建設業界の人手不足はなぜ解消されない?2030年問題の背景と原因・対策を整理
2026年02月24日 07:00
この記事に書いてあること
生産年齢人口が減少に転じたことにより、多くの業界で人手不足が深刻化しつつあります。建設業も例外に漏れず、「建設業界2030年問題」が取り沙汰されるなど、早急な対策が求められているのが実情です。
この記事では、建設業界が直面している状況とその主な原因、今から講じておきたい対策についてわかりやすく解説しています。ITツール導入によって、課題解決を実現している企業の例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
データで見る建設業界の現状と2030年問題
はじめに、建設業界における雇用人員の現状と今後の見通しについて確認しておきましょう。
建設業界の労働者数推移
下のグラフは、建設業界の2014~2025年までの各年4月時点における就労者数を示しています。

| 年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
| 就労者数 | 510万人 | 510万人 | 499万人 | 492万人 | 505万人 | 504万人 |
| 年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
| 就労者数 | 493万人 | 501万人 | 478万人 | 468万人 | 470万人 | 452万人 |
※総務省統計局「労働力調査」を元に作成
過去11年間で就労者数が約58万人減少していることがわかります。一方で、減少率は約11%であることを踏まえると、労働者数そのものが急激に減少したわけではないように見えるかもしれません。これはあくまでも就労者数全体の人数を捉えた数値のため、建設現場の実感とは乖離している面がある点に注意が必要です。
雇用人員判断D.I.の推移
雇用人員の過不足を示す指標として「雇用人員判断D.I.」が挙げられます。雇用人員判断D.I.とは、企業の雇用が過剰・不足のいずれかを測るための指標です。建設業における雇用人員判断D.I.は、次のように推移しています。

出典:内閣府|今週の指標No.1334 建設業の労働供給について(2024年2月16日)
全産業の推移と比較すると、建設業は大企業・中小企業ともに不足超過が大きく、人手不足が深刻化していることが見て取れます。
前述のとおり、建設業における就労者数そのものの減少率は過去11年間で約11%です。これに対して、建設業の人手不足感は全産業と比較してより深刻な水準に達しているのはなぜでしょうか。
外国人就労者数が急増
厚生労働省が2025年1月31日に発表した「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」によれば、2024年10月末時点における外国人労働者は過去最多の約230万人に達しています。このうち建設業の対前年増加率は22.7%と、他業種と比べて高い水準となっているのが実情です。

出典:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)(主な産業の外国人労働者数対前年増加率の推移)
建設業界全体の就労者数が減少しているのに対して、外国人就労者数が年々増加していることから、日本人の就労者数が大きく減少していることがわかります。建設現場における人手不足の実態には、日本人の就労者数減少が深く関わっているのです。
建設業界2030年問題とは
建設業界が今後直面する問題を象徴する言葉が「建設業界2030年問題」です。2030年には、国内人口のおよそ3割(約3.3人に1人)が65歳以上に達すると推計されています。超高齢社会は、建設業界の人手不足にいっそう拍車をかける可能性が高いでしょう。
下図は、産業別就業者数の予測を示したグラフです。他業種と比べて、建設業の就業者数が大きく減少すると予想されています。

出典:国土交通白書2020「第2章 将来予測される様々な環境変化」産業別就業者数の予測
2025年時点で建設業の人手不足はすでに顕在化しており、今後さらに深刻化していく可能性が高いといえます。2030年問題、さらにはその先の人手不足に備えて、今から対策を講じておくことが重要です。
建設業界の人手不足を加速させる4つの要因

建設業界は、なぜ他業種と比較して顕著な人手不足の傾向があるのでしょうか。ここには大きく4つの要因が関わっています。
1. 人件費の高騰
1つめの要因は人件費の高騰です。最低賃金の引き上げに伴い、従業員1人あたりの人件費が従来よりもかかるようになりました。また、より優秀な人材を確保するには、事業者は他社より少しでも好条件を提示する必要があります。これらの要因が折り重なった結果、建設業界全体で人件費の引き上げが加速しつつあるのが実情です。
とくに資金力が潤沢とはいえない中小事業者や零細事業者にとって、人件費の高騰は深刻な問題です。現場の実態としては人員の補充が必要であっても、十分な人員を雇用できない事態に陥りかねません。
2. 物価高騰による人材流出
物価高騰による人材流出も大きな要因の1つです。ロシア・ウクライナ間の戦争をはじめ、急速に変化する世界情勢は資材価格を押し上げる要因となっています。事業者にとっては、人件費を含む経費が高騰する中、十分な待遇で応えられなくなるケースも少なくありません。
さらに、物価高騰は従業員の生活コストを引き上げ、給与水準がより高い職業を求める人が増える要因にもなっています。しかし、建設業は日雇いなど不安定な雇用形態で就業せざるを得ないこともある上に、体力仕事のため長く働き続けられるか不安を感じる人も多いのが実情です。結果として建設業に対する求職者の人気が衰え、人手不足の加速をもたらしていると考えられます。
3. 就労者の高齢化
建設業に携わる労働者が高齢化していることも、人手不足に歯止めがかからなくなっている原因の1つです。2024年時点で建設業に携わる労働者の約4割を55歳以上が占めています。反対に、29歳以下の若年層は1割程度に留まっているのが実情です。

