製造業(機械)

Web会議で技術者が商談に参加、チャットで情報共有化を進め金属部品の熱処理事業拡大につなげる 南信熱錬工業(長野県)

From: 中小企業応援サイト

2022年12月01日 06:00

この記事に書いてあること

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産経ニュース エディトリアルチーム

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諏訪湖から出て、長野県南部を流れる天竜川に沿って南北に細く延びた伊那谷は、養蚕を発端とした工業が盛んな地域だ。戦時中は航空機関連の工場が操業し、戦後はカメラや時計といった精密機械に関連した工場が作られて、世界中の人たちがわれ先にと求めた高品質のメイド・イン・ジャパン製品を送り出してきた。(トップ写真:トラックがひっきりなしに出入りして金属部品を搬入・搬出する)

金属製品を作る上で欠かすことのできない工程「熱処理」で創業50周年の南信熱錬工業

南信熱錬工業の一ノ瀬律生社長

南信熱錬工業の一ノ瀬律生社長

その伊那谷で1972年に創業し、今年がちょうど50周年という有限会社南信熱錬工業は、金属部品の熱処理加工という分野で、日本の製造業の発展に貢献してきた。「乗用車のフロントガラスの上に取り付けられたセンサーに使われている部品も手掛けています」と話す一ノ瀬律生社長によれば、月産で400万個から800万個といった数量を、自動車部品関連メーカーに納めているという。

同社が手掛けているのは、部品そのものの製造ではない。金属を熱して硬度を上げたり、耐久性や耐摩耗性を高めたりするいわゆる「焼き入れ」で、金属製品を作る上で欠かすことのできない工程の一つとなっている。ここがおろそかになると、見た目は同じでも性能面で大きな違いが出てしまう。「中でもオルゴールの振動板は、取り扱いによって音が変わってしまうので、注意を払って処理しています」。品質で世界を席巻したメイド・イン・ジャパン製品にとって、極めて重要な部分を担っている会社と言える。

「自分が乗っていた乗用車のサンバイザーを取り付ける金具にも、当社が処理したものがありました」と一ノ瀬社長。このように具体的な最終製品がわかる例はまれで、年間で600社ほどに及ぶ取引先から、何に使われるのかわからない部品の熱処理を依託され、相手が求める品質に仕上げて納品している。

社内のICT化、最終的にはEDI導入まで考えている。そのための初めの一歩として勤怠管理のICカード化を進めた

取引先との間で行う受発注などのやりとりをEDI(電子商取引)化できれば、業務効率の改善も大きく進むことになるが、それには相手先の理解や自社でシステムを扱える人材の育成が必要。今後の課題と位置づけ、「まずは従業員にDXに慣れてもらうところから始めました」。その一つが、勤怠管理システムの導入だ。この9月まで同社では、出勤や退勤の時に従業員にタイムカードを押してもらっていた。これをICカードで端末にタッチする方式に改めた。

タイムレコーダーからICカード式の勤怠管理に切り替えた

タイムレコーダーからICカード式の勤怠管理に切り替えた

「社員が40人ほどいて、パートや派遣を入れると80人近くが働いています。その出退勤状況を確認するのが、タイムカードでは大変でした」。通常勤務がどれくらいあり、残業や休日出勤がどれくらいあったかを、カードを見ながら集計する必要があったからだ。人数分をすべて集計するとなると、それこそ1日がかりの仕事になっていた。「今は自動で集計してくれますから、すぐに済みます」。社労士へと渡すデータ作りにかかる時間も少なくなって、その分を他の作業に振り向けることができるようになった。

報告・相談をチャットにすることで、情報の共有とデジタルデータとして記録に残せる。結果、情報伝達スピードアップと同じようなミスの再発防止となった

チャットを使った情報の共有化にも、今年1月から取り組んだ。スマートフォンなどを使ってコメントをやりとりするもので、「自分がコメントを入れて指示を出すと、即座に現場から返事が入ります。画像も付けられますから、文字だけの場合よりも格段に詳しく状況を把握できます」。以前は書類で作成し、それにデジカメで撮影した画像を書類に添付して渡していた。そうした手間が省ける上に、情報が伝わるまでの時間も大きく短縮された。

活用は活発で、「1日に10とか20といった報告が上がってきます」。前は何日かにまとめての報告だったり、報告そのものが上がってこなかったという。「隠しているわけではないのですが、あえて報告する必要がないと各自で判断していたようです。それは違う、解決策は一つではなく4つも5つもあるかもしれないのだから、報告をして指示を仰ぐことで、業務改善につながると言いました」。

以前に起こした失敗を、その時にしっかりと解決したにもかかわらずまた起こしてしまって、取引先からクレームが寄せられるケースが過去にあった。「報告をしておけば防げたミスでした。今は連絡相談をしっかり行うようにしたことで、繰り返して起こさないようにできました」。

顧客との打合せをWeb会議に変更することで、技術者も参加でき、技術面からのアドバイスで顧客も納得

もう一つ、商談の改善にもDXを取り入れた。「取引先とのオンラインでのミーティングに、営業担当者だけでなく技術者にも入ってもらうようにしたんです」。各地を飛び回る営業担当者についていかなくても、オンラインなら同じミーティングに参加できる。

