電子黒板を活用して会議や遠隔臨場を実施。社員の知識、技術、発想を掛け合わせる タケダ機械(石川県)
2022年08月22日 06:00
この記事に書いてあること
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産経ニュース エディトリアルチーム
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デザイン性を重視した工作機械の生産など新しい取り組みを進める石川県のタケダ機械が、IWB(インタラクティブ・ホワイトボード)と呼ばれる大型のタッチパネル式黒板(電子黒板)を導入して、会議やミーティングの活性化に取り組んでいる。その他、IoTを利用して工場の稼働状況の見える化に取り組むなどICTを積極活用している。
鉄骨づくりに不可欠な工作機械を製造
高度なものづくり企業が集積する石川県能美市に本社を置くタケダ機械は、建造物の骨組みとなる鉄骨づくりに不可欠な形鋼加工機、丸鋸切断機などの工作機械を製造している。設計、生産、販売までを一貫して行う体制を整え、鉄骨・鋼材加工会社、製缶・板金加工会社、ハウスメーカー、自動車部品会社に製品を納入している。技術創造、社会貢献、明るい社風を企業理念とし、東証スタンダード市場の上場企業として地域経済の牽引にも大きな期待が寄せられている。
タケダ機械の工場の様子
設立50周年にコーポレートロゴをリニューアル
設立50周年にあたる2021年10月、コーポレートロゴをリニューアルした。新しいロゴマークのデザインはタケダ機械の工作機械によって生み出される鋼材加工品をイメージしている。「経営理念の『顧客の求める製品サービスを提供し、顧客とともに成長します』とあるように、お客様視点の大切さを忘れてはいけない。自己満足を押し付けることはせず、お客様から世間から必要とされ喜ばれる製品サービスを提供し続ける会社を目指すことを新しいロゴマークに込めました」と竹田雄一社長は説明する。イメージカラーも赤から創業時からの青に戻し、製品のカラーも順次、青に変更している。
タケダ機械のコーポレートロゴと本社の外観
スピードと対応力にさらに磨きをかけるために、デジタル化は必須
会社の重要テーマとしてデジタル化を掲げている。「従来からの標準型よりも自動化の機能などを向上させた特注品のニーズが高まっています。スピードと対応力を強みとして事業に取り組んできましたが、時代の変化の流れは速く、スピードと対応力にさらに磨きをかける必要性を感じています。その課題を解決するために、生産現場からバックオフィスまで全社的にデジタル化を促進していきます」と竹田社長は意欲的に語った。
竹田雄一社長
工作機械のデザイン性向上にも力を注いでいる。これまでのタケダ機械では機能重視でデザインは二の次という風潮があったが、欧米を中心に製造現場の「見た目と機能のスマート化」を志向する企業が増えている。現在進めているデザイン力の強化は、時代の変化を先取りし、これまで以上に世界で求められる製品を世に送り出したいとの意欲の表れでもある。
新しいアイデアを生み出すために電子黒板で会議を改革
「変化の激しい時代に柔軟に対応していくには社員の知識、技術、発想を掛け合わせ、フル活用しなければなりません。新しいアイデアや前向きな発想を生み出すための会議やミーティングの役割は年々、重要になっています」と話す竹田社長。竹田社長の意を受け、タケダ機械は、オフィスと生産現場での会議やミーティングを創造的にするために、ICTの積極導入を目指している。そのひとつが電子黒板だ。
電子黒板を活用した会議の様子
「電子黒板というよりパソコンの機能を備えた大型モニターとして使っています。5年ほど前に初めて電子黒板を導入してから会議の精度、濃度、スピードが段違いに向上しました。非常に使い勝手がいいので昨年末、新たに大型画面の電子黒板を2台導入しました」。生産本部長を務める伊藤石典(いしのり)取締役は、満足した表情でそう話した。
伊藤取締役が電子黒板に関心を持ったのは取引先に勧められて参加したICT機器の展示会で実物を見たことがきっかけだった。「話には聞いていたのですが、実機のデモを見て、これまで会議の進め方で悩んでいたことが解決できると確信できたんです」と伊藤取締役。早速、竹田社長に購入を直訴したところ、快諾してくれたという。
