地球温暖化による影響が世界各地で顕在化する中、CO2の吸収源としてマングローブへの注目が高まっています。森林にはCO2を吸収・固定する能力がありますが、その量で比較してみると、スギ人工林が1haあたり約302tなのに対し、マングローブは799~1,283tにも及びます。常夏の東南アジアでは30~40mの大きさにまでマングローブが育ちます。木は炭素の塊ですから大きければ大きいほど、多くのCO2を吸収・固定することができます。また、マングローブは沿岸域に生息するため、広大な植林面積があります。日本にも植林可能な土地はありますが、限度があり、大規模に行うことはできません。つまり、日本よりも東南アジアで植林を行う方がCO2削減により貢献できるのです。
そしてマングローブが注目されている理由は、それだけではありません。マングローブは海と陸の間にあり、津波や高波の被害を軽減する防災機能を備えています。また、独特の形状をした根元は水辺の生物の棲み家となり、豊かな生態系を育みます。ここで育つエビや魚は、地元の人々の貴重な収入源ともなりますし、食料安全保障の観点でも重要な役割を果たします。
このように、マングローブは多くの恵みを私たちにもたらしてくれます。
世界中でマングローブは年々減少しており、特に顕著な国がインドネシアです。同国では1980~2000年の20年間で、マングローブ林の約30%の面積が減少しています。主な原因はエビの養殖。経済を支える重要な産業である一方、養殖池を開発するためにマングローブが次々と伐採されていきました。また、餌や病気予防の抗生物質等が大量に投与されるため、数年で土壌は劣化し、汚染された養殖池がそのまま放棄されるということが繰り返し行われてきたのです。
こうした環境破壊を食い止めるため、2006年より活動しているのがワイエルフォレストです。同社では、放棄された養殖池に植林をすることでマングローブの再生を目指す「シルボフィッシャリー」と呼ばれる手法を推進しています。マングローブの落ち葉が餌となるため飼料の投入が不要なこと、干潟への植林に比べて短期間で成果が確認できることなどから、持続可能な森林管理・水産養殖の手法として、地域住民にも受け入れられています。
「早ければ、半年~1年ほどで魚が、3年ほどでエビの養殖ができるようになります。リコージャパンとの協働は2020年から始まりましたが、『リコー ビンタンの森』でも魚の姿が見え始めており、地域の人たちも喜んでいます」(ワイエルフォレスト 阿久根様)
収穫された水産資源は地域の人々の収入になり、経済的な自立を支えます。マングローブの植林が地球環境保全だけでなく、人々の暮らしの豊かさにもつながっています。
▶︎ 現場で植林を実施するパートナー
リコーグループは古くから環境問題に取り組まれており、環境意識の高さは日本企業の中でもトップクラスだと思います。そのような企業と価値観を共有し、パートナーを組んで植林を進めていけるというのは、我々にとって本当に有難いことです。
現在、マングローブ林を利用したエコツーリズムのようなアイデアも地域の人々から出始めています。こうした可能性を拡げていって、活動を長期的なものにしていけたら何よりです。
▶︎ 自社でも植林活動を始めたお客様
最初は海外での植林活動は身近ではないように感じていましたが、地元の方たちとともに活動する姿や、苗木が成長していく姿を動画で紹介していただき、皆様の植林活動に対する熱意や想いに触れる中で、「私たちにもできることがある」と感じるようになりました。
当社もまずはSDGsの取り組み方針を全社員に浸透させ、地域社会との関わりや社内での改善活動など、全社一体となって取り組んでいきたいと考えています。