会社の中でデスクを使用して仕事する場合、従来では自分の席が用意されており、席で仕事をするのが一般的でした。ただし、最近では特定の席が用意されておらず、自分で好きな席を選んで仕事するフリーアドレスを採用する企業が増えています。
では、フリーアドレスにはどのような特徴があるのでしょうか。この記事では、フリーアドレスの概要やメリット・デメリット、課題などを紹介します。
目次
フリーアドレスとは、会社のオフィスで働く際に指定された席が設定されず、自分の好きな場所で働くことができるワークスタイルのことを指します。フリーアドレスは英語表記であるため、海外で発生した文化と思われがちですが、実は日本で誕生した文化です。
歴史を紐解くと、1987年に清水建設株式会社が試験的に導入したのが始まりとなります。その後、1990年代には多くの企業が採用し、日本では徐々にではあるものの定着し始めています。
そして、2000年代に入ると新しいフリーアドレスのスタイルが登場したことにより、さらなる進化を遂げています。
フリーアドレスと同じ考え方として、ABW(Activity Based Working)があります。ABWとは、仕事の内容や気分に合わせて、働く場所や時間について自由に選択可能な働き方のことです。
ABWは、もともとオランダが発祥のワークスタイルと言われており、日本でも徐々に普及し始めています。イメージとしては、フリーアドレスよりもさらに自由度の高い働き方であるといえます。
ABWはフリーアドレスの発展形であると解説しましたが、両者の具体的な違いとしては仕事をする場所だけでなくて、時間までも自分の裁量でおこなえる点です。日本では、フレックスタイム制の導入によって自分の裁量で出社時間と退社時間を決定することができる会社があります。
ABWの場合、フレックスタイム制と同じように自分の裁量で時間を決定できるだけでなく、フレックスタイム制のようにコアタイムが設定されていないため、完全自由に働けるのです。また、ABWの場合は働く場所についても必ずしも会社のオフィスに限定されません。
フリーアドレスは、あくまでも会社のオフィス内での勤務に限定されますが、ABWの場合は外出先のカフェなどのスペースで仕事することも可能です。これにより、より自由な働き方を実現できるのが特徴的です。
企業によるフリーアドレス採用が増加している背景として、主に以下3つが挙げられます。
各背景について、詳しく解説します。
1990年代は、インターネットが普及し始めたものの、利用している会社が少ない時代でした。また、PCについてはデスクトップが主流であり、サイズも現在と比較すると大きな筐体だったのです。さらに、携帯電話が普及していなかったため自席に固定電話が設置されているのが当たり前でした。
ただし、現在では容易に持ち運び可能なノートPCを使用して、ネットワーク環境はWi-Fi™️によって無線で通信できるようになりました。
フリーアドレスを導入したくてもできなかった会社にとって、働く環境が大きく変化したことにより、導入するためのハードルが下がった結果採用が増えているという実情があります。
フリーアドレスの普及の要因として、先に紹介したとおりICT(情報通信技術)の劇的な進化が挙げられます。これにより、フリーアドレスに求められる内容も徐々に変化しているのです。
1980年代に登場したフリーアドレスは、主な目的としてはオフィススペースの有効活用でした。具体的には、ほぼ外出して社内に滞在しない営業スタッフに対して個別に席を設定すると無駄なスペースとなるため、フリーアドレスを導入した経緯があります。
2020年代になり、新型コロナウイルスの流行に伴いフリースペースに対して注目が集まりました。また、従来のフリーアドレスの目的にプラスして、三密を避けることができるなどの理由もあり、フリーアドレス2.0として再び注目が集まっているのです。
フリーアドレス普及の背景として、働き方改革の推進も大きな要因となっています。働き方改革では、必ずしもオフィスで仕事をするというわけでなく、リモートワークを採用して自宅で働くスタイルを取り入れる会社が増えています。
リモートワークは、実は新型コロナウイルス対策としてだけでなく、元々は働き方改革の1つの施策として誕生しました。リモートワークによって、必ずしもオフィスで仕事する必要がなくなったことから、人数の変化に柔軟に対応できるフリースペースに対して注目が集まっているのです。
フリーアドレスを導入することによるメリットとデメリットを正しく理解することが重要です。それぞれ以下の点が挙げられます。
フリーアドレスを導入する最大のメリットは、無駄なスペースを削減できる点にあります。先に紹介したとおり、外出して仕事をする機会が多い営業職などの場合、固定席を設けずフリースペースにすれば無駄のない空間を構築できます。
またフリーアドレスを導入すれば、今まで得られなかった仕事の効果を得られる可能性が生まれます。たとえば、従来のように固定席で仕事をする場合、基本的には同じ部署の人が固まって仕事をする形が取られていました。
フリーアドレスの場合、所属する部署に関係なく同じプロジェクトのメンバー同士が集結して仕事をしやすくなります。また、普段交流しない社員同士がコラボレーションの形で仕事することで、新たなアイデアを生み出すチャンスも生まれるのです。
ほかにも、社員の自立性を養うきっかけにもなるなどのメリットがあります。
フリーアドレスのデメリットとして、社員への負担増加につながる可能性がある点が挙げられます。例えば、固定席の場合は翌日の仕事も同じ席でおこなうため、基本的にPCなどはそのまま設置して置いても問題ありません。
一方で、フリーアドレスの場合は毎日利用する席が変わる可能性があるため、毎日席を片付けてから帰宅しなければならない手間がかかります。また、フリーアドレスを導入する場合は初期投資がかかる場合があります。
