ケース1
「工場敷地内の安全管理にドローンを活用」(製造業)
日本企業がドローンに注目しはじめた2018年、製造業のA社は工場敷地内の安全管理や点検にドローン利用を開始した。
導入当初は外部委託のため、希望時にすぐに利用できないという制約があった。その後、社員のドローン操縦を会社が許可し、社内でのドローン運用の検討を開始。最初に「初級ライセンス取得コース」(JUIDA)を受講して、業務で安全に運航できる感触を得てドローンチームを設立した。
当初3名の社員で開始した社内でのドローン運用は、現在10名体制へと拡大し、中型ドローンの導入検討にも着手。各種の講座を受講しながら着実にスキルアップしている。技術力の向上に伴い、ドローンの社内運用規範のテキスト化を実施し、当初目標の敷地内の安全管理も行っている。さらにドローンによる点検をめざしており、今後もドローン活用の業務を増やしていきたいと考えている。
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ケース2
「不法投棄対策へのドローン導入」(地方自治体・産業廃棄物課)
年々増加する不法投棄に頭を悩ませていたB市の産業廃棄物課は、打開策の一助にドローン活用の検証と運用の内製化に踏み切った。
・検証1:上空からの不法投棄物の監視
ドローンによる上空からの不法投棄物の監視を実施した。その結果、従来の目視で見ることができない現場の状況を一望することができ、調査時間の短縮につながった。
・検証2:測量の観点から投棄物の量を監視
ドローンで空撮した撮影画像をもとに土量計算を行い、不法投棄物の体積量の変化を監視。専門資格がなくても実施できるため、ドローン利用の大きなメリットがあった。
・ドローン内製化の導入
操縦未経験の職員5名に対して、述べ7日間の講習を実施して一定の練度に達したため、内部運用が可能になった。今後は部署内でさらに操縦者を増やし、ドローンによる効率的な管理体制を作りたい。同時に、データ管理、共有などの仕組みも作り、他機関との連携を図っていきたい。
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ケース3
高所の点検(屋外)&プラットフォーム
工場管理にドローンを導入したいという要望が増えている。「高所などを、足場無しに点検したい」「足場を組んで本格的に点検するまでに、1次スクリーニングとして活用したい」などといった作業の効率化が目的だ。
B工場からの依頼は、「①高所のメータを読みたい。下からは見えにくい破損箇所を発見したい」「②さらにそのデータを管理するプラットホームを作ってほしい」というもので、できるだけ内製化したいという意向だった。B工場はドローンの経験が全くなかったので、まずは実証実験を行い、本当にドローンが有効かどうかを検討した。
①高所の確認作業
工場環境は建物や器材が密集していて、高所のメーターにドローンが近づくことが非常に難しかったため、遠くの安全な場所から最大200倍ズームの機能を持つカメラ(ZenmuseH20)をドローンに搭載して撮影した。こうした対策により、ドローンが万が一落下しても建物に与えるリスクを軽減した。
②データ管理のプラットフォーム化
撮影した写真がどの場所のものか、一目瞭然でわかるプラットフォームにしたい。それには、工場全体の3Dモデルを作り、撮影したデータを撮影箇所にひもづけて管理する方法を提案した。このように視覚化することで、直感的にデータ管理ができ、非常に扱いやすくなることが分かった。
B社は実証実験の結果、ドローンの導入が人的、時間的な作業の効率化、作業員の安全確保に非常に有効と判断し、高所の撮影データ取得は内製化し、データ管理のプラットフォームに使う建物の3Dモデルは専門家に任せたいと考えており、継続してプロジェクトを進めることになった。
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ケース4
砕石などの体積計算
プラントC社からの相談は、「砕石の土量計算をドローンでできないか。以前ドローンで土量計算を行ったが、うまくいかなかったが、他に何か方法はないか」というものだ。
ドローン撮影による土量計算では、撮影した写真をつなぎ合わせるSfMという手法を使って3Dモデルを作り、体積を計算することが多い。しかし砕石など表面に変化が乏しい場合は、画面上で差異を見つけられないため、この方法では難しい。そこで、レーザーを使った計測を提案した。従来のレーザー計測器は大変高価だったが、M300RTKに搭載できるZenmuse L1カメラは10分の1程度の価格で、人的コストも3分の2程度で計測できる。しかも、誤差は数センチという高精度だ。このカメラをドローンで自動航行させ、取得したデータをアプリに入れるだけで土量を測ることができた。プラントC社は、この方法による土量計算が精度面とコスト面で導入可能と判断し、内製化を最終目標として準備している。
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ケース5
太陽光パネル発電の管理
