企業が将来にわたって事業活動を継続していくためには、社員やお客様、取引先、地域社会など、あらゆるステークホルダーとの共存共栄が不可欠となっています。
リコージャパンにおいても、社員が最大限に能力を発揮しながら自律的な成長を促す「人財開発」「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)」「健康経営」、自社の実践を通じてお客様への価値提供につなげる「社内DX」、あらゆる事業活動の基盤である「人権の尊重」、地域社会との共生を目指す「社会貢献活動」など、さまざまな分野の活動に取り組んでいます。
人財を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」の考え方が注目されています。個人が自律的に学び、成長することではたらく歓びを感じ、お客様の成長に貢献し、事業成長を実現することを人的資本経営の基本的な考え方として取り組んでいます。
デジタルサービスの会社として、価値創造の源泉は「人財」です。「社員がいきいきと誇りを持って働き、お客様から感謝される顧客価値創造企業」に向けて、経営戦略に即した戦力の最適化、事業成長につながる人的資本の強化、人的資本の基盤の強化に指標を設定して取り組んでいます。
現在、経営戦略の達成に必要な人財ポートフォリオとのギャップと各カテゴリーで設定した指標を定量的に把握しながら、積極的な投資を行ない、多様な経験と高い専門性を持つプロフェッショナル集団の形成を目指しています。
事業成長につながる人的資本の強化 | ||
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デジタル人財の育成 | 自律的な学びの促進 | “はたらく歓び”の実感 |
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人的資本の基盤の強化 | ||
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DEIの推進 | 健康経営の推進 | コンプライアンス意識の醸成 |
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2020年度から運用している「プロフェッショナル認定制度」と、2023年4月からスタートした「プロフェッショナル人事制度」を連携させ、社員の自律的成長を後押しする体制を整備してきました。知識、技能、成果に応じた8段階のプロレベル認定から自らの専門性を磨き続けることで組織職と同等の処遇を目指すことが可能です。2024年度以降は、社員一人ひとりがプロとして、より高付加価値な職務にチャレンジし、創出した成果に対し、評価や処遇に反映できるよう、両制度の連携強化を進めています。スキル習得や成果創出の見える化を行ないながら、人事諸制度のさらなる精度向上を図っていきます。
複雑で高度な課題に対応する人財を育成するため、社員が自身の成長に向かって、意欲を持って自発的に学んでいく「自律的な成長」を重視した人財開発を進めています。
リコージャパンでは、21次中経の主要戦略として、「課題創造型体質への変革に向けたデジタル人財の投資拡大」を進め、成果を発揮する卓越したプロフェッショナル集団の形成を目指しています。具体的には、「強化領域での人財育成」「人と組織の活性化」「自律的学習環境の充実」の3つの領域を重点分野として計画的な人財育成を進めています。
目標とする社員像を示し、その社員像に近づくことを目指してもらうための制度として「RICOH JAPAN AWARD」を毎年開催しています。「ストーリーの伝承」をコンセプトとして掲げており、受賞者がどのように高い成果を上げられたのか、そのストーリーを全社で共有することで、個人と組織全体のレベルアップを図っています。
社員のスキルレベルを3要素、8段階で可視化し、成長目標を明確にすることで自律的な成長を促す「プロフェッショナル認定制度」を運用しています。2023年度は、対象範囲を全社員に拡大し、職種ごとに求められる能力要件をアップデートしました。2024年度からは人事評価制度との連動性を強化するなど、より付加価値の高い活動へチャレンジできるよう枠組みを大きく変更しました。中長期の視点で人財育成に取り組む制度として継続的に適正な見直しを図っていきます。
「課題創造」とは、お客様の潜在的なニーズや課題を掘り起こし、お客様と共に解決していこうとする考え方です。課題創造の実践に向けて、仮説立案やデザイン思考を身に付けた「ビジネスプロデューサー」の育成をはじめ、業種ごとの課題解決提案力、セキュリティやネットワーク環境などの提案力を高める育成プログラムを展開しています。
社員が自律的にキャリアを考え、エンプロイアビリティ注1を高めることで自己実現と組織力の向上につなげていくことを目指しています。具体的には、自律的なキャリア開発支援環境の整備や上司の支援力強化などがあります。2023年度はプロ人事制度開始に伴い、管理職一歩手前の社員向けに新たなキャリアパス研修を実施しました。また、全組織長対象のキャリアマネジメントセミナーを定期開催し、キャリア意識の醸成に努めています。さらに、社員一人ひとりに向き合うためのキャリア相談体制も常設しています。こうした取り組みを通じて、社員と組織双方の成長を促進し、“はたらくことの歓び”につながることを期待しています。
