5Sとは?製造業(工場)における意味とビジネスシーンでの活用効果
公開日:2022年04月07日
この記事に書いてあること
【2026年1月27日 更新】
職場環境の改善に向けた取り組みのうち、「5S」は製造現場から始まった活動です。工場などで長年にわたって用いられてきたものの、製造業以外のビジネスシーンにおいても有効な考え方といえます。
この記事では、5Sの基本的な考え方や実践するメリット、ビジネスシーンで活用する効果についてわかりやすく解説しています。5S活動を成功させるためのポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
5Sとは

5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」を表す言葉です。とくに製造業において現場を改善し、生産性を向上させるために必要な項目を示しています。工場などで安全かつ効率的に作業を進められるよう、製造現場で長年にわたって用いられてきました。
製造業が発祥ではあるものの、5Sはその他の業種でも有効な考え方です。そのため、職場環境の改善や整然としたオフィスを維持するために、ビジネスシーンにおいても広く用いられています。
5Sの要素

5Sを理解するには、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の各要素が何を表しているのかを正確に把握する必要があります。
1. 整理
整理とは、必要なものと不要なものを分け、不要なものを処分することを指します。製造現場においては、作業に直接関係のないものが無造作に置かれていること自体が大きな問題です。作業に必要な工具と別の工具を取り違えたり、床に放置されているものにつまずいたりする原因にもなるため、不要なものはすぐに撤去する必要があります。
ビジネスシーンにおいても同様のことがいえます。たとえば、書類の山がデスク上に積み上がっている状態では、本来どの書類が必要なのか、重要度の高い書類がどれなのかが判別しにくくなります。必要なくなった書類は速やかに廃棄し、業務に必要な書類が手元に残っている状態にしておくことが重要です。
2. 整頓
整頓とは、必要なものを使いやすい場所に置くことを指します。単にきれいに並べるのではなく、利便性を考慮して配置するのがポイントです。製造業においては、作業に使用する工具類や部品を用途別に分類しておく必要があります。誤って別の部品が混入するようなことがあれば、製品の破損や不良品の発生につながるおそれがあるからです。
ビジネスシーンでも、整然とした職場環境を維持することは非常に重要なポイントです。業務に必要なデータがどこに保存されているのか不明な状態では、データを探すだけでも時間がかかってしまいます。さらに、重要なデータを紛失したり、盗難や漏えいといった重大な事故につながったりすることにもなりかねません。
3. 清掃
清掃にはいわゆる掃除だけでなく、ごみや汚れがない状態になっているか、問題なく動作するかといった点検を確実に実施することも含まれています。製造業においては、機械設備が正常に動作することが製造ラインを維持する上で非常に重要です。異常や不具合が発生していないか点検を実施することが、事故や故障の未然防止につながります。
ビジネスシーンにおいても、清掃の習慣を身につけることが大切です。定期的に清掃を実施することで、重要なものを紛失していないか、オフィス機器類に異常はないかといった点を意識的にチェックする機会を設けられます。
4. 清潔
清潔とは、「整理」「整頓」「清掃」が確実に行われている状態を維持することを指します。見た目がきれいになっているだけでなく、「不要なものがない」「必要なものが整然と配置されている」「ごみや汚れ、異常が見られない」といった状態を維持することがポイントです。
ビジネスシーンにおいても、常日頃からデスク上や引き出し内をきれいな状態に維持することが大切です。大掃除などを機にデスク周りやキャビネット内をきれいな状態にしたものの、時間が経つにつれて雑然とした状態に戻っていないでしょうか。こうした事態を防ぐためにも、「清潔」を常々意識する必要があります。
5. しつけ
しつけとは、職場が定めている基準やルールを守るとともに、整理・整頓・清掃・清潔を習慣として身につけることを指します。決められたルールを決められたとおりに実行できることは、製品を安定供給する意味においても、作業上の事故を防ぐ意味においても非常に重要なポイントです。
ビジネスシーンでは、部署として決められた手順や段取りに沿って仕事を進め、それらを習慣にしていくことが「しつけ」に相当します。会社の資産を不正に利用したり、重要な情報を漏えいさせたりすることのないよう、基本的なルールが徹底されている職場環境を維持していくことが大切です。
5Sを実践するメリット