就労者の高齢化が進むことによって、将来的に建設業界を担っていく人材が不足していくことも懸念されます。若年者の採用を強化するとともに、長く続けられる環境を整備していく必要があるでしょう。
4. 離職率の高さ
離職率が依然として高いことも、建設業界の人手不足を深刻化させている原因の1つです。新卒3年以内の離職率は、製造業と比べて顕著に高い水準となっています。具体的には、2020年時点で製造業の高卒者3年以内離職率が27.6%であるのに対して、建設業の高卒者3年以内離職率は42.5%にのぼっているのが実情です。

出典:国土交通省|建設業(技術者制度)をとりまく現状(令和5年12月22日・適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期))
若手を採用できたとしても、短期間で離職してしまえば人手不足の抜本的な解消にはつながりません。離職率を抑えるための対策についても検討していく必要があるでしょう。
人手不足だけではない:これからの建設業を左右する5つの課題

建設業界が今後直面する可能性の高い課題は、人手不足だけではありません。事業継続に向けて、早急に対策を講じていく必要のある5つの課題は次のとおりです。
1. 建物の維持管理・再建の需要増
1つめの課題は、建物の維持管理・再建の仕事が増加していく可能性が高いことです。近年、高度成長期やバブル期に建てられた建物が老朽化を迎えつつあります。そのため、建物の維持管理や再建の需要が伸びており、今後20年でさらに加速する見込みです。
国土交通省によると、老朽化した建物を含む12分野の施設にかかる維持管理費は、2013年度には3.6兆円だったのに対して、2023年度には約4.3~5.1兆円、さらに2033年度には4.6~5.5兆円程度に増加すると予測されています。(国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計(平成30年11月30日))。
人手不足が加速すれば、仕事量に対して従業員数が不足することは想像に難くありません。一人ひとりにかかる負担が重くなれば労働環境の改善もままならず、離職者が増加することが懸念されます。
2. 若年層の採用と技術継承
若年層を採用し、技術を継承していくことも重要な課題です。技術労働者の高齢化が進み、定年退職を迎えるにつれて、長年の経験によって培われた技術が失われていきます。若年技術労働者の定着率を改善し、長く働いてもらうための環境を整えていく必要があるでしょう。
若年技術労働者が定着しない主な原因として、賃金・労働時間・休日数といった条件面が挙げられます。勤怠管理を徹底して現状を把握するとともに、待遇改善に向けてできることから着手していくことが重要です。
3. 労働災害の防止
労働災害の防止は、引き続き注力していく必要のある重要な課題です。厚生労働省が公開した「令和6年の労働災害発生状況(令和7年5月30日)」によれば、建設業における令和6年1月から12月までの労働災害による死亡者数(新型コロナウイルス感染症への罹患によるものを除く)は232人と、前年より4%増加しています。業種別の死亡者数は建設業が最多となっていることから、依然として労働災害の防止に向けた取り組みの強化が求められているのが実情です。
従業員が安心して働ける環境を整えることは求職者のポジティブなイメージにつながり、人員の確保にも寄与すると考えられます。安全な作業環境の整備は、継続的に取り組む必要がある課題といえるでしょう。
4. インボイス制度と仕入税額控除
2023年10月より導入された適格請求書保存方式(インボイス制度)への対応も、引き続き対応が求められる課題の1つです。インボイス制度とは、消費税の軽減税率導入に伴い、仕入れ額に対する正確な消費税額の計算を求める制度のことを指します。
建設業では、免税事業者である中小受託事業者に業務を依頼するケースが少なくありません。インボイス制度下では、委託先が課税事業者ではない場合に消費税が控除対象とならず、発注側の負担が増すことが懸念されます。結果として取引の継続が危ぶまれたり、新規取引の機会損失につながったりする可能性も否定できません。また、従業員と業務委託契約を結び、従業員が非課税事業者として取引しているようなケースでは、仕入税額控除が認められないため発注者側が負担する消費税が増えてしまいます。こうした事態にどう対処していくべきか、取引先ごとに慎重な判断が求められるでしょう。
5. 法改正への対応
法改正への対応も喫緊の課題といえます。改正建設業法が2025年12月12日に完全施行されることに伴い、労働者の処遇確保、原価割れ契約の禁止による労働者保護、長時間労働の抑制などが事業者に義務づけられる点が大きな変更点です。また、ICT活用に関する指針作成やICT活用の努力義務が盛り込まれていることも注目すべき点といえます。
これに伴い、建設事業者には生産性向上や業務効率化を実現するための取り組みが求められることになります。具体的には、社内規定の見直しやICT関連ツールの導入を検討していく必要があるでしょう。
いま打てる対策は3つ:処遇改善/外国人材/建設DX

