流通業(卸),流通業(小売)

人手不足・収益悪化にどう備える?流通業の現場を変えるDX施策と成功事例

From: 働き方改革ラボ

2025年06月20日 07:00

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人手不足や収益悪化といった課題に直面する流通業界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務改革が注目されています。単なるIT化にとどまらず、働き方そのものを見直す契機にもなる流通DXは、組織の生産性向上と持続可能な働き方の両立を目指す上で重要な取り組みです。

この記事では、流通業界が抱える主な課題や、課題解決につながる流通DXの施策例についてわかりやすく解説しています。流通DXの具体的な実践事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

流通DXとは

流通DXとは、流通業界におけるDX推進の取り組みや実践のことを指します。はじめに、DXの定義や流通業におけるDXの現状を整理しておきましょう。

そもそもDXとは

DXとは、デジタル技術を活用することでビジネスに変革を起こしたり、新たなビジネスモデルを確立したりすることを指します。総務省が公開している情報通信白書によれば、デジタルトランスフォーメーションの定義は次のとおりです。

「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革をけん引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」

出典元:令和3年情報通信白書 第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済

既存のプロセスをデジタル形式に変換する「デジタイゼーション」や、デジタル技術によってビジネスモデルを一新する「デジタライゼーション」とは異なり、産業の仕組みや組織文化の変革を促す点がDXの大きな特徴です。

流通業におけるDX推進の現状

日本国内におけるDX推進は、順調に進んでいるとは言いがたいのが実情です。経済産業省が公開している資料によれば、全社的にDXに取り組んでいる日本企業は全体の21.7%にとどまっています。アメリカでは全体の37.7%の企業が全社的にDXに取り組んでいることを踏まえると、差が開いていると言わざるを得ません。

同様の傾向は、流通業におけるDX推進の状況にも見られます。裏を返すと、早期にDXを実現するための取り組みに着手することによって、業界内での競争優位性を獲得できる可能性は十分にあるでしょう。

参考:物価高における流通業のあり方検討会 最終報告書│経済産業省

流通業界が抱える主な課題

流通業界においてDXが注目されている背景には、現状抱えているさまざまな課題があります。流通業界が直面している主な課題は、次の3点です。

課題1:人材不足への対策

1つめの重要な課題として挙げられるのは、人手不足への対策です。労働人口(生産年齢人口)が減少に転じたことに伴い、多くの業界で十分な労働力の確保が容易ではなくなっています。流通業界も例外ではありません。人材採用が難化していることに加え、働き方改革の機運が高まっている昨今においては長時間労働の是正も求められています。

こうした課題を解決するには、これまで続けてきた仕事の進め方や仕組みを大きく変えなければなりません。最小限の人数で業務を滞りなく進めるための方策として、DX推進に注目が集まっています。

課題2:物価高に伴う収益の減少

エネルギー価格や原材料価格の高騰は、流通業界に大きな影響をもたらしています。本来であればエネルギー・原材料価格の上昇分を消費者価格へ転嫁していく必要があるものの、利益の確保につながる十分な値上げに踏み切れていない企業も多いのが実情です。

収益構造を最適化するには、適切な需要予測や在庫管理が欠かせません。こうした取り組みを推進する上で、DXは有効な方策となり得ます。

課題3:消費者が求める体験の多様化

消費者が求める購買体験の多様化・細分化に拍車がかかっていることも、流通業界が直面しつつある課題の1つです。ECサイト利用の浸透やSNSによる情報収集が一般的になったことによって、消費者はより便利に、より要望や嗜好に合った購買体験を求めるようになっています。「商品を仕入れて販売する」役割に徹しているだけでは、同業他社との差別化を図るのは難しいと言わざるを得ないでしょう。消費者一人ひとりに個別最適化されたサービスを提供する必要性が高まっていることも、流通DXの推進が注目されている要因の1つです。

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流通DXは“働き方改革”にもつながる

DXは単なる業務効率化の手段にとどまらず、従業員の働き方そのものを変える力を持っています。たとえば、受発注や在庫管理の自動化により、これまで手作業で行っていた業務を効率化できれば、現場スタッフの長時間労働や属人化の解消にもつながります。人員が限られる中でも持続可能な働き方を実現し、労働負担の軽減やワークライフバランスの向上を目指すうえで、DX働き方改革の有効な手段と言えるでしょう。

