Main content

リコー 教えて電子帳簿保存法
コラム 07

Column

コラム

帳簿書類の電子化と会社のガバナンスなどの関係

紙の書類を電子データにしていくことは、これまでも、リモートワークの広がり、ペーパーレス化・デジタル化の推進という社会の流れによって、各会社で取り組まれてきました。そして、2022年4月1日に施行された改正電子帳簿保存法で、国税関係の帳簿書類の電子データ保存の要件が緩和されるなどしたため、電子データの保存や電子取引は、ますます注目されています。
このように、帳簿書類の電子化は、今はどの会社でも取り組むべきものとなっていますが、「法律で決まったからやむを得ず」、とか「事務作業が大変」、「情報漏洩の危険があるのでは?」など、負担やデメリットを感じることもあるかと思います。
そこで、電子化が会社にとってどんな影響があるのか、メリットとなるのかを、会社のガバナンスなどの面から見てみようと思います。

(1)業務の効率化

これは説明するまでもないかもしれません。情報を紙ではなく電子データで保存・管理することは、情報の受け渡しの迅速化や情報共有の推進につながります。例えば、会議資料や研修資料を紙で印刷して配付していたのが、データであれば関係者はパソコン・タブレットなどで見ることができます。そして、長い目で見れば、紙や印刷代などのコストカットとなることもあるでしょう。
また、必要な情報の検索も効率的に行うことができるようになります。一定のルールで保存・管理することにより、必要な資料のピックアップが迅速に行うことができます。
紙を前提とした業務の見直しは、昨今の働き方改革の流れともマッチしています。

(2)コンプライアンス、ガバナンスの整備

これは言葉の意味が理解しづらく、また、大企業が対象だろうと思う方もいるかもしれませんが、実は、中小企業にもとても重要なことです。
コンプライアンスは、「法令遵守」と言われますが、法令遵守は当然という意識が広がり、「コンプライアンス」は、今はより広い意味を持つ言葉になっています。例えば、法令のみならず社会的なルールなどを守り、社会の期待に応える存在であること、などです。
電子帳簿保存法をはじめとした法律を守ることは、コンプライアンス上当然なのですが、コンプライアンスの意識をもつことが、社会的な期待に応えることにもなるのです。
次に、ガバナンスは、「企業統治」と訳されます。ガバナンスも様々の意味を持つ言葉で、企業自身で管理体制を整備することなどを指します。2000年代あたりから、企業の不祥事が次々発覚したことを覚えておられる方もいらっしゃると思います。帳簿書類の改ざん・隠蔽や不適切な会計処理により、企業が損害を被った事案が様々起きたのですが、報道されるような大企業に限らず、これは中小企業でも起こり得ることです。その防止のため、会社法の改正やガイドラインの策定などでガバナンスを強化してきました。このガバナンス強化の流れは、今後も続くことが想定されます。
日常業務で電子帳簿保存法に基づき電子データの保存等を行うことも、帳簿書類の改ざん・消失などの重大なリスクの減少につながり、ガバナンスの整備・強化の一環になってくるのです。

鳥飼総合法律事務所 パートナー弁護士 佐藤香織

画像:帳簿書類の電子化と会社のガバナンスなどの関係

※本文に掲載されている情報は、2022年9月現在のものです。

おすすめのコラム

電子帳簿保存法令和5年度改正では、やはり電子取引保存は義務であり未対応は後悔につながる?

国税庁HPにて、令和5年度改正内容を反映した電子帳簿保存法取り扱い通達と一問一答が公開されました。

FAXで受領する注文書は電子帳簿保存法での電子取引保存の対象なのか?

電子帳簿保存法で電子取引と定義される注文書や見積り書などの「ペーパーレスFAX」の保存要件について説明します。

インターネットバンキングは電子取引なのか?

インターネットバンキングの情報が、電子帳簿保存法に準拠した保存方法なのかどうか説明します。

国税庁の電子帳簿保存制度特設サイトもご活用ください
<国税庁 特設サイトへリンク>