近年は脱炭素の影響もあり、太陽光パネル発電がますます注目されている。企業が大型工場の敷地内や工場の屋上に設置するケースも増え、これらの維持管理の方法として、ドローンの可視光カメラや赤外線カメラを活用する動きが広がっている。
ドローンでの活用方法は次の通りである。
可視光カメラ:
パネルの破損や架台の劣化の発見。パネル上の状態観察(鳥の糞、雑草、倒木、積雪など)
赤外線カメラ:
パネル表面の温度変化を検知しホットスポットを発見
D社は、これらの点検の内製化を考え、実証実験を依頼してきた。内製化のメリットは、パネルの不良箇所を早期発見して発電ロスを減らすことや、パネルの異常発熱による火災への予防などがあり、さまざま場面で有効である。また、点検の記録を残すことで、先の不具合を予測できるメリットもある。
D社の実証実験で使用した機体は、内製化が可能なサイズで高性能な赤外線カメラが搭載された「M30T」だ。太陽光パネルの設置場所は台風が多く潮風の影響もあるので、ドローン運航時の注意点も含めて解説を行った。その後、D社はドローンによる点検が有効と結論づけ、内製化の準備を進めている(注:赤外線カメラで点検を行う場合は、赤外線の基礎知識と解析方法について、専門家からの指導を受けることを推奨)。
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ケース6
狭小空間の点検
マイクロドローンの性能が向上し、狭所・暗所での飛行に特化したモデルが出てきており、狭小空間の点検にドローンを活用する企業が増えている。特に人力での管の点検では、「狭い、汚い、暗い、危ない」といった人命に関わる大きなリスクがある。ドローンを使うことにより、点検者が安全な場所から作業できるだけでも、大きなメリットがあり、定期的な点検が行えて損傷箇所の早期発見にもつながる。また、管の中だけでなく、天井裏や、上層部のパイプの周りの点検でも、マイクロドローンは有効な手段となっている。
E社は、工場の天井裏にあるパイプの水漏れ被害を事前に防ぎたいと考えており、それにはドローンによるクラックや錆などの早期発見が有効と、実証実験を依頼してきた。実験では、モニターだけを見てマイクロドローンを操作するFPVと呼ばれる操作方法をとった(FPVは特殊な技術が必要なため、定期的な外注運営を推奨)。実証実験により天井裏の中の様子が鮮明に確認でき、クラックや錆など異常箇所の発見に非常に有効と分かった。
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ケース7
災害
災害時の支援活動では、まずは上空から被害状況をスクリーミングし、全体を把握することが有効とされている。被災地は大抵足場が悪く、現場まで近寄れない場合も多い。そのため、救援者の危険回避の意味でも、安全な場所からのドローン撮影を取り入れたい自治体が増えている。また、取得したデータを複数の場所からすぐに閲覧できるので、専門家の現地到着を待たずに、事案ごとの適切な指示が受けられる。
災害後にも、削れた斜面などの測量、道が寸断された地域へ物資の輸送など、さまざまなドローンの活用方法がある。
K市で発生した大規模な土石流災害に際して、市はすぐに調査チームを編成し、ドローンの撮影映像から精密な地図を速やかに作成した。災害対策室はこのデータを活用し、効率的な救助活動や土砂の撤去に役立てた。
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ケース8
橋梁点検
多くの老朽インフラを抱える自治体にとって、定期点検の負担は悩みの種だ。点検にかかる費用が膨らめば、補修に予算が回らないため、効率の良いスクリーミング方法が求められてきた。
そのような状況で、2019年に国土交通省が、道路橋や橋梁の定期点検要領を改定し、近接目視点検と同等の手段として「写真で点検すること」を許可した。これにより、ドローンによる点検が一気に注目され、人的、時間的なコスト削減を期待してドローンを導入する企業や自治体が増えた。
日本の橋の数は70万橋(2m以上)、その内7割以上の51万橋が市町村道である。また建設後50年経過の橋は現在約20%だが、今から10年後は約43%を超える。近年の台風や洪水の被害を考えると、市町村が担う責務は非常に大きくなっている。
L市は、地元の学校やドローンベンダーと連携パートナーを組み、ドローンを活用する橋梁点検手法の実証実験を行った。その結果、従来の手法に比べて、足場を組む必要がなく、スピーディに点検をすることができた。また取得したデータは、AIで「クラック、さび、破損」などが検知でき、数年後には100%自動化された橋梁点検が可能になると期待が寄せられている。
※記載された情報は、本稿執筆時点の情報です。
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土木や工場での活用(CPDS)、工場点検、機体登録、飛行許可申請、これからドローンを導入する方に大変役立つ内容です。過去に開催したビジネスセミナーの動画を掲載しています。