ここまでに見てきたとおり、建設業界は数多くの課題を抱えています。これらの課題を解決するには、どのような対策を講じる必要があるのでしょうか。とくに重要度の高い3つの対策について解説します。
1. 処遇改善と採用条件の見直し
1つめの対策は、従業員の処遇改善と採用条件の見直しです。勤怠管理の徹底をはじめ、週休二日制の導入、労働時間の短縮、教育制度の充実といった取り組みが求められるでしょう。
また、若年層をはじめ幅広い年齢層の人材を募集対象とすることも重要なポイントです。女性や外国人を積極採用するなど、人手不足への具体的な解決策を講じていく必要があります。
建設現場における勤怠管理業務をITツールで解決する方法については、次の記事で解説していますので参考にしてください。
2. 外国人技能者の活用・受け入れ体制の整備
外国人技能者の活用および受け入れ体制の整備も、必ず講じておきたい対策の1つです。前述のとおり、建設業界における外国人就労者は増加の一途をたどっています。一方で、単に外国人技能者を受け入れるのではなく、適切な体制を整備した上で採用することが重要です。
たとえば、生活支援や住宅確保のサポートなどを行う専門部署を設置することや、就労者の母国語で記述された作業マニュアルの整備、日本人の従業員向けに異文化理解を促す研修等の実施などがあげられます。外国人技能者が働きやすい環境整備に向けた対策を、バランスよく講じていく必要があるでしょう。
3. ITツールの導入・建設DXの促進
ITツールの導入や、その先にある建設DX推進に向けた活動に注力することも重要なポイントです。BIM/CIMの導入による測量・設計データの電子化や、施工データのクラウド化、遠隔臨場による集中管理といった取り組みが求められます。
また、AR(仮想現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)の活用は、技術継承を加速する取り組みとして有効です。このほか、電子入札や電子契約を活用したバックオフィスのDXなど、建設DXの推進に向けた取り組みを組織全体で計画的に進めていくことが大切です。
建設業界のITツール導入による成功事例
ITツールを活用することで、さまざまな課題解決に成功した事例を紹介します。自社の課題解決に取り組む際の参考にしてください。
サーモグラフィ技術の活用|株式会社サーモアドベンチャー
世界トップクラスのシェアを誇るTeledyne FLIRのサーモグラフィカメラを導入し、建物内部の温度分布を外から計測することで、建物を傷つけることなく内部の状態を的確に分析できるようにした事例です。サーモグラフィ画像を元に建物性能を数値化することで、顧客に対して説得力のある提案ができるようになりました。客観的なデータにもとづいて建物の診断や測定、各種工事を実施したい事業者様におすすめのソリューションです。
ジェルジェットプリンターの導入|松尾建設株式会社
ジェルジェットプリンターを導入し、現場の業務効率化を図っている事例です。建築に加え、土木・建設業を主体とする総合建設業を営む松尾建設株式会社にとって、図面や現場写真を印刷するA3プリンターが欠かせません。しかし、従来導入していたインクジェットプリンターは家庭向け製品だったため、不具合発生時には修理に時間がかかり、業務の一時的な中断を免れませんでした。建設現場は広範囲に点在することから、修理品の回収や代替品の配布には手間と時間を要していたのです。
新たに導入したジェルジェットプリンターは訪問保守点検を受けられる上に、不具合発生時は即日対応も可能。インクを注文すると当日もしくは翌日に届けられるため、現場の業務をスムーズに進められるようになりました。図面や現場写真を印刷する必要がある事業者様にとって、すぐに着手できる業務効率化策となるでしょう。
プリントポストの活用|大成建設ハウジング株式会社
カラー複合機とともに「紙折りユニット」と、印刷物を最大8つのトレイに仕分けできる「プリントポスト」を導入した事例です。従来、膨大な量のチラシを手作業で折りたたんだり、他の印刷物が混ざったりしないよう注意しながら販促チラシを制作する必要がありました。紙折りユニットとプリントポストを活用することで、チラシを折る手間が削減されると同時に、印刷物の仕分けも自動で行えるようになりました。販促チラシの制作工程を効率化したい事業者様におすすめのソリューションです。
まとめ
建設業界の需要は今後も高まると予想されます。一方で、人手不足がいっそう加速することが懸念されるため、早急に対策を講じておくことが重要です。さまざまな方策を講じる上で、ITツールの活用は効率良く働きやすい環境づくりの一環として有用な手段となるでしょう。今回紹介した課題と解決策を参考に、今から講じられる対策について検討してみてはいかがでしょうか。
建設業の働き方を改革するためのポイントと事例をまとめた資料をご用意しております。ぜひダウンロードしてご活用ください。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
「働き方改革って、こうだったんだ!」「こんな働き方、いいかも!」
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