コロナウィルスの流行によって非対面営業が不動産業界にも取り入れられることになったことも影響し、市場が右肩成長を続ける不動産テック市場。矢野経済研究所によると、日本国内の不動産テック市場はこのまま順調に伸び続け、2025年度には現在の約2倍となる1兆2461億円にのぼると調査結果報告されました。
それでは不動産テックのはじまりと、日本と世界の不動産テック市場の成長について見ていきましょう。
不動産テックのはじまりはアメリカのベンチャー企業
不動産テックの注目が集まり始めたのは2010年頃。そこからわずか4年間でアメリカの不動産テック関連のベンチャー企業が10億ドルの資金調達額を突破しました。
2016年までにはテクノロジーによる業務管理支援や価格可視化、不動産情報の情報化など、多方面から不動産テックに取り組む企業が多く誕生し、アメリカの不動産テック市場は年間200兆円規模の市場にまで成長を遂げました。
中国をはじめアジアでも不動産テックは急成長中
不動産テック市場の盛り上がりはアメリカだけではなく、アジアでも起こっています。特にアメリカと並んで著しい成長を見せているのが中国の不動産テック市場。アジアに存在する不動産テック企業のうち30%が中国企業とも言われています。
中国の不動産テック市場を牽引しているのが「Homelink(?家)」。新築や中古、賃貸などの物件のマッチングだけでなく、リゾート不動産や海外不動産とのマッチングサービスまで提供するベンチャー企業です。
中国の不動産テック市場の目覚ましい成長ぶりが起因となり、アジア諸国でも不動産テックブームが興りました。特にシンガポールでは2014年より「Smart Nation Singapore」を掲げ、国全体でデジタル技術やデータを活用したスマートシティ化を目指すことを発表。2023年にはデジタル技術を活用したオフィスビル、住宅、大学、商業施設などが集約されたスマートシティが完成予定です。この地区ではAI、IoT、データ分析関連などのIT企業を誘致することで、2万8,000人規模の雇用創出を目指しています。
日本の不動産テック市場規模
海外の不動産テックブームを受けて、日本国内でも不動産テックに関するサービスが次々と誕生しています。
一般社団法人不動産テック協会が作成している「不動産テック カオスマップ」によると、2017年時点での不動産テックに関するビジネスやサービスは80件ほどでした。しかしその後掲載数は増え続け、2021年7月発表の第7版には446件が掲載。わずか3年間で約5.5倍ものビジネスやサービスが増加しました。
不動産業界は市場そのものが40兆円にものぼる巨大市場であることから、他業界に比べて非常に高いポテンシャルを秘めていると言われています。2019年には国内初の不動産テック特化型のファンドも設立され、今後も日本の不動産テック市場の成長拡大は継続すると考えられています。
不動産業界のIT事情と不動産テックによって解消するもの
急成長を遂げている不動産テック市場ですが、市場に浸透することでどのようなメリットがあるのでしょうか?日本の不動産業界の現状と、不動産テックが浸透することで解消されるものを見ていきましょう。
不動産企業の現状
まず日本の不動産業界の現状を見ていきましょう。
課題1:不動産業界全体のデジタル化の遅れ
不動産企業の現状としてまず取り上げられるのが不動産業界全体でのデジタル化の遅れです。不動産業界がデジタル化が遅れてしまう原因の1つに「宅地建物取引業法」という不動産取引業務を定めた法律があります。この法律の定めにより、不動産契約の際には宅地建物取引主任者が主任証を見せてから口頭と書面で重要事項を説明することが義務付けられています。
2017年から国土交通省より非対面での説明を可能にする「IT重説」の運用がスタートし、2019年から電子署名サービス普及に向けた社会実験を実施しはじめるものの、依然として不動産業界のデジタル化は遅れているのが現状です
課題2:情報の不透明性
長年に渡って不動産業界で問題視されているのが不動産に関する「情報の非対称性」です。取引されるサービスや商品の情報を売り手と買い手がそれぞれ多くの情報を持っている状態が理想とされますが、不動産業界の場合はどうしても仲介業者に情報が偏ってしまうため、不動産オーナーや消費者にとって情報不足から不利になってしまうケースが多くあります。
課題3:データベースの不備
総務省が実施した「平成30年住宅・土地統計調査」では、国内の空き家数が約849万戸、空き家率が13.6%と過去最高数値を記録し、空き家の増加は社会問題の1つになっています。
この原因の1つが現状の不動産システムでは不動産の取引履歴、維持・管理状況、リフォーム歴、成約価格などのデータベース化されておらず、中古物件市場が円滑化されていないことがあげられます。
不動産テックによって解消されるもの
次に不動産テックによって解消されるものを解説していきます。
情報の一元管理・運用が可能になる
不動産テックのテクノロジーを導入することで、今まで散らばっていた不動産情報を1つのデータベースに集約し、情報を網羅できるようになります。これによって情報の質と売り手と買い手の双方向に透明性の高い情報を共有できるようになるため、不動産マッチング業界が活性化すると期待されています。
また情報を一元管理、運用ができる体制が整えば、不動産業界の現場で起こる情報の属人化を防ぐことができます。物件情報やお客様情報の社内共有も円滑化するため、業務レベルでの生産性向上が可能になります。
テクノロジーにより生産性が向上する
不動産業界の現場では、契約書類の作成管理や家賃の管理、採用や社員教育など業務レベルでの煩雑な作業に業務時間を取られるケースが多くあります。
