近年の電波法改正を受けたアナログ無線廃止に伴い、デジタル無線機などその他の手段に代替する必要がある企業も多いでしょう。そこで今回は、そもそもデジタル無線機とは何か、アナログ無線との違いや、IP無線とはどのように異なるのか気になっている方に向け、それぞれ解説します。また、電波法改正に伴うアナログ無線からデジタル無線への移行方法もご紹介しますので、あわせてご覧ください。
デジタル無線とは、デジタル方式で信号を発信する無線通信のことを指します。デジタル無線機を使用することで、デジタル方式の無線通信を行うことが可能になります。このデジタル無線技術は、アナログ方式に比べて多くの利点を持っています。
デジタル無線の普及は、総務省が2008年に簡易無線のデジタル化を推進したことから始まりました。この政策により、デジタル無線機の登録局が設立され、デジタル無線の利用が広がりました。
現在、電波はテレビやラジオ、携帯電話、消防・救急無線、Bluetooth®、Wi-Fi™など、さまざまな用途に割り当てられています。しかし、電波は有限な資源であり、これ以上新たな用途に割り当てることが困難になってきています。このような背景の中で、デジタル無線は通信で占有する周波数帯幅が少ないため、電波を効率的に利用することができます。そのため、国は電波の有効活用を目的として、デジタル無線技術の導入と普及を進めています。
デジタル無線のもう一つの利点は、通信品質の向上です。デジタル信号はノイズに強く、クリアな音声やデータ通信を実現することができます。また、デジタル無線は暗号化技術を利用することで、通信のセキュリティを高めることも可能です。
国はデジタル化を推進する中で、電波法を改正し、アナログ簡易無線局の周波数の使用期限を令和6年(2024年)11月30日までに設定しました。
そのため、該当するアナログ無線機を利用している場合には、期限までにアナログ無線機の撤廃や総合通信局への変更・廃止申請など、然るべき措置が必要となります。電波法違反となれば1年以下の懲役または 100万円以下の罰金の対象となります。
また、これまで利用していたアナログ無線機をデジタル無線機へと買い替える必要もあるでしょう。
アナログ無線とは、音声やデータをアナログ信号として送受信する無線通信方式を指します。アナログ信号は連続的な波形で表現されるため、音声の自然な質感を保持しやすいという特徴があります。しかし、その一方でノイズや干渉に弱く、音質が劣化しやすいという欠点もあります。特に、遠距離通信や建物内での使用においては、信号の減衰や障害物による影響が大きくなりがちです。
近年、デジタル無線やIP無線の普及に伴い、アナログ無線機の廃止が進んでいます。デジタル無線は音声やデータをデジタル信号として送受信するため、ノイズに強く、クリアな音質を保つことができます。また、デジタル無線は暗号化技術を用いることでセキュリティを強化し、無線通信の安全性を高めることができます。一方、IP無線はインターネットを利用して通信するため、距離や地理的な制約を受けずに広範囲での通信が可能です。
アナログ無線機の終了に伴い、多くの業界や企業がデジタル無線やIP無線への移行を進めています。特に緊急サービスや公共交通機関など、信頼性とセキュリティが求められる分野では、デジタル無線の導入が急速に進んでいます。アナログ無線機の廃止は一時的な混乱を招くかもしれませんが、長期的には通信の品質と安全性を向上させるための重要なステップと言えるでしょう。
アナログ無線からデジタル無線などに切り替えるといった場合、それぞれどう違うのか気になることでしょう。
主に次のような違いがあります。
電波を用いて音を飛ばすには「変調」という処理が必要です。デジタル無線は、音を0と1でできたデジタルデータに圧縮して変調しますが、アナログ無線は音をまとめて変調し、ほぼそのまま飛ばします。
デジタル無線はまっすぐ直線的に電波が飛ぶため、アナログ無線よりも遠くに飛ばすことができます。一方で障害物のあるエリアではアナログ無線のほうが電波が届きやすいところがあります。
デジタル無線はノイズをカットして伝送するため、アナログ無線の音声よりもクリアな音質で通話ができます。
