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リコー 教えて電子帳簿保存法
コラム 21

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コラム

電子帳簿保存法令和5年度改正では、
やはり電子取引保存は義務であり未対応は後悔につながる?

令和5年6月30日に国税庁のホームページにて、令和5年度改正内容が反映された電子帳簿保存法取り扱い通達一問一答が公開されました。令和4年12月の政府税制改正大綱で発表された変更内容は、令和5年3月末に電子帳簿保存法施行規則の改正をもって法令整備が整い、詳細な運用方法に関して今回の趣旨説明および一問一答の公開を待つところでした。
今回の主な変更点や注意事項に関して解説します。
最近、電子帳簿保存法対応は対応しなくても良いという楽観的な税理士の方のアドバイスが見受けられますが、この内容をよく読んで、後の税務調査時に法令違反を指摘されないように自社対応の方針を決定したほうが良いでしょう。

画像:電子帳簿保存法令和5年度改正では、やはり電子取引保存は義務であり未対応は後悔につながる?

令和5年度電子帳簿保存法変更の概要は令和5年4月13日に公開された国税庁のパンフレット「電子帳簿保存法の内容が改正されました」に以下のように記載されています。

電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~
(令和5年4月)(PDF/521KB)

●帳簿保存制度の変更内容

(令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用)

(1)優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の対象となる帳簿の範囲がすべての青色関係帳簿から見直され限定されました。

●スキャナ保存制度の変更内容

(令和6年1月1日以後にスキャナ保存が行われる国税関係書類について適用)

(1) 解像度・階調・大きさに関する情報の保存が不要とされました。
国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度・階調・大きさに関する情報の保存を必要とする要件が廃止され、これらの情報を保存しておくことは不要となりましたが、スキャナで読み取る際に守らなければならない解像度(200dpi以上)や階調(原則としてカラー画像)などの要件自体に変更はありません。

(2) 入力者等情報の確認要件が不要とされました。
スキャナ保存時に記録事項の入力を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認できるようにしておくことを求める要件が廃止されました。

(3) 帳簿との相互関連性の確保が必要な書類が重要書類に限定されました。
スキャナで読み取った際に、帳簿と相互にその関連性を確認できるようにしておく必要がある国税関係書類が、「重要書類(契約書・領収書・送り状・納品書等のように、資金や物の流れに直結・連動する書類)」に限定されることとなりました。

●電子取引保存制度

(令和6年1月1日以後にやり取りする電子取引データについて適用)

(1) 検索機能の全てを不要とする措置の対象者が見直されました。税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)」に応じることができるようにしている場合に検索機能の全てを不要とする措置について、以下のとおり対象者が見直されました。
イ 検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000万円以下」の保存義務者から「5,000万円以下」の保存義務者に拡大されました。
ロ 対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加されました。

(2) 令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、適用期限(令和5年12月31日)をもって廃止されます。

(3) 新たな猶予措置が整備されました。次のイ・ロの要件をいずれも満たしている場合には、改ざん防止や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができることとされました。
イ 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
ロ 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引

宥恕措置では、電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じる必要はありませんでしたが、新たな猶予措置では、プリントアウトした書面の提示・提出の求めに加え、電子取引データについても「ダウンロードの求め」にも応じる必要がありますので、ご注意ください。

さて、6月30日に公開された、電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)(令和5年6月23日現在)には変更箇所の下線表記がないため、今回の主な変更部分を説明します。

電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)(令和5年6月23日現在)(PDF/907KB)

4-10 範囲を指定して条件を設定することの意義

基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしているときには、全ての検索機能の確保の要件が不要なる。とされ、従来の1000万円以下より条件が緩和されています。

4-14 電磁的記録の提示又は提出の要求に応じる場合の意義

ダウンロードの求めに関する要件は、保存義務者において検索機能の確保の要件等に対応することが困難な場合であっても、保存すべき電磁的記録を複製した写しとしての電磁的記録が税務当局に提出されれば、税務当局の設備等を用いて検索等を行うことができることを踏まえて設けられたものであり、保存している電磁的記録を出力した書面を提示又は提出したり、電磁的記録を出力したディスプレイの画面を提示したりしたとしても、ここでいうダウンロードの求めに応じたこととはならないと念押しされています。

