製造業(機械)

クラウド型業務支援ソフトで自社アプリ作成 最新技術の積極導入でものづくりを進化させる 光工業(愛知県)

From: 中小企業応援サイト

2023年05月31日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

愛知県で積極的な設備投資と新技術の導入を進めるものづくり企業、光工業株式会社が、クラウド型業務支援ソフトを活用して自社アプリを次々に作成し、業務変革を行っている。高度なプログラムの専門知識を必要としないノーコードのプラットフォームを会社の業務に詳しい人材に使いこなしてもらうことで、アプリ作成の内製化を実現している。(TOP写真:多種多様な工作機械が導入されている光工業の西尾工場)

金属部品加工で愛知県の産業の土台を支える

愛知県刈谷市で1956年に設立され、現在、同県西尾市に本社を構える光工業株式会社は、創業期に手掛けた紡織機の金属部品から、自動車、工作機械といった産業分野、エネルギー分野で使用される金属部品へと事業領域を積極的に拡大してきた。本社と一体化した工場を含め愛知県内で4ヶ所の工場を運営している。豊富な実績、技術力、迅速な対応力で、ものづくり王国と呼ばれる愛知県の産業の土台を支えている。

摩擦圧接で高い競争力 幅広い金属の加工に対応

光工業が導入している摩擦圧接の工作機械

光工業が導入している摩擦圧接の工作機械

光工業は、金属同士を高速回転で接触させた時に生じる摩擦熱エネルギーと圧力によって接合する「摩擦圧接」という特殊な加工技術で、高い競争力を備えている。摩擦圧接はそれぞれの母材以上の接合強度を確保できるだけでなく、溶接では難しい異なる金属同士の接合に向いており、中空パイプ材など成形が難しい多種多様な金属部品を製造できる。扱う材料は、鉄、ステンレス、アルミ、銅を中心にチタン、タングステン、マグネシウムといった難削材まで幅広い。完成した製品は自社工場に備える3次元測定機などの測定設備で検査することでしっかりとした精度、品質を保証している。機器間の接続を担う重要な部品、ワイヤーハーネスの加工にも強みを持つ。愛知県が独自の技術や製品を有する県内の優れたものづくり企業を顕彰する愛知ブランド企業の認定を受けるなど、その技術は高く評価されている。

光工業が製造する金属製品のサンプル

光工業が製造する金属製品のサンプル

主力の西尾工場で百数十台の工作機械を配備

2021年に完成した本社と一体となった西尾工場では、2022年8月に導入した最新鋭の摩擦攪拌接合機をはじめ、自動工具交換機能を持ったマシニングセンターなど百数十台の工作機械を配備。三河地区で中小企業としては最大規模の約3,000パレットの立体自動倉庫も備える。自動倉庫は生産管理システムと連動しているのでリアルタイムに材料の在庫状況が確認できる。また、生産管理システムには各部品の受注から発送までのリードタイムを記録している。このデータを使うことで発注先に納期などの情報を的確かつ迅速に提供することができる。

光工業の西尾工場の様子

光工業の西尾工場の様子

西尾工場に導入されている立体自動倉庫

西尾工場に導入されている立体自動倉庫

「お客様に信頼される企業であることを社是にしています。摩擦圧接では、業界における最小から最大級までの幅広い加工径に対応しています。更にその後の工程の切削加工、研磨加工も一貫して担い、接合品質評価も社内で行えるようにしているのでお客様の要望に柔軟かつ迅速に対応することが可能です」。

「人材育成と品質管理を重視してより良い製品をこれからも提供していけるように最新の機械やICTを積極的に導入していきたいと思っています」。光工業の取り組みについて西尾工場長を務める加藤広一郎専務取締役はこのように説明した。

加藤広一郎専務取締役

加藤広一郎専務取締役

業務効率化のため工作機械に加えICTも積極導入

光工業は生産現場だけでなく事務や設計の部門でも業務を効率化するためのICT投資を積極的に行ってきた。1990年に事務関係のシステム化に着手し、1998年には三次元CADを導入、2015年には現在活用しているオーダーメイドの生産管理システムを導入した。「少量多品種の生産点数はこれからも増やしていくつもりです。システムを有効活用することで従業員の負担を減らしていきたいと考えています」と加藤専務は話す。

独自の生産管理システムなどICTを積極的に活用している

独自の生産管理システムなどICTを積極的に活用している

クラウド型業務支援ソフトで10種類以上の人事管理系アプリを作成 業務時間が半分程度に

社内の更なる情報共有と働きやすい環境を整えるために2019年5月に導入したのがクラウド型業務支援ソフト。社内業務を効率化する上で必要なアプリをプログラムの専門的な知識や技能がなくても作成できる業務改善プラットフォームだ。

クラウド型業務支援ソフトは顧客案件管理から交通費申請、日報、プロジェクト管理などさまざまな用途で活用するアプリを作成できる。社内の業務に詳しい人物が作成することで、プログラムの専門知識を持った外部に発注しなくても社員目線の使いやすいアプリを作れることが大きな利点となっている。ドラッグ&ドロップで直感的に操作できるように設計されている。

