オペレーター付き高所作業車レンタルというビジネスモデルで急成長企業にクラウド活用車両稼働管理 オートレント(埼玉県)
2023年03月15日 06:00
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株式会社オートレントは埼玉県川口市に本社を置き、東京・埼玉・神奈川・栃木の1都3県を中心とする関東エリアで、高所作業車に特化したレンタル事業を展開している。車両の貸し出しや返却に24時間365日態勢で応じるという顧客第一主義・現場第一主義の経営方針で異彩を放ち、メーカー系や商社系、大手レンタル系企業がひしめく建設機械レンタル業界の中で、数少ない独立系として確固たる地位を築いてきた。その経営方針は、一介の営業マンから徒手空拳で会社を起こした現社長の猛烈会社員時代の営業姿勢そのものだ。ただ一点違うのは、「社員は財産」と言い切る経営者としての信念が加わったことだ。ICT化による業務改善に積極的に取り組んでおり、最近はクラウド型業務アプリ作成ソフトを利用して、400台以上に上る車両の稼働管理業務を大幅に改善した。
建設機械レンタル会社の営業マンになり、働き過ぎて同僚からクレーム
「あなたがやっていることはサービス過剰です。顧客は喜ぶかもしれないが、その顧客を引き継ぐ人は大変だし、我々は迷惑です」。
株式会社オートレントの上野拓也代表取締役は、建設機械レンタル会社の営業マン時代に、よく同僚からこう突き上げられた。営業だけでなくオペレーターもできる上野社長は、週6日制だった当時の日曜日も率先して働き、時にはスーツ姿のまま泥だらけになりながら故障した建設機械の下にもぐり込んだというから無理もない。まるで一人で24時間365日稼働である。上野社長が動けば必ず売上が立つので、「即効性の男」とも呼ばれ、社内で特別視されていた。「人並みの努力では売上は伸びないと、自分を断崖絶壁に追い込んで仕事をしていました」と、若き日の心境を振り返る。
身を粉にして働いた頃を振り返る上野社長
上野社長は宇都宮市の高校を卒業後、東京で働きながら高所作業車を操作するオペレーターの資格を取得。首都高速の橋げたや橋脚の大型塗装の補修工事で使う高所作業車のオペレーターを務めていた際、その仕事ぶりを見込んだ建設機械レンタル会社の社長に「営業の仕事をしないか」と勧誘されて、「この業界にデビューしました」(上野社長)。1987年、26歳の時だった。働き過ぎて、営業会議で同僚からクレームを受けたときも、この社長はみんなの前で「上野さんの営業スタイルこそ当社のスタイルだ」とかばってくれたそうだ。
上野社長の父親は宇都宮で3つの会社を経営する実業家だった。上野社長が小学校4年生の時に他界し、会社も廃業したが、母親や叔父から父親の話を聞くうちに、「自分もいつかは会社を経営してみたい」と考えるようになった。建設機械レンタル会社の営業マンとして、月2000万円以上の売上実績をあげるようになると、次第にその夢が膨らんだ。
高所作業車に特化し、オペレーターをつけるというビジネスモデルを固める
過酷な作業を担う建設機械はトラブルがつきものだ。24時間・365日対応で、オペレーターが現場に高所作業車を回送し、そこで操作まで行うサービスを主体とするビジネスモデルなら成功するに違いない。上野社長の起業への道が次第に明確になっていった。
1996年6月に有限会社として、浦和市(現さいたま市)にオートレントを設立した。登記をする際、行政書士に支払う経費を惜しみ、自ら法務局に出向いた。窓口の職員を相手に2時間ほど掛け合っているうちに職員が怒り出した。「カチンときたけど、グッとこらえて」(上野社長)、どうすればいいか教えを請うた。すると、「大きな本屋に行けば、会社の作り方を書いた本が置いてある」と教えてくれた。それから1週間ほどかけて本を参考に申請書類を作成、ようやく登記することができた。資本金は什器・備品を含めた自己資金300万円。その翌月、36歳になった。
経営者とサラリーマンの二足のわらじで働きながら、協力メーカー探しに奔走。上野社長の熱意が実った
もっとも、創業したばかりの会社に全力を傾けられたわけではない。経営が軌道に乗るまでの運転資金を稼ぐため、腕利きの営業マンとしてヘッドハンティングされた2つ目の建設機械レンタル会社で働くという二足のわらじ生活を始めた。その傍ら、高所作業車のメーカーや販売会社を訪ね歩き、レンタル用の高所作業車を調達するために、有利な条件で協力してくれるよう求めた。行く先々で断られながらも、あらゆるつてを頼って探し歩いていると、「勤め先の会社を円満退職する」「無茶せずにオートレントを長続きさせる」という2つの条件付きで、ゴーサインを出してくれるメーカーが現れた。1996年6月にオートレントを設立してすでに3年、1999年5月になっていた。
