コラム 24

コラム

早めの準備を! 2024年から始まる電子取引保存方法の準備事項って?

寄稿 OAG税理士法人 大谷 洋一郎

電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、2024年(令和6年)1月1日以降の電子取引は、紙での保存は認められず、電磁的記録を保存しなければなりません。今回のコラムでは、導入に向けた準備事項を実務の側面から説明します。

Step1 現状の電子取引内容を把握・整理する

まずは、現状の電子取引内容の把握、見える化からスタートしましょう。実はこの作業が最も手間と時間がかかりますので、なるべく早く開始することがポイントです。まずは、経理内で把握し、その後、各事業部へ確認すると効率的です。確認事項は“会計入力の基資料“としてどのような電子取引書類(データ)があるのか確認します。加えて、授受方法(クラウドサービス・EDI・PDF等々)、保存方法・場所、そして、月間・年間の件数まで把握します。
手間ではありますが、Excel 等で集計、リストアップしておくとこの後の業務がラクになります。

Step2 電子データの保存方法を検討する

電子データを保存するための要件は、①当社か先方がタイムスタンプを押すこと②専用のシステムを使うこと③事務処理規程を備え付けることのうち、いずれかを満たす必要があります。Step1で把握した件数に応じての選択になりますが、実務的な目安とすると、月の件数が50件までであれば③で対応、それ以上の場合は②や①の対応が効果的です。

前述の内容を表した図

Step3 電子データの保存場所を検討する

電子データの保存については、「日付・金額・取引先」を用いた検索機能の確保が必要となります。具体的には、証憑収集・保管の専用システムに保存するか、自社のサーバー内のフォルダ等への保存となります。この点、自社フォルダ等へ保存する場合はファイル名を都度、規則的に入力し直すか、Excel ファイルで牽引簿を作成する必要があるため、実務的にとても手間がかかります。加えて保存期間が7年間と長期です。自動で検索要件を満たしてくれる証憑収集・保管システムの利用をお勧めします。

Step4 業務フローを整理する

前述のStep1で把握、見える化した際、多くの会社では現状、電子データを一旦紙に打ち出して承認や経理に回す運用をしています。しかし、2024年1月以降、電子データは電子データのまま保存する必要がありますので、コストの面でも一旦紙に打ち出すことなく承認・経理提出の流れが構築できるように運用を検討しましょう。特に上長承認については、紙であればサインや押印となりますが、データの場合の確認、承認方法は事前の検討が必要です。

Step5 規程等を備え付ける

前述のStep2で「③事務処理規程を備え付ける」を選択した場合は、国税庁のホームページで公開されている雛形を参考に、規程を作成する必要があります。また、保存場所としてシステムを利用する場合は、システムや使用するパソコン等の操作説明書を備え付けておきます。

Step6 関係者に周知し、運用を開始する

ここまで整理した事項を従業員、取引先に説明しましょう。特に従業員に対しては、経費精算のエビデンスが電子データの場合の対応事項をしっかり説明しておきましょう。取引先に対しては、紙とデータを併用している場合はデータに統一していただく事、紙からデータに切り替えていただく事を依頼しましょう。

2023年10月開始のインボイス制度対応に追われているうちに、あっという間に2024年の制度開始を迎えます。まずは早い段階でのStep1の対応とStep2の①~③の選択を実施していただくことをお勧めします。

  • 国税庁のホームページ 参考資料(各種規程等のサンプル)

  • 本文に掲載されている情報は、2023年10月現在のものです。
PAGE TOP