シンプルな作りのアナログ無線機のほうが、デジタル無線機と比べてバッテリーは長持ちするといわれます。
無線は混信による情報漏洩リスクがありますが、デジタル無線では、第三者が同じチャンネルを使用中も、内容が漏れないようにするコードを設定できることから、通信の秘匿性をアナログ無線よりも保つことができます。
先にお伝えした通り、令和6年(2024年)11月30日がアナログ方式の簡易無線局の周波数の使用期限となっているため、
該当するアナログ無線機を利用している場合には対応が必要になります。
アナログ無線機の種類によって対応方法が異なるため、確認しておきましょう。
使用できなくなるのは、アナログ方式の350MHz帯および400MHz帯の周波数を用いた無線機です。
この周波数に該当するアナログ無線機はもちろんのこと、アナログ方式の周波数とデジタル方式の周波数の両方使用可能なデュアル方式の簡易無線局についても、アナログ方式の周波数が350MHz帯および400MHz帯であれば対応が必要になります。
該当するアナログ無線機を利用している場合は、使用期限までに無線局を廃止する、もしくは引き続き簡易無線局を利用する場合にはデジタル方式の簡易無線局に買換えるなどの対応が必要です。
デュアル方式については、アナログ方式の周波数を発射できないように、期限までに簡易無線局のメーカーなどに依頼し、無線設備の改修を行います。
引き続き簡易無線局を利用する場合には、デジタル無線機もしくはIP無線機に移行する方法が挙げられますが、先にお伝えしたスマートフォンを利用したIP無線アプリもおすすめです。
例えば「Buddycom(バディコム)」というIP無線アプリは、スマートフォンやタブレットにインストールするだけで、無線機やトランシーバーのように一斉通話ができるアプリです。
無線機と異なり免許は不要である上に、インターネット回線を利用するため、通話エリアが限られず、広い範囲で可能になるなどのメリットがあります。
また通話ボタンを押して話すだけなので、誰でも簡単に操作して利用ができます。一般的な無線機と同様に複数人が参加する通話も可能です。
また音声通話だけでなく映像でも通信ができ、音声のテキスト化、翻訳などにも対応しているので、コミュニケーションの幅が広がります。
セキュリティについても安心できます。通信はSSL/TLSという暗号方式で暗号化しているため、通話内容が盗み見られるリスクが減ります。
さらにセキュリティを高めたい場合にもエンドツーエンド暗号化(E2EE)に対応しています。
アナログ無線機を何らかのデジタル無線機への移行を検討している場合には、ぜひご検討ください。
アナログ無線が使えなくなることで、デジタル無線とともに代替手段として候補に上がるのが、IP無線です。
IP無線は、デジタル無線やアナログ無線とどのように違うのか比較してみましょう。
IP無線は、携帯電話と同じインターネット回線を利用して通信を行います。そのため、インターネットがつながる場所では通信が可能となり、デジタル無線やアナログ無線と比べて、広範囲に通信できます。
デジタル無線もアナログ無線も利用に際して免許や資格が必要なケースがありますが、IP無線は利用に際して免許も資格も不要です。手間とコストが軽減されることで、導入ハードルが下がります。
デジタル無線とアナログ無線は機器の本体自体が大きく重い傾向がありますが、IP無線機は小型で軽量なことが多く、スマートフォンアプリ型であればスマートフォンが機器となるため、比較的軽量で済みます。
このようにIP無線はデジタル無線やアナログ無線よりもメリットが多く、代替手段として最もおすすめです。
またIP無線は月額固定料金で安価に運用できる上に、アプリなら既存スマートフォンを利用できるため、機器代不要になることもあります。
デジタル無線とアナログ無線、そしてIP無線の違い、アナログ無線からデジタル無線への移行方法をご紹介してきました。
アナログ無線機廃止を目前にしている今、各無線機の特徴をしっかりととらえ、機器を選ぶことが重要です。特に今は、IP無線やIP無線アプリがおすすめの手段です。
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