行政のスリム化と市民サービスの向上をめざして、行政改革に取り組む伊勢崎市役所様。 その中で導入されたシステムが、コスト削減・セキュリティなどの面で成果を上げ、職員の意識向上にも貢献している。 新たなシステムがどのように導入されどう役立っているのか、お話を伺った。
2005年、4市町村が合併し、20万都市となった伊勢崎市。その伊勢崎市役所様では2006年度からの4ヵ年計画で、合併後の行政の効率化・財政の健全化や情報公開などの改革に取り組み続けている。より効率的な行財政システムを築くことで、市民の視点に立った自治体経営を推進することが狙いである。その中で、住民サービスを向上させながら、いかにスリム化を図っていくかが大きなテーマとなっていた。
4ヵ年計画の中で求められる「行政コスト縮減の推進」に対し、総務課では毎年10%の消耗品コスト削減を目標としている。そのためには職員のコスト意識を高める必要があったが、徹底することはなかなか難しかった。例えば、大量カラー印刷はコストを抑えるためにカラー印刷機を使用することになっているが、数千枚ものカラー出力を複合機で行ってしまったこともあったという。
また、市民へ開かれた庁内で、個人情報保護などのセキュリティを強化することも課題だった。フロアには不特定多数の人が出入りするが、職員がコピーやプリントを行った紙書類を取り忘れて残っていることがあった。一般的に情報漏えいは紙媒体からのものが多いといわれており、持ち出しなどのリスクも想定される。職員のセキュリティ意識向上をめざし、研修などを行っていたが、合併で2,000名以上となった職員全体に、統一した運用が図れる物理的対策が必要となってきていた。
2008年、市役所様では人事管理の効率化のため勤怠管理システムを導入し、職員証をICカード化することが決まった。
この時にリコーから提案されたのが、このICカードを活用して、コスト削減とセキュリティ強化を可能にする出力環境の構築である。複合機、個人認証システムとRidoc IO OperationServer Proにより、ICカードで認証を行い複合機を利用することで、出力状況の把握や、オンデマンド印刷で無駄な出力を削減し出力文書の放置が抑止できる。出力状況の集計を計画中だった総務課では、セキュリティへの効果も見込めるこのシステムの導入を検討することにした。
職員証のICカード化が、まさにチャンスでした。
市の行政改革大綱にもペーパーレスの推進がありますが、実際にどのように使われているか分からないと対策の打ちようがありません。それで出力などの集計をしたいと要望していました。また配布されたICカードは職員証だけではもったいないので、セキュリティなどに活用できないかと思っていました。リコーさんからの提案は、そんなニーズにマッチしていたのです。
しかし、同規模の自治体では前例が見あたらず、財政当局や議会の理解をいただくための説得材料が必要でした。その資料づくりなどにもリコーさんに協力してもらいながら、導入することができました。
総務課が期待したのは、次のような点だった。
このメリットを庁内などに提案して、システムの導入が決定した。
しかし、庁内にはITスキルの異なるさまざまな世代の職員が働いており、新たなシステムが全員に活用してもらえない心配もあった。そこで総務課では、このシステムの運用マニュアルを独自に作成して、庁内に配布した。システムの全体概要や具体的な使用方法とともに、行政改革の推進にどう役立つのかという導入目的から分かりやすく説明したことで、職員の活用度が高まった。
しかし、庁内にはITスキルの異なるさまざまな世代の職員が働いており、新たなシステムが全員に活用してもらえない心配もあった。そこで総務課では、このシステムの運用マニュアルを独自に作成して、庁内に配布した。システムの全体概要や具体的な使用方法とともに、行政改革の推進にどう役立つのかという導入目的から分かりやすく説明したことで、職員の活用度が高まった。
また、ICカードを使わないとコピーやプリントができないので、常に職員証(ICカード)を身につけるという習慣が、次第に職員に定着していった。現在では職員証(ICカード)を机にしまったままの職員はいなくなったという。