社員の自律的成長を支援するため、さまざまな学びの機会を提供しています。2023年4月からは、最新のデジタル技術を活用した新しい学習プラットフォーム「リコージャパンデジタルアカデミー」をスタートさせました。デジタル人財として必要なスキルアップコンテンツや、創造性や問題解決能力を育成するためのプログラムなど、3,400本超えのコンテンツを用意しています。また、資格取得を目指した勉強会など、社員間のコミュニティづくりにも利用することが可能です。今後は、大学や大学院など教育機関との連携も予定しており、さらに充実を図っていく予定です。
「リコージャパンデジタルアカデミー」では、社員一人ひとりの学習効率を高め、業務との結びつきを深められるよう将来に向けたダッシュボードの設置を進めています。「個人ダッシュボード」は自分に最適な学習内容がリストアップされる仕組みとなっており、上司は「メンバー進捗ダッシュボード」で学習進捗を把握して指導がしやすい仕組みになっています。
今後は、推進事務局での管理や経営判断に用いるようなダッシュボードの設置を計画しています。「推進事務局管理ボード」や「経営戦略ダッシュボード」により、一人ひとりの成長が組織の発展へと結びつくような仕組みを目指しています。
実力を高めるとともに視野を広く持って活躍できる社員を育成するため、部署間を横断して経験を積むことのできる育成プログラムを用意しています。例えば、プロレベル1以上の若手社員を対象に、半期に5日間以内での体験を行なう「若年層社員他職種体験」や、CE(カスタマーエンジニア)を対象に、要件定義から、テスト計画・実施、リリースまでのSE(システムエンジニア)構築フェーズを案件ベースで学べる「SE留学制度」、業種ごとのスペシャリスト育成を目的とした「短期・長期の留学制度」などがあります。
CE(カスタマーエンジニア)としてキャリアを重ねる中で、中長期にわたる高度なICT領域の案件にも対応できる技術的知見、およびプロジェクトマネジメント力を身に付けたいと感じていました。そうした中、上司から「SE(システムエンジニア)留学制度」を紹介していただき、エントリーすることにしました。
留学先はデジタルサービス技術本部で、ここはSEの精鋭部隊が集まる部署です。私は約5ヵ月間、複数の案件に参画しながら、SEが実践しているITシステム構築技術について学びました。SEの現場ではQMS注1に基づく品質保証の仕組みが根付いており、CEとしての品質向上に向けた取り組みのヒントにもなりました。今後は、留学制度で得た経験を自部門のメンバーにも伝えていきたいと思います。
デジタルサービス営業本部 東京支社
東京第一ネットワークS&S部 ソリューション技術グループ
外山 泰樹
リコージャパンでは毎年、社員のエンゲージメントの状況や要因を把握および分析し、結果から得られる課題に対峙することで企業価値の向上につなげています。調査では約60の設問からなるアンケートをとり、「エンゲージメントスコア」を算出。風通しのよい職場づくりを通じて、これを高めていくことを目標としています。今後、人的資本経営を推進していくにあたり、社員の自律的成長の度合いやキャリア形成の充実度を測る指標として、スコアを活用していきます。
お客様にデジタルを活用したトランスフォーメーション(変革)を提案するためには、まず自らが仕事のデジタル化にチャレンジしなければなりません。リコージャパンはDXのロールモデルとなるべく、さまざまな社内実践に取り組んでいます。
リコージャパンでは、「社内DXの加速」と、それを基盤とした「お客様へのDX価値提供」を全社横断で推進する社長直轄の組織として「DX委員会」を設置しています。本委員会は、経営企画本部長が委員長を務め、IT部門やソリューション事業部門など各部門の責任者が参加して、DXに関する全社活動方針や中長期のシステム化ロードマップについて議論を重ねています。
2023年度は、中長期のシステム化ロードマップのもと、「顧客接点プロセス」「業務プロセス」「日常の働く環境」の3つの領域で社内DXに取り組んできました。「顧客接点プロセス」では、職種間でバラバラだった顧客フロントシステムをMicrosoft Dynamics 365をベースとした共通システムに統一。カスタマーサクセスの実現に向けた営業プロセス改革を加速するとともに、AIなど最新のデジタル技術を活用した組織生産性の向上に取り組んでいます。「業務プロセス」では、お客様やパートナーとの契約や請求の電子化を推進。業務そのものをデジタル化することで、お客様の業務改善にもつながっています。「日常の働く環境」では、最新スペックPCやモバイルの導入を進め、社員が働きやすい環境を構築するとともに、BIツールによるデータ活用などITリテラシーを高める人財教育の充実化を図っています。これらはすべて、お客様に対し、より多くの価値を提供するための取り組みです。「お客様のDXを支援するデジタルサービス会社への変革」に向けて、今後もさまざまな取り組みを行なっていきます。
