RICOH Pro Lでワンストップ体制を強化した広洋社。
水性ラテックスの特性を活かして次のステップへ。
代表取締役社長
近藤 亮二 氏
1949年に創業した広洋社は65年にわたり屋外広告とイベント関連をメインとするサイン・ディスプレイサービスを提供している。分業が多い業界にあって、重機や電気工事、足場組立などの資格を持ち、デザインから設計、施工までワンストップで請け負えるのが大きな特徴である。
同社の近藤亮二社長が入社したのは約30年前。当時は職人が刷毛を駆使して文字や絵柄からグラデーションまでも表現していたという。その後、デジタル化が急速に進み、熟練の手作業でサイン・ディスプレイを制作していた時代は過ぎた。カッティングプロッタで出力されたカッティングシートの切り貼りに移行してほどなく、15年ほど前からは業界に大判インクジェットプリンターが普及し始めていく。ロット数の多い案内表示なども以前はシルクスクリーン印刷が主流だったが、出力機、インクともに技術革新が進んだ大判インクジェットプリンターのシェアは一気に広がっていった。
同社では業界のデジタル化以降、出力業務の100%を外部に委託。近藤社長は「顧客の要求はやはりコストとスピードです。内製化は必須でした」と、全盛となった大判インクジェットプリンターの導入を考えてはいたものの、内製化による作業負担の増加や設置場所の問題から投資を見送ってきた。そうした中でリコーが提案したサイングラフィック用ラテックスインクジェットプリンター「RICOH Pro L4160」は同社の業務や作業環境に最適のマシンだった。
同社の繁忙期は5~7月と9~11月。この期間中は受注も増えるが、外注比率の高い出力コストも膨らむ。加えて需要のピーク時には一層、効率的な業務の遂行が求められる。大判インクジェットプリンターを導入すれば外部委託コストが削減でき、しかも夜間に運転すれば朝一番から後加工に取り掛かることもできる。
通常、サイン・ディスプレイ制作業務では用途に応じて適正なメディアを選択し、UVやソルベント、水性等の出力方式を使い分けている。しかし、同社がそれらの出力方式別に大判インクジェットプリンターを揃えるのは、投資効果や業務内容を考えると現実的ではない。
「屋内外向けを問わず、1台で様々なメディアに出力できる大判インクジェットプリンターが必要でした。弊社の案件では、特に屋外での耐光性と耐擦過性が重要です。また、フィルム系の透明メディアを使った電飾看板は従来、カッティングシートで単色が多かったのですが、ホワイトが使えて直接透明メディアに出力できることも、RICOH Proを選んだ理由です。ターポリンや塩ビのメディアの発色も非常に良いですね。低臭でオフィス業務をしながら出力できることも決め手になりました」
このほか、RIPでインクの使用量が判るため、コストが管理しやすい点や、つなぎ合わせの処理も自動でマーカーや糊代を設定してくれる点も、当初抱いていたオペレーションの不安を解消した。
制作費全体の30%を占める同社の出力コストは導入して半年も経たず3分の1ほどに減った。出力委託費はほぼゼロ。「思ったほどにメディアもインクもそれほど高くありません。経営的に非常に大きい」と、材料費を差し引いてもかなりの効果が表れている。
近藤社長は新たに専任のオペレータを必要としない点も高く評価。顧客から預かったデータや社内でデザインしたデータは簡単な操作で出力することができる。当初、懸念していた業務負担の増加は全くといっていいほど発生せず、「一般的なプリンタで出力するのと同じ感覚。心配していたオペレーションは全然たいしたことがなかったですね」。現有の人員で出力業務を内製化できたことは間接経費の面からも目に見えない利益を生んでいる。
サイン・ディスプレイの納期はイベント関連であれば通常1~2ヵ月。しかし、中にはデザインから施工まで1週間という特殊な案件を請け負うこともあり、年々、スピードへの要求が強くなっている。
