愛媛県西条市教育委員会様は、「心豊かにたくましく生きる西条っ子の育成」を教育目標に掲げ、ICT*(Information Communication Technology)を活用した「学びあい学習」を推進されています。市内の小学校4校に合計11台のRICOH UCSを活用し、バーチャルクラスルームを設置。学校間をつないだ遠隔合同授業を実施。小規模校が抱える課題を解消しながら、さらに子どもたちの21世紀型スキルを育む活気ある授業を実践されています。
【導入前の課題】
【導入後の効果】
西条市は全国的にも進んでいる人口減少の問題に直面し、少子化・過疎化による学校統廃合の問題が浮上していました。西条市教育委員会様では、活気ある地域づくりに学校は欠かせないという考えから統廃合を行わず、学校間をICTでつなぐことで学校や授業を継続・存続させることを検討されていました。同委員会 学校教育課の山内様に、RICOH UCS導入に至る経緯をお話いただきました。
「全校児童が100名を割る小規模校は、先生が手厚く関われるというメリットがある反面、子どもたちは限られた数少ない人数の中で学んだり、遊んだりします。多くの仲間に揉まれ、さまざまな考え方や意見に触れながら多様なものの見方や価値観を身につけていく点で、ややデメリットとなる環境かと捉えています。特に、21世紀型スキルといわれるコミュニケーション力、協働力、問題解決力、批判的思考力は、多人数の中での学習を通して育まれるもので、子どもたちの未来に不可欠のものです。そのためには、学校に今ある道筋で出来ることに加えて、新しい発想のもと、こうした遠隔合同授業を通して身につけていくことも重要だと判断して取り入れました。離れた場所にある学校同士がICTでつながって活気ある授業を行うことで、統廃合をしないで学校も存続させることが出来ます。」
遠隔合同授業を開始して3年目、これまでどのような歩みがあって現在に至るのでしょうか。
「システムは各校に設置しましたが、1年目は機器を整備してきちんとつなぐことに力を入れました。150インチの2つのスクリーンは、正面は先生を、サイドは児童を映し出して、最初につながった時は子どもたちも大喜びでした。室内数カ所のマイクがこちらの教室の声を向こうの教室に届けてくれますし、向こうの声はスピーカーを通してこちらに届きます。声を弾ませて子どもたちの交流が進んでいました。2年目になりますと、1年目で築かれた子どもたちの関係を活かした授業づくりへと進み、3年目の現在は、年間を通して当たり前のようにつなぐ毎日の中で、より効果的な活用法を現場の先生と一緒に取り組んでいるところです。」
それでは、実際に遠隔合同授業を行う二人の先生にお話を伺います。
最初に、今井先生にこれまでを振り返りながら、授業のポイントとなるT1※(発信側の先生)、T2※(受信側の先生)の役割についてお話しいただきました。
「遠隔合同授業によって一気に友だちが増えて、児童はワクワクする毎日だったと思います。そのワクワクが、今だんだんと落ち着いて学習する環境になってきたところです。自分たちだけでは得られないような考え方や、意見の返し方、表現の仕方を大勢の中で学べることは、子どもたちにとって大変有意義なことです。それは私たち教師にとっても同じで、より良い授業にするための創意工夫も生まれました。当初は先生一人で授業を進行するスタイルでしたが、二人の先生が協力して授業を行うスタイルになりました。T1の先生が授業を進行している間に、T2の先生は児童のフォローに専念します。子どもたちのつぶやきを拾ったり、わからない児童へ寄り添ってヒントを出したり。スクリーンの向こうの児童にも気を配りますし、声掛けします。机の上の様子や姿勢にまで目配りできるのは、二人の先生が組んで授業をしている賜物だと思います。加えて、誰がいつどんな発言をしたか、細かにメモしておいて、授業の後でT1の先生と共有します。二人で行うから、より細やかな授業が出来ると考えています。」
授業に向かう児童の姿勢は、目に見えて変わってきたといいます。T1として授業を進行させる濱口先生にお話いただきます。
「二つのクラスをつなげて33人学級になったことで刺激を受け合えることが大きいと感じています。『スクリーンの向こうの新しい仲間はどんなことを言うのかな』、『その発想もあったんだ』という刺激。合同授業では相手の児童を意識しますので、自分が考えたことをしっかり伝えよう、わかりやすく表現しようという気持ちにつながりやすいと思います。相手に伝えたい気持ちがあると、相手がまだ言っていないことを見つけようとか、相手から刺激を受けてさらに思いついたことを伝えようとか、たくさんの意見を聞けることは考えを深めていく上でとても良い環境だと思います。少し恥ずかしがりやだった子も、『あの子が手を挙げているから私もがんばろう』と積極性が増して、学習に対しての意欲が高まってきています。やはり、スクリーンを通して"見られている"ことが非常に良い効果を生んでいるのではないでしょうか。普段の教室でも『その声で33人に聞こえる?』というような投げかけをすることもありますが、いない時も相手のことを考えて過ごす気持ちが当たり前のものになってきました。」
一方、遠隔合同授業を通して副次的な効果も生まれました。山内様にご説明いただきます。
「遠隔合同授業が先生同士の研修につながっていると聞いています。ベテランの先生は若手の先生の取り組みに刺激を受け、若手の先生はベテランの先生の児童への関わり方や、発問、指示、指導の仕方をリアルタイムで学ぶことができます。教師は他の先生の授業を見る機会はあまりなかったのですが、遠隔合同授業を導入してからはお互いの指導を見て、授業改善を図ることができ、有意義な研修の場となっています。」
RICOH UCSを活用して学校間をつなぎ、活気ある遠隔合同授業を実現された西条市教育委員会様。
導入を決めたポイントと使ってみた感想を、山内様に挙げていただきました。
児童の積極性を高め、21世紀型スキルの育成を実践する遠隔合同授業。今後を見すえた展望について山内様にお話ししただき、総括していただきました。
「遠隔合同授業に適した教科、そうでない教科を今検証しています。現在新たに検討している教科は、今後小学校教育に導入される外国語活動です。ALTの先生に参加してもらって、遠隔合同授業を通して多くの児童と触れ合い、語学力、コミュニケーション力の向上に役立てていければと思います。また、博物館などの社会教育施設とつないでお話を聞くなど、キャリア教育の面でも活用できると考えています。子どもたちが社会に出た時に活躍できる力を養う、そういう教育を進めて、ワクワク度日本一の西条市を目指していきたいです。」
「西条市教育委員会様は、教育の現場に立った視点からビジュアルコミュニケーションツールを活用しながら、子どもたちの未来を力強く支えていきます。」
愛媛県西条市教育委員会 様
■2015年より市内全ての小・中学校において「小中学校ICT教育推進事業」を実施。
■URL:http://www.city.saijo.ehime.jp/soshiki/gakkokyoiku/
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本ページに掲載されている情報は、2017年11月現在のものです。