「Webで仕事を受注」
PODは、石田製本のビジネスの屋台骨になる。
代表取締役
石田 雅巳 氏
創業当時の石田製本は、すべて手作業による洋式帳簿の製本が主な業務で、道内の大手印刷会社を取引先に、主に官公庁、市町村、国公立大学や病院などの帳簿の製本を請け負っていた。その後、並製本に続き書籍上製本の設備を導入。高度成長期には雑誌製本の受注が増加。道内有数の製本企業として名を上げていく。
製本業は元々手作業に頼る部分が多く、経験と熟練した技が品質を左右する。石田製本は創業以来、「手づくりのこころ」を大切にした仕事に徹している。
一般的にハードカバーと呼ばれる上製本は、背を糊で固め、厚紙、布、革などの表紙と合わせて職人が仕上げる高度な製本だ。用途や耐久性に合わせてさまざまな加工を施すことができる。
石田雅巳代表取締役社長は、「上製本全自動ライン設備も導入しており、大量の製本案件にも対応できます。同時に1冊だけの本づくりにもプライドを持っています。長年培ってきた技術とノウハウで、モノづくりのプロフェッショナルとして役立ちたい。とくにハードカバーには、こだわりつづけます」と語る。
事業を順調に拡大させていった石田製本だが、社会全体の景気減速が製本業にも影を落としていく。雑誌製本の得意先だった印刷会社が、相次いで製本設備を導入し内製化に踏み切ったのだ。
「ある程度の受注は残るだろうと、当初は高を括っていました」しかし、予測は見事に覆される。
雑誌製本の減少は、社内にも変化をもたらした。工務部の山口直樹部長を中心とする有志が集まり、新しいビジネスのアイデアについて話し合っていく中で、POD(Print On Demand)ビジネスに出会う。石田社長は社内のやる気をいち早く感じ取り、人材とともにカラーPOD設備を導入し、PODを担うIBB事業部を誕生させた。
名刺、ポスター、フォトブック、アルバムなど、PODで実現できる多種多様な案件にチャレンジ。石田製本のPODビジネスは、Webを窓口にし、専任の営業はおかないのが基本方針だが、会って話を聞きたいというお客様には、POD担当が直接出向くこともあるという。
「POD案件が動きはじめましたが、当初導入したカラーPOD機は経年劣化のため、カラー品質が不安定に。印刷速度も遅く、生産性の面で課題を抱えていました。またトナーにオイルがのるため、PP加工には適しておらず、全面黒ベタのようなデザインは、PPの剥がれが心配であきらめざるを得ませんでした」PODリーダーを兼任する山口部長は、PODを積極的に展開していくためには新しい設備が必要だと感じ、石田社長の指示を受け新機種選定へと動く。
機種選定のために、同じデータで印刷品質やサービス対応の比較も行ったという。「印刷品質については各社の良さがあり悩みましたが、リコーからは一緒にいいものをつくりましょうという熱意を強く感じました。また写真部分はムダなテカリもなく、よりオフセット印刷に近い仕上がりというのも、大きなポイントでした」石田社長はRICOH Proの導入を決定した。
PODビジネスの試行錯誤を進めていく中、卒園アルバム制作の商品力に気づいていく。
「きっかけは社員の子供が通っている幼稚園への営業でした。サンプルを気に入っていただき、ぜひ試してみましょうということに。結果は非常に好評。この幼稚園は複数の園を運営しているため、数100部という単位で、現在も継続して受注しています」
卒園アルバム制作は、石田製本のWebサイト構築とともに本格的にスタートする。「PODによる卒園アルバムは、RICOH Pro導入以前から進めています。2年前旧POD機で約60件の卒園アルバムを受注。2月から4月に集中するため、生産能力的には精一杯でした。RICOH Pro導入後の去年は2倍に、今年は3倍の卒園アルバムを受注できました。しかも来年度制作への問合せが、去年の6倍に達しているという報告を受けています。新規が増えているのに加え、同じ園の保護者間の口コミによるリピーターも増えてきているようです」石田社長は、PODによる卒園アルバムの可能性の大きさを実感しつつあるという。
