週休3日制のメリット・デメリットとは?現状や事例、導入のためのステップを解説
2024年05月20日 07:00
この記事に書いてあること
働き方改革の一環として「週休3日制」を取り入れている企業が増えています。なかには、週休3日制は従業員数が多い大企業だからこそ検討できるというイメージをお持ちの方もいるかもしれません。はたして、中小企業にとっても週休3日制の導入は現実的なのでしょうか。
今回は、週休3日制の具体的な導入イメージや、会社側と従業員側にとっての週休3日制のメリット・デメリットについて解説します。あわせて導入事例も解説するので、ぜひご参照ください。

中小企業でも注目が集まる週休3日制とは? 現状を解説

はじめに、週休3日制の概要からご紹介します。注目を集めている背景も含めて解説するので、ぜひご参考ください。
週休3日制とは
週休3日制とは、一週間のうちに3日の休暇を設ける制度のことをいいます。
労働基準法での法定休日は「1週間に1日」もしくは「4週間に4日」ですが、多くの企業では、一週間に2日の休日を設けていることが一般的です。そのため、週休3日制は、それよりもさらに1日増やす制度になります。
週休3日制はなぜ注目されているのか?
そもそも、なぜ「週休3日制」の導入に注目が集まっているのでしょうか。そこには、働き方改革はもちろんのこと、2021年6月に内閣府が発表した『経済財政運営と改革の基本方針2021』が関係しています。
『経済財政運営と改革の基本方針2021』において、政府は、選択的週休3日制度を、従業員の休日を増やすことで「育児・介護・ボランティアでの活用」や「地方兼業での活用」に活かすことができる制度だと述べています。
このことから、政府の柔軟な働き方や、ワーク・ライフ・バランスとの両立への意欲が伺え、その手段として週休3日制を発表したと考えられます。
週休3日制の導入パターンは3つ
一口に「週休3日制」といっても、そのパターンはさまざまです。この章では、週休3日制の導入パターンを3つご紹介します。

1日の労働時間と給与は同じで休日が増える「給与維持型」
まず1つ目が、1日の労働時間と給与が同じで休日が増える「給与維持型」です。これは、所定労働時間が「1日8時間、週5日、週40時間」だったものを、「1日8時間」はそのままに「週4日」とすることで「週32時間」と労働時間のみを減らす方法になります。
総労働時間が減少しているにもかかわらず、従業員の給与額は変動しないため、従業員にとってはもっとも理想的な内容といえるでしょう。ただし経営を成り立たせるためには、短い時間のなかで成果をあげる必要が出てきます。
1日の労働時間は変わらず収入が減る「給与減額型」
2つ目が、1日の労働時間は変わらず収入が減る「給与減額型」です。株式会社LIFULLなどが導入しており、 1つ目のパターンと同じように、「1日8時間、週5日、週40時間」だったものを「1日8時間、週4日、週32時間」とし、減った8時間分(20%)の給与を減らす方法になります。
従業員には週4日分の給与を支払うことになるため、これまで週5日働いていた従業員からは不満が出るかもしれません。そのため、導入前に説明し、同意を得ることが大切です。
1日の労働時間が増えて収入が変わらない「総労働時間維持型」
3つ目が、1日の労働時間が増えて収入が変わらない「総労働時間維持型」です。たとえば、「1日8時間、週5日、週40時間」としていたものを、1日当たりの労働時間を増やして「1日10時間、週4日、週40時間」などとする方法を指します。
1日の労働時間は増えるものの所定労働時間の週40時間は満たしているため、給与は変わらず、週休2日制から移行しやすい内容ともいえるでしょう。実際にユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングなどはこのパターンを採用しています。ただし、従業員のなかには負担に感じてしまう人もいるかもしれないため、フォロー体制を整える必要があります。
週休3日制の5つのメリット