4-19 一の入力単位の意義

複数枚の国税関係書類を台紙に貼付してスキャニングした場合、検索機能によりそれぞれの国税関係書類ごとに適切に検索できる必要があり、加えて、重要書類である場合にあっては、その国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項と関連する帳簿の記録事項との関連性が明らかにされる必要があることに留意すると念押しされています。

4-27 帳簿書類間の関連性の確保の方法

4-28 関連する国税関係帳簿

国税関係帳簿との間の相互関連性の確保が法令上必要とされている重要書類については、直接帳簿との関連性を持たないものと考えられるような重要書類を含め、原則として全ての重要書類について紙で重要書類を保管している場合と同様な方法などによって、関連性を確認することができるようにしなければならない。令和5年12月31日以前に保存が行われる国税関係書類のスキャナ保存については、一般書類に係る記録事項についても、国税関係帳簿との関連性を確認することができるようにしておくことが要件とされていることに留意すると念押しされています。

4-30 スキャナ保存の検索機能における記録項目

取引年月日その他の日付 国税関係書類に記載すべき日付をいう。
なお、「取引年月日その他の日付」は、基本的には国税関係書類の授受の基となる取引が行われた年月日を指すが、当該国税関係書類を授受した時点でその発行又は受領の年月日として記載又は記録されている年月日を記録項目として用いても差し支えないとされています。

7-3 取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものの意義

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たっては、検索機能を確保することが要件として規定されており、「取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたもの」の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしている場合であって、電磁的記録の提示等の要求に応じることができるようにしているときには、当該検索機能の要件に代えることができることとされています。
「取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたもの」とは、次に掲げるいずれかの方法により、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力することにより作成した書面が課税期間ごとに日付及び取引先について規則性を持って整理されているものとされています。
① 課税期間ごとに、取引年月日その他の日付の順にまとめた上で、取引先ごとに整理する方法
② 課税期間ごとに、取引先ごとにまとめた上で、取引年月日その他の日付の順に整理する方法
③ 書類の種類ごとに、①又は②と同様の方法により整理する方法
なお、上記のように整理された出力書面を基に、保存する電磁的記録の中から必要な電磁的記録を探し出せるようにしておく必要があり、かつ、探し出した電磁的記録をディスプレイの画面に速やかに出力できるようにしておく必要があることに留意すると紙での可視性の満たし方(整理方法)が例示されています。

7-12 猶予措置における「相当の理由」の意義

7-13 猶予措置適用時の取扱い

7-14 猶予措置における電磁的記録及び出力書面の提示又は提出の要求に応じる場合の意義

システム等や社内でのワークフローの整備が整っており、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存できる場合や資金繰りや人手不足等のような理由ではなく、単に経営者の信条のみに基づく理由である場合等、何ら理由なく保存要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用はないとされています。猶予措置について、出力書面の保存をもって事実上その電磁的記録の保存をしているものと取り扱うとされていた従前の宥恕措置とは異なり、その適用を受ける場合には、電磁的記録自体を保存するとともに、その電磁的記録及びそれを出力した書面について提示又は提出の求めに応じることができるようにしている必要があると猶予条件が厳しく定義されています。

同じく6月30日に公開された一問一答には変更箇所が下線表示されていますので、趣旨説明と併せて読み込むと法令内容の変更が理解できます。
特に電子取引に関しては問60~問68で、猶予に関しての厳格な考え方が記載されています。

電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/4-3.htm

●電子帳簿・電子書類関係【令和6年1月1日以後の取扱いに関するもの】

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/00023006-044_03-2.pdf

●スキャナ保存関係【令和6年1月1日以後の取扱いに関するもの】

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/00023006-044_03-4.pdf

●電子取引関係【令和6年1月1日以後の取扱いに関するもの】

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/00023006-044_03-6.pdf

※本文に掲載されている情報は、2023年7月現在のものです。

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国税庁の電子帳簿保存制度特設サイトもご活用ください
<国税庁 特設サイトへリンク>