新ホームページは8人目の営業担当、顧客向け情報の強化で成果上げる 越後商事(新潟県)
2023年06月20日 06:00
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越後商事株式会社は油圧ショベル先端部品を中心とする鋳物メーカーだ。従業員は23人。1983年、地元の建築会社のグループ会社としてスタートした。創業からしばらくは親会社が建築した分譲住宅やアパートなどの物件を管理する不動産管理業務を行っていたが、バブル崩壊後に建設部品の販売に移行し、やがて自社製品を作って販売するようになった。(TOP写真:同社玄関を案内する水落常務取締役(左)と板垣管理課課長)
「ツース盤」でナンバーワンを誇る建機部品メーカー
製造は当初から海外企業に委託しており、中国、タイ、ベトナムなど5拠点ある。製品の成形を海外で行い、国内で最終チェックする。取引先は国内約300社。主力製品は油圧ショベル先端の爪(ツース盤)で、大手メーカーの建機に合致する製品を作っている。日本国内に約5社ある競合他社のうちツース盤では約50%のナンバーワンシェアを誇る。
「当社の長所は取引先のニーズを正確に捉えて形にするチカラです」と、同社の水落常務取締役(50歳)。「もう少し軽い方がいいとか、掘削がもっとシャープな方がいいとか、お客様が困っている部分を聞き出した上で製造の工夫を重ね、提案していく。グループ会社が土木工事を営んでいることから、より利用者目線に立って思考錯誤できる強みを生かして、お客様の痒いところに手が届くサービスの提供が強みです」と話す。年に1、2回発売する新製品は顧客ニーズに合致しているので、改良などを加えていけばほとんどがロングセラーになるそうだ。
同社の製品群、右上が主力の「ツース盤」
ホームページ作成ソフト導入し、自社ホームページを一新
そんな同社が着手したのが自社ホームページの一新だ。ホームページは20年くらい前からあったが、「以前のホームページは自分たちでいじれなかった」と水落常務。自社情報をすぐ発信したいのに、写真を入れ替えるだけで1週間待たされることもあったという。
水落常務はソフトの展示会を見て回り、2017年3月にホームページ作成ソフトを導入した。Webサイト構築のほか、閲覧者のアクセス解析やメッセージ配信、カタログ作成など多彩な機能を備えており、それらが1つの管理画面で利用できるソフトだ。「ブログ感覚でいじれるし、トピックや画像の差し替えが、素人でも数分で完了できる。しっかりとしたサポート体制もある」という点も導入の決め手になった。
顧客サービスを念頭にホームページを更新する
多言語対応で海外企業からの信用も獲得
ホームページの刷新担当は必然的に水落常務になった。目指したのは「自社の紹介がちゃんとできて、お客様が必要な商品情報にたどり着けるホームページ」だった。
多言語変換オプションで英語にも対応できるようにした。同社は海外に製造拠点があり、「当社と名刺交換した海外企業がホームページを開いた時に、きちんと英語表記されていれば、それなりの会社だと信用してもらえる」と水落常務。取引先も世界中にネットワークを持つグローバル企業が多く、「今は海外で作ったモノを日本で販売しているが、いずれ現地でも販売したらどうかという話になってくる可能性もある」と話す。
月1回のぺースでトピックスなどの内容を更新した結果、新ホームページのアクセス数は着実に増えた。2017年当初は日に50件程度だったが、3年後の2020年には約100件、海外からのアクセスも約1割となった。だが、水落常務は「もっと顧客の閲覧率を上げていきたい」と考えた。「うちのホームページを見てくれていないお客様がまだまだいる。どうしたら見てくれるのか」と考えた末、2020年秋から一年をかけてあるものを作成した。
「ツース盤選定マニュアル」は役立つ情報が満載
さらなるアクセス増へ1年がかりで「選定マニュアル」を作成
それが、同社の製品約200種類がどの建機にマッチするのかをまとめた「ツース盤選定マニュアル」だ。作業現場担当者の上着の胸ポケットに入る手帳サイズで、白い表紙には赤字で「ここさえチェックしたら選定ミスは防げます」と書いてある。46ページの中身には細かい文字で、製品番号やアダプターの種類、必要なツース盤の本数やピッチ寸法、困った時のトラブルシューティングまでがびっしり記載されている。内容をデータ化してスマートフォンなどで確認できるようにするのは簡単だが、「我々のお客様は作業現場で、ネジなどモノに触れる感覚を大事にしている。だからわざと紙の印刷物、アナログにしました」と話す。
あ2021年10月に完成。完成後は手当たり次第にお客さんに配り、これまでに約5,000冊を配布した。ライバル業者から「売って欲しい」と引き合いがあることを想定して、税込350円の定価も設定したが、マニュアルに掲載されている製品は他社がサイズや仕様を真似できないよう特許を登録済みだ。
「安全作業動画」のトップページ
ホームページ内の「安全作業支援動画」と連動、顧客サービスを展開
マニュアルの完成は、真っ先にホームページで告知した。マニュアル裏表紙に記載されたQRコードをスマートフォンで読み取れば、機械整備の担当者が安全にツース盤の交換作業ができる方法をまとめたホームページ内の動画に飛ぶ。作業の手順が簡単にわかる3分43秒の「安全作業支援動画」である。「うちの製品は鋳物ですから重さが約10㎏あって、足の上に落としでもしたら大怪我につながります。この動画を現場の整備担当のミーティングや新人研修などで活用して見ていただきたい」と言う。
顧客に役立つだけでなく、動画を見てもらえれば、製品交換時に同社の営業担当が説明に出向かなくてもいい。同社の営業要員は水落常務を筆頭に7人、新しいホームページは8人目の営業担当の役割を果たしているようだ。
水落常務は「ホームページとリンクした安全動画を作成したのは、お客様へのサービスです」と語る。「お客様が『越後商事のホームページは役に立つ情報が揃っていて使いやすいな』と思ってくだされば、リピートで訪問してアクセス数が増える。質のいいサービスを提供し続ければ、お客様から信頼されて当社の製品を選んでくださるでしょう」とみる。「どこにでもモノがあふれている中で、どうやったら当社を知ってもらって選んでもらえるか。そのためにはサービスに力を入れるべきだと思います」と確信している。顧客サービス拡充のためホームページを活用した独自の販売ルートも模索中だ。
同社の2022年9月期の売上高は前年比横ばいの約7億円だった。水落常務は「階段を一段飛ばしで登るのではなく着実に誠実にやっていきたい」と話す。「売上増も重要だが、優先は働き方など中身を充実させた方が強い会社になるし、リスクも少ない」と言うのだ。
実際、ホームページ刷新を手始めに社内でパソコン活用などDX化を進めたことで、従業員一人あたりが日常業務に要する時間を8時間から7時間に短縮できた。浮いた1時間を新しいスキルを身に付けたり、新しい事業を考える時間に充てられる。
「時間という資源は、お金より重要です。アナログでもデジタルでもいい、新しいツールをどれだけ活用して従業員が働く時間を有効活用できるかでしょう」と水落常務。「多少の軋轢(あつれき)は生じても、新しいことに対する取り組みを止めてしまうと会社は変化できない。もちろん良い変化と悪い変化もある中で変化を楽しみたいですね」と先を見据えている。
企業概要
会社名
越後商事株式会社
住所
新潟県長岡市寺泊吉64-13
電話
0258-75-4941
創業
1983年9月
従業員数
23人
事業内容
建設機械のバケットに装着する小型アタッチメントのツース盤、並びに関連商品の開発・製造・販売、その他 鋳造・鍛造部品の製造
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