Wi-Fi™ 網の整備や社員同士のコミュニケーションツール、そして座席予約システムなどのコストが必要になるため、注意が必要です。ほかにも、仲が良い社員同士が集まって仕事することで、話に夢中になって能率が落ちたり、周囲が騒がしくなることでストレスを感じやすくなったりするなどのデメリットもあります。
フリーアドレスの導入を検討すべき企業の特徴として、以下のような点が挙げられます。
各特徴について、詳しく解説します。
フリーアドレスを実施することにより、従来の固定席の場合と違い接点がない社員と関わる機会を得られます。これにより、コミュニケーションをとり新しいアイデアにつながる可能性があるのです。
仕事をスムーズに進める上でも、コミュニケーションは欠かせないものです。そこで、コミュニケーションの活性化に課題がある場合は、フリーアドレスを導入した方がよい場合があります。
働き方改革が進む中で、より自由に働くことができるABWの導入を検討している会社があります。ただし、いきなりABWを導入しようとしても、なかなか難しいものです。
そこで、ABWを意識した働き方を定着させたいと考えている会社の場合、はじめにフリーアドレスを導入して、定着した段階で次のステップとしてABWを導入する流れで進めるのがおすすめです。
特に、リモートワークを導入した会社にとって、社員が出社せずオフィスが閑散となるケースが多く見られます。そこで、フリーアドレスによって席数を減らすことで、スペースの効率化を図れます。
これにより、場合によってはより小さなオフィスに借り直すなどによって、コストダウンを図ることが可能であり、フリーアドレスをぜひ検討したいものです。
フリーアドレスを導入するにあたって、課題が発生する可能性があります。特に、以下のような課題が発生するおそれがあります。
各課題の詳細は、以下のとおりです。
会社の中で固定席を採用している場合、基本的には同じ部署の社員が席を隣同士にして仕事をすることになります。これにより、仕事に対する指示などをスムーズに行いやすくなる点がメリットです。
一方で、フリーアドレスの場合は完全フリーアドレスと呼ばれる、全社員がフリーアドレスで仕事するスタイルを採用すると、マネジメント層としては部下がどこにいるのかを把握するのが難しくなります。これにより、マネジメントの難易度が高くなってしまうおそれがあるのです。
社員によっては、固定席が用意されているということは既得権を与えられていると感じる場合があります。これが、フリーアドレス化することで既得権をはく奪されたと感じて、モチベーションの低下を招くリスクがあるのです。
また、フリーアドレスを導入することで成果を上げることができる社員がいると同時に、うまく適用できずに成果を上げられずにモチベーション低下につながる場合もあります。
フリーアドレスの導入によって、所属が違う社員同士が仕事をおこなうことで、新しいアイデアを生み出せるなどのメリットがあります。一方で、部署やチームに対する帰属意識が薄れてしまうことが懸念されるのです。
場合によっては、一日の間でほぼ上司と部下とのコミュニケーションを取らないケースも考えられ、意思統一を阻害する要因になるリスクがあります。
フリーアドレスを導入した場合でも、結果として同じ部署のメンバーが隣り合って仕事することになってしまう問題も生じがちです。これは、特にフリーアドレスに向いていない業種の会社において発生する機会が多いです。
フリーアドレスを導入することで、毎日荷物を運搬したり管理したりしなければならない問題が生じます。ノートパソコンだけ移動させれば仕事できるような業種であれば問題ありませんが、その場合でも使用しているノートパソコンのメーカーがばらばらの場合はACアダプターを共有化できずに自分で持ち歩かなければなりません。
ほかにも、文房具などを利用したい社員の場合、毎日の片付け作業はとても大変です。さらに、書類の持ち運びが頻繁になることで、紛失するリスクも高まります。
フリーアドレス導入を成功させるためには、以下のようなポイントを意識してください。
各ポイントについて、詳しく解説します。
フリーアドレスを漠然と導入しても、社員が目的を理解して狙い通りの行動をとってくれるとは限りません。また、フリーアドレス化することで仲が良い社員同士が席を近づけて仕事することで、能率が落ちる弊害も生まれがちです。
そこで、フリーアドレスの運用ルールを作成して、社員に浸透させることが重要です。代表的なルールとしては、以下のようなものを作成してください。
単純にマニュアルを作るだけでなく、なぜそのようなルールが必要となるのかについて周知することが重要です。
フリーアドレスを導入して、ルールを制定するだけでなく、実際の運用状況を確認する作業も重要です。特に、社員のモチベーション低下につながらないように、満足度などを確認する必要があります。
もし、社員が不満に感じていることがあれば、可能な限り改善を図ることで社員としてもフリーアドレスに理解を示し協力してもらえるようになります。
フリーアドレスの運用で問題となるのが、利用する席です。自分が利用したいと考えている席があっても、実際に訪問したらすでにほかの社員が使用していたというケースが多いです。
そこで、座席管理システムなどの導入により、リアルタイムで座席の空き状況をチェックしたり、事前予約したりできる仕組みを導入することが重要となります。また、居場所を確認したり社員同士が対面でなくてもコミュニケーションを取りやすいツールの導入などをおこなってください。
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フリーアドレスは、特に新型コロナウイルスの流行に伴い、さらに導入する会社が増えています。フリーアドレスの導入によって無駄なスペースを削減できるメリットがある一方で、目的を正しく理解されないと弊害を生む可能性があります。
今回紹介した内容に注意しながら、自社にとって有益となるフリーアドレスを導入してください。
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