何よりも向上したのは職員の意識だという。出力の度にICカードをかざすため、集計されていることもあり無駄な出力を抑えよう、という意識が強くなった。当初は、カラー出力を「利用者制限」の機能で特定の職員のみに許可していたが、全体に開放したところ、フルカラーの代わりにモノクロと同コストの2色コピーを活用する職員が多くなっていった。特に予算・決算の資料作成時期には、赤黒の2色がよく使われている。
両面印刷や複数ページを一枚にまとめる集約印刷などで、極力出力枚数を減らす工夫もされるようになった。複合機の操作パネルで必要な書類だけを選んで出力できる「オンデマンド印刷」のメリットも大きく、年度の紙使用量は5~10%削減できる見込みである。管理面でも、数字だけでは実感しにくい利用状況が個人、部署ごとなどでグラフ化され、より把握しやすくなった。
また、複合機から出力した文書の放置がなくなり、セキュリティレベルも向上した。個々の意識に頼らずに情報漏えいを抑止することが当初の目的であったが、ICカードを使わないと出力できないことが、職員がセキュリティについて考えるきっかけとなり、個人情報管理などの意識向上にも大きな効果があった。
予想外に好評だったのは、どこでも空いている複合機から出力できる「LF(ロケーションフリー)印刷」である。会議の時は会議室のそばで出力できるので、離れた自分の部署まで戻る必要がなくなり、業務の効率化にもつながった。こうしてシステムが職員に浸透し、活用度が上がっていった。
複合機をサーバーで管理し、デスク上で
状況を把握できるのは大きいですね。
今までは複合機に何かあったら、遠くの設置場所まで急いで駆けつけていたのですが、システムの導入後は複合機の状況をデスクで把握できます。広い庁内を走らずにすむようになったのは管理面での負担が減りました。また、保守サポートの点でも複合機の遠隔監視サービス「@Remote」が便利です。何かあっても、リコーさんのサービスマンがいつの間にか保守対応してくれている。この辺も、単なるコピー機から、ネットワークにつながった複合機といえるようになりましたね。
庁内では、複合機以外にも従来からのプリンターが使われている。これらも一括管理できれば、コスト・セキュリティの両面で万全といえる。総務課では、現在までの導入効果を集計・評価し、全庁的なシステムの運用と機器の数や配置の適正化を計画している。
現在、入退室・複合機管理に利用しているICカードを、さらに書庫などのセキュリティエリアへと展開することも検討していく。複合機の今後の進化に期待すると同時に、時代とともに変遷していく行政を取りまく環境に柔軟に対応できるシステムを構築していきたいとのお話を伺った。
導入前
年10%の消耗品コスト削減を目標としているが、職員のコスト意識向上や使用状況の把握が難しい
個人情報など情報セキュリティを強化したいが、出力した文章が機器に放置されていることがある
導入後
職員のコスト意識が向上し、紙使用量が5~10%削減された
出力文章の放置が抑止され、セキュリティ意識も向上した
さらにサーバーによる複合機の一元管理で、管理業務も効率化した
伊勢崎市役所様 システム環境イメージ
伊勢崎市役所
伊勢崎市 紹介
少子化の時代にあって、群馬県12市の中で最も人口増加率の高い伊勢崎市。若い世代や外国人も多く、大型ショッピングモールなどの商業施設の進出が著しい。伊勢崎市を拠点とする企業も多数あり、県内2位の製造品出荷額を誇る関東屈指の工業都市でもある。JR両毛線と東武伊勢崎線が結節するとともに、北関東自動車道の伊勢崎インターチェンジ・波志江PAスマートインターチェンジが設置されるなど交通アクセスに恵まれている。 2005年の市町村合併を経て、2007年4月には全国で40番目の特例市(人口20万人以上の都市で、指定を受けると都道府県の事務権限の一部が市に移譲される)に移行した。伊勢崎市役所様では「伸びゆく元気なまち」をテーマに、旧市町村機能の集約など行政のスリム化・スマート化に取り組み、「伊勢崎をもっと元気に!もっと豊かに!もっと安全に!」するために、「(1)緊急経済対策の実施」、「(2)行財政改革の推進」、「(3)安心、安全なまちづくり」、「(4)福祉・地域医療の充実」、「(5)地域経済の活性化」、「(6)教育・スポーツ・文化の振興」の6つを重点政策に掲げ、地域一体となったまちづくりをめざしている。