会議のペーパーレス化に活用している電子黒板

会議のペーパーレス化に活用している電子黒板

「営業だけでは、話がどうしても価格面に寄りがちです。ここに技術者が入ることで、どうしてその処理が必要なのか、どれだけのコストがかかるのかといった背景を説明できます」。ミーティングの中で、技術面から効果的なアドバイスができれば、相手も納得してふさわしい値段を出してくれるようになる。「付加価値を提供できて、結果としてお客様にも喜んでいただけます」

会社に取引先が来る時は、電子黒板の出番だ。「今までは紙にプリントした資料を渡して行っていましたが、電子黒板は資料を映した上で書き込みを行って打ち合わせを進められます。最終的な結果をそのままプリントして議事録として渡すこともできます」。以前は議事録を打ち直して渡していたから、その時間を大幅に節約できる。

熱処理で顧客が知りたい特性を、バーチャル見学会のようなリアリティを感じる発信で自社の製品の魅力をもっと知ってもらいたい

「ホームページも、もっと充実したものにして、取引につながるようなものにしたいですね」。これまでの取引先は、熱処理した部品を納めた会社からの口コミなどで広がっていくことが多かった。そのルートを大切にする一方で、ホームページから情報を発信して、仕事を頼んでくるルートも開拓することを決めた。

現在のサイトでの技術紹介例。新しいサイトは2023年2月頃までに公開予定。

現在のサイトでの技術紹介例。新しいサイトは2023年2月頃までに公開予定。

「特殊な熱処理に対応できるということをアピールしているため、問い合わせをしてくるところはこれまでもありました、ただ、何か熱処理をしているということは分かっても、どのような特性を持ったものに仕上がるのかは伝えられていません」。導入している機械の画像を並べて、どのような種類の熱処理を行うためのものかを説明しても、そうした特性までは伝えられない。だから「どのような作業をしているのか、部品がどのように熱処理されて出てくるのかを見せて、具体的な成果を感じてもらう必要があります」。動画を使って見せるのもひとつの手だ。いわゆる「バーチャル工場見学会」の実施だ。

更に、最終的にどのようなところで使われている部品を手掛けているのかを、事例として並べて紹介することだ。「お客様の許可を戴く必要がありますが、そうした最終製品の紹介サイトを充実させて、会社が持っている実力を知ってもらえればと思っています」。自動車部品やオルゴール、身の回りにある普通にある製品に使われている部品を手掛けている会社だと分かれば親しみも湧く。使用している中でその製品が持つ性能が感じ取れれば、なおのこと興味を持ってもらえるだろう。

社内のICT浸透のために、社長自ら率先してノートパソコンの活用にチャレンジ

小型のノートパソコンを使うのは初めてという南信熱錬工業の一ノ瀬社長

小型のノートパソコンを使うのは初めてという南信熱錬工業の一ノ瀬社長

次々とDX戦略を打ち出し、取り入れていく同社だが、一ノ瀬社長自身は「持ち運べるようなノートパソコンを使ったのは最近になってから」。社員にいたっては今も表計算ソフトやワープロソフト、プレゼンテーションソフトを使いこなせてはいないという。「これから勉強してやっていかなくてはいけないですね」。68歳の社長が自ら率先してDXに取り組むことで、社員の意識も大きく変わっていくことを期待する。

次の世代にノウハウを継承する仕組みを模索

意識しているのは、円滑な世代交代だ。「オーナー会社ではないため、社員の中から次の経営者を育てる必要があるんです」。その期間も、3年後4年後といった短いもの。急ぎすぎては無理が出るが、遅れれば後が続かなくなることも考えに入れて、着々とステップをこなしている。

「熱処理というのは、一つひとつの部品ですべてやり方が変わってきます。気温や湿度といった気候にも左右されるため、高い技術が必要となってきます」。今は気候変動も激しく、夏のゲリラ豪雨によって以前は発生しなかったサビが出るケースもあって、技術や経験がますます重要になってきている。ただ、職人芸のようになってしまっては技術を継承できないまま、人材が枯渇してしまう。「ある程度の知識やノウハウを共有化できる仕組みを考えていく必要がありますね」。

南信熱錬工業の工場

南信熱錬工業の工場

業績好調の中、デジタルシフトと同時に事業の認知促進を進める

幸いにして業績は好調で、リーマンショック以後の10年ほどで売上高は倍に伸びた。「この数ヶ月は月間で過去最高の売り上げを記録しています」。自動車部品の分野は、EV(電気自動車)の登場でエンジン部品を中心に激変が予想されているが、「足回りや内装などには影響がないと見ています」。そこで有利なポジションを維持するには、デジタルシフトによってコストを削減し、情報を共有化し、広く世間に事業を知ってもらう必要がある。

好環境が続いているうちに、可能な限りの布石を打って次の時代に生き残っていける体制を作り、そこから時代を担う人材を育て上げて、さらなる50年へとつなげていく。

事業概要

会社名

有限会社南信熱錬工業

本社

長野県上伊那郡箕輪町大字中箕輪8688

電話

0265-79-3790

設立

1972年10月

従業員数

46人

事業内容

自動車部品・機械部品・建設機械部品・電気、電子部品・光学部品・金型の熱処理

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