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メディア学の権威、東京大学名誉教授が斬る。「紙」×「電子データ」は共存できるか 第1章:はじめに(総論) 尾鍋史彦

  • 第1章:はじめに(総論)
  • 第2章:紙メディアとはなにか
  • 第3章:電子データとはなにか
  • 第4章:まとめ

第1章:はじめに(総論)

高度情報化社会といわれる現代においては、デジタルとネットワークを基盤として新しい情報機器が次々と生まれ、メディアとしては従来の紙に加え電子データが広く使われるようになってきた。このような日々の情報技術の進化の中でメディアとしての紙は電子データの出力メディアとしての多様な機能を発揮すべく新たな可能性も生みつつある。

このような時代状況の中で個人においてもビジネスにおいてもダイナミックに変動する現代社会で有効な活動を行うには、いかに適切な情報機器やメディアを選択し使用するかという“メディアリテラシー”の問題が大きく浮上しており、情報を扱う人間の問題が強く認識されるようになってきた。そこで先ずは人間にとってメディアとは何かという基本的な問題を歴史的に辿ってみよう。

太古から多彩で豊かな文化や文明が
創造され、現代に継承可能となったのは
紙というメディアが存在したため。

1. 人間にとってメディアとは何か

人間は長い歴史の中で言語を生み出し、それを伝達したり記録したりする目的で文字を発明した。そして文字の記録のための媒体(メディア)として世界各地の気候や風土に応じて、粘土板、甲骨、パピルス、羊皮紙などの書写材料を生み出した。しかし限りなく軽量で入手のし易さなどを求める過程で次々と淘汰され、最後に紙が残り世界各地に拡がり、紙は普遍的なメディアとなった。

さらに人間の進歩にとってメディアが格別に重要な意味をもつ理由は、人間が日常の出来事や思考を記録する手段としてメディアを見出すことにより、人間は記憶という行為から解放され、自由な創造や思考に脳を集中的に使うことが出来るようになった。脳による創造・思考の過程や記憶をメディアに記録し、蓄積することにより多くの知的集積物を生み出し、それらはやがて文化や文明の創造として人類の進歩を促した。従って太古から多彩で豊かな文化や文明が創造され、現代に継承可能となったのは紙というメディアが存在したためであると言っても過言ではない。

紙は長い間メディアとしての優位性を保ち、
現代に至っている。

2. メディアと社会の進歩の関わり

明治維新以降の日本の近代化の過程で紙の技術は印刷の技術と併せて教育を普及させ、新聞や雑誌はジャーナリズムを誕生させ公共空間を生み出し、書物は多くの知識や思想の社会への広がりを促進した。すなわち紙は戦後民主主義に至る政治の民主化を支え、さらに高度な経済活動を支えながら戦後の高度経済成長を牽引してきたと言える。

経済の成長はビジネス世界を中心に社会に大量の情報を生み出し、情報処理を効果的に行うことはビジネスにおける重要な要素となっており、情報機器の的確な選択が肝要である。また情報を載せる機能をもつメディアとしての紙は重要な役割を担い、心地よい使用感や感触という人間との高い親和性および情報の安定した定着性という特徴から長い間メディアとしての優位性を保ち、現代に至っている。

モバイル機器や端末が出現したが、
紙が情報と人間との間の
インタフェースとしての
役割を果たしている。

3. 情報機器の進化とメディアの変容

コンピュータが1950年代に発明され、ビジネス世界に大きな構造変化をもたらすようになり、さらに1970年代には情報の大幅な電子データ化が進行し、“ペーパーレス時代の到来”が予測された時期もあった。しかし現実には電子データの表現および出力手段として紙の新たな需要が起き、情報記録に適した紙の開発が行われ情報記録用紙という分野が生まれた。特に現代においては、情報はデジタルとネットワークを基盤としてインターネットにより高速で電子的に伝えられる場合が多く、各種のモバイル機器や端末が出現した。しかし最終的に情報が人間の眼に触れ人間の脳に認識され、処理される必要のある場面では紙が情報と人間との間のインタフェースとしての役割を果たすべく使用されている。