リコージャパンでは年に一度、全社表彰制度「RICOH JAPAN AWARD」を実施しています。その中で、デジタルを活用した社内プロセスの変革活動を評価する「社内プロセスDX賞」を設けており、2023年度も多くのプロジェクトの応募がありました。本プロジェクトは、2023年における「電子帳簿保存法(電帳法)」と「インボイス制度」の二大法改正に対応したもので、ソリューションの活用によって業務プロセスを改革し、増加する事務処理の負担を軽減することを目的としたものです。
法改正に準拠した書面であるかのチェックや取引先への通知などの業務を担うのは派遣スタッフや若手スタッフの皆さんが多く、作業の難易度を上げないということも重要なポイント。本プロジェクトでは、「RICOH受領請求書サービス+PFUスキャナ」を活用した高精度の読み取り技術により、インボイスの記載項目の確認を目視チェックから自動チェックへと切り替え、1件あたりの所要時間を3分から1分へと短縮することに成功しました。改正電帳法に準拠した電子保存では、OCRの活用によりリネーム作業が不要なデータ保存を実現し、検索性も向上しました。
この社内実践ノウハウはお客様にもご紹介し、2023年8月以降で早くも17社に導入いただくことが決定しました。今後もDXの社内実践を通じて、お客様へ新たな価値をお届けしていきます。
リコージャパンは、国籍、性別、年齢、障がいの有無、感性、価値観などのあらゆる「違い」を尊重するとともに、成果や貢献に応じた公平な評価に努め、会社と社員が共に成長していける組織づくりを進めています。
これまでリコージャパンでは、社員一人ひとりが個性や能力に応じて活躍できる場を提供するため、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包括、受容)を進めてきました。今後は「エクイティ(公平性)」を取り入れ、「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン」として、さらに加速させていきます。
「エクイティ」とは、社員一人ひとりに合わせて対応を変えて公平性を追求する、という意味があります。これからも、リコージャパンは、多様な価値観を持つ“人財”が活躍できる環境を整備することで、イノベーションの創出と社員のモチベーション向上に努めます。
2023年度では、リコージャパンはリコーグループの一員として「DEIエンパワーメント月間」を設定し、社員へエクイティの考え方を周知し、世界各国のリコーグループ会社と国際女性デーに合わせたイベントを開催しました。国や地域の枠組みを超えて、世界中のすべての人々がユニークな才能、経験、知見を活かして新たなイノベ-ションを創り出していく、そういった取り組みを今後も積極的に進めていきます。
公平な評価や処遇とあわせて、個々の事業所や営業所における職場環境の改善など働きやすさ向上のためのサポートを行なっています。
社内セミナーによる育児休業制度の周知だけでなく、育児休業を取得した男性社員のロールモデル展開により、社員同士が助け合う組織風土の醸成に努めています。
2023年度の男性社員の育児休業取得率は、2022年度の96.8%から、96.5%に減少する結果となりました。
入社選考時の業務とのマッチングや、入社後の定期的なコミュニケーションにより人財の定着を図っています。
2023年度の障がい者雇用率は、2022年度の2.41%から、2.40%に減少する結果となりました。
リスキリングを実現するためのキャリア研修や、定年後の働き方を支援するマッチング制度を設けています。
リアルとリモートワークのハイブリッドな勤務形態で、一人ひとりにあったワークスタイルを実現しています。
妻の妊娠を機に、キャリア採用としてリコージャパンに入社しました。入社を決意したのは、仕事内容はもちろんですが、会社をあげて仕事と育児の両立を支援していることを知ったからです。実際に、入社後半年しか経過していない状態でしたが、上司やグループメンバーからもサポートしていただき、育児休業を取得することができました。
育休中の目標は、「妻でないとできない家事・育児をなくすこと」。部分的に家事・育児を行なうことと一人ですべて行なうことはまったく違うことがわかり、大変な思いもありましたが、なんとか目標を達成することができました。最初は私に任せることが不安だった妻も安心して任せてくれるようになり、妻の職場に負担をかけることもなくなりました。また、ママが見えなくなると泣いていた息子も、「パパでもいい!」と言ってくれるようになりました。
そしてもう一つ、私自身、後押ししてくれた会社の皆さんに恩返ししたいという思いが強くなりました。育児休業の経験を通して、人間的にも成長することができたと感じています。
デジタルサービス営業本部 マーケティングセンター
インサイド推進室 インサイド企画グループ
鈴木 大紀
