ペーパーレス化で業務を大幅改善 文書管理システム導入が働き方改革にもつながった 大矢根利器製作所(香川県)

From: 中小企業応援サイト

2022年05月31日 06:00

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江戸時代の創業から150年を超える歴史を持つ香川県の大矢根利器製作所はICTを積極的に導入し、10年も前からペーパーレス化に取り組んできた。刃物一筋を貫きながら時代の流れに対応した製品を生み出し続ける背景には、変化を恐れないチャレンジ精神がある。

江戸時代末期の刀鍛冶がルーツ

香川県西部の三豊市に本社を置く大矢根利器製作所。その本社と併設した工場には、刃物を成型・熱処理・研磨するための設備や、装置として組み立てるための設備、また、検査に使う設備が並ぶ。10年ほど前から製品設計のために3D CADや3Dプリンターを導入するなど開発環境を充実させるための設備投資を積極的に行っている。

大矢根利器製作所は、江戸時代末期の安政・元治年間(1854年~1864年)に創業した刀鍛冶をルーツに持つ。明治時代に本格的に刃物製造に乗り出し、1898年に法人化してから120年を超える歴史の中で、刃物をベースに時代の変化に対応した製品を世に送り出し続けている。

カッターユニットの開発に高い能力、この分野で世界のTOP企業へ

刃物そのものの品質向上に加え、精密部品に刃物を組み込んださまざまな切断用装置の開発を成功させてきた技術力が会社の屋台骨を支えている。その実例のひとつが、スーパーマーケットでお馴染みのレシートプリンターなどで使われているカッターユニットだ。

上から刃を下ろすギロチンタイプ、振り下ろして切断するスイングタイプ、可動刃と固定刃を組み合わせたスライドタイプ、前後に揺り動かすロッキングタイプなどさまざまな用途に活用できる多彩なカッターユニットを製造している。

ロール紙を使うFAX向けのカッターユニットは、1980年代にFAXが企業や家庭で普及した流れをつかみ、最盛期には市場シェアの5割を占めるヒット商品になった。

普通紙を使う複合機の普及でFAX向けの需要が低下すると、スーパーマーケットなどの店舗で使用するレシートプリンターやラベルプリンター向けの開発と販売に力を入れた。いまでは、プリンター用カッターユニットにおいて世界の80%を占めるシェアを獲得している。

現在は今後に向けて、医療・介護業者に需要が見込めるペーパータオル・トイレットペーパーに適したカッターの開発という新規分野の開拓にも取り組んでいる。

「新しいことに挑戦し、変化する時代ごとのニーズに対応し続けてきたからこそ、百数十年の歴史を積み重ねることができたのだと思います。お客様からの要望への迅速な対応力と課題の解決につながる提案力をこれからも磨き続けていきたい」と砂古泰昌社長は話した。

熱く語る砂古泰昌社長

熱く語る砂古泰昌社長

FAX受信管理機能でペーパーレス化を実現

生産現場だけでなく経理や人事のバックオフィス分野でも10年前からICT導入を進め、ペーパーレス化を意識したオフィス改革を進めてきた。

FAXで複合機に送られてきた紙文書をデジタル化する文書管理システムの導入もそのひとつだ。「すべてメールで文書をやりとりできればいいのですが、古くからの取引先の中にはFAX中心の会社もまだ数多くあります。アナログに対応する機能も備えているので非常に使い勝手がいいですね」と総務部の熊谷崇志課長は話した。

ペーパーレス化を進めるポイントになっているのが、社員証に組み込んだ個人認証システムとFAX受信管理機能だ。

「複合機に入ってくるFAX文書には広告チラシのような印刷する必要のない文書も数多くあります。受信したFAX文書は一旦システムで保存され、未読か既読かをチェックしてプリントアウトしたい文書だけを選択することができるので、無駄な印刷をしなくて済んでいます。プリントアウトするときは社員証で本人認証してから使うので、ほかの人の印刷物との取り違えや紛れ込みは起こりません。また、社員一人一人の印刷枚数の記録も残るので、印刷文書を厳選する意識の醸成につながり、自然とペーパーレス化が進んでいます」と熊谷課長は、その効果を説明した。システムのおかげで導入前と比べて紙の使用を2割以上、削減できているという。

社員証を使って受信したFAXを確認している様子

社員証を使って受信したFAXを確認している様子

ただ、受信している文書はすべての社員がパソコンなどを通じて見ることができるため、重要な文書やデータはFAXで送らずに担当者個人にメールで送ってもらうよう取引先にお願いしているという。

個人認証システムを給与計算システムに連動 計算業務が不要に

個人認証システムは勤怠管理の面でも活躍している。社員証の個人認証機能と給与計算システムを連動させることで、社員一人一人の出勤と退勤の時間をリアルタイムで把握して、自動的に給与計算ができるようにしている。

システム導入以前は社員一人一人が紙製のタイムカードを使って出勤と退勤の記録を行い、担当者がタイムカードを回収して出勤簿に書き写して給与の計算をしていた。

社員が社員証をタイムレコーダーにかざしている様子

社員が社員証をタイムレコーダーにかざしている様子

「毎月、100人を超える社員全員のタイムカードを用意する必要がありましたし、給与計算の業務は月末に集中し、大きな負荷がかかっていました。また、すべて手計算で、数字が間違っていないか確認するための担当者も必要でした。今はシステムのおかげで、2人でしていた仕事を1人でできるようになりましたし、計算ミスの心配もしなくて済むので心理的な負担も軽くなりました。働き方改革を推進していく中で、社員がどれだけの残業をしているのかをリアルタイムで把握できるので担当者として非常に助かっています」と熊谷さん。

現在、毎月の給与明細は紙文書で社員一人一人に渡しているが、個人認証システムを活用して、デジタルで配布することも将来的に検討していきたいという。

ICTを新分野開拓と国際化に活用する

大矢根利器製作所は、中国、マレーシアに生産工場を持ち、製品の輸出先はアメリカ、韓国、台湾をはじめ、ヨーロッパ、東南アジアなど世界に広がる。

大矢根利器製作所の本社

大矢根利器製作所の本社

「お客様からのどのような要望にも応える技術力を強化していくことはもちろん、製造、販売のさらなる国際化を目指していきたい。熱処理や研磨などこれまで蓄積してきた技術を活用していける分野を開拓していきたい」と砂古社長は挑戦の意欲を示す。

国際的な事業展開や新分野の開拓を進めていく上で、複雑な業務を簡素化してくれるICTは必要不可欠なツールと言える。更なるICT導入を進めることで、蓄積してきた大矢根利器製作所の技術力の可能性はさらに広がるはずだ。

事業概要

会社名

株式会社大矢根利器製作所

本社

香川県三豊市仁尾町丁396番地

電話

0875-82-3102

設立

1898年8月

従業員数

87名

事業内容

工業用刃物及び精密部品(小型プリンター用カッターユニット、OA機器用ペーパーカッターユニット、発券機シートカットユニット、ラボシステム用各種刃物、化学工業用刃物、紙工業用刃物) 精密加工品、鋸刃

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