会議での資料準備が不要に アイデア創出に集中できるようになった
電子黒板はタッチパネル式で、アナログのホワイトボードと同じように書き込んだり、消したりできるだけでなく、書き込んだ内容を拡大、縮小したり移動することができるので、スペースを柔軟に活用できる。画面に映した資料に上書きすることも可能だ。書き込んだ内容はワンタッチで保存することが可能で、メール送信で共有も簡単に行える。
「電子黒板を導入してから会議で紙を使用することはなくなりました。必要な資料がある時は会社のサーバーにアクセスしてすぐに画面に映し出すことができます。疑問点がある時は、重要な数字や資料をすぐに画面で確認して会議を進めることができるので非常に助かっています」(伊藤取締役)。
伊藤石典取締役
電子黒板を導入する前は、会議前に紙で資料を作成し、人数分のコピーを用意していた。会議の終了後は担当者が議事録を作成していたという。今は、電子黒板に書いた内容をそのまま議事録としてメール配信しています。「電子黒板を導入してから、会議前と後の作業を大幅に削減することができたので、会議で何を話し合い、何を生み出すかということに意識を集中できるようになりました。当時は、会議のためにさまざまな準備をするのが当たり前と思っていたのですが、今から思うと本当に時間を無駄使いしていたと思います」と伊藤取締役は苦笑いしながら話した。
取引先の機械トラブルにもリモートでの対応が可能に
電子黒板は遠隔地との情報のやり取りにも効果を発揮している。タケダ機械は、全国8カ所に拠点を持っている。それぞれの拠点の取引先で、工作機械の調子が悪くなった時、まずは拠点の社員が取引先に駆け付ける。不具合内容により、本社の技術者の応援が必要になった場合、本社では生産の各部署の担当者が電子黒板の前に集合する。現地から送られた映像を各部署の担当者に大画面で見てチェックしてもらうことで、素早く原因の究明を行えるという。「リモートでプログラムを修正することで復旧する場合もありますので、そういった時は本社からわざわざ技術者を現地に派遣する必要もなくなります。やはり大画面の映像で確認できるのはありがたい。原因究明のために『とりあえず現地に向かえ』だった昔から比べると隔世の感がありますね」と伊藤取締役は振り返った。
社内設備機械の動きをリアルタイムで「見える化」する仕組みを導入
タケダ機械は、2019年から、社内設備機械をインターネットにつなぐIoTを活用した生産効率化に着手している。生産現場で使用している設備機械10台にセンサー類を取り付け、稼働状況をリアルタイムで「見える化」する仕組みを整えている。以前は設備機械の稼働状況は日報に手書きで記載し、記録として残していたが、データとして十分に活用できていなかったという。新しい稼働管理システムを導入して機械の停止要因の分析・対策を行って機械の停止時間を短縮したり、加工プログラムや工具等の見直しを行って加工時間を短縮し、機械の時間当たり生産量増加を実現し、受注から出荷までのリードタイムの短縮につなげている。現在は設備機械の稼働状況を工場と事務所にそれぞれ設置している電子黒板に表示することで常に稼働状況を確認できるようになっている。
設備機械の稼働状況をリアルタイムで見える化している
機械加工工程でのIoT化は進めているが、機械の組み立ての工程はベテラン技術者の熟練の技が必要とされる。ベテランの技術を若い世代に継承していく上でICTをどのように活用するかを今後、検討するという。
タケダ機械のショールームの様子
「ICTは徐々に社内に浸透しています。複数の部署の連絡と連携をスムーズにする上でもICTは大きな役割を果たしています」と話す竹田社長。人口が増加するアジア諸国では今後、旺盛な建設需要が期待できる。海外展開を拡大していく際にも営業活動や人材育成でICTは効果を発揮しそうだ。さまざまなデジタル技術を活用することで、タケダ機械は、製品開発や人材育成の強化、海外売上高の増加、付加価値の向上を実現し、競争力を高めていくに違いない。
事業概要
会社名
タケダ機械株式会社
本社
石川県能美市粟生町西132番地
電話
0761-58-8211
設立
1971年6月
従業員数
199人
事業内容
形鋼加工機、丸鋸切断機、金型などの設計、生産、販売
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