必要な時に想起可能な情報として
保持したい場合には人間の脳との
高い親和性をもつ紙メディアによる
視認が不可欠となる。

4. 情報に対応したメディアの選択

現代社会で生み出される膨大な情報は複雑で多岐にわたり、情報に応じた適切なメディアの選択が重要となる。情報を区分すると、その情報が個人の間での私的なものか、それともビジネス世界での組織の間でのものかという情報の発信者と受信者の性格に対応した“パーソナルかビジネスか”という区分である。もう一つは情報がその場で眺め判断が終われば用済みで保存の必要のないフロー的なものか、それとも知識や情報として人間の脳内の認知構造の中に安定的にストックとして定着させるべきストック的なものかという情報の重要性に対応した、“フロー情報かストック情報か”という区分である。

具体的な場面を考えてみると、パーソナルでフロー的な情報ならモニターやディスプレイで眺めて判断するだけで十分であり、電子辞書およびコミックやライトノベル中心の電子書籍が急激に拡がりつつあるのが好例である。個人的な情報交換の場合、日常的な場面で迅速さが格別に必要な場合には情報のコンテンツを効率よく伝える電子メールが使われる。しかしコンテンツだけでなく付加的に個人的な感情や丁寧さをメッセージとして情報と共に伝達しようと心がける場合には、メディアの特性が重要となり、和紙の上に筆で文字を精魂を込めてしたためるというような行為が繊細なマナーやおもてなしの心を重視する日本社会には伝統として存在する。パーソナルでもストック的な情報、すなわち人間の大脳皮質に長期記憶に定着させ、必要な時に想起可能な情報として保持したい場合には人間の脳との高い親和性をもつ紙メディアによる視認が不可欠となる。従って初等教育における人間としての基盤的な知識は紙による教科書から時間を掛け、紙と視覚の間で何度も往復を繰り返し、触覚も動員しながら理解し納得して安定的に深度深く記憶させる必要がある。

重要な会談や最終的な契約文書の交換は
人と人が対面し、紙の上で行い、
証拠を安定的に保存する必要がある。

5. ビジネス世界における紙メディア

ビジネスの世界では情報伝達の迅速さや経済的効率が重要だが、同時に情報に基づく的確な状況の判断が企業の命運を左右する。すなわちビジネス世界に日々生まれる重要度の低いフロー情報はモニターで眺めるだけで十分だが、重要度の高い情報は紙に出力し熟読した上で意思決定を行い、企業の経営判断に資する必要がある。また商談の初期や契約に至るまでの情報のやりとりは電子メールで行う場合が多いが、重要な会談や最終的な契約文書の交換は人と人が対面し、紙の上で行い、証拠を安定的に保存する必要がある。さらに企業活動の長い歴史をアーカイブとして保存する場合にはオリジナルな資料を実体のある紙として残すことが好ましいが、収容スペースに限りがあり、またアクセスの容易さを求める場合には電子データが選択される。

6. 「紙」と「電子データ」の共存は可能なのか

情報がパーソナルな場合でもビジネス世界においてもその目的に応じて最適な情報機器とメディアの選択がなされなければならないが、単に市場での技術動向の考察だけでは解決策は得られない。4回にわたる本シリーズでは、情報と人間や社会との関わりというマクロな視点から現代の情報化社会におけるメディアの問題をメディア理論、認知科学、脳科学、情報理論などの先端的な科学を用いた解析を試み、「紙」と「電子データ」は対立するものなのか、それとも共存が可能なのか、という今日的な命題に対して一つの考え方を示したい。

尾鍋史彦 Onabe Fumihiko

東京大学名誉教授(製紙科学)/
前日本印刷学会会長

1967年東京大学農学部林産学科卒業後、大学院を経てMcGill大学留学。92年東京大学教授、2003年退官。専門は紙科学および応用分野である塗工、印刷、画像、包装および周辺の認知科学、紙文化、メディア理論など。紙の科学と文化、芸術を融合し、紙の問題を包括的に扱う文理融合型学問としての〈紙の文化学〉を提唱。

掲載日:2013年9月

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