5Sを着実に実践することによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主な5つのメリットを見ていきましょう。
業務を効率的に進めやすくなる
5Sを実践する大きなメリットとして、業務効率の向上につながる点が挙げられます。5Sを徹底することにより、作業に必要なもの(工具や部品など)を素早く正確に見つけられるようになるからです。
必要なものがすぐに見つからない事態にたびたび遭遇すると、その都度探すための時間や手間をかけなければならず、作業効率が低下しがちです。必要な時に必要なものがすぐに見つかれば、業務を円滑に進めやすくなるでしょう。結果として作業効率が向上し、業務全体の生産性が高まる効果が期待できます。
コスト削減効果が期待できる
5S活動の推進は、コスト削減にも寄与します。ものが常に整然と規則正しく並んでいることによって、たとえば在庫の破損や過不足が生じるリスクを抑えられるからです。
必要な資材や在庫の数が合わない場合、その原因を究明したり、不足分を補ったりするための作業に時間と労力を費やさなければなりません。こうした作業は利益を生まないばかりか、残業時間の増大にもつながります。整然とした作業環境で仕事を効率的に進められれば、結果として最小限の人員で業務を安定的に遂行できるでしょう。
安全衛生管理の改善につながる
5Sは安全衛生管理の観点からも重要な取り組みといえます。職場内での転倒や機器の操作ミスは、重大な事故に直結します。従業員の身の安全を確保し、安心して働ける環境を維持していくには、整然とした作業環境が欠かせません。
また、工具や機械設備のチェックとメンテナンスを欠かさずに行うことは、劣化や不具合の発生を未然に防ぐ意味においても重要なポイントです。実際に故障してから対応するのではなく、早期に不具合の兆候を察知することで、大事故につながるリスクを回避するための対策を講じられるでしょう。
商品やサービスの質が高まる
5Sの実践は、企業が提供する商品やサービスの質を維持・向上するためにも欠かせません。作業上のミスや見落としなどのヒューマンエラーは、不良品や対応不足などの原因になりがちです。こうした事態が積み重なれば、顧客の信頼を失いかねないでしょう。
5Sを着実に実践することはミスの未然防止につながります。結果として作業の質が向上し、ヒューマンエラーの発生率を抑えられるのです。顧客や取引先からの期待に応え、信頼を維持することは、自社のブランドを確立していくためにも不可欠なポイントといえます。
従業員のストレス軽減に寄与する
5Sの推進は、従業員のストレス軽減にも寄与します。必要なものが見つからなかったり、作業場所が汚れていたりすると、そこで働く方々は少なからずストレスを感じるはずです。作業に使ったものをきちんと片付ける人と片付けない人がいるような状況が続けば、不満を抱く従業員が現れるなど、人間関係のトラブルにも発展しかねません。
常に整然とした職場環境を維持することで、こうしたストレスやトラブルを未然に防げます。5Sを実践するメリットを各従業員が認識することで、さらに美化意識が高まる好循環を生み出せるでしょう。すべての人が快適に働ける職場づくりにつながることも、5S活動に取り組む重要なメリットといえます。
5Sの実践はビジネスシーンにおいても効果的

ここまでに見てきたとおり、5Sの取り組みは製造業だけでなく、ビジネスシーンにおいても効果をもたらします。ビジネスシーンで5Sを実践することによって得られる効果を確認しておきましょう。
必要な書類やデータがすぐに見つかる
デスク上や引き出し内が常に整理整頓されている状態を維持することで、仕事に必要な書類やデータを見つけやすくなります。書類が雑然と積み上げられていたり、保存されているデータがきちんと整理されていなかったりすると、必要な情報を探し当てるまでに時間を浪費する原因になりがちです。重要な書類やデータを紛失したことをすぐに察知できないのは、情報セキュリティの観点からも重大な問題といえます。
書類や物品の保管場所を明確に決め、使ったら元の場所に戻すよう徹底するとともに、内容物が一目でわかるようにラベルやインデックスを活用するとよいでしょう。こうした工夫は、業務効率を高める上でも重要なポイントといえます。
オフィスのスペースを有効活用できる
不必要なものは置かない・適切に処分する習慣が身につくことによって、保管スペースの肥大化を未然に防げます。オフィスのスペースを有効活用できるようになり、より生産性を高めるための工夫を施せる余地が生まれるでしょう。
たとえば、作業に集中できるよう一人用の座席を設けたり、気分転換やカジュアルなコミュニケーションに利用できるリフレッシュスペースを増設できたりする可能性があります。近年はオンライン会議を実施する機会も増えていることから、空いたスペースにオンライン会議用のブースを設けるのもおすすめです。
情報漏えいなどのセキュリティリスクを抑制できる