続けて、週休3日制の5つのメリットを企業と従業員側に分けて解説していきます。
企業側のメリット
まず、企業側のメリットです。
1.離職率の低下や人材確保につながる
週休3日制を導入することで企業側が得られる1つ目のメリットとして、離職率の低下や人材確保につながることが挙げられます。働き方改革の影響もあり、会社を選ぶ際にワーク・ライフ・バランスを重視する求職者が増えています。週休3日制を導入することで働き方改革の推進をアピールでき、人材確保はもちろんのこと、離職率の低下にも効果が期待できます。
2.従業員の生産性や収益性の向上を見込める
2つ目のメリットとして、従業員の生産性や収益性の向上を見込めることが挙げられます。休みが増えることで従業員がリフレッシュしやすくなり、業務にメリハリがついて、生産性や収益性の向上も見込めるでしょう。
3.コストを削減できる
3つ目のメリットとして、コストを削減できることが挙げられます。会社の休日を増やすと、それだけオフィスの光熱費などを減らすことができます。生産性と相まってコストの削減を見込めるのは、週休3日制の大きなメリットといえるでしょう。
従業員側のメリット
次に、従業員側のメリットを解説していきます。
1.ワーク・ライフ・バランスの実現に役立つ
週休3日制を導入することで従業員側が得られるメリットとして、ワーク・ライフ・バランスの実現に役立つことが挙げられます。
休日が一日増えることで、十分な休養を取ることができ、心身のリフレッシュやストレスの軽減が期待されます。また、空いた時間を旅行や趣味、自己啓発などの時間に充てるなど私生活の充実を図ることができ、メンタルケアや満足度向上にも効果があるでしょう。
また、一週間に2日しかなかった休みが1日増えることで、家族との時間が取りやすくなるなど、私生活の充実を図ることができます。介護や育児と両立をしている従業員にとっては、休日が増えることで介護や育児との調整をしやすくなるメリットもあります。
2.スキルアップのための時間が増える
2つ目のメリットが、スキルアップのための時間が増えることです。週休3日制を導入することで、仕事以外に取り組めることが増え、資格試験の勉強や、スキルアップのためのセミナー参加等に時間を使うことができます。
自己啓発の内容によっては仕事のスキルアップにつなげることも可能なため、従業員自身の仕事への意欲が高まることも期待できます。
週休3日制の6つのデメリット

次に、週休3日制がもたらす6つのデメリットを企業側と従業員側に分けて解説します。
企業側のデメリット
まず、企業側のデメリットから解説していきます。
1.従業員の業務に偏りが出る
週休3日制の導入による企業側の1つ目のデメリットとして、従業員ごとの業務に偏りが出てしまうことが挙げられます。もし従業員全員が一律で週休3日制を導入するのではなく選択制にした場合、タスクの量や成果に差が出てきてしまいます。従業員から不平不満が出ないよう、仕組みを整える必要があるでしょう。
2.機会の損失が出る可能性がある
2つ目のデメリットが、機会の損失が出ることです。もし、営業職のようにクライアントとやりとりをする職種の場合、労働時間が減ることでクライアントとの円滑なコミュニケーションが取りにくくなり、機会損失につながってしまいます。そのため、事前に週休3日制の導入について案内をする、複数人で業務を共有し、コミュニケーションの抜け漏れがないか確認するなどの対策が求められます。
3.勤怠管理の負担が増える
3つ目のデメリットが、勤怠管理の負担が増えることです。週休3日制のうち、特定の曜日を休日にするのではなく、シフト制を導入した場合、従業員によって休日が異なるため、勤怠管理が複雑になります。
そのため、ITツールを導入するなど、従業員の休日や労働時間を適切に把握できる仕組みをつくる必要があります。
従業員側のデメリット
次に、従業員側のデメリットです。
1.長時間労働になりやすい
週休3日制の導入による従業員側の1つ目のデメリットが、長時間労働になりやすいことです。勤務日数が減ったとしても業務に変更が無ければ、勤務する日の業務が増え、一日当たりの業務時間が長くなり、結果的に長時間労働に陥りやすくなります。そのため、結果的に疲れが溜まってしまい、仕事とプライベートとの両立が難しくなる可能性もあります。
2.評価の機会が減る
2つ目のデメリットが、評価の機会が減る可能性があることです。全従業員に対して特定の休日が設けられた場合ではなく、導入する従業員が決まっていたり、休みがバラバラだったりする場合、上司と勤務が合わなくなることも増え、評価にばらつきが出ることが考えられます。
そのため、昇進や昇給を目指している従業員のなかには、評価の機会が減ることを大きなデメリットだと捉える人もいるでしょう。そのような不安を抱かせないよう、企業側にはどの従業員も公平に評価できるルールを設計するなどの工夫が求められます。
3. 給与が減る可能性がある
3つ目のデメリットが、給与が減る可能性があることです。これは、週休3日制の導入パターンのうち、1日の労働時間は変わらず収入が減る「給与減額型」で該当するデメリットとなります。
これまで「1日8時間、週5日、週40時間」の勤務だったものを1日減らすことで、その分の給与が下がるため、従業員にとってのデメリットになると考えられます。
週休3日制の導入方法3ステップ