しかし不動産テックのテクノロジーを採用することで、煩雑な作業にとられていた業務時間の短縮化が可能になり、その分を違う業務にあてることができるため生産性の向上が期待できます。
不動産テックの11のサービス
不動産テック市場の盛り上がりと、不動産テックの導入によって解消される不動産業界の現状をご紹介してきました。
ここからは実際の不動産テックの11のサービスを見ていきましょう。
不動産情報メディア
物件情報を集約して掲載するポータルサイトや、不動産に関する情報を提供するメディア。個別の物件情報をユーザーに提供し、不動産仲介業者へとつなぐ役割を果たします。不動産購入や賃貸に関する知識や街ネタなど、ユーザーにとって有益な状況を提供するWEBサイトもこれに含まれます。
物件以外の不動産に関するデータを業務に活用できるサービスも登場。不動産登記情報の取得や、災害データのチェック、日本全国の人口統計や居住者・立地特性といった情報を取得・分析できるシステムもあります。
マッチングサービス
物件所有者と利用者、不動産業務と不動産業界で働きたい人などをマッチングするサービスです。不動産プロフェッショナルなどの人材に特化したものや、工事の受注、民泊ビジネス、相続不動産や居抜き物件といった不動産の種類別に特化したものなど、多様なサービスがあります。リフォームやリノベーションの企画設計施工や、リフォーム業者に関する情報提供、ユーザーとのマッチングを行うサービスも。
VR・AR
ヴァーチャルリアリティ(VR)・拡張現実(AR)の機器を不動産情報提供に活用するシステム。VR・ARで利用するデータ合成を行うサービスもあります。VRによる物件の疑似内見や、ARを使った、家具の配置や使用材質のシミュレーションといった活用が進んでいます。
価格可視化・査定
データやAIなどの解析技術を用いて、不動産価格や賃料を査定、また将来の見通しを可視化するサービスやツールです。複数社にまとめて不動産の価格の査定を依頼できるWEBサイトや、売却のための一斉見積もり依頼ができるサービスもあります。
スペースシェアリング
不動産や空きスペースのシェアやマッチングを行うサービスです。会議室やイベントスペース、駐車場や美容室などの空き状況の検索や予約をすることができます。短期から中長期の間、空いている不動産を有効活用するとともに、スペースを一定期間だけ利用したいユーザーに機会を提供します。
ローン・保証
不動産取得に関するローンや保証サービスの提供、仲介・比較をするサービスです。借り換えメリット査定やローンのシミュレーション機能などによって、ユーザーの住宅ローン選びをサポートします。
IoT
IoTとは、モノのインターネット。ネットワークに接続されたデバイスを、住居やオフィスでの生活、または不動産サービスに活用します。Google Homeや電子鍵などの入居者向けサービスのほか、WEBカメラを使った不動産のチェック、入退室管理システム、管理会社向けスマートロックシステムなど、不動産の業務を支援するツールもあります。
ブロックチェーン
ブロックチェーンとは取引におけるデータを暗号化して記録(ブロック)することで、重要なデータをネットワーク上で共有し合いながら管理する技術のことです。不動産業界にブロックチェーンの技術を取り入れることで、高いセキュリティ性を保ちながら情報の可視化が可能になります。また間に多くの人を挟むことなく当事者同士で情報のやり取りが可能になるため、情報共有の効率化が高まりコスト削減にも期待ができます。
クラウドファンディング
WEBプラットフォームを使って、複数の投資者から資金を集め、不動産への投融資を行う仕組みを提供。不動産事業向けの資金を必要とする人と、資金の提供者をマッチングさせるサービスもあります。投資したい個人にとっては少額から不動産投資を行うことが可能になり、資金調達をする側にも、クラウドファンディングによって機会が拡大するというメリットがあります。
管理業務支援
不動産管理会社などの業務効率化を支援します。顧客情報の管理、運営支援ツールなど、主にPM(不動産経営代行)業務をサポートするシステムを提供します。
管理業務支援には、IT重説の支援ツールも含まれます。IT重説とは、これまで店舗で対面で行っていた不動産賃貸契約や売買契約における重要事項説明を、スカイプなどのビデオ通話を使用してオンライン上で行うこと。2017年10月に、賃貸取引に関するIT重説が解禁されました。IT重説は、遠方の不動産を契約する際にユーザーに移動の負担がない、ユーザーと業者間の日程調整の融通が利くなどのメリットがあります。
仲介業務支援
不動産賃貸・売買の仲介業務を支援します。顧客情報管理、営業支援、物件確認自動音声対応ツールなど、仲介業務に特化したサービスを提供します。
不動産テックの推進は不動産業界の働き方改革にもつながる
スタートアップ企業の取り組みを中心に、これまでになかった新しいWEBサービスやプラットフォームが不動産業界に登場しています。ITの活用は、不動産を探すユーザーや、不動産投資をしたい投資家の利便性を向上するだけでなく、新しい事業機会も生み出します。
また、良質な情報を効率よく顧客に提供できるサービスや業務支援ツールの登場は、不動産業界の売上アップや業務効率化にも直結。働き方改革も実現する不動産テックの導入を、できるところから始めてみてはいかがでしょうか?
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
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