「物売り」から「価値の提案」へ。
Webシステムの共同開発など、ビジネス研究会での連携がPODを活かした新商品を生む。
代表取締役社長
渥美 和彦 氏
青写真と複写を主な業務として、前身の第一コピーサービスは石巻でスタートする。手書きトレースの需要も高く、官公庁や公共工事を中心にビジネスを展開。その後、社外プロジェクトチームを起こし、複写業の将来性について検討を重ね、いち早くCADシステムの導入に踏み切る。
CAD図面制作は得意先から高評価を得るが、年を追うごとに操作できる人材が増え、アプリケーションの価格は下がっていく。自ずと価格競争が起こり、海外とも競争しなければならない時代へ突入していく。
デジタルプレイスは情報システム部門を立ち上げ、ビジネスでの差別化に挑んだ。ファイリングを行い、CADで図面を制作し、道路情報、河川情報、住宅情報などを取り込み検索できる情報システムで得意先のニーズに応えていった。
近年、公共工事は減少をつづけ、コピーの単価も量も下がっている。CAD図面を含めさまざまなデータをインターネット上でやり取りする時代を迎え、紙への印刷も間違いなく減少傾向だ。これは複写業全体が抱える課題だという。デジタルプレイスの選択は、従来の得意先とは異なる領域へのチャレンジだった。
「公共工事や官公庁に頼っていてはダメだと思ったのです。社外からの意見も取り入れ、個人消費と結びつくビジネスをと模索しているときに、POD (Print On Demand)に出会いました。石巻はもちろん仙台は地方都市です。大都市圏の大きな案件は非常に少ない。地方都市の印刷はまさに小ロット・多品種で、PODに適していると思ったのです」2005年、デジタルプレイスはフルカラーPOD機を導入する。
「導入直後は売上的に効率が悪くても、名刺印刷の営業で懸命でした。やれば、その分経験値がアップしますから。社員達も頑張ってくれたおかげで、数年後には年賀状印刷も大量に受注できるようになっていました」渥美和彦社長は当時を語った。
PODを活用したビジネスは、名刺からはじまり、年賀状、写真集へとその領域を広げ、まさにこれからというタイミングだった。
2011年3月11日14時46分に起きた東北地方太平洋沖地震は、東北から関東にかけての東日本一帯に甚大な被害をもたらした。
「当時は、東日本大震災にすべてを奪われたという感じでした。石巻店は津波による浸水により納品間近の写真集などが、ほぼ壊滅状態。震災から3日後、泣きながら片付け、トラック2台分のゴミとして廃棄しました。店を閉めることも考えたのですが、全国からの支援が届きはじめ、地域の復興のためにも、社員の雇用確保のためにも、石巻でリスタートしようと決意しました」
「復興支援ボランティアとして知り合ったリコーの方々からは、心温まるものをいただきました。マシンの話も仕事の話も一切ありません。ただ石巻復興のために手伝いたいという思いを感じました。先頭で陣頭指揮を取っていた篠崎専務(当時)をはじめ、リコーの皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。この後、こんな人たちと一緒に仕事がしたいと思うようになったのは、自然なことかもしれません」と渥美社長は語る。
石巻での復興を第一と考えた渥美社長は、制作・生産の拠点を仙台から石巻に移す。震災前はPOD機を仙台店で稼働させていたが、POD機を石巻店に導入し制作を行うことで、地元の雇用に貢献できると考えたからだ。
「仙台店は営業拠点として位置づけました。ちょうどPOD機のトラブルも気になってきており、カラーのクオリティ向上も課題でしたから、新しいPOD機を検討するタイミングでもあったのです。RICOH Proを知ったのはその頃ですが、カラーの再現性が素晴らしく、とくに赤と黒のベタの美しさには驚きました」
渥美社長はテストを繰り返し、2012年8月RICOH Pro導入を決定する。
デジタルプレイスが1年越しの提案で実現した、地元プロ野球選手のPOD写真集。Web限定の300部は、即完売する大ヒットに。「PODは売れる」社員達の意識が変わり、社内の空気も一変したという。この受注をきっかけに、小学校の野球チーム、中学・高校の野球部にも、プロカメラマンによる個人別の写真集を展開。デジタルプレイスの人気商品として支持されていく。現在では、地元少年少女スポーツ団に向け写真集以外に、数種類のカレンダー、パネル、ストラップなどが商品化されており、写真を7枚使ったA3壁掛けカレンダーが一番人気となっている。
