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リコー 教えて電子帳簿保存法
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電子帳簿保存法とBCP

電子帳簿保存法対応の現場をレポート!

電子帳簿保存法の現場をレポートするコラム
今回は電子帳簿保存法とBCP(事業継続計画)がテーマです。
BCPは、大規模災害など危機的事態が発生した場合に、事業を早期に復旧・継続させ、企業利益の確保を図るための事前計画です。
相次ぐ天災やコロナ禍を経て、多くの経営者がBCPを意識するようになりつつありますが、東京商工会議所が2023年に調査した結果によれば、大企業の71%がBCPを策定していると回答したのに対し、中小企業では28%に留まっています。

ところで、このBCPと電子帳簿保存法、一見つながりがないように見えます。しかし、企業のBCPを考えるうえで、電子帳簿保存法は切っても切り離せない関係にあります。なぜなら、証憑類や帳簿類の適切な電子保存がBCPに有効だからです。

画像:電子帳簿保存法とBCP

とある数人規模の会社では業界の特性もあり、いまだにファクスによる受発注が多く受信ファクスをファイリングして保存していました。
その地域は、近年の異常気象で数年に一度水害に見舞われ、1階に事務所を構えるその会社も浸水。
幸いデスク上にあったPCやNASは害を逃れたものの、書庫に保管していた書類の一部が水没。最終的に水没した書類は破棄せざるを得なかったといいます。
これをキッカケにクラウドによる書類保管のBCP対策の提案から、受信ファクスや社内の書類を紙保存と同時にスキャンしてクラウドに保存するようになりました。

それから2年後、再びその地域は水害に遭います。
前回より水位が上昇し、書庫に保管していた書類の半数は浸水。複合機や少し低いところに置いてあったNASも浸水してしまいました。
幸いNASは中のデータをクラウドに移し、既に使っていなかったのでデータが失われることはありませんでしたが、水没した複合機は修理に、そして書類はというと、「クラウドに保存してあるので、心置きなく廃棄しました」といいます。つまり、BCP対策が功を奏したわけです。

この事例では水害でしたが、地震やそれによって引き起こされる火災や津波などの被害は私たちの記憶に新しいところですし、そうでなくとも火災などはすべての地域や企業にとって同様に存在するリスクです。
最悪、複合機やPCは保険をかけていれば、補償によって再び手に入れることもできますが、浸水したり、燃えてしまったりして失われた書類や情報を取り戻すことは困難です。ある程度は取引先からの再発行などで取り戻すことは可能かもしれませんが、クラウドなど、安全なところにデータとして保管しておけば、その復旧に当てる労力を他の復旧業務に割くことができ、1日も早い事業再開につながるのではないでしょうか。それは、「クラウドに保存してあるので、心置きなく廃棄しました」という言葉に集約されていると思います。

もう一つ、BCP対策としてクラウドが力を発揮するのは、業務のテレワーク対応です。
まだ記憶に新しいところですが、コロナ禍の緊急事態宣言下でも、一部の部門はテレワークができず出社せざるを得ないという課題が浮き彫りになりました。その一つが経理部門でした。
会計システムが動くPCが社内でしか使えない、という理由で出社をされていた方から「みんなテレワークなのに、私たちだけ出社しなくてはいけなかったのは、結構辛かった」という声を聞きましたが、感染対策だけでなく、精神的な面も事業継続では重要だと気付かされます。
コロナ禍を経て、郵送だった証憑類がPDFで送られてくることも多くなりました。環境が整っていれば、経理業務もテレワークで十分可能です。
コロナ禍のようなパンデミックは今後もないという保証はありません。異常気象などで日々、災害も身近になってきています。これらの経験を活かし、事業に降り掛かってくるこれらのリスクに対し、どう備え、対策し、リスクを最小限にすることは、企業の存続にとって欠かせないことでしょう。

ともすると、電子帳簿保存法は「法律だから」という消極的な対応をされている企業・経営者の方も少なくないと思います。
しかし、BCP一つとっても、経理業務の電子化、デジタル化は非常に有効だということはこれらの事例を通してご理解いただけると思います。
もちろん、クラウドが万能だとは思いませんし、100%すべての企業に当てはまるものでもありませんが、BCPも視野に入れながら、電子帳簿保存法に基づいた積極的な経理業務の電子化を考えてみてはいかがでしょうか。

※参考:リコー 中小企業応援サイト<かんたんにBCPのひな形ができる!BCP策定ワークシート>

※本内容はお客様との会話をヒントにしたフィクションです。

※本文に掲載されている情報は、2024年3月現在のものです。

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国税庁の電子帳簿保存制度特設サイトもご活用ください
<国税庁 特設サイトへリンク>