課題解決につながる流通DXの施策例7選

ここまでに見てきたとおり、流通業界には早急に対策を講じるべき課題が数多く存在します。これらの課題の解決につながる流通DXの施策例を見ていきましょう。

施策例1:OMOの推進

OMOとは、オンラインとオフラインを融合させる(Online Merges with Offline)施策のことです。たとえば、顧客データを一元管理することにより、ECサイトと実店舗のどちらでも顧客のニーズに合った商品を提案できるといったメリットがあります。

顧客にとって、ECサイトと実店舗のどちらで商品を購入したかは重要ではありません。ECサイトで最近購入したばかりの商品を実店舗ですすめても、購入に至る可能性は極めて低いでしょう。オンラインとオフラインの購買体験を連続的なものにする上で、OMOの推進は欠かせない取り組みといえます。

施策例2:需要予測システムの導入

需要予測システムとは、過去の購買データや顧客が保有するスマートフォンなどの端末から取得した位置データ、気象データなどを活用し、今後の売上や来客数などを予測するシステムのことです。AI(人工知能)を利用することで、大量のデータをリアルタイムで分析し、高精度の予測を実現できるようになりつつあります。

需要の増減を予測することにより、過剰在庫を抱えたり品切れが生じたりするリスクを抑えられます。結果として仕入が最適化され、利益率の改善につながるでしょう。取り扱う商品が食品であれば、フードロスの抑制にも効果的です。

施策例3:在庫管理の最適化

在庫管理システムを活用し、自動化を推進するのも有効な施策といえます。在庫の状況をリアルタイムで把握できるほか、入力ミスなどのヒューマンエラーを防ぐ効果が期待できるからです。

在庫管理の最適化には、業務効率や生産性の向上をもたらす効果もあります。入出荷数の集計や棚卸しが簡便になり、従来よりも短時間で正確に集計できるようになるからです。在庫を適切に管理するとともに、効率よく業務を進めたい事業者様は、在庫管理のDX推進を検討してみてはいかがでしょうか。

施策例4:決済の自動化

キャッシュレス決済や無人レジなどを導入し、決済を自動化するのも有効な方法です。実店舗に配置する人員を最小限に抑えられるため、人件費の削減に寄与します。

キャッシュレス決済に対応した無人レジを取り入れることで、会計を顧客側で完結できるようになります。売上はデータに即時反映されるため、レジ内の現金を数える必要もありません。決済端末の導入には一時的な支出を伴うものの、長い目で見ると省力化とコスト削減につながる施策といえます。

施策例5:電子棚札によるダイナミックプライシング

店頭に電子棚札を導入し、ダイナミックプライシングを実現する方法もあります。ダイナミックプライシングとは、需要に応じて商品の価格を変更する仕組みのことです。需要が高い時期には価格を上げ、反対に需要が低い時期には値下げするといった施策が可能になります。利益率を改善するための施策として有効です。

とくに時期によって需要が変動しやすい季節性の商品に関しては、ダイナミックプライシングが効果を発揮します。需給バランスをリアルタイムで価格に反映させることで、在庫の最適化を図る効果も期待できる施策です。

施策例6:業務の自動化

ITツールを活用して業務の自動化を図ることも、効果的な施策の1つです。受発注管理や在庫管理、勤怠管理といった業務をツール上で進めることで、従来は手動で処理していた業務を自動化できます。集計作業で発生しがちな計算ミスなども抑えられるため、結果として業務時間の大幅な削減につながる可能性がある施策です。

ただし、こうした業務関連のツールは流通業界のみを想定して設計されているとは限りません。自社の業務プロセスに合ったツールを選定し、導入すべきツールを決定する必要があります。ツールの導入そのものが目的化することのないよう、どのような課題を解決したいのかを明確にしておくことが大切です。

施策例7:データ活用

購買行動データを活用し、生産量や仕入数の最適化を図ったり、販促活動の合理化につなげたりする方法もあります。たとえば、購買データから主要な顧客層と購買行動の傾向を分析し、売れ行きに応じて生産量や仕入数を調整するといった方策を講じるとよいでしょう。

この他にも、ターゲットに合わせた商品ディスプレイや販促企画を立案・実行することで、売上伸長を図るといった施策も考えられます。分析ツールを活用して蓄積されているPOSデータを検証し、商品ごとの主なターゲット層をあらためて分析してみてはいかがでしょうか。

流通DXの実践事例

流通DXを実践している企業の事例を紹介します。従来抱えていた課題、実際に講じた対策、解決された課題をそれぞれ見ていきましょう。

事例1:発注業務の電子化

総合美容商社の今井物産株式会社では、これまで営業担当者が納品伝票を各自手書きで作成していました。納品に関しても、営業担当者がそれぞれ倉庫へ出向いて注文品をピックアップしていたのが実情です。

