現在、企業でグループコミュニケーションツールや災害対策などの利用が増加傾向にあるIP無線。「無線」と名がついているため、従来の業務用無線機のように利用免許や資格の申請・取得が必要かどうか知りたいという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、IP無線に免許や資格は必要なのかどうか、そして従来の無線機との違い、IP無線アプリの特徴や導入のポイントを分かりやすく解説します。
IP無線とは、携帯電話やスマートフォンと同様にインターネット回線を利用して音声をパケットデータとして送信することで、音声通信を実現するシステムです。従来の業務用無線機やトランシーバーとは異なり、IP無線はインターネットを介して通信を行うため、広範囲での通信が可能です。またIP無線を使用することで混信の心配がないという利点もあるため、IP無線は遠隔地との通信や、広範囲にわたるコミュニケーションが必要なシチュエーションで非常に有効です。
簡易業務用無線機を利用する場合、総務省への免許申請が必要となります。そのため、同様にIP無線も免許が必要だと思われるかもしれません。しかし、IP無線は従来の無線機とは異なり、免許や資格、登録申請などが一切不要です。これは、IP無線がインターネット回線を利用するため、無線周波数の割り当てが不要であることが理由です。このため、企業がIP無線を導入した場合、免許申請などの手間をかけずに、即座に利用を開始することができます。したがって、IP無線は手軽に導入できる通信手段として、多くの企業や団体にとって非常に魅力的な選択肢となっています。
IP無線と従来の無線機との違いをご紹介します。
項目 | IP無線 | 従来の無線機 |
---|---|---|
免許・資格 | 不要 | 多くの場合、免許申請または登録申請が必要 |
通信範囲 | インターネットがつながる範囲(日本全国) | 半径1~2km程度 |
混信 | ほぼなし | 発生する可能性あり |
通信の秘匿性 | 高い | 低い |
コスト | 機器代金+通信料 | 機器代金+免許申請・更新費用、電波使用料など |
機能 | 通話、データ通信、位置情報共有など | 通話(一部機種ではデータ通信) |
まず、免許や資格について、従来の無線機は総務省の免許申請が必要な場合がありますが、IP無線は不要で、すぐに利用開始できます。
通信範囲に関しては、従来の無線機は限られた範囲でしか通信できないのに対し、IP無線はインターネットがつながる場所なら日本全国で利用可能です。
混信や秘匿性についても、IP無線は混信がなく、情報の秘匿性に優れています。
コスト面では、IP無線は通信料がかかるものの、アプリを利用することで低コストでの導入も可能です。
機能面では、従来の無線機が通話のみであることが多い一方で、IP無線はデータ通信が可能なため、通話以外にもメッセージや画像の送受信、位置情報の共有など多様な機能を提供します。
IP無線は、従来の無線機に比べて多くのメリットを持っています。
まずIP無線は広範囲での通信が可能です。従来の無線機は電波の届く範囲が限られていましたが、IP無線はインターネットを介して通信を行うため、地理的な制約がほとんどないため、遠隔地にいるスタッフとの連絡もスムーズに行えます。例えば、全国に支店を持つ企業や、広域で活動する運送業者にとっては非常に有効です。
通信内容は暗号化されているため、第三者による盗聴のリスクが低減されます。これは、機密情報を扱う業務や、セキュリティが重視される環境で特に重要です。さらに、IP無線はログの管理も容易で、通信履歴を確認することができるため、トラブル発生時の原因究明にも役立ちます。
音声通信だけでなく、テキストメッセージや画像、動画の送受信も可能なため、緊急時には現場の状況を即座に共有でき、迅速な対応が求められる場面での意思決定がスムーズになります。例えば、災害対応やイベント運営など、リアルタイムでの情報共有が求められるシチュエーションで役立ちます。
先ほど、IP無線には無線機とアプリの2種類があるとお伝えしました。そこで、IP無線アプリの特徴をご紹介します。
IP無線アプリを利用する場合、スマートフォンがすでに利用できる環境であれば機器代は不要になります。またIP無線アプリは利用料金が月額固定制であることが多いことから、いくら通信をしても通信料に変化はありません。そのため、比較的、低コストで利用できます。
従業員は、業務中、業務用もしくは私用スマートフォンを携帯していることが多いでしょう。IP無線機を導入する場合、スマートフォンと2台持ちになり、ポケットなどに両方を入れるとかさばります。また機器が重く、業務がしづらくなることもあるでしょう。
その点、IP無線アプリは、スマートフォンにインストールすれば使えるため、2台持ちの必要がなくなります。
IP無線アプリは機能などが日々アップデートされ、アプリを更新することでアップデート内容が簡単に反映され、利用者の利便性・業務効率が高まります。一方、IP無線機の場合は、同じ機能だけを長期間使い続けることになります。
IP無線アプリを導入する際には、次のポイントを押さえて導入することで、
より良い導入効果につながるでしょう。
IP無線アプリの導入前に、何のために導入するのかを明確にしましょう。「従来の無線機からの代替」だったとしても、「スタッフ同士の連携を強化したい」「連絡遅れやミスコミュニケーションをなくしたい」「複数人の同時通話は継続したい」「災害時の備えとして」「タクシー・バスなどで移動中に利用したい」などさまざまな課題や目標に紐付く目的をしっかりと定めましょう。
これにより、自ずと必要な機能が見えてきて、サービス選定の手助けになりますし、導入することが目的ではなく、目的を達成するための手段としての導入が可能になるでしょう。
どのような選択肢にも必ずメリットとデメリットがあります。IP無線アプリのメリットとデメリットをしっかりと把握して、目的が達成できるか、大きな支障が起きないかをあらかじめ吟味しましょう。
メリットは先述の通り、既存のスマホがあれば機器代が抑えられる、2台持ちする必要がない、アップデートが継続的にされる点のほか、通信範囲が広い、複数人同時通話が可能、災害時にもつながりやすいといった点が挙げられます。
一方、デメリットとしてデータ通信料が発生する、インターネットの通信障害の影響を受ける可能性がある、スマホのバッテリー消費に注意する必要があることなどが挙げられます。
IP無線アプリのサービス提供会社によっては、無料トライアルを用意していることもあります。ぜひ用意している会社を選び、利用しましょう。音質や操作性、コストパフォーマンスなどの検証をしながら、目的を達成できそうかという視点で確かめるのをおすすめします。
IP無線アプリによっては文字起こし機能や映像配信などの他の便利な機能が付随することがあります。文字起こし機能とは、音声通話でしゃべった言葉を即座に文字起こしが自動的に行われ、チャット画面に表示される機能です。聞き逃しや覚えておきたい事項、改めて確認したいことがあった場合に、相手に同じ内容をしゃべってもらうよりもチャット画面を確認することで効率化します。
映像配信機能とは、ライブ配信で現場の様子をカメラで映して音声と共に配信できる機能です。例えば、現場でトラブルが生じたときに本部にいる管理者に状況を伝えるときも音声だけでなく現場の様子を映像で伝えれば、伝わりやすくなります。
これらの機能の有無は、業務効率や緊急時に有効活用する上で意外と重要であるため、ぜひ検討してみてください。
IP無線は、免許や資格の申請は一切不要な無線であるため、導入後、すぐに誰でも利用開始できるのが特長です。
従来の無線機のように免許申請の手間やコストが削減できるのもメリットといえます。
IP無線アプリであれば、よりコストを抑えながら導入・利用が可能です。
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