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リコー 教えて電子帳簿保存法
コラム 28

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見積書と孤軍奮闘する経理担当者

電子帳簿保存法対応の現場をレポート!

電子帳簿保存法の現場をレポートするコラム
電子帳簿保存法の電子取引データ保存の宥恕(ゆうじょ)期間が終わり、2024年1月1日から電子取引データの保存が義務化されました。
今回は、宥恕期間終了少し前となる2024年秋、とある中小企業の経理担当の方に伺ったお話です。

「電子帳簿保存法対応へは進んでいますか?」と伺うと、その方は「経理業務は私一人で担当しているので、会計事務所さんにも教えていただき保存のシステムも入れて、なんとか間に合いそうだと思っていたのですが…」と語る。
「請求書や領収書は大丈夫です。請求書は、営業からの依頼で全て私が作っていますし、領収書もすべて私が精算業務を行うので、申請された経費の領収書も私が管理しています。だから私がちゃんと保存すれば良いのですが、問題は見積書です」
「社内のルールで、請求の際には営業から最終の見積書も添付されてくるので、これは問題ないのですが、商談途中の見積書の保存に目が行ってなかったのです」

画像:見積書と孤軍奮闘する経理担当者

確かに購買部門ならまだしも、経理部に商談中の見積書は必要ないから、気が回らないのも当然といえば当然だ。
「会計事務所からのアドバイスはなかったのですか?」
「見積書は経理では関係ないですから、会計事務所の担当の方も『あっ、そうですね』っていう反応でした」
なるほど、確かに見積書が経理に関わってくることはないので、経理部門も、会計事務所も意識していないのだろう。その一方で、電子帳簿保存法では電子取引に関わる取引情報として、見積書も含まれている。

以前は紙で発行していた見積書も、近年ではPDFで、という企業も多い。となると電子取引データとして保存対象になるのだが…。

「見積書はどう対応されるのですか?」と問うと、
「正直、正解が見えないのです。すべての見積書がPDFというわけでもなく、営業も忙しいので、紙とPDFで扱いが違うのは面倒だといいますが、確かにその通りだと思います」
「かといって、すべての見積書を送るメールにCC入れてもらえばこちらで保存できなくもないですが、取引の状況を私の方では把握しきれないので、収拾がつかなくなるのも目に見えています」と。

「営業に協力してほしいとは依頼しにくいですか?」
「そもそも、営業から見れば『なんで経理に関わることをこちらで対応しなければならないのか』と思ってしまいますよね。『とりあえず各自のPCにPDFを保存しておいてください』とお願いしています」と答えてくださった。

「クラウド型の保存サービスを使えば、経理だけでなく営業部からもPDFアップロードして保存してもらうこともできます」と案内しても「それは良さそう。ただ、営業が協力してくれるかは微妙なところです」との反応。

他の会社でも経理担当の方に伺うと、「見積書は営業がやり取りするので、全く関知してない」とか「正直、営業は協力してくれない」など消極的な反応が多く、この課題の根の深さを感じた。

一方で他の企業の方からは、こんな声もあった。「営業部門の協力は欠かせないので、社長や営業部長とも相談してトップダウンで営業部員にも協力を要請しつつシステムを入れたので、うまく回っている」、「何回かに分けて電子帳簿保存法に関する研修を行って、社内の理解を進めていった」などなど。

規模が小さいと、どうしても社内で経理担当者は一人、更に総務業務と兼務、という例も少なくない。そうなると、電子帳簿保存法対応も孤軍奮闘となりがちだ。しかし、電子帳簿保存法対応は経営にも関わる話であり、経理担当者に責任を集めてしまうのは酷というものだ。

ぜひ、経理担当者には経営層に支援を仰いでいただきたい。経営層も積極的に電子帳簿保存法対応に取り組んでいただきたいと、この話を通して強く思った。

※本内容はお客様との会話をヒントにしたフィクションです。

※本文に掲載されている情報は、2024年2月現在のものです。

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国税庁の電子帳簿保存制度特設サイトもご活用ください
<国税庁 特設サイトへリンク>