5Sの徹底はセキュリティリスクの抑制にもつながります。整然としたオフィス環境を維持することは、機密情報や個人情報を含む書類やデータの紛失、盗難被害の防止にも寄与するからです。
また、重要な情報がどこにどのような状態で保存されているのかが共有されていることは、内部不正が起こりにくい職場環境を整えるために必要な条件ともいえます。重要なデータが不正にコピーされたり、社外に持ち出されたりするのを防ぐには、「本来どのように保存されているべきものか」が明確に定められ、ルールとして周知されていなければなりません。ルールから逸脱した行為があればすぐに発覚する体制を整えておくことが、情報漏えいの未然防止につながります。
5S活動を成功させるポイント
5S活動を効果的に進めるには、どのような点を意識する必要があるのでしょうか。必ず押さえておきたい5つのポイントは次のとおりです。
ポイント1:5S活動の目的と意義を周知する
そもそもなぜ5S活動に取り組む必要があるのか、目的と意義を従業員に周知することが大切です。単に「ルールだから」「守ることになっているから」といった受動的なスタンスでは、形式的な活動になりかねません。5Sが徹底されることで得られるメリットや、徹底されないことによって直面し得るリスクについて、丁寧に説明することが求められます。従業員側から見た場合に「片付けるように上司から言われた」といった表層的な受け止め方にならないよう、本質を理解してもらうことが非常に重要です。
ポイント2:各要素を徹底する
5Sの各要素を1つずつ徹底して実践することも重要なポイントです。単に「しっかり実行するように」と伝えるのではなく、どのレベルまで実践する必要があるのか明確にしておく必要があります。
たとえば、「整頓」は見た目上きれいに並んでいればよいのではなく、実務上の利便性を考慮して配置することを表しています。よく使うものが取り出しやすい位置に置かれているか、合理的な理由にもとづいて分類されているか、といった点を丁寧に確認していくことが求められるでしょう。
ポイント3:チェックシートを取り入れる
5Sの各要素について評価基準を設け、達成状況を随時チェックすることをおすすめします。チェックシートを取り入れ、各要素を漏れなく客観的に確認できるようにしておくのが得策です。
また、記入したチェックシートは記録として残し、保存しておくとよいでしょう。遵守されていない項目が見つかった際には、過去のチェックシートを見返すことでいつまで守られていたのか、何がきっかけで守られなくなったのかを検証する際に役立つからです。
ポイント4:活動の重要性を共有する場を設ける
5Sは一度周知すればよいものではなく、定期的に目的や重要性を振り返る機会を設けることが大切です。一見すると従業員が5Sを遵守しているように映っていたとしても、年月が経つにつれて慣れが生じ、活動が形骸化してしまうリスクはどの組織にもあります。5S活動の重要性をあらためて確認する場を設けることで、こうしたリスクを未然に防げるでしょう。
具体的には、社内研修会やワークショップの開催などが想定されます。座学形式だけでなく、各従業員に5Sの目的や重要性について主体的に考えてもらい、自らアウトプットすることで知識や理解を定着させる機会を設けることが大切です。
ポイント5:定期的にルールを見直す
5Sのルールが現場の実態に即しているか、定期的に検証することも重要なポイントです。当初に定めたルールが見直されておらず、現場の作業内容や実際の作業手順と乖離していくうちに、5S活動が形骸化しやすくなります。作業の内容や手順が変更された際には、関連する5Sのルールについても適宜見直さなくてはなりません。
現実的に運用可能なルールでなければ、そもそも遵守すること自体が難しくなってしまいます。現場の状況を定期的にヒアリングし、以前とは変更された作業内容がないか確認した上で、必要に応じてルールの見直しを検討しましょう。
まとめ
5Sはもともと製造業の現場から生まれた概念ですが、他業種においても幅広く活用できる考え方といえます。業務効率を高め、快適で働きやすい職場環境を整えるには、常日頃から5Sが遵守されていることが重要です。物理的な機器や書類だけでなく、データも含む自社の資産を適切に管理し、組織をリスクから守るためにも、5S活動を徹底していく必要があるでしょう。今回紹介したポイントを参考に、自社で5S活動を推進・強化するための方策を検討してみてはいかがでしょうか。
記事執筆
バックオフィスラボ編集部 (リコージャパン株式会社運営)
バックオフィスラボは、バックオフィス業務を「総務」「経理」「人事労務」「営業事務」「法務」「経営企画」の6つに分類し、 法令解説や最新トレンド紹介など、バックオフィス業務の改善に役立つヒントを発信しています。
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