続いて、週休3日制の導入方法を3つに分けて解説していきます。週休3日制を導入したいとお考えの企業の方はぜひ参考にしてください。
1.週休3日制を導入する目的を明確にする
まず、週休3日制を導入する目的を明確にします。たとえば、従業員の離職率低下を目的とするならば、従業員の不満につながらないような導入パターンを考えなければなりません。収益との兼ね合いもあるため、どうしたら実現可能かを考えるためにも、まずは目的から明確にしていくことをおすすめします。
2.対象となる従業員を決める
週休3日制を導入する目的を明確にしたあとは、対象となる従業員を決めましょう。正社員だけを週休3日制の対象にするのか、正社員とほとんど出勤日数が変わらない契約社員も含むのか等、企業の状況に応じて考えなければなりません。
また、特定の従業員のみを対象とする場合、その人が休む分はどのように補填するのかなど、具体的にシミュレーションしていく必要があります。全員に適用するのではない場合は、どのように従業員の満足度を保っていくか考えながら対象を決めましょう。
3.副業や休日など規程を決める
また、下記で挙げるように副業や休日などの規程を決めることも大切です。
1.賃金や有給休暇はどうするか
1つ目が、賃金や有給休暇についてです。先に説明した3パターンの中でも勤務時間の設定によって、さまざまな場合が考えられます。有給休暇の取得条件も同じく、自社の業績や目的と照らし合わせた上で決めましょう。
2.副業は解禁するか
2つ目が、副業の解禁についてです。週休3日制を導入する場合、さらなるスキルアップや収入アップを目指して副業を志望する従業員が出てくるかもしれません。目的に沿った上で、副業の解禁について検討しましょう。
現在は副業を禁じているが、賃金を減らすパターンの週休3日制の導入を考えているのであれば、従業員からの不満を抑えるために副業を解禁する方法もあります。その際には「競合他社はNG」などのルールも決める必要があるので、しっかり考えましょう。
3.休日はいつにするか
3つ目が、休日についてです。休日は全員一律にするのか、ローテーションしていくのかなども決めなければなりません。週休3日制の対象を全員にしていない場合はとくに、固定の曜日だけに勤務が偏ることで仕事が回らないようになってしまっては対象外の従業員に負担がかかってしまうので気をつけましょう。
4.利用期間はどのくらいにするか
4つ目が、利用期間についてです。対象となる従業員を決めた場合は、週休3日制度が利用できる期間についても規程を設けましょう。たとえば閑散期だけにするのか、1年のうち半年間と決めるのか、利用期間は制限しないのかなど、職種や自社の業績などによって決める必要があります。
その際に、「なんとなく○ヶ月にする」などと決めるのではなく、根拠を明確にすることで、従業員に説明をする際に説得力を持たせることができるのでおすすめです。
週休3日制の導入事例
週休3日制にはさまざまなパターンがあり、規定も会社によって異なるため、どのように決めたらいいのか迷う人もいるかもしれません。そこで最後にこの章では、企業で実際に週休3日制を導入した事例を紹介していきます。
1.株式会社LIFULL
株式会社LIFULLは、2022年10月より半年間のテスト運用を経て、2023年4月1日より「週休3日制度」および「取得理由を問わない短時間勤務制度」を開始しています。「週休3日制度」は金曜日を固定休日とし、その分の給与や賞与は減額となる「給与減額型」を導入しています。「取得理由を問わない短時間勤務制度」はこれまでは育児や介護など理由がなければならなかったものを、理由を伴わなくても取得可能とする短時間勤務制度として新設し、給与・賞与は標準の勤務時間に比例して減額となります。
どちらも全正社員のうち、制度利用を希望する社員を対象にしています。
2.株式会社ファーストリテイリング
ユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングでは、2015年10月以降、「変形労働制」を利用し、1日の労働時間を8時間から10時間に増やすことで給与を変えない「給与維持型」の週休3日制度を導入しています。出勤は土日を含む週4日で、休日は平日の3日取得することができます。
ユニクロは、1日の労働時間を長くすることで集中して業務を取得でき、育成面においても効果があるとコメント。公式サイトには、介護や育児にかぎらず、資格取得などに時間を充てている従業員の体験談を掲載しています。
3.SMBC日興証券株式会社
SMBC日興証券株式会社では、2020年4月に「週3日勤務(週休4日)」もしくは「週4日勤務(週休3日)」を選べる制度を導入しました。
当初は年齢制限がありましたが、2022年からは引き下げられ、「週3日勤務」に関しては「①欠勤・休職中でない60歳以上の社員、②介護理由のある40歳以上の社員」が、「週4日勤務」は、「①欠勤・休職中でない40歳以上の社員、②育児・介護理由のある入社4年目以降の社員」が対象になりました。
勤務時間に比例して給与が支給されますが、休日を副業に充てることを許されており、セカンドライフのためのキャリア形成を支援しています。
まとめ
週休3日制の具体的な導入イメージを知ると、中小企業にとっても不可能な制度ではないとわかるでしょう。1日10時間の勤務に適した仕事があるなど、週休3日制がフィットしやすい企業もあります。子育て中の社員や女性が多い職場では、人材活用が進むという効果も期待できます。自社の状況と週休3日制のメリットとデメリットを照らし合わせて、導入を検討してはいかがでしょうか。
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