石田製本の卒園アルバムでは、表紙と背表紙と中面の4ページを個人ごとに、オリジナルで制作できる。これまでの実績では表紙と背表紙のオリジナル制作が8割、中面4ページのオリジナル制作が4割に及ぶとのこと。バリアブル印刷の特長が活かされている。「卒園アルバム制作のお客様は、保護者です。園児の保護者の皆さんと一緒に、まごころを込めて、世界にひとつだけの卒園アルバムをつくっています。
石田製本はできる限り安価にこだわり、多くの保護者の方に利用してほしいと思っています。何しろ、一生の記念ですから」山口部長は、卒園アルバムという商品には想い出という特別な価値があると語る。
石田製本では、PDFを送るだけで価値の高い冊子が仕上がるSMART BOOKサービスも行っている。B to Bによる提案書、企画書、マニュアル、配布資料などから、卒業論文といったB to C案件まで、さまざまなドキュメントを低価格、短納期で冊子に仕上げて提供。
卒園アルバムが春に集中するのに比べ、SMART BOOKは、年間を通して安定した受注が見込めるという。
個人へ訴求する手段としてWebコミュニケーションを重視する石田製本では、製本業を熟知した制作会社にWebサイト構築を依頼している。
「Webサイトが営業担当ですから、サイト改善によるアクセス数アップや、検索結果画面で自社サイトが上位に表示されるための対策は欠かせません。とくに検索に連動する広告が効果的でした」
「カラーPOD機の入替えにより、印刷速度が向上。ジャム処理などによるダウンタイムが少なく、自動両面印刷も可能ですから、生産性は3~4倍にはなっているでしょう。春に案件が集中する卒園アルバムは、RICOH Proが導入されていなければ、対応できなかったはずです」山口部長は語る。
「実は道内からの受注は少なく、本州、とくに関東を中心に全国から多くの問合せと受注がきており、B to Cの底知れぬ可能性を感じています。伝統の製本技術とPODで、手づくりのこころを忘れない仕事をする。壊れやすい本を、作ってはいけないですから」卒園アルバムに手応えを感じている石田社長。PODによる事業が、これからの石田製本の屋台骨になっていくだろうと、締めくくってくれた。
白のグラデーションや黒ベタの再現性が問われる竣工アルバムで高評価
営業的な対応でお客様へ出向くこともあるという、PODの制作を担当している井上直人氏。
「RICOH Proになってから、以前ではできなかったことができるようになりました。竣工アルバムという竣工直後の建物の写真集ですが、お客様の依頼は表紙を黒ベタのデザインにすること。以前のPOD機では黒ベタがくっきり再現できるかが不安な上に、仕上げのPP加工を考えると、受けられないリクエストでした。また、写真の建物の白い壁を再現するには、白のグラデーションがきれいに表現されなければなりません。これが、これまでのPOD機では非常に難しい。正直あきらめていましたが、RICOH Proが解決してくれました。私自身も印刷してみるまで不安でしたが、予想を超える再現に感動すら覚えました。お客様からも高い評価をいただき、満足いただいています」
感謝のメールに感激、繁忙期の苦労が吹き飛びます
石田製本では、卒園アルバムをはじめPODによる制作物の打合せは、お客様とのメールでのやり取りとしている。その窓口となっているのが三浦太一PODチーフ。
「2月から4月は、卒園アルバムのお客様とのメールのやり取りで非常に忙しくなります。データはPDFで入稿いただくのですが、どのアプリケーションからPDFをつくったかで大きく左右されます。問題個所についてはメールで修正依頼をしますが、写真を明るくしたり、サイズを縮小したりなどといった修正は、私が行うことも。この時期に集中するため、制作の時間が足りなくなってしまいますから」
「納品を終えた頃から、お客様からの感謝メールがたくさん届くようになりました。お礼の菓子などが届き、恐縮してしまうことも。子供との想い出を立派な卒園アルバムとして残すことができ、感動しているといったメールを読む度に、繁忙期の苦労が吹き飛びます」
伸び続ける受注と、お客様からの感謝の便りが、卒園アルバムの確かな商品力を裏付けている。
石田製本株式会社
本ページに掲載されている情報は、2013年11月現在のものです。