渥美社長は、東日本を中心とした若手経営者達が集う『ビジネス研究会』を開催している。メンバーは、オンデマンド印刷、情報システム、型抜き加工など、さまざま。研究会ではそれぞれの事例を発表し合い、アイデアや技術を共有。例えばデジタルプレイスの成功事例を宇都宮の企業が、また沖縄の企業が独自色を加えながらトライしている。Web入稿などのシステムも共同開発することで、コストを抑えることができたという。
デジタルプレイスでは、バレーボール、V・プレミアリーグ『パイオニアレッドウィングス』とサッカー、日本フットボールリーグ『ソニー仙台』のオフィシャルカレンダーを制作している。プロカメラマンの撮影による選手写真から好きな写真を選んでつくる卓上カレンダーは、サポーターにとって大きな価値を生み出し、いずれも年間数万部という人気グッズになっている。
「パイオニアレッドウィングスさんとのきっかけは、グリーン調達法でした。グリーン調達法をクリアできるファングッズを探しているというリクエストに、PODで選手ユニフォームを印刷してつくるストラップを提案。高い評価をいただき、つづけてオリジナルカレンダーも受注。Webで完結できるのも、大きなポイントに。現在、販売から発注まで任されていますので、手間もかからない、サポーターサービスにもなると、パイオニアさんから非常によろこばれています」
「ソニー仙台さんとは以前から情報システムでお付合いがありましたが、PODでの案件は、やはりストラップ。その後卓上カレンダー、A3カレンダーの提案が受け入れられました。従来はオフセット印刷で制作していましたが、選手の急な移籍などで使えなくなり廃棄することもあったと聞いています。PODで制作することで無駄がなくなり、しかも撮りためた選手の写真を有効活用できているのも、高評価につながっています。また Facebookページで、選手直筆のカレンダー校正紙をサポーターにプレゼントするなど、サポーターとの交流にも一役買っているそうです」営業技術課長岡裕樹課長は、PODを通し企業コミュニケーションのサポートができるのは、大きなやりがいだと語る。
「得意先からのこんなことはできないの?という質問は、ビジネスの大きなヒントになります。物ではなく、価値を売る企業へ。求められているものを、PODと加工技術でカタチにする。今は地元の景色や想い出をイラスト化し、オリジナルカレンダーに活かす商品を開発しています。イラストを制作する若手社員(笹川氏)も採用しました」渥美社長は、笑顔で語ってくれた。
美しい画質、とくに赤と黒の発色がすばらしい
RICOH Proを操作している千葉貴美恵氏。はじめてのPOD機とのこと。「これまでPOD機を操作したことがなかったので、比較はできませんが、画質の美しさには驚かされました。PODはベタが苦手と聞いていたのですが、そんなことはありません。とくに赤と黒のベタは非常にきれいです。また表裏見当の精度が高く、名刺も高品質に印刷ができます」
「紙詰まりの際も、パネルの指示に従っていくだけで解消できますから、安心です。はじめてのPOD機がRICOH Proで、よかったと思っています」
その都度、丁寧に対応してくれるプロダイヤルがありがたい
当初は操作に不安があったというが、研修で基本操作を覚え、問題が発生した際はプロダイヤルがその都度サポートしてくれたので助かったという。現在も安定して稼働中だ。RICOH Proは、デジタルプレイスの制作現場で高い信頼を得ている。
口コミで獲得した、中古車ディーラー短納期チラシ
石巻店に所属する千葉紀子氏は、このところ、口コミでデジタルプレイスを紹介されたという案件が増えてきたと語る。
「デジタルプレイスに依頼すれば少部数でもきれいに印刷してくれるといった口コミが、お客様の間であるようです。RICOH Proの仕上がりはかなり好評で、それが話題になっているのでしょう。中古車ディーラーさんのチラシ案件では、競合店を確認しながら目玉商品の金額設定をしたいということで、決定してから印刷までの時間を限界まで短くしたいというリクエストでした。従来はオフセットでしたが、PODで短納期を実現しチラシの価値を高め、トータル4,000部を受注しました」
株式会社デジタルプレイス
本ページに掲載されている情報は、2013年7月現在のものです。