人権の尊重はあらゆる事業活動の基礎であり、企業が果たすべき重要な責務です。リコージャパンは、リコーグループ人権方針に基づき、事業活動に関わるすべての人々の人権を尊重した行動を実践します。
国際社会における人権課題の広範化を踏まえ、2021年4月に「リコーグループ人権方針」を定めました。本方針は、人権侵害の防止を目的としてリコーグループ内の人権に関わるすべての規定の上位に位置づけられ、グループ全役員および全社員に適用されます。
また、すべてのサプライヤーおよびパートナーにも、本方針の支持と実践をいただけるよう努めていきます。
1.本方針の位置づけと適用範囲
2.国際規範への準拠
3.ステークホルダーの人権尊重
4.人権デュー・ディリジェンス
5.救済措置
6.教育・研修
7.対話
8.透明性
リコーグループは、ビジネスを通じた人権への負の影響評価を通じて、リコーグループのビジネスに関わるすべてのステークホルダーにおける顕著な人権課題の特定を行なっています。リコージャパンは2023年度より人権課題の改善をサステナビリティ目標の一つに設定、リコーグループ非生産拠点共通の自己評価アンケートを用いて、人権影響評価を行ない、顕著な人権課題を特定しました。
特定された顕著な人権課題について、負の影響の防止および軽減措置を講じて是正していきます。例えば、サプライヤーやパートナーとの新規契約時に人権リスクを評価する仕組みや、取引継続において妥当性について確認する仕組みを作ることで発生リスクの低減につなげます。体制としては、ESGセンターが主管し、負の影響の防止および軽減への取り組みを関連部門と連携しながら推進していきます。
2023年度の人権への影響評価の結果、リスクアセスメントスコアは91点でした。2024年度は負の影響の防止および軽減策を実施したのち、再度アセスメントを行なうことで、是正措置の有効性を評価し、95点以上となることを目標としています。
顕著な 人権課題 |
想定される負の影響例 | 負の影響を受けるステークホルダー | |||
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社員 | サプライヤー パートナー |
地域社会の 人々 |
お客様 | ||
差別・ハラスメント | ・広告における差別的表現 ・男女間賃金格差 ・多様性とマイノリティーに対する配慮不足(セクハラ、パワハラ、マタハラ、パタハラ、介護ハラスメントなど) ・求職者への差別 |
有 | 有 | 有 | 有 |
サプライチェーン上の人権問題 | ・サプライチェーン上で、人権侵害が発生する ・サプライチェーン上の人権侵害行為への直接的および間接的関与 |
有 | 有 | 有 | 有 |
「社員の心身の健康」が会社の発展の基盤であり、一人ひとりが生涯にわたって幸福であり続けるための基盤でもあるという考え方に基づき、誰もが安心していきいきと働き続けることができる職場環境づくりを進めています。
リコージャパンでは、健康経営によって実現したいことを見える化した「健康経営戦略マップ」を策定し、取り組みを推進しています。健康関連の目標としては、アブセンティーズム注1の低減、プレゼンティーズム注2の低減、ワークエンゲージメントの向上を掲げ、がん予防、メンタル疾患の未然防止、肥満防止、女性特有の不調改善などにアプローチしています。
健康経営で解決したい経営課題、社員の健康問題、解決のための施策の3つを見える化した「健康経営戦略マップ」に基づき、施策を推進しています。
定期健康診断では、がんの早期発見と生活習慣病の診断メニューを組み込み、再検査を促すなど重篤な疾病を未然に防ぐことに努めています。
年1回のストレスチェック分析結果をもとに、マネージャーを対象にした産業医によるラインケア研修を実施し、不調の早期発見に努めています。
社員の自立的な行動を促すため、ウォーキングや運動習慣などをテーマとしたユニークな施策を展開。2023年度は約5,800名の社員が参加しました。
オンラインの禁煙者コミュニティ「禁煙を目指すプログラム」の展開などにより、喫煙率は9年間で13.4ポイント減少し、24.3%まで低下しています。
経済産業省と日本健康会議が主催する「健康経営優良法人」に7年連続で認定されました。今後も実効性のある健康経営を実践していきます。
厚生労働省が推進する「がん対策推進企業アクション」において「令和5年度がん対策推進優良企業」に選出されました。リコージャパンでは健康経営施策の一つとして、定期健診の診断項目として「がん」のリスク回避に特化した独自の診断項目を組み込んでいること、さらに診断結果にリスクがあった場合に、リスクに応じたきめ細やかなフォロー体制を構築していることなどが評価されました。
「がん対策推進企業アクション」は、企業が率先してがん検診受診の大切さを呼びかけることにより、がん検診受診率50%以上の目標を達成できるようにサポートする国家プロジェクトであり、リコージャパンは2010年に推進パートナー企業として登録しています。
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