クラウド型業務支援ソフトで作成したアプリで事務処理に取り組む様子

クラウド型業務支援ソフトで作成したアプリで事務処理に取り組む様子

光工業でアプリ作成の役割を担っているのが、人事総務課の岩重栄理課長だ。これまで、従業員の履歴、所属、技能、人事評定、健康診断結果などは紙文書で保存していた。岩重課長は、クラウド型業務支援ソフトを導入して10種類以上の人事系管理アプリを独自で作成し、すべてのアプリを紐付けて一括管理できるようにした。「絞り込み機能や検索機能を活用することによって瞬時に必要な情報を確認できるので、人事関係の業務に要する時間は、クラウド型業務支援ソフト導入前の半分程度にすることができました」と岩重課長。アクセス権限を設定することで個人情報の管理も以前より厳重にできるようになった。

人事総務課の岩重栄理課長

人事総務課の岩重栄理課長

プログラム経験ゼロから約3ヶ月でアプリ作成の技術を習得

岩重課長は、光工業がクラウド型業務支援ソフトの導入を検討し始めた2019年2月から約3ヶ月にわたって研修を受け、実際に使いながらアプリ作成のノウハウを習得したという。アプリはテンプレートを活用したり、ExcelやCSV形式のファイルを読み込んで作成できる。プラグイン(追加プログラム)の活用や他のアプリと連携することで柔軟に機能の拡張もできる。

「プログラムの専門教育を受けた経験がなかったので、アプリ作成は私にとって未知の領域でした。最初は少し試行錯誤しましたが、アプリの作成に専念できるように上司や同僚がバックアップしてくれたおかげで、クラウド型業務支援ソフトを使いこなすことができるようになりました。アプリの作成は、完成するたびに日々の業務が効率的になり、成果が実感できるので大きなやりがいがあります。今は楽しんで新しいアプリの作成に取り組んでいます」と岩重課長は笑顔で話した。業務効率化によって生まれた時間を活用して、営業や製造などほかの部署のアプリ作成にも取り組んでいきたいという。

社員食堂の予約にもクラウド型業務支援ソフトで作成したアプリが活躍

西尾工場には社員食堂が完備され、専任の栄養士が調理する定食、麺類、丼物を昼食時に提供している。会社の食事補助があるので、従業員は割安な価格で注文することができる。独身の従業員を中心に、西尾工場に勤務する半数近くの従業員が毎日利用しているという。日によって変動する従業員からの注文の集計にもクラウド型業務支援ソフトで作成したアプリが活躍している。

スマートフォンからアクセスできる社員食堂用の注文フォーム

スマートフォンからアクセスできる社員食堂用の注文フォーム

注文フォームにはQRコードを読み取ることでもアクセスできる

注文フォームにはQRコードを読み取ることでもアクセスできる

従業員は自分のスマートフォンから個人のIDを入力して注文フォームにアクセスし、1週間単位で社員食堂を利用する日とメニューを選択するだけで予約が完了する。注文フォームには社員食堂前に掲示しているQRコードを読み取ることでもアクセスできる。「以前は1ヶ月単位で紙の注文書を作成して従業員に書き込んでもらい、手作業で集計していたため手間がかかっていたのですが、アプリを通じた注文は自動集計されるのでその手間が一切なくなり、チェックするだけで済むようになりました」と岩重課長はうれしそうに話した。

西尾工場の社員食堂

西尾工場の社員食堂

ICTで子育て中の女性が活躍しやすい環境を整備、愛知県の「あいち女性輝きカンパニー」として認証されている

光工業は女性従業員が半数近くを占め、生産管理部長などの役職に就く人も多い。子育てと仕事を両立しやすいようにICTを活用したテレワークの仕組みを整えるなど、女性が活躍しやすい環境整備に力を入れている。一連の取り組みは高い評価を受け、愛知県の「あいち女性輝きカンパニー」として認証されている。岩重課長は「自分自身の子育ての経験をフィードバックすることで、すべての従業員が仕事と家庭を両立して安心して働くことができる環境を作っていきたいと思っています」と話した。

摩擦圧接のイメージにつながるオレンジをコーポレートカラーに採用

光工業は摩擦圧接のイメージにつながるオレンジをコーポレートカラーにしている。コーポレートステートメント「Sky and Sky」には、従業員一丸となって常に高みを目指していきたいとの思いを込めているという。2021年からは新しいコンセプトとして「つなぐ技術、つながる未来」を打ち出している。また、公式キャラクターとして鋼材をイメージした四角い体にオレンジ色の帽子をかぶった「ひかりん」を考案。帽子として使うことができる着ぐるみなどのノベルティグッズも制作し、温かみのある企業イメージの発信に活用している。

摩擦圧接のイメージにつながるオレンジをコーポレートカラーにしている

摩擦圧接のイメージにつながるオレンジをコーポレートカラーにしている

公式キャラクターとして考案した「ひかりん」

公式キャラクターとして考案した「ひかりん」

競争力、収益力、持続力を高める上でロボットやICTの活用は不可欠

「自動生産の割合を高めていけば、従業員に負担をかけずに生産量を増やすことが可能です。企業の競争力、収益力、持続力を高める上でロボットやICTの活用は不可欠と思っています。会社の成長を通じて地域社会にも貢献し続けていくつもりです」と加藤専務は光工業の今後に思いを馳せる。積極的に新しい工作機械とICTを導入して新規分野の開拓を目指す光工業。更なる飛躍に期待がかかる。

光工業の本社・西尾工場の外観

光工業の本社・西尾工場の外観

企業概要

会社名

光工業株式会社

本社

愛知県西尾市上矢田町清水50

HP

https://www.hikari-kk.jp

電話

0563-65-5211

設立

1956年5月

従業員数

160人

事業内容

摩擦圧接・摩擦攪拌接合、切削・研削加工、ワイヤーハーネス加工

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