こうした作業を簡略化するために、同社は注文業務の電子化に踏み切りました。各種書類の発行を自動化し、メールなどでやり取りできるようにしたことで、書類をプリントアウトしたり郵送したりするために費やしていた時間の削減に成功しています。

結果として業務時間に余裕が生まれ、顧客先への情報提供や相談に対応する時間をより多く確保できるようになりました。業務の省力化・合理化が、顧客との関係強化につながっている好例です。

デジタルツールを駆使して省力化を実現し営業の時間を作る。 インスタグラムで商材やセミナーの案内を発信し共有化する総合美容商社 今井物産(長野県) | 中小企業応援サイト

事例2:EDIによる業務効率化と取引先との関係強化

包装資材を製造している株式会社オリロクでは、プラスチックトレーやポリ袋、ラップ製品、アルミホイルなど10万点以上もの商品を取り扱っています。事業が拡大するにつれて帳票発行や金額計算といった事務作業は増える一方でした。

そこで、2016年よりインターネットでビジネス文書をやり取りするEDIElectronic Data Interchange:電子データ交換)を導入。品番コードを元に納品書や請求書を発行できるようになったことで、帳票を手入力する工程が削減されました。

EDIの導入は業務効率の大幅な向上をもたらしただけでなく、顧客とのコミュニケーションを強化し、相手の視点に立った提案を行う余裕が生まれました。ICTツールの導入は、将来的な商圏拡大に向けた体制づくりの一環としても効果を発揮しています。

包装資材のプロ企業がICTで持ち前の営業力を強化 地域に根差しながら商圏拡大を図る オリロク(和歌山県) |中小企業応援サイト

事例3:RPAを活用した業務自動化

国内外に米を販売している吉兆楽では、従来は表計算ソフトを使って取引先や取引量を手入力していました。百貨店から数百件もの顧客データが送付された際や、ふるさと納税で返礼品に指定されている商品を出荷する際などには、膨大な作業量が発生していたのが実情です。

そこで、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)システムを導入し、データの取り込みと整理、各種帳票作成までのプロセスを自動化しました。これにより担当者の残業時間が削減され、労働環境が顕著に改善されています。結果として、良い商品づくりに集中しやすい環境を整えることにもつながりました。

おいしいお米を全国に送るため、取引データ自動化で体制強化 吉兆楽(新潟県) |中小企業応援サイト

事例4:クラウドストレージを活用した人員不足解決策

物干し竿などをホームセンターに卸している日本ハンガーボード株式会社では、従来の足で稼ぐ営業からECサイトを活用した販売へと切り替え、売上を拡大してきました。一方で、事業が軌道に乗るにつれて業務量が大幅に増加し、人手不足が課題となっていました。

同社ではクラウドストレージを活用した情報共有の仕組みを導入。ECサイト担当者間で在庫や見積もりなどの状況が可視化され、複数名で業務を分担できるようになりました。24時間365日注文を受け付けるECサイトにおいても、きちんと休みをとって働ける環境を整えています。DXが人員不足の解決につながった好例です。

雇用ではなくICT強化で成果上げる日本ハンガーボード(新潟県) |中小企業応援サイト

事例5:2拠点運営をネットワークで解決

研磨剤や濾過剤といった建材用素材の調達・販売を手がける株式会社小西興発では、約100キロ離れた香川本社と高知に2つの拠点を構えています。従来は書類作成や会議出席のたびに拠点間を車で移動していたことから、時間的・労力的な負担が大きくなっていました。

こうした問題を解決するために、同社ではネットワークを活用して拠点間をつなぐ仕組みを導入。注文書をクラウド上でやり取りできるようにしたほか、紙文書をOCR(光学的文字認識)で読み込むことにより、申請文書を簡単に作成できるようにしました。結果として、物理的に離れた拠点間で円滑に業務を進め、タイムラグなく処理を進められるようになっています。

香川と高知、100キロ離れた2拠点運営をネットワークで解決。若い人材との相乗効果で成長を図る 小西興発(香川県) |中小企業応援サイト

流通DXで組織や事業の課題解決を実現しよう

流通DXは、現場の業務を効率化し、収益性を高めるだけでなく、限られた人員でも安定した運用を可能にする仕組みづくりでもあります。結果として、従業員一人ひとりの業務負荷軽減や働きやすさの向上にもつながり、組織全体の生産性やエンゲージメント向上が期待できます。

持続可能で柔軟な働き方を実現するうえでも、DXの視点を取り入れた業務改革を検討してみてはいかがでしょうか。

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記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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