新たに新車7台と中古車8台を調達することができた。トータル9000万円近くかかったが、協力メーカーがローンの支払いを半年据え置いてくれた。登録料の約400万円は国民生活金融公庫の融資でしのいだ。それまでに保有していた車両と合わせて計20台の高所作業車がそろい、オートレントの事業がいよいよ本格化した。
それからは、看板の取り付け・取り外しに高所作業車を使う屋外広告業者を主な顧客として事業を拡大。2003年1月に株式会社に改組し、2017年5月には現在地に本社社屋を竣工した。「リースセンター」や「サポートステーション」といった名称の営業拠点も次々と開設し、現在14拠点を擁する。
車両置き場「メインステーション鳩ヶ谷Pier」に並ぶ高所作業車。赤と黄色のボディカラーはウルトラマンガイアのデザインを参考にした
顧客第一主義・現場第一主義で「お客様の時間を止めない」、作業の難所をこなす「社員」が最大の財産
創業時から変わらぬ企業理念は「お客様第一主義」と「現場第一主義」。合言葉は「お客様の時間を止めない」。「当社がいちばん怖いのはお客様に車両をお貸ししている時間を止めてしまうことです」(上野社長)。レンタルした高所作業車が故障すれば、顧客の作業時間がストップしてしまう。それはできる限り避けなければいけないし、万一故障しても最小限の時間で修復しなければいけない。だからこそ、24時間365日態勢で万全を期す。
経験豊富なオペレーターが常駐し、いつでも顧客の求めに応じて協力するというのも同社のセールスポイント。いわく、「オペレーター付き業界ナンバー1」。例えば、建物の外壁の隙間などを埋めるシーリング工事の際には、ベテランのオペレーターが縦横無尽にバケットを動かすことで、より早く・美しく仕上げられるという。小回りを利かせたこの「人」の対応こそ、大手に伍して商圏を広げてきたゆえんだ。
用途によって使い分けられる豊富な車両ランナップ
企業理念や経営方針にはこのほか、「社員は財産」という言葉も必ず盛り込まれる。「人と人との繋がりを大切にしないとダメです。それは会社がどのようになろうとも絶対に変えません」と上野社長は断言する。
紙で管理していた車両の稼働管理をパソコンでの管理に変え、効率は格段に上昇
社員が働きやすい環境を作るために、ICTの導入にも積極的。2019年5月には、合わせて約400台に上る高所作業車やクレーン車の稼働状況を管理するため、目的に応じて業務アプリを構築できるクラウドサービスを導入した。それまで、A3の厚手の紙1枚に手書きで書いたり消したりしていたのを、パソコンで操作できるようにしたのだ。
紙の稼働表で管理していた頃は、一人の社員がその紙を手に、稼働状況を確認しながら電話でレンタルの注文を受けていると、別の電話に出た社員は紙を見られないので、うろ覚えの稼働表を頭に描きつつ顧客に対応するしかなく、ミスが発生することもあった。その紙も使っているうちに切れ目ができたり、破れたりして、1ヶ月もするとテープでつぎはぎだらけになった。
レンタル車両の稼働表をパソコン画面で確認できるようになったことで、「業務効率は確実に上がっています」と話すのは、上野翔太・取締役事業本部長。上野社長の長男だ。「入力間違いというヒューマンエラーは、どうしても起こりがちですが、それ以外に大きな問題はなく、配車スピードが上がるなど、紙に手書きしていた頃に比べれば格段に良くなりました」と顔をほころばせる。上野社長はスマートフォンの画面で1日3、4回、気になる車両の稼働状況をチェックしているという。
上野社長はスマホで稼働状況をチェック
「業務効率は格段に上がった」と話す上野取締役)
稼働表のクラウド化をきっかけに、クラウド型業務アプリ作成ソフトの活用範囲が拡大。今は営業社員が日々入力する日報や、高所作業車を使っている現場を調査した記録などの情報管理にも使っている。今後は、請求書作成・発行システムも構築する予定で、それには専用ソフトとクラウド型ソフトを連携する形になると見ている。
情報のデジタル管理を進め事業規模を3倍に拡大する目標を掲げる
オートレントは2020年、創業40周年にあたる2036年に事業規模を3倍にするという目標を掲げた。千葉と群馬、茨城を加えた1都6県に45のレンタルステーション・サポートステーションを置き、高所作業車・クレーン車を1,200台保有することで、年商60億円を達成するというものだ。その後、新型コロナウイルス感染症の発生による景気低迷に伴い、同社の業績も足踏みしたことから、目標達成の時期は少し先に延びる見通しとなったが、上野親子は社員と一丸となり、決してあきらめない覚悟だ。
オートレントのオフィス風景
上野親子が並ぶ応接室の壁には浦和レッドダイヤモンズのグッズ類。地域貢献の一環として2012年からファミリーパートナーを務めている
事業概要
会社名
株式会社オートレント
本社
埼玉県川口市里1770
電話
048-283-0341
設立
1996年6月
従業員数
70人
事業内容
高所作業車・クレーン車のレンタル・リースなど
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