「30年前に比べて技術革新により確実に納期は半分になっています。イベント関連では明日までにパネルを追加して欲しいという要望が結構あるので、外部委託では対応に苦慮していました。内製化したことで短納期要請にスムーズに応えられるようになりましたので、お客様の信頼感にもつながっています」
かつては得意先デザイナーへのサンプル提出で、3種類のメディアで各4回の確認作業を繰り返したことがあった。原因は外部委託先にデザイナーの要求がうまく伝わらないこと。内製化したことでお客様の要求が素早く反映でき、サンプル提出、色の確認作業の効率も上がっている。
導入後の5~7月の繁忙期には月間で100m2の出力数を実現。午前9時から翌朝5時まで連続運転させても機械の不具合はなく、繁忙期を無事に乗り切った。
機種の選定の際には、大型の換気が必要になるソルベント系インクや、オゾンを排出するためのダクト工事が求められるUV系インクを搭載したプリンタはまず除外した。作業環境を快適に保つためには水性で、VOC(揮発性有機化合物)や臭気が極めて少ないラテックスインクはまさに最適だった。同社では小さい換気扇が一つあるスペースにRICOH Proを設置しているが、臭いは気にならず全く問題がないという。
近藤社長は「以前、あるお客様企業の1階にUV系のインクで出力したパネルを納品したところ、5、6階まで臭気が立ち上りクレームになったこともありました。十分に脱臭する時間がなかったためです。CSRの観点から環境保全に敏感な企業が増えますし、学校、病院などの特に環境への配慮が求められる公共施設に向けて、水性のラテックスインクが生み出す商材に可能性を感じています」と述べている。
外部委託時に4種類だった取扱いメディアはRICOH Pro導入後に8種類に増えた。従来、布を使ったテキスタイル系の制作物はほとんど受注していなかったが、「見た目が柔らかく、奥行きが出るので、お客様の反応もいいですね。これまでコスト的にも高いイメージがあると思うので、今までなかった潜在的なニーズが拾えると期待しています」と、新たな商材に手ごたえを得ている。
屋外広告やイベント関連に加え、今後はショールーム等の屋内装飾へと新たな領域への展開を見据える。「様々なデザインが可能になるので、壁紙にも魅力を感じています。ラテックスでどういう商材ができるのかを模索しています。今は楽しくて仕方がありません」。
近藤社長は高い付加価値を提供するためにデザインから施工までのワンストップサービスをさらに強化し、直受け比率をさらに高めていく意向である。
RICOH Proの新たな販促物は、販売に効果を上げていると実感。
今後もさらにアイデア・要望を形にしていきたい。
緊急時のスピード対応が可能に
後加工と施工を担当している渡辺孝二氏はRICOH Pro導入後の変化について「やはり早いですね。以前は、外部委託先が忙しいと"明日までちょっと延ばしてくれない"と求められることもありました。かつてはドライマウントが失敗してしまった場合など緊急での対応に不安がありました。今はすぐに対応できるので安心です」と述べ、内製化による即応力の高さを実感している。
当日の設計変更にも間に合う
導入後に手掛けた展示会の設営の案件では、開催の前日、得意先の要求で急遽、モニタの位置が変更になる事態が起きた。ブース壁面にはモニタ用の穴が開いており、デザインを含めて施工し直すことになった。
「明け方の午前3時に設計が変更になって、それからデザイン会社でデザインを変更し、データが到着したのがその日の午後3時でした。それから出力し、会場で施工したのが午後8時です。横3分割の貼りあわせでしたので、以前のように外部に委託していたら、おそらく対応できなかったでしょう」
RICOH Proによる緊急対応で問題が解決し、得意先からは大きな信頼を得た。
株式会社 広洋社
■本社 110-0003 東京都台東区根岸1丁目5-17
■資本金 1,000万円
■創業 1949年(昭和24年)
■従業員数 5名
■設備 RICOH Pro L4160
■主な得意先
日本工業大学及び系列校、双葉電子工業株式会社 台東区役所など
■主な業務内容
屋内外装飾全般
ディスプレイ設計 製作全般
本ページに掲載されている情報は、2014年9月現在のものです。